RX「Heliosphere」(2013) 

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石川俊介(ゼノン石川、B)と雷電湯澤(ライデン湯沢、Dr)聖飢魔IIのリズム隊プラス、聖飢魔IIでサポート・メンバーとしてキーボードやアレンジを担当していた松崎雄一(怪人松崎様、Key+Programming)からなるフュージョン・ユニット、RXの5th(ライヴ盤を含めると通算6枚目)。1st「Chemical Reaction」(1991)はオリコン14位とフュージョンとしては異例のヒットを記録し、収録曲はテレビ番組のBGMでもよく使われ(“S.T.F.”は日テレのプロ野球中継で使われていたらしい)、誰の曲かは知らなくても収録曲を耳にした事のある人は意外に多い作品である。「Rare' Xtra」というライヴ盤もリリースされていた。

その後は聖飢魔II解散後に3枚のアルバムと2枚のコンピレーションをリリース、以来リリースは途絶えており、「Heliosphere」は実に11年ぶりの新作となる。前述のようにRXはフュージョンを演奏するバンドで、その中でジャズやファンク、あるいはプログレ寄りに針が振れた楽曲/作品を作っていたが、全ての作編曲を松崎が行った今作は完全にプログレ。それも70s欧州シンフォを範とするそれである。複雑なリズムや重層的な曲の展開、シンセの音色やシーケンスがこう、ソッチ方面の非常に純度が高そうな感じ。これらの楽曲に和田アキラ、宮腰雄基、ルーク篁といったゲスト・ギタリストが華を添えている。

私が積極的に好んで聴くタイプの音楽ではないが、どの曲もかなり良いと思う。宮腰のヘヴィなギターが唸る難解なリズムの“db”が個人的には一番好きかな。このテの音が好きな人には非常にアピールするかも知れない。私が言っても説得力がないなら“From Dawn Till Dusk”に参加したKensoの清水義央がブログに記していた言葉を載せておこう。「曲自体が素晴らしかったので、レコーディングを進めて行くうちに、KENSOの曲を演奏しているかと錯覚するほどの思い入れを持つことができ、ベストを尽くしました。」

ここからはちょっと余談。

RXは活動休止中もデーモン閣下の邦楽維新コラボレーションに「黒船バンド」として参加しており、私は2004年8月に渋谷、あと2007年の2月に神戸で、それぞれ1回ずつ観ている。RXの曲も演奏され、渋谷の時は一噌幸弘の笛と望月太喜之丞の大鼓(おおつづみ)を交えての“S.T.F.”、神戸では福田千栄子(現・栄香)の筝を加えた編成で“信天翁”が聴けたのだがこれが絶品の出来だった。神戸の“信天翁”演奏後に三橋貴風(尺八。この人が邦楽維新コラボレーションのプロデューサー/言いだしっぺらしい)が「RXの曲は非常に高度で、一度彼らに作品を委嘱したい(ついてはスポンサーに心当たりがある人は連絡して欲しい)」と述べていた。

あれから早6年が過ぎたが、残念ながらスポンサーは現れていないようである。RXの歴代作品でも(特に1st)豪華ゲストが多数参加しているが、一度でいいから純邦楽系のミュージシャンを招いてアルバムを1枚作って欲しいと思っている。もしくは邦楽維新コラボレーションでの演奏したRXの曲のCD化。邦楽維新コラボレーションでの演奏は録音されているはず(“The Outer Mission”“鬼”がデーモン閣下のコンピレーションに収録された実績がある)なのでどうにか実現しないものだろうか。



RX“Nothern Lights”ギターは和田アキラ。残り1分のところでF/Oしている。

2013/10/26 Sat. 22:08  edit

Category: CD/DVDレビュー:国内あ

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Friend Roulette「I'm Sorry You Hit Your Head」(2013) 

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ブルックリンを拠点にしているVo(♂),G,Synth+Vo(♀),Vl+Bass Clarinet,Ewi+Per×2という特異な編成の5人組による1st。インディー系にありがちなややモヤッとしたサウンドと60年代のサイケデリックを祖とするような浮遊感のあるメロディの組み合わせ。チェンバー・ポップとかアヴァン・ポップに分類される音だと思う。

このテの音にありがちなほんわかぱっぱした雰囲気が支配的ではあるが、メロディは案外コシがあるし、基本プリミティヴでありながら奇数拍子やエレクトロな16拍子も顔を出すリズム、バンジョーやピアノも現れる多彩なアレンジ等、単なる脳みそお花畑系なだけではない聴き応えのある瞬間も多々あり。

