非思量

ActionAid「All I Want For Christmas Is A Goat」(2015)

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メリークリスマス!今回はクリスマスアルバムの紹介である。

私、仕事とかでつらいことがあったときは「人間みたいな声でなくヤギ」の動画を見て心を癒すことにしている。コイツラの鳴き声を聞いていると大概のことがどうでもよくなってくる。



オッサンが叫んでいるようにしか聞こえないヤギとか、志村けんみたいな声のヤギがいたりするワケだが、このヤギどもの鳴き声をサンプリングしてクリスマスソングに仕立ててしまったのが「All I Want For Christmas Is A Goat」(クリスマスにヤギが欲しい)である。まあ今書いたそのまんまの内容で、これ以上付け加えることはない。


“Silent Night”(きよしこの夜)

清らかな演奏と狂気じみたヤギの競演。このテのパロディは結構前から存在しているよう(「Goat Edition」で動画検索すると出てきます。Miley Cyrusのヤツはなかなかケッサク)だが、「All I Want For Christmas Is A Goat」は全編これヤギの鳴き声で作られており、どう考えても正気の沙汰ではない。しかし作ったのは自然災害や紛争等で貧困にあえぐ子供たちを救うためのれっきとしたチャリティ団体ActionAid。誰だよこの企画思いついたヤツ。最高じゃないか。

デジタルのみでの販売で、私はAmazonで購入したがiTunesでも購入できる模様。1曲目とラストは男性のしゃべり(スウェーデン語?)が入っているだけなので、曲単位で買ったほうがいいかも。全曲通して聴いても10分かそこらの短いアルバムだが、人助け兼年忘れのお笑いネタとして、あるいはつらいときの癒しとして、小遣いに多少なりとも余裕のある方はどうぞ。

W.A.S.P.「Golgotha」(2015)

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アメリカのヘヴィ・メタル・バンド、W.A.S.P.の15枚目。「Babylon」(2009)があまりピンとこなくてその後全くチェックしていなかったんだが、その「Babylon」以降、6年間アルバムを出していなかった模様。

作風としては「Dominator」(2007)に近いか。「Babylon」に見られたロックンロール路線の曲はなく(今作はカヴァー曲もナシ)、全体的にシリアスな雰囲気。ただ、過去のシリアス路線作にあったような「世間にモノ申す」的ムードは希薄で、どちらかというと自己の内面に踏み込んだ、救済を求めるような歌詞が目立つ。30周年を迎え自らの来し方行く末に思いを馳せているような“Last Runaway”、相変わらず特異な声質ではあるものの昔と比べると随分カドが丸くなったBlackie Lawlessの声でこれを歌われると何とも感傷的な心持ちになる。この曲、好きだなあ。

何となく以前に聴いたことがあるようなメロディラインやフレーズがちょこちょこ出てくるのはご愛敬。その辺が「偉大なる二流」感を漂わせる所以だが、それを差し引いてなお、Blackie Lawlessが生み出すメロディは魅力的。前述の“Last Runaway”や、ラストに配されたタイトル・トラックを筆頭に、重厚な佳曲が揃った力作。ドラマティックなギターもアルバムの盛り上げに一役買っている。


W.A.S.P.“Golgotha”

King Crimson@サンポートホール高松 大ホール(2015.12.19)

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追加公演発表時に誰もがその目を疑い「Robert Frippは讃岐うどんでも食いたくなったのか?」と思ったKing Crimson高松公演。友人に誘われて行ってまいりました。

カメラのフラッシュに腹を立ててステージから引っ込んでしまうという、弩級の面倒臭さを誇る超大物外タレなぞ恐らく扱ったことがないであろう地元プロモーターの神経の尖らせっぷりが、もう。イライラ半分、おかしさ半分。入場待ちの行列に向かってスタッフが「携帯の電源を切ってください」と呼びかけ。会場に入り、ホールの椅子に腰かけてスマホをいじっていたらそれを発見したスタッフが「スマホの電源を切ってください」。

