非思量

Rush「Clockwork Angels」(2012)

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カナダの至宝、通算19枚目。米ビルボードで2位を記録、デビュー38年目にして「Counterparts」(1993)と並ぶ過去最高のチャート・アクションを記録している。

私がこのアルバムの収録曲で一番最初に耳にしたのは“Headlong Flight”だった(既にYouTubeに上がっていた“Caravan”“BU2B”は敢えて聴かないようにしていた。ちなみに“Headlong~”は誘惑に負けて公式PVをつい見てしまった)。高音域も積極的に活用したVoや「Snakes & Arrows」(2007)にはなかったつんのめるような疾走感がかつてないほどに70年代のRushを感じさせる曲で「こんなのばかりだったらイヤだなあ」と正直思ってしまった。いやこれはこれでいい曲だけど、70年代のRushてVoから何から全部がキンキンしててどっちかっつーと苦手なのよ。

実際にアルバム1枚を通して聴いてみると、枯淡の境地を感じさせた「Snakes & Arrows」と異なり、全体が溢れんばかりのエネルギーに満ちている印象。このエネルギーがエッジの立った70年代の彼らを想起させているのかもしれない。曲調そのものはここ20年ほどのRushのフォーマットの延長線上にあり、取っ付き易いキャッチーなメロディは「Roll The Bones」(1991)「Counterparts」、穏やかな光を放ちつつ時に見せる、手で捏ね繰り回したようなトリッキーな曲の展開は「Test For Echo」(1996)を思い起こさせる。この頃のRushが一番好きな私にとっては非常に好ましい作風。そしてこの時期の作品にやや欠けていた(時代のせいもあろう)パワフルな感覚が加わり、またバンドとして新たな扉を開いた感がある。

「Snakes & Arrows」の時に「このままゆっくり老いていくのかな」と思ったがなんのなんの。このオッサンたち、まだまだやる気だ。若いバンドが裸足で逃げ出しそうなテンションの高さが素晴らしいタイトル・トラックが今年のNo.1チューン候補であります。Rush様の妙技を味わえ。


Rush“Headlong Flight”

Gotye「Making Mirrors」(2011)

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ベルギー生まれ、オーストラリア育ちのSSW、Gotye(ゴティエ)の3rd。昨年オーストラリアでリリース、今年に入って米英でリリースされるとシングル"Somebody That I Used To Know"が大ヒット、両国でチャート1位を獲得したモンスター・アルバム(本国オーストラリアや欧州各国でもチャート1位を獲得している)。たまたまMTVにチャンネルを合わせたらこれが流れていて、なんとなく惹かれるものがあって購入。

その声質はStingやPeter Gabrielと比較されることが多いそうだが、まさに"Somebody That I Used To Know"を聴いた時にPeter Gabrielが私の脳裏をよぎった。勿論声もそうなんだが、装飾を削ぎ落としたシンプルな音像が初期のソロ・アルバムに通ずる雰囲気を持っているように思えたのだ。こういう音が近年の流行なのか?私にはわからないが、Peter Gabriel「II」(1978)やRobert Fripp「Exposure」(1979)、あるいはAndy Summers & Robert Fripp「I Advance Masked」(1982)といった、派手さの少ない、内向きなサウンドとの類似性を強く感じる。

ヴィンテージ・レコードからサンプリングした音や古いオルガンを積極的に使用しているそうで、それがさらにレトロというか、今っぽくない雰囲気に繋がっているのかもしれない。それでいて古臭い懐古趣味とは一線を画した音。楽曲はよく言えば多様、悪く言えばとっ散らかっていて"Somebody That I Used To Know"で辛うじてアルバムが締まったものになっている印象もあるが、アルバム全体としても聴いていて「なんとなく惹かれる」不思議な魅力を持っている。

とは言えこれが欧米で大ヒットするとはねえ。サマソニに来るらしいがさて日本ではどうか。Adeleよりさらに日本ウケしなさそうな気がするんだが。


Gotye"Somebody That I Used To Know"
日本の公式PV。親切な訳詞つき。

Geoff Tate脱退(?)によせて。

私が入院している間に何してるアルか!

