非思量

Mats/Morgan「Schack Tati」(2014)

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スウェーデンのドラマー、Morgan Ågren(Agren)とキーボーディスト、Mats Öberg(Oberg)の2人によるユニット、Mats/Morganの9年ぶりとなるスタジオ作。以前から名前は知っていて、AgrenのドラミングならRaoul Björkenheim「Blixt」(2011)で耳にしたことはあるが、Mats/Morgan名義(Mats/Morgan Band含む)の作品を聴くのは初めて。

2人のデュオを主体としつつ大勢のゲストを迎えて製作されており、Obergのキーボードはある時はミニマル、またある時はキャッチーなメロディを弾き出したりと八面六臂の活躍ぶりだが、8bit系ピコピコ・サウンド+エスニック・ヴォイスという奇矯極まりない“The Swedes”を筆頭に終始その音色は乾いており、ポップなテイストの曲でもどこか歪な空気が色濃く漂う。モダン・ドラマー誌の2010年読者投票で1位になった(フュージョン・カテゴリー)というAgrenのドラムも随所で複雑な変拍子や手数の多いフレーズを叩き出しており、その歪さに拍車をかけている。

雰囲気が何かに似てるなあ…としばし考えたが、Minnemann, Brinkmann「Shining」(2010)もやはり、こういうシュールな空気を伝える作風だった。あと似ているというワケではないがSteve Vaiがふと脳裏をよぎったり。個人的な好みからするとフェードアウト気味に唐突に終わる曲が多いことでやや緊張感が殺がれているのが惜しいが、作品全体から滲み出るジャンルレスな感じが結構良い。


Mats/Morgan“Rubber Sky”

Anathema「Distant Satellites」(2014)

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Anathemaのオリジナル10th。国内盤も発売されており、彼らの国内盤が出るのは6th「A Fine Day Exit」(2001)以来となる。

オーケストラと共演したライヴ盤「Universal」(2013)でキーボードを弾いていたDaniel Cardosoが正式メンバーとしてクレジットされている。ドラマーとしてクレジットされているので誤植かと思いきや彼はマルチ・インストゥルメンタリストだそうで、気になって調べていて分かったことだがAnneke Van Giersbergen「Everything Is Changing」(2012)でもプロデュース/ミックス/作曲/ギター/ベース/キーボードで全面参加していたのだった。この人の名前は覚えておいて損はないかも知れん。

前作「Weather Systems」(2012)の冒頭2曲“Untouchable Part 1”~“Untouchable Part 2”が強烈過ぎたため、同じような流れの“The Lost Song Part 1”~“The Lost Song Part 2”がやや弱く感じられ(あくまで相対論での話。後者におけるLee Douglasの歌唱はとても良い)不安がよぎったが、その後の、冒頭のアコギが珍しくトラッド風味?な雰囲気を醸し出す“Dusk(Dark Is Descending)”や彼らならではの泣きのメロディが炸裂する“Ariel”、ゴシック・メタル調の“Anathema”などは流石のクオリティ。

K-Scopeに籍を置いてからの、ストリングスをフィーチュアしたドラマティックかつセンチメンタルな音楽性を維持しているが、さすがにその路線を3作続けるのは拙いと見たか、鋭角的なサウンドの“You're Not Alone”を収録したり、打ち込みのリズムを基調とした“Distant Satellites”“Take Shelter”をラスト2曲に配してくるなど、マンネリ回避の策もしっかり採られている。

彼らの濃厚な持ち味を楽しむためには「Weather Systems」、或いは昔の曲をセミ・アコースティックのアレンジで再録音した「Hindsight」(2008)をまず聴いて欲しい、というのが本音だが、聴き易さという点では上回っている気もするので、初めてAnathemaの音源に触れようかという人には格好の入り口となろう。何はともあれ、祝・国内盤発売!である。さて来日はあるか。


Anathema“The Lost Song Part 3”

Coldplay「Ghost Stories」(2014)

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英国産4人組による6th。

個人的には「Viva La Vida Or Death And All His Friends」(2008)と「Mylo Xyloto」(2011)におけるBrian Enoとのコラボレーションは失敗だったと思っている。リズム隊の存在感が極めて希薄で、メロディが生命線となる繊細な音作りのバンドをU2のようなスタジアム・ロック仕様に仕立て上げようというのがそもそも無理筋だった。

以前にも書いたが、私にとってColdplayは最初に買った2nd「A Rush Of Blood To The Head」(2002)1枚で完結したバンドで、3rd「X & Y」(2005)以降はどんどん評価が尻すぼみになっていった(1stは持っていません)のだが、テレビでたまたま目にした”Magic”がそれまでの彼らとはガラリと様相が変わっていて興味を持ったので、CDを買ってみた。

先にリズム隊の存在感云々と書いたが、遂にドラムは打ち込み然とした無機質なサウンドとなり、控えめなベースのリフが楽曲を形作る“Magic”あたりを除き、ベースは鳴っているのか鳴っていないのかよくわからなくなった。ストリングスやエレクトロニクスも加えられたアレンジは非常に多彩ながら出てくる音はどれも控えめで、Aviciiみたいだなあと思っていたら本当にAvicii(Tim Bergling)が関わっていたクラブ・ミュージック調の“A Sky Full Of Stars”を除くと、概してしっとりした手触りのアンビエント調のサウンドで整えられている。

サウンドの質感は方向性こそ違えどかつての透明感が復活していて、2ndにおける瑞々しさを取り戻したとは言えないにせよ、メロディもモノトーンの世界で存在感を見せている。やはり彼らにはこういう繊細な音が似合っていると思う。


Coldplay“Magic”

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