まだ開演30分前やぞ!何も始まっとらんやろが!…とは言いませんでした。

会場入り口及び開演前のステージに「写真撮ったり録音したりしたら退場やで」という注意書きまであって(しかも英語ヴァージョンまで)、いやあ、なんかすげえなあと思っていたんだがそこまでされてなお最前列に陣取って録音に挑む猛者がいて、さらにソイツがスタッフに見つかって強制退場させられるというステキイベントを目の当たりにすることに。記憶があやふやだが、Gavin Harrisonがステージ袖にいた女性スタッフを呼び込んで何やら耳打ちする場面があったんだよな。もしかするとあの時点でHarrisonが気づいていたのかも知れん。退場させられたヤツの近くの席にいた客がスタッフにチクッたという説もあるようだが。

本編終了後、Tony Levinがカメラを出した時だけ客も撮影可能に。私も撮ろうとしたのだけど律儀にスマホの電源を切っていて、起動にもたついている間にメンバーは奥に引っ込んでしまった。アンコール終了後にも同様の撮影タイムがあり、そこでどうにか1枚。

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ハイ、上手く撮れませんでした。多分、FrippやTony Levinの姿をナマで見るのはこれで最後だろうな。

ライヴ終了後、ホールと同じ建物の中にあるラーメン屋で晩飯を食ったのだが、そのラーメン屋が狭いなりに席数はそれなりにあって客も結構来てるのにスタッフが1人しかいない店。1人で切り盛りしていた男の子、オーダー間違えるわ順番間違えるわでデスマーチ状態。客は辛抱強く待っていた(食券制なのでオーダーをキャンセルして帰れない、という事情もあった)が、ああいう姿を見るとコッチの気持ちも荒んでくるんだよなあ。あのテのデフレの申し子みたいな店は早くこの世からなくなってほしい。

演奏?まあ良かったんじゃないですか。70年代以前の、特に1st~4thにはほとんど思い入れがないので、その辺はお察しください。敢えて言うなら「回顧主義のCrimsonなんか見たくない」という理由で今回の公演を回避した人、その決断は正解だったと思いますよ。

Yuka & Chronoship「The 3rd Planetary Chronicles 第三惑星年代記」(2015)

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「Dino Rocket Oxygen」(2013)以来となる3rd。

「Dino~」が結構気に入ってしまい、遂には(Anathemaのついでだったとはいえ)吉祥寺くんだりまでライヴを観に行ったりしてしまったワケだが、我らがマサ・イトーがライナーノーツを書いている(船越由佳と同郷であることからの縁らしい)新作も良い。人類の歴史における科学的、技術的革命をテーマにしたコンセプト・アルバムだそうで、“Birth Of The Earth”というタイトルの曲を軸にして、硬軟織り交ぜたシンフォニック・ロックが繰り広げられている。

前作もそうだったが、聴いていて何となく連想されるのはYes「Talk」。ほどよくハード・ロック寄りで古式蒼然としたプログレのカビ臭さが一切せず、サウンドがスッキリとまとめられているのが特徴。ほぼインストで演奏時間1時間という、字面だけ見ると実にとっつきづらそうな作品だが、親しみやすいメロディとか、誰か1人が突出することのないバランスの取れた演奏とか、押しつけがましくないアルバムの構成とか、理由は色々あるのだろうが、とにかく実際にはその長さを全く意識させない。

「プロデューサーでもある田口がバリバリのプログレッシャーらしい」と前作のレビューで書いたが、つい最近何かのはずみでwikiを見てビックリというか、この人、バリバリメインストリームの人だったんですね。聴いていて嫌なクドさが全くないのだけど、やっぱ、培われてきたセンスの賜物なのかなあ。


Yuka & Chronoship“Galileo II - Copernican Theory”
今年9月に行われたイタリアでのライヴより。

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