Rush「Snakes&Arrows」 

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キャリア33年を誇るカナダのトリオ、通算18枚目のスタジオ作。

前作「Vapor Trails」が、Neil Peart(Dr)が妻と娘を相次いで失い、その後再婚するという激動期を経て制作されたアルバムだったためか「バイアグラで回春!」みたいな物凄いテンションだったが、2004年にリリースされた30周年記念のカヴァー・アルバム「Feedback」では程よく肩の力が抜けていて、新作もその延長線上というか、年齢相応の落ち着いたアルバムに仕上がっている。

このキャリアでコンスタントにアルバムを出しているバンドの新作が「ツアーをやるための口実」的な、ソコソコのクオリティの曲を並べてお茶を濁すような作品になっていないのは凄いことで、93年発表の「Counterparts」から続く低重心のヘヴィ・サウンド+コンパクトなロック・チューンという基本路線は不変なれど、楽曲をシンプルにまとめ、ブズーキやマンドーラといったアコースティック楽器を導入することで過去の焼き直しを慎重に回避、なおかつ作品の質も落とさず、ファンの期待を裏切ることもなく…と、もはやこのあたりは芸術的というほかない。

アコギのフィーチュア度が高いせいか、これまでになく「枯れた味わい」を感じさせるアルバムになっているが、そんな中で個人的に好きなのは“Good News First”だ。ブックレットでこの曲の歌詞が掲載されているページのイラストを紹介しよう。雪原に遺体の上から土がかけられただけの粗末な墓と、墓に添えられた一輪のバラ、そしてカラスが一羽。そんな荒涼とした風景の中、風に舞う新聞の見出しは「治療薬、発見(Cure Discovered)」…。殺伐としたニュースばかりが飛び交う社会の中で「まずは良い知らせを聞かせてくれ」というメッセージが胸を打つ佳曲だと思う。アートワークと楽曲が相乗効果を生み出した最上の見本。

「現実を直視し、受け入れた先にある楽観主義」というのがRushの作品を貫いている世界観だと私は思っているのだが、そのしなやかな強靭さはここでも不変。この3人にしか作りえない世界は健在で、それは恐らく今後も変わることはないだろう。さすがに前作ほどのパンチ力はないが、信頼するに足る人達がその信頼にキッチリ応えた、良心的な力作。

2007/05/03 Thu. 02:52  edit

Category: CD/DVDレビュー:R

Thread: 洋楽CDレビュー - Janre: 音楽

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コメント

こんにちは。MARINE時代から愛読していますが、はじめてコメントしちゃいます。

このレビューを何度も何度も読みながら、今日ようやくアルバム買ってきました(GW中身動きとれなかったので)。
期待を裏切らない素晴らしいアルバムです。おそらく一度聴いただけで引き込まれてしまう楽曲の多さでは(個人的嗜好ですが)『ROLL THE BONES』以来ではないかと。

そのうち自分でも何か記事を書いてみようと思いますが、まずはしばらくアルバムを聴きこむことにします。

けい #6mhiDe5. | URL | 2007/05/07 23:58 | edit

わーい、けいさんだー。いらっしゃいませ。

「最新のものが最良である」という工業製品のようなバンドですね、Rushは(2ちゃんで「しっくり来ない」と書いている旧来のファンもいるにはいますが)。キャリア30年超でこういう扱い方される人て、他にいないと思います。ライヴもエンディングを除けば懐メロ大会には絶対なりませんからね。

私のような「Counterparts」からはまった人(ドリーム・シアターの影響だと思いますが、これ、案外多いんですよ)にとっては「変わらないけどどんどんカッコ良くなっている」という意味で、リアルタイムで接したアルバムには全くハズレがないんですよね。来日しないかなあ。

cota #BqEwgRj. | URL | 2007/05/08 22:04 | edit

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