Steve Hogarth & Richard Barbieri「Not The Weapon But The Hand」(2012) 

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MarillionのSteve Hogarth(Voice/Words)とPorcupine TreeのRichard Barbieri(Music)の連名でリリースされたアルバム。Dave Gregory(G,B)らがゲストで参加している。

Barbieri(Gregoryも)はHogarthのソロ「Ice Cream Genius」(1997)にも参加していたので、今作の作風がその延長線上に来るであろうことは容易に想像がついた。問題は「Ice Cream~」のどの曲に近い方向へ向かうか。個人的には"Nothing To Declare"のような「空から降り注ぐようなシンセと荘厳なヴォーカル」を期待していたのだがこの期待は空振り。ビートの効いた曲調も排除され、内省的なサウンドは深海の淵に沈みこむかのごとき深化を見せている。

Barbieriの2ndソロ「Stranger Inside」(2008)に通ずる、澄んだ音も猥雑な音も透明なコーティングで包み込んだようなモノクロームの世界を、Hogarthの声が波間に揺らめくように漂う。全8曲中、唯一"Only Love Will Make You Free"こそ僅かに熱気を感じさせるものの、極めて繊細なタッチのオープナー"Red Kite"から、どことなく雑然とした"Crack"まで、一貫してひんやりとした触感。

HogarthとBarbieriの嗜好を目一杯突き詰めたような作風で、率直に言ってわかりやすいとは言い難い。丁寧にトリートされたサウンドの流れに身を任せるようにして聴くのがよろしいかと。とは言え2人ともさすがはヴェテラン、ゆったりした流れに埋もれがちだが曲そのものは多彩で、出来も良い。ハマればハマるディープな1枚。

2012/02/28 Tue. 21:36  edit

Category: CD/DVDレビュー:S

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Portico Quartet「Portico Quartet」(2012) 

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ロンドンで結成されたSax+Dr+B+Hang Drumからなる4人組の、多分3rd。Peter Gabrielが設立したReal Worldからのリリース。

ツイッターでこのバンドについてツイートしているフォロワーさんがいたのでYouTubeで音源を探して聴いてみたところ、クールな風情を漂わせた、割とオーソドックスなジャズ・ロックという印象。これはこれで悪くないと思い新譜を購入したのだがどうやら私が聴いたのは旧譜の曲だったようで、このアルバムではガラッと様相を変えてきている。

メンバー全員にエレクトロニクスやシンセのクレジットがあり、ソッチ方面のサウンド導入にかなり積極的。シーケンシャルなリズムを軸に、冷たい感触を持つ様々な音が浮かんでは消えるような、幻想的な音楽を奏でている。なんだろうなあ、これ、結構不思議な雰囲気。蜃気楼のような儚さを感じさせつつ、音の1つ1つに確固とした存在感がある。

ハング・ドラムなる楽器を初めて知ったが、近年開発された歴史の浅い楽器だそうで、スティールパンに似た響きの、音階を持つ打楽器である。詳しくはコチラを参照されたい。扱いとしては他の3人と同格で殊更大きくフィーチュアされているワケではないが、"Rubidium"ではリズムの核の1つを担っており、独特な空気の創造に一役買っている。

初見から想像したのとは随分印象の異なる作品だったが、コチラのほうがオリジナリティの高さも含めて遥かに良い。オススメ。是非部屋を暗くして聴いてほしい。

Portico Quartet"Ruins"

2012/02/22 Wed. 23:29  edit

Category: CD/DVDレビュー:P

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Kraftwerk「Trans Europe Express」(1977) 

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私がKing Crimsonをはじめとする(他の4つのバンドを敢えて出していないのは、マトモに聴いていないからです)英国の大御所以外のプログレ魔境に足を踏み入れた瞬間というのは、以前Marillion「Seasons End」レビューでも書いた、埼玉のK君の家に遊びに行った時。この時にどこかの書店で手に入れた「ヤング・パーソンズ・ガイド・トゥ・プログレッシヴ・ロック」(音楽之友社)を購入した瞬間、私は魔境の泥沼に足を踏み入れたのである。

英独伊仏米日その他の国の様々なスタイルのプログレ作品が紹介されていたが、その本を読んで興味を持ったいくつかのミュージシャン、グループの中の1つが今回紹介するKraftwerkである。一般的には「テクノ」の括りで語られるグループなので、この本に出会っていなかったらこの時期に辿りつくことはまずなかったと思う。そもそもテクノがプログレの文脈で語られることがあるということ自体、知らなかったのだから。

残響音をカットした電子音によるパーカッション、無機質なヴォーカル、最小限の歌詞と単純なメロディの反復で構成された音楽は「テクニカルでハード」という「当時の私にとってのプログレの定義」とは正反対と言っても良いもので、装飾音もシンプルかつ最小限なものに留められ、当時の私にとっては初めて耳にする、異質そのものな音世界だった。

しかし次作「The Man Machine」(1978)が私の耳には完全に「テクノ」に聞こえて最早受け付け難いのとは対照的に、「Trans Europe Express」はその異質さが私の心を捕らえて離さない。執拗なまでに磨きこまれた音の1つ1つは、平板でありながら豊穣。アタマでは安っぽく古臭い音にしか思えないのにそういう風には聞こえず、聴き飽きない。不思議な作品ではあるが名盤と呼ぶに相応しい1枚。今なら2009年にリマスター&ジャケット新装の再発盤が期間限定1500円で買えます。ジャケ買い(今回の廉価版発売からは外れているが「Autobahn」「Radio-Activity」のデザインもシンボリックかつシンプルなもので非常にクール!)でもきっと損しない。

ちなみに2009年の再発からは初期の3作は省かれている。というか、Kraftwerkの歴史上「なかったこと」にされており、公式サイトのディスコグラフィにも記載はなく、そもそも正式にCD化されたことがない。昔はタワレコとかで工事用コーンが描かれたジャケットの海賊盤と思しきCDをよく見かけたが、今でも置いてあるもんなんかな。


Kraftwerk"Europe Endless"

2012/02/19 Sun. 22:48  edit

Category: CD/DVDレビュー:K

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