Queensryche Parts Ways With Geoff Tate

こちらは日本語の記事。

…要はGeoff Tateがバンドから追われた、ということらしい。Geoffの後任はCrimson GloryのTodd La Torreなる人物。うーん、知らない。まあ私が知らないのはどうでもいいことだが、最初はGeoff以外のQR組+ToddがRising Westなるバンド名でQRの最初の5枚(「Empire」まで、ですな)の曲を演奏していたそうで。元々QRというバンドは私にとっては「Geoff Tateの声ありき」な上、その5thまでを愛するファンがこぞって忌み嫌う「Promised Land」こそ最高傑作だと思っているので、今の流れだと「ヴォーカル変わってるし初期の作風に戻りそうだし」で、バンド名が何であれ、少なくともLa Torreがいる方の音源を聴くことはないだろうなあ…。「Promised Land」路線のエキセントリックかつディープな曲なんて絶対ないだろ。


Queensryche"Out Of Mind"

一方のGeoff。近年は高音がどんどん出なくなって、YouTubeで最近のライヴ映像を確認したところ、遂に一部の曲でキーを下げるに至った模様。もうメタル・シンガーとしての寿命は尽きている感がある。だから1stソロのようなモダン・プログレ路線でゆるゆるとやっていけばいいのではないかな。私はあのアルバムは好きだったし、少なくとも高音域を多用せず無理なく歌えば今でも超一級のシンガーなので、アルバムが出たら応援するよ。


Geoff Tate"Helpless"

それにしても、バンドの公式サイトやフェイスブックにおいてこの件に関するアナウンスはなし(6/24現在)、どうもキナ臭いというか、この後「バンド名の所有権を巡って泥沼の裁判開始」という道筋が見えてしまうワケですが。リンク先には新しいVoを迎えたバンド・ショットが公開されているけど、公式サイトではどこにもないというね…。つかParker LundgrenてGeoffの娘婿じゃなかったっけ?追い出す側に回って大丈夫なんでしょうか。

Anathema「Weather Systems」(2012)

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退院しました。これからもよろしくお願いします。

予告どおり復帰一枚目は英国産元デス・メタル、現モダン・プログレ・バンド、Anathemaの新作。

2008年に「Hindsight」をリリースするまで長期間作品をリリースしない時期があったが、「We're Here Because We're Here」(2010)、旧曲をリアレンジしてオーケストラとの共演に仕上げた「Falling Deeper」(2011)から3年連続で作品をリリースしていることになり、彼らを取り巻く状況がかなり良いのだろう、作品の中身もリリース・ペースの勢いそのままの充実ぶりを見せている。

ジャケットのイメージからしてそうだが、明確に「We're Here~」からの、攻撃性は控えめでウェットな響きを湛えた英国モダン・プログレ路線を堅持しており、全体的な構成も似ている気がする(特に前半4曲の畳み掛けてくる感じとか)。ポジティヴな光を放つ前半、鬱々とした感覚を増す後半共々、今までと較べると高音域も多用しているメロディはさらにドラマティックというかナルシスティックというか、とにかくマイルドな音像でコーティングされた過剰なウェットさに磨きがかかり、「We're Here~」で後半ちょっぴりダレ気味だった部分もかなり改善されている。

個人的には、アルペジオを従えて湿り気を帯びたメロディが緩やかに疾走するオープナーの"Untouchable Part 1"とそれに続くドラマティックなスロー・チューン"Untouchable Part 2"が一番好きだが、後半の愁いを帯びた展開に浸るのも心地良い。着実な前進を見せた快作と言えよう。国内盤がリリースされなくなって久しいが、いいなあコレ。


Anathema"Untouchable Part 1"

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