非思量

Kate Bush「50 Words For Snow」(2011)

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寡作で知られながら今年はセルフ・カヴァーの「Director's Cut」、新曲のみで構成された「50 Words For Snow」という2枚の新作を発表したKate Bush。今回紹介するのは後者。1st「The Kick Inside」(1978)と「Aerial」(2005)しか持っていないので、「Director's Cut」はチト手を出しづらく、結局スルーしております。

雪がテーマとなっている作品だが、音数を絞り、高音を最小限に抑えた控えめな歌唱も相俟って、ごうごうと吹き荒ぶブリザードではなく、闇夜にしんしんと降り積もる雪のような、静かで柔らかいイメージ。「Aerial」もそうだったが、暗くした部屋で聴くと心地良く浸れるタイプの音。それでいて内に秘めた激しさを感じさせる。

多彩なゲスト(「Aerial」のブックレットで登場したBertieことAlbert McIntosch-Kateの息子-も"Snowflake"でVoを披露)を迎えているが、やはり何と言ってもElton Johnの参加が一番のトピック。互いに想いあう男女が「あなたを失いたくない」とロマンティックに歌う"Snowed In At Wheeler Street"でKateとの見事なデュエットを聴かせている。この曲とラストのKateによるピアノ弾き語りをオーケストラが静かに引き立てる"Among Angels"は、何というか、心に沁みる。

「Aerial」もとても良い作品だったが、こちらもソフトで優しい音世界の中にピリッとしたエキセントリシティを少し織り交ぜた、深い余韻を残す良質な作品である。今年の更新はこれでおしまい。良いお年を。

2011年の5枚。

まだ年も明けてないが、もうこれ以上CDやDVDを買う予定もないからいいか、というワケで2011年を振り返ってみる。まずは毎年やっているアレ。今年購入したCD/DVDの中から選りすぐりの5枚をピックアップ。順位はつけず、アルファベット順で。

1.The Claudia Quintet「What Is The Beautiful?」
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Vo導入はバンドとしては大きな決断だったと思うが、ヴォーカリストの実力の高さもあって成功していると思う。


2.Queensryche「Dedicated To Chaos」
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勢い余って全曲解説まで書いてしまった、恐らく今年一番聴いたアルバム。今でも好きだが日本盤の11~15曲目のうち3曲(どれでもいい)を削ってもう少しコンパクトにしていたら完璧だった。


3.Silent Stream Of Godless Elegy「Navaz」

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自分で選んでおいて変な物言いだが、意外な選出。でもホントいいんですよコレ。5年ほど前に出た前作「Relic Dance」がいくら探しても見つからなくて悔しい思いをした当時の私の無念を晴らしてくれた快作。


4.Szaloki Agi & Borlai Gergo「Kishug」
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尖りに尖ったサウンドと多彩なVo、ハンガリーのトラッドがベースのキャッチーなメロディが強い印象を残す1枚。

5.Within Temptation「The Unforgiving」
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そういえばEvanescenceの新譜は買ってないなあ。というか1枚も持っていない。新譜、試聴はしたけどWithin Temptation+時々刻みギターという程度の印象しかなかったもので…。

Cynic「Carbon-Based Anatomy」(2011)

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フロリダ産デス(?)・メタル・バンドの新EP。国内盤では前作「Re-Traced」とのカップリングで発売されている。その「Re-Traced」には不参加だったSean Malone(B)が復帰、逆に「Re-Traced」に参加していたギタリストとベーシストが脱退したため、現在のメンバーは3人ということになる。

大半がリメイクだった「Re-Traced」と異なり、収録された6曲全てがオリジナルの新曲である。オープニングの"Amidst The Coals"は女性Voがプリミティヴな響きを湛える小曲。続くタイトル・トラックは、手数の多いドラムとうにょうにょするフレットレス・ベース、後半のギター・ソロ等が旧来のCynicを思わせる曲。"Bija!"は何やら宗教めいた香りが漂い、"Box Up My Bones"は広がりのあるコーラスとドラマティックな展開で聴かせる。不穏なシンセ・サウンドに導かれて始まる"Elves Beam Out"は奇妙な11拍子のスペイシーなプログレ・メタルで、締めの"Hieroglygh"は女性の語りをフィーチュアしたサイケデリックな曲である。

キャッチーなメロディを内省的な醒めた音像に乗せる手法はおおよそ前作を踏襲しているが、前作と比較するとかなりメタル色が復活しているように思える。しかし曲ごとのスタイルの振れ幅はかなり大きく、相変わらず定型的なメタルからは大きく逸脱している。デス声は完全に封印してるし、このバンドに何を求めるかで評価も違ってくるだろうが、バンドが自身の持ち味を活かしつつ前進している姿は、私には頼もしく映る。

Daughtry「Break The Spell」(2011)

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デビュー作に続いて2作目となる前作「Leave This Town」もビルボード1位を獲得したDaughtryの3rd。ビルボード初登場順位は8位を記録している。

前作「Leave This Town」レビューで書いた「ミドル・テンポがメインで分厚いコーラスとソコソコの音圧で押してくる、コッテコテの正統派ど真ん中アメリカン・ハード・ロック」路線に一点の翳りもない。ギター・ソロがほとんどない、Chris Daughtryのヴォーカルを中心に据えた楽曲が詰め込まれた全12曲44分のコンパクトなアルバムだ。

CDが届いてからまず作曲クレジットをチェックしたが、今回はChad Kroegerとの共作はなし。米国ではNickelbackの新作とリリース日がモロにバッティングしているので多分ないだろうと思ってのことで、まあ実際なかったのだが、音楽性が似ているDaughtryがどういう意図で発売日をNickelback同じに設定したのか、少し不思議ではある。勝てると思ったのだろうか。Daughtry8位に対してNickelbackが初登場2位なので、完敗してるけど。

まあChris DaughtryのヴォーカルはChad Kroegerの暑苦しいそれとは一線を画するソフトなJon Bon Jovi系なので、その辺りでリスナー層の棲み分けが出来ているのかもしれない。それはともかく、1stでピークを迎えてしまったミュージシャンの宿命か、徐々にパワーが落ちてきている気がするが、それでもメロディはまだ十分すぎるほどキャッチー。むしろ円熟味が聴き易さにつながっているようにも思える。新作について言えばNickelbackよりコッチの方が好き。


Daughtry"Crawling Back To You"

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