Operation:Mindcrime「The New Reality」(2017)

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exQueensrycheのGeoff Tate(Vo,Key,Sax)率いるOperation:Mindcrimeの3rd。GeoffとKelly Gray(G,B)、Scott Moughton(G,Key)がコア・メンバーで、曲によってJohn Moyer(B)や複数のドラマーを使い分けている。

1st~3rdで国内盤ライナーを書いたのは同一人物だが、ご丁寧に3枚ともライナーの前半でGeoffのQueensryche放逐や裁判における和解までの経緯が記されている。繰り返し同じことを書かなくても…と思ったが、よくよく考えてみれば拙ブログでGeoff Tate関連作のレビューを書いている私の文章の内容も「煮え切らないサウンド・プロダクション」「少数の例外を除いて印象に残らない楽曲」「ファンの望むそれよりも自身の指向を優先した音楽性」「Kelly Grayのショボさ」等々に対するグチが高確率で出てくる、あまり変わり映えしないものになっている。人のことをとやかく言えた義理ではない。

そして今回も新作を聴いて浮かんでくる思いはここ数年のGeoff Tate関連作とあまり変わらない。特にGeoff単独のペンによる楽曲からなる後半がイマイチ盛り上がらない。ギターが控えめになっているのは別にいいのだが、キーボードの音がやけにチープに感じられて、「せめてもっとゴージャスなプロダクションで制作できていたらねえ…」とため息をつきたくなる。ラストで“The Same Old Story”のようなさして盛り上がるでもなく、さりとて深い余韻を残すでもないスッカスカな曲を持ってきたのは何故なのか。うーむ。一方で、アップ・テンポの“Wake Me Up”やミッド・テンポの“Under Control”といったハード・ロック色の濃い曲が集中している前半は悪くない。

1stから続いた3部作もこれで一段落だそうで、さて、今後はどうするのか。こうしてレビューを書いてはいるものの彼の作品をオススメする気はあまりないし、もしかすると今後、Geoff Tateの作品についてこのような形でレビューすることはもうないかも知れない。でも次が出たら買うんだろうなあ。嬉しいことにと言うべきなのか、あるいは厄介なことにと言うべきなのか、歌唱力に限って言えば確実に回復基調に乗っている。国内盤ボートラの“Take Hold Of The Flame”にしても、肩の力が抜けたアコースティックのアレンジではあるが、ライヴでキーを落とさず歌えている。昔のようには超高音をスクリームすることはムリでも、ドラマティックな曲を艶のある声で歌い上げる姿をまた見せて欲しいものである。


Operation:Mindcrime“Wake Me Up”
これは良い曲。

Daniel Cavanagh「Monochrome」(2017)

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Anathemaのギタリスト、Daniel Cavanaghのソロ・アルバム。

ヴォーカルを含め、ほぼ全ての演奏がDaniel本人によるものだが、ヴァイオリンにAnna Phoebeが、そしてヴォーカルにAnneke Van Giersbergenが参加している。DanielとAnnekeのコラボはこれが初めてではなく、2人の共同名義で「In Parallel」というタイトルのライヴ・アルバム(The GatheringやAnathemaの曲をプレイ)を2009年にリリースしている。

一昨年の来日時にはNirvanaのTシャツを着てステージに現れ、終始アグレッシヴに観衆を煽りまくっていた(終演後の客出しBGMでも煽っていた)Danielだが、「Monochrome」で聴ける音はそんなDanielのキャラクターとは対照的なもの。Anathemaでヴォーカルを務める弟Vincentとよく似た声質を持つDanielのヴォーカルが静かなピアノに導かれるように現れるオープナー“The Exorcist”から、かそけき音色を奏でるヴァイオリンがやがて波の音へと変わり、赤ん坊の笑い声と共にひっそりとエンディングを迎えるラストの“Some Dreams Come True”まで全7曲約48分、Anathemaのしっとりというか、じめじめした湿っぽい要素を煮出して濃縮したような、内省的な作品に仕上がっている。メタル色は皆無。

