非思量

Sonar「Static Motion」(2014)

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かのギター・クラフトで学んだ経験があるというスイス在住のギタリスト、Stephan Thelenをリーダーとするツイン・ギター編成4人組の2nd。バンド名は「Sonic Architecture」を略したものと思われる(1st「Flaw Of Nature」(2012)ブックレットより)。

バンマスの出自とバンドの編成から真っ先に想起されるのは80年代のKing Crimsonで、なるほどミニマルなフレーズを基調に楽曲を構築しているあたり確かに影響を受けているのかも知れないが、硬質なサウンドが志向している音楽性はCrimsonというよりもNik Bärtschのそれに近い。Bärtschが運営するRonin Rhythm Recordsから1stがリリースされていることからも、それは明らかだと思う(ちなみに「Static Motion」はCuneiform Recordsからのリリース)。

難しい理屈はわからないが、私の耳に聴こえてくるのは「ロック・バンドの編成で奏でられるNik Bärtsch的世界」そのもの。フォロワーと言ってしまっても差し支えないと思う。Nik Bärtsch's Roninと異なりベースにファンク色が皆無なため、エクスペリメンタルな要素がより強く感じられるのが最大の相違点。これでも1stよりはいくらか聴きやすくなったと思うが、曲のテンポや大まかな構成がどれも似たような感じで区別がつき辛いのが難と言えば難。

ただ、延々と続くストイックなサウンドとミニマルなフレーズのコンビネーションが、酒に酔っていると俄然心地よく感じられてくるのもまた確か。あと皮肉でなく、部屋を暗くして聴くとよく眠れそうな気がする。気がするというか、睡眠時のBGMとしてよく利用している。現時点では、そういった特定のシチュエーションでのみ輝く音楽という評価になる(だからダメだ、という話ではないけど)が、楽曲面で何がしかのプラスアルファが加われば、このバンド、化けそうな気がする。


Sonar“Static Motion”

水曜日のカンパネラ「羅生門」(2013)

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コムアイ(主演/歌唱)、Kenmochi Hidefumi(作曲編曲)、Dir. F(その他の全て)3人によるユニット、水曜日のカンパネラの2ndミニアルバム。

タワレコと下北沢のヴィレッジヴァンガードでのみの販売ということで、Alter Bridgeを観に行くために大阪に出た際に茶屋町のタワレコに行ってようやく入手できた(オンラインでも買えるのだけど、タワレコの会員登録をしていないもので…)。そういえばDiablo Swing Orchestra「Pandora's Pinata」がこの19日にめでたく国内盤発売の運びとなったのだが、アマゾンで検索かけても見つからないので不思議に思っていたところ、どうやらヴィレッジヴァンガード限定発売の模様。普通にレコード屋に行っても買えないなんて、ううむ…。

前置きはこのくらいにしておいて、音。最初に耳にしたのはこのアルバムの冒頭に収録されている“モノポリー”だった。非常に端整なハウス系サウンドに乗せて繰り広げられる、出鱈目に首都圏の駅名を羅列したラップ調女性ヴォーカル。続いて同系統の“マリー・アントワネット”。更に悪ふざけ感満載の歌詞で、こんなのがいたのか、と。で、しばらく寝かせておいても「CD、買ってみようかな」という気持ちは消えなかったので先週購入してみた次第。

8曲入りだが全部ラップなのかと思っていたらそうではなく、前出の“モノポリー”“マリー・アントワネット”以外の6曲は普通の歌入り。これが結構素人臭い舌っ足らずな歌で、冷たい印象のラップとは結構異なる表情を見せる。歌詞は小難しい解釈を一切拒否するような言葉遊びのオンパレードで、例えば“星一徹”の出だしは「土用の丑の日に うなぎ食べたーいね」。これが微かにノスタルジーを感じさせるトラックに乗って流れてくる。全編これふざけた歌詞とキャッチーな楽曲の洪水。

