Fleur「Probuzhdenie」(2012) 

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ウクライナ産、女性Vo×2を擁するユニットの、多分7th。ロシア語(ウクライナ語かも)表記だとFlёur「Пробуждение」。

2人のVo、片割れは大人びた美声を持ち、もう一方はあどけなさが残っている。曲によって明確に2人を使い分けている(2人のハーモニーというのは、使われてはいるのだろうがあまり目立たない)が、それより何より徹底的に愁いを帯びた泣きメロに焦点を当てた(明るい曲が1曲もない)楽曲群が非常に優れている。捨て曲はないと言ってよい。かつて旧ソ連のポピュラー・ソング(所謂ロシア民謡)が日本に浸透していたこともあり、どうにも昔の日本歌謡曲との類似性を感じずにはいられない。同じようなことをRokashの時にも書いたが、ハードさの薄いFleurのほうがより強い近似性を感じる(かなりニッチな見方だがかすかなエロを感じさせるところとか、特に)。

歌を引き立てるバックの演奏も、ピアノや各種管弦楽器、あるいはシンセ等が派手さはないものの歌を効果的に引き立てている。クラシカルだったりフォークっぽかったりするが土台のリズム隊がこれまた派手ではないが意外と存在感があり、Voが揃って歌い上げるタイプなこともあってロック色も強い。いずれにせよ全編これ哀愁溢れるほの暗いメロディの詰め合わせ状態。なかなかに凄いです。

Flёur“Оборвалось”(試聴ページに飛びます。あどけなさ担当のELENAがVo。物憂げ担当のOLGAの曲共々、作品全編がこのレヴェルのメロディで埋め尽くされております)

2012/07/25 Wed. 23:06  edit

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Anneke Van Giersbergen「Everything Is Changing」(2012) 

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オランダの歌姫Anneke Van Giersbergenの新作。The Gathering脱退後、彼女がメイン・シンガーを務める作品は4枚目となるが、Agua De Anniqueというバンド名義だったり、彼女の名前の後に「& Agua De Annique」「with Agua De Annique」とつくなど、その音楽性も含めて変遷が激しく、純然たるソロ名義としては1stとなる。

シンプルというか素朴なロック・アルバムだった前作「In Your Room」(2009)から再度音楽性は変わっており、ハッキリ言ってしまえばThe Gatheringの「How To Measure A Planet?」(1998)「If_Then_Else」(2000)あたりを髣髴させるトリップ/アンビエント/オルタナティヴ路線への大胆な回帰が見られる。バックの音はかなりハードに響き、結果としてAnnekeのVoも熱を帯びたパワフルかつ艶やかなものになっており、コケティッシュであったりエレガントであったりワイルドであったり、様々な表情を持つ彼女の声の良さが引き立つ作品になっている。

曲がまた良い。前向きなムードを振りまくオープニングの“Feel Again”のようなロック・ナンバー、しっとりとしたピアノ×ストリングスのバラード“Circles”、メランコリックなメロディの洪水であるハード・ロック“My Boy”、内省的なアンビエント・メタル調の“1000 Miles Away From You”等々、曲調が多彩な上にどれも一定以上のクオリティを保っているので逆にアルバムの焦点が絞りづらい、という贅沢な欠点も。いや、最初はそう思ったけどやはり“My Boy”がこのアルバムのハイライトかな。

Agua De Annique名義の「Air」(2007)とその次のアコースティック作品「Pure Air」(2009)、そして「In Your Room」までの変遷はアイデンティティの迷走と取れなくもないが、ようやく本来の魅力を取り戻した感がある。オススメ。Devin Townsend Project「Addicted」(2008)で彼女に興味を持った方も、是非。


Anneke Van Giersbergen“Take Me Home”

2012/07/13 Fri. 23:47  edit

Category: CD/DVDレビュー:A

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今沢カゲロウ「Superlight」(2012) 

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日本人ベーシスト、15枚目のアルバム。

眩いばかりのキャッチーさで駆け抜けるトランス/エレクトロニカ方面のアルバムだった前作「Hansa」(2011)発売から僅か10ヶ月での新作リリースと相成ったが、いつものように音楽性はガラッと変わっている。

