非思量

Brother Ape「Force Majeure」(2013)

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スウェーデン産トリオの6th。とりあえず今「オススメは何?」と訊かれたらNik Bärtsch's RoninとDiablo Swing Orchestra、そしてこのBrother Apeを挙げることにしている。問題は「オススメは何?」と訊かれる機会が皆無なことだ。

で、新作「Force Majeure」。短めのイントロに続くタイトル・トラックがいきなりインストという意表を衝く展開を見せるが、全体を覆うメロディは前2作(「Turbulence」(2009)及び「A Rare Moment Of Insight」(2010))よりも温かみを帯びているというか、人懐っこくなった。口笛が鳴り続ける朗らかな“Doing Just Fine”や、見晴らしの良い景色を思わせる爽快な“Life”等、より広い層のリスナーを取り込めそうなキャッチーなメロディを持つ曲が多い。

3rd「Shangri-La」(2006)路線への回帰と取れなくもないが、「Turbulence」「A Rare Moment~」で確立した、シャキシャキしたタイトなリズムのアプローチもしっかり継承、モロに90125YesだったりGenesisだったりU.K.だったりしている部分があった「Shangri-La」とは異なり、(そのヘンの音楽性もしっかり咀嚼、消化しつつ)オリジナリティのあるサウンドに纏め上げている。前作「A Rare Moment~」を聴いて「ここがこのバンドの頂点だな」と思った(ただ、個人的には全体的にジットリした感触の「Turbulence」の方が好みだったりする)が、この「Force Majeure」こそがバンドの目指していた頂なのかな、という感じも受けないではない。

しかし、この売る気があるとは思えない(というか、こういう音を出しているとは想像できない)ジャケットは何とかならんもんか。バンド名にApeという単語を含んでいるからサル、というのはまあ、わかるのだけれど。メタル色希薄、ストリングスあり、タイトなリズム、繊細なヴォーカル、キャッチーな楽曲。音楽性が大きく変わったワケではないが、前作とは少し違った視点で聴くと良いかも。ハマれば中毒性は高い。


Brother Ape“Life”

Soilwork「The Living Infinite」(2013)

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約2年半ぶりとなる9thは堂々2枚組での登場。国内盤はコスト削減のためか、今時珍しい分厚いプラケースで発売。それでも3,800円する。地元のレコード屋にカネを落とすためだけに国内盤を買っているようなもんなんだが、安い輸入盤が気軽に買えるこのご時勢、なんだかなあ、という思いは拭えない。

前作「The Panic Broadcast」(2010)で復帰したPeter Wichersが再度脱退している。ライナーノーツによると、脱退の理由はありていに言えば「経済的事情」らしい。1枚目40分+2枚目44分という「お前はKate Bushか」と突っ込みたくなるような贅沢な構成の2枚組を作れるバンドにして家族を養えるかどうか心配しないといけないような経済状況なのだねえ。

カネの話はともかく作品の中身だが、Wichers脱退で心配された楽曲クオリティの低下は感じられない。1枚目がブルータルなスタイル主体、2枚目がエピックなテイスト寄りとされているが、ブルータリティ&ヘヴィネスとキャッチーなメロディが程よくブレンドされたSoilworkらしさは2枚を通して一貫されており、曲作りの手腕は円熟の域に達しつつあると言ってよい。収録曲はいずれもコンパクトだが尺の長い曲に負けないスケールの大きさがあり、中身は濃い。

私にとって、Soilworkはデス・メタル云々以前にポップなメロディを味わいたくて買っているという側面が強いのだが、今作も(良くも悪くも)大きな変化はないのでやはり聴いていて安心できるし、新参者が初めて手にするアルバムとしても「The Living Infinite」は良いチョイスだと思う。前作で違和感があったドラムのサウンドもOK。2枚組と言っても前述のとおり1枚ごとの演奏時間は短いのでさほどダレる感じもない。なかなか良いのではないかな。

個人的にはメロディに愁いをにじませた“Tongue”“Whispers And Lights”“Antidotes In Passing”あたりがお気に入り。特に“Antidotes In Passing”はほとんどグロウルが登場しない珍しいナンバー。地味でメロウなミッド・テンポの曲に目がない私の心を鷲掴み。デス・メタルとしてのSoilworkを愛する人には捨て曲以外の何物でもないかもしれないが、Björn“Speed”Stridの表現力の豊かさが伺える佳曲だと思う。


Soilwork“Spectrum Of Eternity”

Doimoi@大阪Live Space Conpass(2013.3.2)

Doimoiが3rdアルバム「Materials Science」(2012)のレコ発ツアーで大阪に来ることを知り、彼らを観られる機会というのもそうそうないだろうと思い、観に行ってきた。この会場、以前は鰻谷Sunsuiて名前でしたよね?5年ほど前、Sleeping Peopleのライヴを観に来たことがある(けど前座の時点で結構遅い時間になって、本命のSleeping~は観られなかった)ぞ。まさかここに再訪する日が来るとは。