Anathemaのファンだからというより、Annekeが参加しているから買ったようなモンだが、そのAnneke、先頃デビューしたばかりの自身のバンドVuur(オランダ語で「炎」という意味の単語だそう)での力強い歌唱(Vuurはバリバリのプログレ・メタルなんで)とは異なる繊細な歌唱で作品に貢献している。Anathemaが時に醸し出す、しんみりとした情感を好む人向け。


Daniel Cavanagh“This Music”


Ulver「The Assassination Of Julius Caesar」(2017)

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Kristoffer Ryggを中心とするノルウェーのグループによる12th。

Ulverの作品はこれまで聴いたことはなく、初期はブラック・メタルを演奏していたがその後音楽性が変化しているという情報だけはぼんやりと知っていて、あーよくあるネオ・プログとかアトモスフェリック・ロックとかそういう系統のヤツね、と思っていたんだが、いざ聴いてみるとどうも事前の予想と違うというか「なんでそういう風にしたワケ?」と聞きたくなる場面がそこかしこに。

その極北とでも言えるのが2曲目の“Rolling Stone”。サウンドこそネオ・プログ的な醒めた質感をまとっているが、ソウルかファンクかというようなダンサブルなビートに、キラキラ光るタイトなコスチュームに身を包んだアフロ・ヘアーの人達が脳裏に浮かんでくるようなファルセットのヴォーカルをキメた後にノイジーなエクスペリメンタル・サウンドが現れる。なんスかこれ。鳴り響くシンセやヴォーカルの処理が80年代ニュー・ウェーヴ然とした“Transverberation”も大概。

もうちょっとアート志向というか、語弊のある言い方をすれば「お高く留まっている」音楽なのかと思っていたが全然違っていた。ダークではあるものの、キャッチーというか、俗っぽいメロディを歌い上げることに対して全く衒いがない。それでいて安直なポップ・アルバムに堕することなく、なんとも掴みどころのない妖しさをプンプンとまき散らしている。シリアスさとうさんくささを絶妙な塩梅で両立させているそのセンスというか、特異なバランス感覚に驚嘆させられる1枚。


Ulver“Nemoralia”


John Zorn「The Garden Of Earthly Delights」(2017)

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John Zornについては、多岐に渡り過ぎる音楽性、尋常ならざるリリース・ペース、それに反比例して少な過ぎるインフォメーション故、なかなか接する機会がないというか、私にとって気軽にアプローチするには敷居の高さを感じさせるミュージシャンである。

同じバイト先に勤めていた大学の先輩が興味本位で買ってきたCDを聴かせてくれたのはもう20年以上も前の話か。今となってはどんな音だったか記憶も定かではないが、とにかく当時の私の理解の範疇を越えていたことだけは確かである(恐らくPainkillerかNaked Cityか、その辺のアナーキーなハイスパート系のヤツだったと思う)。それからしばらくして購入したのが、ジャケットに宍戸錠を配し、太田裕美をゲストに迎えた「Spillane」(1987)。Albert Collinsのギターを全編でフィーチュアした“Two-Lane Highway”はともかく、“Spillane”と日本の映画「狂った果実」を題材にした“Forbidden Fruit”(この曲で太田裕美が語りで参加)はなかなかにシュールな曲で、やはりよくわからず。

それからまたしばしの後購入した「A Dreamers Christmas」(2011)は文字通りのクリスマス・アルバム。まったりと穏やかなアルバム…かと思いきやオリジナルの“Magical Sleigh Ride”はMarc Ribotのギターをフィーチュアして締りのあるジャズに仕立ててあるし、“The Christmas Song”ではMike Pattonをヴォーカルに迎えているしで、一筋縄でいかないながらも自分のイメージに反して聴きやすい作品だったのだが、今回紹介する「The Garden Of Earthly Delights」も、大衆性こそ希薄だがある種の音楽のファンにはオススメしやすい作風になっている。