バックトラックは思わず聴き惚れてしまうほどに流麗、しかしヴォーカルはなかなかに危うく、歌詞は意味不明。これらが三位一体となってなかなかに奇天烈な世界を作り出している。どれか1つだけが欠けていても私には響かなかっただろう。聴く前は「2回ぐらい通しで聴いたら飽きるだろうな」と思っていたのだが、そうはならなかった。もうすぐ3rdが出るらしいので、今度大阪に行った際にタワレコで探してみるか。


水曜日のカンパネラ“モノポリー”

Alter Bridge@梅田クラブクアトロ(2014.2.19)

Alter Bridgeの初来日公演に行ってきた。ほんの数年前にウェンブリーでライヴを挙行した実績のあるバンドを梅田クラブクアトロで見られるという、何とも贅沢な話。オーストラリアツアーとセットだからこそ実現できたんだろうな。

そしてその梅田クラブクアトロがこちらの想像を超える狭さ。ろくすっぽ調べずに行ったが1500人ぐらい入るんだろうと思っていたらまさかのキャパ700人。フロア図はコチラを参照されたい。私はPAブースのまん前にあたる前半分フロアの最後尾、中央からやや左側に陣取ったが、そこからでもステージがこれだけ近いんですよ。

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開演前に撮影

そういえば開演前に「携帯の電源を~」みたいな注意喚起のアナウンスがなかった。皆ライヴが始まっても写真や動画を撮りまくり。ひと昔前では考えられなかったことだが日本だけ禁止にしたところでもう意味ないですよね。

さて、ライヴ。セットリストは以下の通り。コチラより転載。

1. Addicted to Pain
2. White Knuckles
3. Come to Life
4. Brand New Start
5. Cry of Achilles
6. Ghost of Days Gone By
7. The Uninvited
8. Ties That Bind
9. Broken Wings
10. Metalingus
11. Blackbird
12. Watch Over You (Myles Acoustic)
13. Find the Real (Tour debut, first time played since March 5, 2012)
14. Isolation
15. Open Your Eyes
Encore:
16. Slip to the Void
17. Farther Than the Sun
18. Rise Today

“Find The Real”が久々の演奏だったらしいが、昨年のツアーや前日の恵比寿リキッドルームから大きな変更はなし。“Blackbird”“Ties That Bind”が聴けたらあとは何でもいい、ぐらいの気分だったので、まあ、満足。しかし新譜からの曲が少ないな。10周年記念ツアー、みたいな色合いが濃いのだろうか。

サウンド。予習がてらウェンブリーの動画をYouTubeで観て感じたことが二点あって、その一点目が「音が小さい」だった。生で観た感想は「もう少しガツンと来ても良かったのでは」。ただ、バランスはとても良好で聴き疲れを起こすこともなかったので、これはこれで良かったのだろうと思う。

Myles Kennedyのヴォーカル。ウェンブリーの動画をYouTubeで観て感じたことの二点目が「音程の遊びというか、フェイク多いなコイツ」というもの。実際に目の当たりにして、やはり所々でフェイクが入っていた。消耗度の高そうな曲が多いので省エネの側面もあるかも知れないが、大半の曲でギターを弾きながらの歌唱だったことが原因かなという気もする。ギターを持たず、フェイクなしで歌い切った1stの“Broken Wings”が今回のベスト・パフォーマンス。アルバム通りに歌っている時は本当に素晴らしい。これはサウンドメイクも関連していると思うが、スタジオ盤の声とライヴのそれの聴こえ方にこれほど乖離が少ない人って案外いないのではないか。しょっぱなの“Addicted To Pain”の最初の歌いだしで「あ、これなら(このライヴは)大丈夫だ」と思った。