前座で3組出ていたが、前の晩あまり眠れなかった上に当日昼間に阪神競馬場に突撃してフルボッコにされてヒットポイントが減っていたため、ロビーで椅子に腰掛けて酒をチビチビやっていた時間が長く、実はあまりちゃんと観ていない。すいません。ただ、3組目のVo兼アコギ+電気アップライトB+Dr+Key兼シェイカー兼木琴兼「先日ヤフオクで落札した(MCより)」鉄琴の4人組、キツネの嫁入りはその一般的なロック・バンドのフォーマットから逸脱した編成、Voのインタープレイ、奇数拍子の使い方等がプログレ者の琴線に触れるもので良かったと思う。

さてメインアクトのDoimoi。最初の一音で会場の空気を変えてしまう。とにかく音がデカい!轟音ステキ!轟音Rulez!特にベースの音、ありゃ何じゃろか。バスドラとシンクロしている時の「腹に響く感」が尋常ではない。昨年手術した腹の傷跡を抉られるようだった。ドラムの切れ味もかなりのもの。“円群”のイントロでは鳥肌が立った。リズム隊が良ければ演奏のクオリティは保障されたも同然。Genesis「The Lams Lies Down On Broadway」のTシャツを着た杉山明弘(G)のヴィジュアル込みでのストイック&ソリッド感や、歌い終わったら血管が破裂して事切れるんじゃないかというぐらいの絶唱を聴かせる二村泰史(Vo,G)のアツさも相当なものだった。Vo、この轟音の中で埋もれることがないんだから大したモンである。

曲目は「Materials~」全曲再現プラスアンコールで旧譜から3曲。前述の通り演奏は文句なし。ついでに曲が終わって次の曲が始まるまでに間が空いたときも杉山がギターで常になにがしか音を出し続けていて気の抜けた状態を作らないようにしていたことや、英語と外国人風カタコト日本語を交えた杉山のMCが面白い(そしてMCの間、何故か他のメンバーは決して杉山の方に視線を向けようとしない)のも良かった。豪放なサウンドの裏にある細やかさが印象的な、「フィールズ グッド、ヨイデス」なライヴだった。手軽なチケット代で気持ちよく轟音のシャワーを浴びたい方、お近くにDoimoiが来た際は是非。

Marillion「Radiation 2013」(2013)

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最新作「Sounds That Can't Be Made」(2012)が好評を博しているMarillion。昨年「Sounds~」が出るまで、国内盤がリリースされた最後のスタジオ・アルバムだった「Radiation」(1998)がMichel Hunterによるリミックスの上、Stewart Everyのオリジナル・ミックスとの2CDセットで今年リリースされた。

EMIからドロップされた90年代中盤以降のMarillionは、ブリティッシュ・ロックの体裁を保ちつつジャンルや時代の壁を飛び越えんと冒険を続けている感がありそれは今も続いているが、「Radiation」はそれまであまり前面に出ることのなかったファルセット・ヴォーカルやブルーズ調の曲がフィーチュアされており、こう言ってはナンだが全カタログ中最も「新しい道を模索中」といった風情が漂う作品である。

そういう印象をより強めていたのが当時台頭していたRadioheadに通ずるドライで抑制された部分と、ジトッとした煮え切らない部分が同居したサウンドだが、リミックスではそこが大幅に改められている。具体的に言うと全体的にラウドかつクッキリした音になり、特にギターとキーボードが非常に目立つようになった。イントロ的小曲“Costa Del Slough”を経て2,3曲目の“Under The Sun”“The Answering Machine”というハード・ロック・ナンバーにおいてその効果は顕著。特に後者はライヴ・アルバム「Anorak In The UK Live」(2002)の「スタジオ盤もこんな感じだったら良かったのに」と思った豪快なヴァージョン(EMI盤には未収録で、Intactからリリースされた2枚組にのみ収録されている)に雰囲気が接近しており、なかなか良い。

“Now She'll Never Know”のアコギもより哀愁を帯びた響きになっており、いいことずくめ…と言いたいところだがリミックス盤にも瑕はあって、その際たるものは“Costa Del Slough”の冒頭約30秒や、“Cathedral Wall”のラスト1分がバッサリカットされていること。音像の変化も相俟って、アルバムを取り巻く空気がすっかり変わってしまっている。かつてDave MustaneがMegadethの諸作品に手ずからリミックスを施して再発したことがあるが、私の好きな「Risk」(1999)が必要な装飾までそぎ落としていわく言いがたい出来になっていたのとやや印象が被る。ラストの“A Few Words For The Dead”の静謐かつ神秘的なイントロも、神秘的というよりストレンジなムードになっており、やや違和感が残る。

タイトルの後ろにわざわざ「2013」とつけていることからも分かるように、これは単なるミックスのやり直しではなく「Radiation」の2013年における再解釈、なのだろう。そう考えればオリジナル盤がついているのも納得できるし、慣れればラウドなサウンドと良質な楽曲に身を任せるのが心地よくなってくる。ソング・オリエンテッドな作風なので比較的とっつき易いし、「Sounds~」でMarillionに初めて触れて興味を持った人が次に買う作品としては良いチョイスになり得ると思う。

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