Mr. Gil「I Want You To Get Back Home」(2012) 

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以前、ポーランドのBelieveというバンドを紹介したことがあるが、そのBelieveのメンバー6人のうちMirek Gil(G)、Karol Wróblewski(Vo)、Konrad Wantrych(Piano)にチェロ奏者のPaulia Druchを加えた4人編成のプロジェクトがMr. Gilである。この作品で4枚目らしい。

ジェントルなチェロとピアノのアンサンブル、控えめなアコギ、Believeとはまるで異なる表情を見せるVo、時折スッと現れるエレキ・ギターやシンセ。これらが一体となってしっとりとした柔らかい手触りの音楽を奏でている。全編これ「繊細」という言葉を音で表現したような感じで、特にVoはBelieveを知る身としては「こんな風にも歌えるのか」と驚くことしきり。1曲目“Time”では「あこがれ」(1993)の玉置浩二と見紛うような瞬間も。

リーダーの出自が元Collageというマニアックかつニッチなものなのでなかなか広い層の耳には届かないかも知れないが、派手さこそないものの聴き手にそっと寄り添うような優しい音色と楽曲が非常に魅力的で、ひょっとしたら今年一番のオススメ作になるかも知れない。音楽的には同じ方向を見ているワケではないが、The Reign Of Kindoのメロディが持つハートウォーミングな部分に魅かれている方、Mr. Gilはいかがでしょう。


Mr. Gil“Our Shoes”

2012/10/24 Wed. 20:29  edit

Category: CD/DVDレビュー:M

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Nik Bärtsch's Ronin「Live」(2012) 

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Nik Bärtsch(ニック・ベルチュ。Baertsch、Bartsch) 率いるスイス産ミニマル・ミュージック・クインテットの新作は2枚組のライヴ・アルバムである。いきなり余談だがNik Bärtsch's Roninは2003年にも「Live」という名義のライヴ盤を発表しているので、購入の際は注意されたい(公式サイト内のショップからなら間違えることもないだろう)。

音源は2009年~2011年の間に東京を含む様々な都市で録音されたもので、1st「Randori」(2002)から最新作「Llyrìa」(Llyria)(2010)までの各アルバムより満遍なく選曲されている。2003年発の「Live」にのみ収録されている“Modul 17”が、今回のライヴ盤で再び選ばれているのは興味深い。

2006年と2009年の2回、彼らのライヴを観ている(ということは東京で録音された“Modul 17”の現場に私はいた可能性があるんだが、公演は複数回あったうえに色々あってライヴレポは書いてないしセットリストも不明なので、実際のところはわからん)。両公演に共通して感じたのはベーシストの異様なまでの存在感(2006年の時はピアノ+ドラム+ベースというトリオ編成だったので余計に)。Baertschが提唱する「Ritual Groove Music」又は「禅ファンク」、まあ、ジャズの皮を被ったファンクとでも言いましょうか、Baertschの理念を体現しているのがBjörn Meyerだったのではないか、と感じた。

で、そのベーシストが脱退してしまったのですよ。おおお…。お別れだからというワケでもなかろうが、ベースが結構目立っている。この辺りはライヴの雰囲気を上手く捉えていると思う。見所はベースに留まらない。スタジオ盤と見紛うほどに統率された演奏、それでいて失われていないライヴ感、オリジナルとのアレンジ違い、等々。新ベーシスト、Thomy Jordiが演奏した“Modul 55”もラストに収録されているがコチラはベースがあまり前面に出てこない曲で、彼の実力は未知数。そういえば、パーカッションのAndi Pupatoも脱退してしまったらしい。見たこともないような、楽器なのかどうかすら判然としない物体を持ち込んで(楽器を自作することもあるらしい)サウンドに彩を添えていただけに、こちらも残念。このライヴ盤には全面参加しているので、長く続いたラインナップの終焉を噛みしめるように味わいたいところ。オススメですよ。

2012/10/17 Wed. 20:34  edit

Category: CD/DVDレビュー:N

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Devin Townsend Project「Epicloud」(2012) 

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DTP名義としては5th(The Devin Townsend Project名義の「Accelerated Evolution」(2003)を加えれば6th)で、「Deconstruction」(2011)から約1年ぶりとなる新作。合間にライヴ盤も発表しているので、復帰後の活動はなかなかに活発である。YouTubeでチラ見した限りにおいては、リタイア前の数年はボロボロだった喉の調子も良さそう。

中身はいつものDevin節。ダーク・サイドではなくブライト・サイドのほう。ゴスペル風のクワイアに導かれて始まるこのアルバムは、分厚いサウンドと時々唸りを上げるギターやツーバスがこの作品がメタルであることをアピールするものの、スピード感のある曲は少なめでミッド・テンポが中心。フックのあるメロディをこれでもかと繰り出しつつ、流れるように進行していく。「Physicist」(2000)に収録されていた“Kingdom”のリメイクが流れてきたときはハッとしたな。

Anneke Van Giersbergenが参加していることもあり、近年の作品では「Addicted」(2009)に近い雰囲気も持つがあそこまでハイテンション一辺倒ではなく、「Ghost」(2011)のような静謐な表情を見せる瞬間もある。だから作風としては「Biomech」(1997)の方がより近いと言えるかも知れない。AnnekeはほとんどメインVo扱いだった「Addicted」の時と異なりバッキングVoとクワイアの一員としての仕事がメインだが、基本的に「陰」な声質のDevinをよくサポートしており存在感は抜群。良い働きをしている。彼女の声が気に入った方は今年出た彼女のソロ「Everything Is Changing」がオススメ。

Devinの作品で私が好きなのは「Accelerated Evolution」「Addicted」というどポップな2枚なのだが、「Epicloud」も各楽曲のキャッチーさは前期2枚に劣るものの、メロディの質という意味ではなかなかいいセンをいっている。良い作品。ちなみに私が購入したDeluxe Editionには「Epiclouder」と銘打たれたデモ音源を収録したボーナス・ディスクが付属されていて、このデモ音源はシンプルな音で素のメロディの良さを味わえるもの。あくまでデモ・レヴェルの音質だからマニア向けだが「たまにはこれぐらい肩の力が抜けた作品でもいいんじゃない?」と思わないこともない。

2012/10/10 Wed. 22:49  edit

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