その他、ライヴ中になんとなしに感じたあれやこれやを。

・ノンケ男が抱かれたい男(USモダンロック編)1位(from スーパーリスナークラブ)のMark Tremonti。確かに男前でギターもキレッキレだったがコーラスでマイクに向かうと顔から表情が消える。
・サポート・メンバーのような(もしくは「ザ・ベーシスト」な)ルックス&たたずまいのBrian Marshall。
・Marshallが着ていたTシャツはPink Floyd「The Dark Side Of The Moon」。
・Marshall、間奏でギタリストに挟まれてセンターに躍り出ても特に客に目線をくれたりするわけでもなく黙々と弾き続け、歌が始まると奥に引っ込む。シャイなのか、それとも単に面倒くさいだけなのか。

Kennedyが本編ラスト前だったかアンコールだったかの時にあまり間隔を空けずに日本に戻ってきたい旨のMCをしていたが、次はサマソニのような大規模フェスか、単独でももっと大きな会場になるNickelbackコースを辿るだろう…といい加減な予言をしてライヴレポおしまい。良くも悪くも事前の予想を覆すライヴではなかったが、これから人気も上がってくるだろう、と思わせるものは披露してくれた。

DAAU「Eight Definitions」(2013)

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ベルギー産アコーディオン+クラリネット+ベースのトリオDie Anarchistische Abendunterhaltung、略してDAAUの7th。彼らの作品を聴くのは初めて。

ベルギーのチェンバー・ロックというとUnivers Zeroが頭に浮かんでくるが、冒頭の“1992”のシリアスさに多少共通するものを感じさせこそすれ、全体的にさほど似ている印象はない。続く“Werkende Mieren”はソフトなクラリネットの音色が印象的な、ほの暗さの中に小気味良さを感じさせる曲で、次の“Dansende Mieren”はエレクトロクスを導入したエクスペリメンタルなサウンド。

…と言った風に、ヴァイオリンやチェロ、ドラムといったゲストを迎え、モノトーンな色彩の中で様々なタイプの曲を聴かせる。ダイナミックなドラムを核としたジャズ・ロック色も見せるUnivers Zeroと異なり、DAAUはクラシックや現代音楽方面からのアプローチでチェンバー・ロックを構築しているという印象。

明るい音楽ではないがダークネス一辺倒というワケでもなく、時にシリアス、時にほのぼのとした雰囲気にエレクトロニクスで奥行きを与えている。スッキリしたサウンドが現代的な空気を漂わせていて良い。


DAAU“Werkende Mieren”

Kristoff Silva「Deriva」(2013)

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ブラジルはミナス・ジェライス州出身のミュージシャンを「ミナス派」と呼んだりするそうだが、そのミナス・ジェライス州出身であるKristoff Silvaの2ndアルバムがこの「Deriva」。この人の作品を聴くのは初めて。

ミナス派というのがどういう傾向の音楽を指すのか、ネットで調べてもハッキリとは輪郭がつかめなかったが、「Deriva」を聴くと「繊細」「洒脱」といった言葉がまず浮かんでくる。柔らかい声質でボサノヴァ~ジャズを思わせるメロディをサラッと歌い上げており、はじめはそこにしか耳が行かなかったのでまるでピンと来なかった。

が、インストに耳を傾けると、ふんだんに投入されている電子音がなかなかに刺激的であることに気付く。歌メロだけならこじゃれたカフェでかかっていてもおかしくない雰囲気だが、ソフトな歌モノのアルバムとして機能しつつ、時に深淵を覗いているような感覚を味わえるのが大変面白い。3曲目の“Durantes”ではラストでYes“Heart Of The Sunrise”の一節が。あ、コチラ側の方でしたか。

自分にとってそれまでに出会ったことのない音楽に出会うと「最初の一回目は全く馴染めなかったけど二回目以降、突如としてハマる」ことがまれにある。もういいトシなのでこういう経験は随分ご無沙汰だったが、このアルバムで久しぶりにこの感覚を味わった。オススメ。


Kristoff Silva“Acrylic On Canvas”
この曲はアヴァン色はかなり控えめ。

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