非思量

石川さゆり「X-Cross-」(2012)

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数多くのヒット曲を持つ演歌界の大御所、石川さゆり。彼女と親交のあるミュージシャンから楽曲の提供を受けて製作されたアルバムが「X-Cross-」である。ジャケットを荒木飛呂彦が描いたことで話題になりましたね。

聴いていてまず思ったのは「案外、クセのある歌い方をするなあ」ということ。ア行の音に結構な割合でハ行の音が混じる。「今を嘆くよりも 明日を歌いたい」が「ひまをなげくよりも あすをうたひたひ」と、敢えて意図的にそう歌っているように聞こえる。テレビで演歌を歌っているのを見ている限り、こんな感じではなかったように思うのだが。あと、声が“天城越え”を歌っている時の艶っぽさからはかなり離れていて、むしろ可愛い。

演歌のアルバムではないのでこういう歌唱法を採ったのかも知れない。コブシをきかせる場面も少ないし(これ以外のアルバムを持っていないのでよくわからないが)。とはいえガップリ四つの異種格闘技戦的なムードは薄く、NHKでアホほど流れた震災復興ソング“花は咲く”のカヴァーや、これまた先の震災で甚大な被害を受けた石巻へ向けた応援歌“石巻復興節”といった収録曲のラインナップからも、このアルバムが私のようなニッチ愛好家ではなく、一般的なJ-POPファンと演歌ファンの両方の層へアピールすべく作られたものと心得る必要はあるだろう。

ただ、その中でもやはり山崎ハコ提供の“花火”だけは70sフォーク的というか、山崎ハコの情念溢れる世界の一端が垣間見えて、アルバムの中では抜けて濃厚な味わいがした。あとくるりの岸田繁が作曲した“石巻復興節”、CDを買ってカーステで聴いていたらこれといった展開もなく盆踊りで流れそうな民謡調のメロディが延々続くので運転しながらトリップしそうになった。あとから歌詞カードを見たら18番まであった。演奏時間8分28秒。サイケデリック。

ところで、どうでもいいけど演歌歌手のアルバム名によくある「全曲集」てどういう意味なんだろうか。

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