非思量

Soilwork「The Ride Majestic」(2015)

ridemajestic.jpg

スタジオ盤としては2年ぶりとなる10th。前作「The Living Infinite」(2013)は2枚組だったが今回は1枚モノ全11曲(国内盤はボーナス・トラックが2曲あり)でのリリース。今回も人事異動が発生しており、ベースのOla Flinkが脱退。ブックレットには新メンバーとしてMarkus Wibomがクレジットされているが今作のレコーディングには未参加、ベース・パートは2人のギタリストによって録音されている模様。

最早ヴェテランと言ってもいいキャリアを持つバンドなので、少々のメンバー・チェンジがあったところで、ドラムを軸にしてタイトにまとめられた演奏と、ブルータルなグロウルとメロディックな普通声を使い分けるBjörn(Bjorn) Stridのヴォーカルによって確立されたその音楽性が変わることはない。強いて言えばデス・メタルというよりはクラシカルなハード・ロック的表情を見せる場面が以前より目立つ部分もあるかなという気はするが、正直、彼らの作品を表現するための新しい言葉って、もう私の脳みそからは出てこないような気がする。彼らがエレクトロニカに走ったりすれば話は別だが。

それでも敢えて採り上げたのは、やはり曲が良いから。ブラスト・ビートを従えて放たれるエモーショナルなメロディが麗しい“Enemies In Fidelity”が個人的イチ押しナンバー。終盤の転調が印象的なエピック・ナンバー”Petrichor By Sulphur”も含め、中盤の展開が結構好み。彼らの魅力がギュッと凝縮された作品に仕上がっていると思う。高値安定、貫禄の1枚。


Soilwork“Enemies In Fidelity”

Operation: Mindcrime「The Key」(2015)

thekey.jpg

Geoff TateがQueensrÿche(Queensryche)の名称を使えなくなるにあたり、新たに立ち上げたバンド名がQRの名作そのまんまの「Operation: Mindcrime」。このバンド名を知った瞬間、カリオストロの城の銭形警部ばりに「そうか…その手があったか!」と叫んでしまった。皮肉ではなく、本気で感心した。

バンドと書いたが、クレジット欄には複数のベーシスト及びドラマーを含め総勢10名もの名前が記されており、Tateのソロ・プロジェクトと記したほうが自然な感じはする。ブックレットの裏表紙には写っているのはTateを含め7名。ここに写っているのがツアー・バンドという認識でいい…のかな?

かつて「Frequency Unkown」(2013)を評して『モダンなアメリカン・ハード・ロックという枠組みの中で、「Q2K」(1999)以降の各アルバムの要素を抽出して曲ごとに配合を変えつつ仕上げている感じ』と書いたが、基本的なアウトラインはここでも不変。ただ、今回はメロディックなハード・ロックであることに作品の焦点が当てられているフシがある。バンド名がバンド名だけに、やはり少しは同じ名前のアルバムを意識したか。

MegadethのDave Ellefson(B)が演奏のみならず作曲にも関与したリーダー・トラック“Re-Inventing The Future”を聴いた時は「あらこれ悪くないんじゃない?」と素で思った。全曲こんな感じだったらいいなあ…というささやかな望みはヒップホップのテイストが混じった“The Stranger”等で脆くも打ち砕かれる(一曲ぐらいこういう曲があってもいいとは思うが)し、Tateが好むムーディーなテイストが注入された“Kicking In The Door”みたいな曲もあるのだから、もっとカラフルで立体感のあるサウンドで聴けたらいいのにと思ったりで、色々と「惜しい」ところがあるのは否めないが、楽曲のクオリティに多少なりとも持ち直しの気配があるのは喜ばしいこと。さてこれが復活の狼煙となりますか。


Operation: Mindcrime“Re-Inventing The Future”

Yuka & Chronoship@吉祥寺シルバーエレファント(2015.8.30)

Anathemaのチケットを取った後「何か他にライヴやってないかな~」と軽い気持ちで調べてみたら、前日の8月30日にYuka & Chronoshipがライヴをやるというではありませんか!というワケで15年来の付き合いになる都内在住プログレッシャーW氏を誘って吉祥寺シルバーエレファントへ行ってきた。吉祥寺自体が9年半ぶりの訪問だが、シルエレは初めて。

P102002001.jpg

チケット購入後近所のスタバでW氏と4年ぶりの再会を祝し、開場時間の少し前に移動すると、雨の中、会場前の道路を埋め尽くす…は大げさにしても、往来の妨げになる程度には人で一杯。やがて開場、シルエレの中に入る。狭っ!さっきまで外にいた人、全員ここに入るの?我々は3~4列あった椅子席の後ろ、PAの真下あたりに陣取ったが、周りも人だらけ、階段のところに陣取っている人もいる。

定刻より少し遅れてメンバー登場、3rdアルバムが完成して間もない(ステージ上からメンバーのもとへ届けられたばかりのCDをみせびらかしていた)こともあり、新作からのナンバーも披露された。船越由佳のキーボードをメインに据えたシンフォニック・ロックは、タイトにピチっと決まるキメが心地良いハード・ロック~ヘヴィ・メタル的な香りを漂わせつつ「これぞプログレ」といった感じの硬質なグルーヴに満ち溢れてるものだったが、ライヴ後にW氏曰く「案外ルーツが見えてこない音ですねえ」。