どちらかというとタイトでシリアスな音が好きなのでこういう系統はあまり好きではないのだが、ほのかにではあるがスリリングなところもあり、通り一遍でない部分が私の好みに合ったのかも知れない。1、2回聴いておしまいではない、リピートに耐えうる出来。前述のように結構ヘンテコな編成のグループなのだが、こういう連中にはたまに侮れないのがいるんだよな。


Friend Roulette“On Her Own Tonight”

2013/10/22 Tue. 22:54  edit

Category: CD/DVDレビュー:F

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Alter Bridge「Fortress」(2013) 

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Creedのインスト隊+SlashのVoからなるアメリカン・ハード・ロック~オルタナティヴ・メタル4人組の4th。

国内盤ライナーノーツの中でMyles Kennedy(Vo,G)が「今作ではかつてやったことのないことにもいくつか挑戦していて(後略)」と述べているが、オープナー“Cry Of Achilles”イントロの哀愁漂うアコギ(からダイナミックなパートに繋ぐ展開)や中間の複雑なリズムのセクション、本編ラスト“Fortress”中間の引きずるような疾走パート等、確かに今までになかった側面が随所に見られるようになっている。

重々しいサウンドとフックのあるメロディに上記のような変化球を交えることで、楽曲の幅がグンと広がっている。それが功を奏したか、全12曲63分(本編のみ)という相変わらずの長尺モノながら、聴いていて飽きない。これまでは曲調に変化が乏しく「個々の曲はいいけど長ったらしくてねえ…」という感じで手放しで褒めるのはかなり憚られたが、今回は文句なし。ここに来て王道の風格を漂わせるに至っている。

さらにさらに。Myles Kennedyのヴォーカルがさらなる冴えを見せている。Alter Bridgeの1stで初めて聴いた時は「上手いなあ」というポジティヴな評価と「所詮Scott Stappの代役」というネガティヴなそれがややない交ぜになっていたが、ここまで来ると「驚異的に上手い」としか言いようのないレヴェル。柔らかいウィスパー・ヴォイスからつんざくような高音までなんでもござれ、自由自在。凄いなあ。

最早Creedとの比較は無意味。バンドとして完全に一皮向けた。


Alter Bridge“Addicted To Pain”

2013/10/11 Fri. 21:03  edit

Category: CD/DVDレビュー:A

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Anathema「Universal」(2013) 

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Anathemaがブルガリアの古代劇場で行ったライヴを収録したCD/DVD2枚組。現地のProvdiv Philharmonic Orchestraと共演(余談だがこのオケ、この9月にAsiaとも共演している模様)しており、同作品はこの他Blu-Rayでも発売されている。

K-Scopeらしい豪華なデジパック装丁のジャケット。表紙をめくると表紙裏のプラスチックトレイに鎮座しているのはDVD。ここで「おや?」と思った。普通、CDとDVDのセットだったらここにセットされているのはCDであるのが常だから。

まずCDを聴く。しょっぱなの“Untouchable、Part 1”出だしでギターのリズムが怪しい。ドラムのフレーズがスタジオ盤に忠実でない。演奏力を売りにしているバンドではないのでそれが決定的なマイナスポイントになるワケではないが、CDの限度いっぱいに収録された楽曲群を聴き通しても「ふーん」ぐらいにしか思わなかった。

が、これがDVDだと様相が一変する。DVDなので音の立体感がまず違うというのもあるが、スモークやライティングと相俟って雰囲気ありすぎな古代劇場のステージ上で躍動するLee Douglas(Vo)をはじめとする「ここ(古代劇場)でこうしている(オーケストラと共演)ことが嬉しくてたまらない!」といった風情のメンバー一同を見るに及んで、この作品は映像込みのDVDこそがメインであり、CDがオマケであることを悟った。だからDVDがあの位置で、CDが裏表紙側のトレイにセットされていたんだな。収録時間の都合でCDに入っていない曲も結構あるし。

本編の3分の2を「We're Here Because We're Here」(2010)「Weather Systems」(2012)収録曲で埋め尽くしたセットリストからは近作に対する自信が窺えるし、実際、オーケストラとの相性も非常に良い。冒頭の“Untouchable, Part 1”~“Untouchable, Part 2”の流れであまりの美しさやポジティヴなエネルギーにあてられて、不覚にも落涙しそうになった。これはイイぞ。極上の出来映え。

敢えてケチをつけるところがあるとするならそれは観客。オマエらにリズム感というものはないのか。


Anathema“Untouchable, Part 2”

2013/10/03 Thu. 21:42  edit

Category: CD/DVDレビュー:A

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