「ヒップホップ/黒人音楽寄りの方向性」(公式サイトより)だそうで、ジャズ、ソウル、ファンク、R&B、ヒップホップ、ハウスといった黒人音楽をことごとくスルーしてきた私がこのアルバムを語ろうとすると一気に厳しさを増してくるが、短いフレーズ/メロディを執拗に反復させるハウス・ミュージックに接近した音、と解釈している。同一フレーズの反復というスタイルは「Snatch!」(2003)以前のアルバムで見られたスタイルであり、ある意味回帰とも言えるが、出てきた音は私が所持している「Psybass Metaloop」(1999)以降のどのアルバムにも似ていない。

決定的に過去の作品と異なるのは、音の聞こえ方が立体的になっていること。彼の作品に対する私の印象としては、曲調がどうであれ、空間をビッシリ埋めた平面的な音の壁が迫ってくるというか、とにかく「音そのもの」を聞かせるイメージだったのだが、「Superlight」は音の隙間であるとか、あるいは奥行きを強く意識させる仕上がりになっている気がする。言い換えれば、今までとは全く異なる気持ち良さを味わえるアルバムである。こう来たかー。

作品の出来不出来と直接関係のある話ではないが、「Hansa」と続けて聴くと、アッパーな「Hansa」から比較的落ち着いた色調の「Superlight」への流れが結構イイ感じだったりする。ラニング・タイムも2枚併せて約52分と、これまたちょうどいい具合。

2012/07/06 Fri. 22:34  edit

Category: CD/DVDレビュー:国内あ

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Robert Fripp / Andrew Keeling / David Singleton「The Wine Of Silence」(2012) 

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King CrimsonのRobert Frippが過去に発表したサウンドスケープスの曲を採譜しリアレンジの上、Adrian Belewとも共演した経験のあるThe Metropole Orkestが演奏したものを録音、再構成したアルバム(よってFripp本人はこの作品では一切演奏していない。KeelingとSingleton両名も演奏はしておらず、それぞれアレンジャー/共作者、プロデューサー/共作者として名を連ねている)。

サウンドスケープをご存じない方のために一応説明しておくと、2台のディレイを用いてループ・サウンドを作り出し、そこへ更に自身の演奏を重ねていくという、言わば自分との共演をするためのシステムである。ヴィジュアルやその他の構成要素についてはコチラを参照されたい。

サウンドスケープのアルバムは、King Crimson等のロック・バンドでFrippが聴かせる凶暴さを伴うプレイとは全く異なり、ロング・ディレイを利用し、ギター・シンセを用いた眩いばかりの光を放つサウンドを幾重にも重ねた、抽象絵画的な音世界を描いている。下にはったYouTubeを聴いていただければわかるが、非常に、こう、催眠作用のある音でして。私は2006年にPorcupine Treeが来日した際の前座として帯同したFrippがサウンドスケープによるパフォーマンスを行ったのを生で見ているが、少なめに見積もっても客の2割はFrippのパフォーマンス中、ずっと舟を漕いでいたぞ。

サウンドスケープのアルバムを暗闇の中で流して睡魔の訪れに身を任せるのも良いが、音そのものはピンと張り詰めたような荘厳な空気を帯びている。The Metropole Orkestの総勢50名以上の演奏を録音した本作においてもその荘重さは引き継がれ、特にレクイエム詠唱や典礼用聖歌が新たに加えられた“Miserere Mei”“Requiescat”は、サウンドスケープ曲のオリジナルから大きく姿を変えた結果、元々持っていたクラシック~現代音楽的な色合いを更に増すことになっている。

重厚で、威厳のある作品だと思う。難解だし聴き通すには少しばかりの忍耐がいるかも知れないが、たまにはこういう音に耳を傾けてみるのも良いのでは。ラストの“Pie Jesu”を聴いていると心の底に溜まった澱(おり)が洗い流されていくよう。


参考:Robert Fripp"Midnight Blue"
アルバム「A Blessing Of Tears」(1995)より。「The Wine Of Silence」収録曲の1つとしてこの曲が選ばれている。

2012/07/04 Wed. 23:58  edit

Category: CD/DVDレビュー:R

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