Zorn自身は演奏に参加しておらず(「composer,arranger,producer,conductor」としてクレジットされている)、G+B+Key+Drの4人編成で録音されているこの作品、帯に曰く「メタル、ブルース、ファンク、ジャズ、そしてモダン・クラシックをブレンドして1つにまとめた奇妙なアマルガム」とのことだが、変拍子が入り乱れる、時に荒々しい楽曲の数々を緻密な演奏で聴かせており、古めかしいオルガンやザラついた感触のギター・サウンドがハード・ロック的であり、もっといえば暗黒プログレ的でもある。

ハード・ロックでもプログレでもどっちでもいいけど、全体に色濃く漂うのが70年代テイスト。私同様、John Zornに対してとっつきづらさのようなものを感じている人は少なくないと思うのだが、微かにカビ臭さが漂うそのテの楽曲/サウンドが好きな人にはオススメ。“Angels And Devils”“The Infernal Machine”という1,2曲目のガンガン畳みかけてくる流れは実にカッコ良い。

最後に余談を。タイトルは初期フランドル派の画家、ヒエロニムス・ボス(1453?-1516)の代表作「快楽の園」にちなんで名付けられたもので、ジャケットにも「快楽の園」の一部(ジャケットを開くと作品全体を見ることができる)が使用されているのだが、同作品はCeltic Frost「Into the Pandemonium」(1987)やDeep Purple「Deep Purple」(1969)のジャケットでもその一部が使用されている。


John Zorn“The Infernal Machine”

Steven Wilson「To The Bone」(2017)

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近年はKing Crimsonの旧譜をはじめとして様々なクラシックスのリミキサーとして名を馳せている感のあるSteven Wilsonの5thソロ。個人的には2009年の「Insurgentes」以降ご無沙汰していたが、ツイッターのTLでたまたま目にした“Permanating”が「根暗なクセに無茶してんなコイツ」と思わずにはいられないABBAばりのダンス・ポップで、これはチェックせねばなるまいと思い購入。

「To The Bone」発表にあたってPeter GabrielやKate Bush、Tears For Fearsといった人達の80年代の作品が言及されているが、それらの作品は芸術性と商業性を高い次元で両立させており、今作ではその高みを目指してみました、ということなのだろう。恐らく。

で、聴いてみると、結構いいセン行ってるのではないかと思った。過度に俗っぽくなっておらず、かと言って愛想が悪いワケでもない。凛とした気高さと親しみやすさが良い塩梅でバランスしている。4分間のポップ・ソング“Nowhere Now”がこの作品のそういった雰囲気を最もよく体現している。Peter Gabriel“Don't Give Up”を想起せずにはおれない女性Vo、Ninet Toyebとのデュエット曲“Pariah”、ドラマティックなサビからMark Felthamによるハーモニカ・ソロへの流れがダイナミックなバラード調の“Refuge”、後半のギター・ソロを支えるバックがいきなりフュージョンっぽくなってやけに印象に残る“Detonation”等々、曲調も実に多彩。

奇しくも「Insurgentes」レビューの末尾で「キャッチーなメロディのポップ・ソングも書ける人(略))なので、次(略)はそういうのも期待したいところではある。」と書いたのだが、ここでその期待が現実のものになった感。喜ばしい。来日を望む声もあるが、何せPorcupine Treeで2006年に2度来日していずれも集客面でヒドい目に遭っている(1回はあの伝説のウドー・フェス)から正直、期待薄。昨年インド~オージー~NZ~台湾というルートでアジア・ツアーを敢行したけど日本は華麗にスルーされてるし。

トラウマになってるんだろうな、多分。あの時は本当に気の毒だったと思うが、今ならクラブチッタ程度だったら余裕でしょ。そんなに怖がらなくてもいいと思うんですけどね。


Steven Wilson“Refuge”