ああ、言われてみれば…と思ったが、思い返せば2ndアルバム「Dino Rocket Oxygen」(2013)のレビューで私も似たようなこと(「不思議なほどに先人からの借り物臭が薄く感じる」)を書いていたのだった。ライヴ前に聴き返すことを一切していなかったので「なんとなくYesっぽい」で記憶が止まっていた。ぎゃふん。海外のレーベルから作品がリリースされているのも、そういったオリジナリティが評価されてのことなのだろうか。なおW氏、「途中のギター・ソロはブルーズっぽい感じだったし、引き出し多そうですね」とも言っていた。

昨年ラジオでたまたま彼女らの音を初めて聴いてアルバムを入手し、関東滞在中にたまたまライヴがあることを知って吉祥寺まで聴きに来て…、と、音楽性そのものは私が積極的に選びたくなるようなそれではないにも関わらず、まあ、奇妙な縁ではある。3rdアルバム完成記念&イタリア遠征壮行の意味あいでもあるのか、それともいつもこんな感じなのかはわからないが、キレの良い演奏とほのぼのしたMCタイムのギャップも楽しい、アットホームなライヴだった。「こんな機会でもない限り日本のプログレを聴きに来ることなんて絶対ないですよね」と2人で言いながら結構楽しめました。

新曲も良かったので、3rdアルバム買いますよ。輸入盤国内盤、2枚買う財力はさすがにないけど。

P102002301.jpg

Anathema@恵比寿リキッドルーム(2015.8.31)

待望のAnathema初来日公演、初日に行って参りました。

オープニング・アクトでアイスランドのSólstafir(Solstafir)が40分程度のパフォーマンスを披露。サザン・ロックをやりそうなヒゲ面の人たちだったが、音楽性はと言うとガシャガシャとかき鳴らす演奏の向こうから聴こえてくる繊細なメロディが特徴のポスト・メタル。

こんな音なのに椅子席の人達はほとんど座っていて気の毒になるほどのアウェー感だったが、Vo/Gが客席に雪崩れ込む捨て身のパフォーマンス?込みの熱演はオーディエンスの心を掴んだようで、エンディングでスタンディング・オベーションを得る事に成功。よく頑張りました。

長めのインターヴァルを経ていよいよAnathemaの登場。セットリストは次のとおり。

  1. Anathema
  2. Untouchable, Part 1
  3. Untouchable, Part 2
  4. Thin Air
  5. The Lost Song, Part 1
  6. The Lost Song, Part 2
  7. The Lost Song, Part 3
  8. A Simple Mistake
  9. The Beginning and the End
  10. Universal
  11. Closer

    Encore
  12. Firelight~Distant Satellites
  13. A Natural Disaster
  14. Fragile Dreams

やはり初来日ということもあってかオーディエンスの熱気も相当なもので、“Anathema”のはじまりを告げるSEが流れた瞬間から大きな歓声。“Anathema”終了後、まだ座っていた前方の一部の客に向かってVincent Cavanagh(Vo/G)が「Stand up!」。

次いで早くもキラー・チューン“Untouchable, Part 1”が炸裂!自然に起こるシンガロングで心が打ち震えた。演奏力が卓越しているとか、そういうバンドではないが、圧倒的な説得力で迫ってくる楽曲から得られるカタルシスがもう尋常ではない。“A Natural Disaster”演奏前にDaniel Cavanagh(G)から紹介された紅一点Lee Douglas(Vo)の「…Hello」でほっこり(続いてDanielが「彼女はとてもシャイなんだ」。“A Natural~”終了後、歓声に応えて控えめなガッツポーズを見せたLeeの姿にさらにほっこり)し、終演後の客出しBGMであるBeatles“Twist And Shout”をDanielの煽りに合わせて合唱して終了という多幸感に溢れたライヴだった。“One Last Goodbye”“Dreaming Light”をやってくれなかったし“Ariel”は2日目だけだったしで、セットリストは100%満足ではないのだが、次回の楽しみに取っておくとしよう。

もう少しだけ。

・「Distant Satellites」でドラマーとしてクレジットされていたDaniel Cardoso、ステージでもパーカッションを担当し、事実上のツイン・ドラム編成。16分をシャカシャカやっていたりして、なんか勿体無い使い方されてるなあと思っていたけど一部の曲ではJohn Douglasを押しのけてドラムを担当(その際、Johnはキーボードを演奏)。こう言っちゃナンだがドラムの腕前そのものはCardosoの方が上なような…。
・Daniel CavanaghはNirvanaのTシャツを着用。ライヴ中、一番アクションが活発だったのがこの人で、客席ギリギリまで前に出てきたり、オーディエンスを煽りまくったり。
・一番人気はLee Douglas。彼女の声、生で聴いても良かった。2日目に彼女のヴォーカルをフィーチュアした曲が増えていたのもむべなるかな。

ライヴに関して印象に残ったツイート。







バンドのFacebookより。

Thank you to everyone in Japan who made us feel so welcome. We had a blast. See you next time

Posted by Anathema on 2015年9月1日


また来てね。

Newest