非思量

The Claudia Quintet +1「What Is The Beautiful?」(2011)

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Johm Hollenbeck(Dr,Per,Key)率いるNYのジャズ~ミニマル~チェンバー~アヴァンギャルド系グループ、The Claudia Quintetの6作目。後ろについている「+1」はゲストのピアノ奏者を指す。

今回は作風に大きな変化が現れていて、それはヴォーカルを導入していること。全12曲中、透明感のある中性的な声を持つTheo Bleckmannが4曲、落ち着いた威厳のあるバリトン系のKurt Ellingが5曲で「Voice」としてクレジットされており、彼らの歌(あるいは語り)がかなり前面に出た作りになっている。

どこか夢の中をさまようようなBleckmann参加曲もこのグループが元来持っている浮遊感にマッチしていて良いが、最も印象に残るのは、シャープな演奏をバックに語りとベースやヴァイブがしつこいほどのユニゾンを聴かせる"Showtime/23rd Street Ruins Into Heaven"や、「Pause... And begin again」というセリフの度に演奏が文字通り「Pause... And begin again」しながら徐々に音数を増していく"What Is The Beautiful?"というKurt Ellingがパフォームしている2曲。実験的というか音楽的な野心が感じられ、また、これ見よがしなところのない抑制された演奏が逆に聴き手に静かな興奮をもたらす佳曲だ。

2nd「I, Claudia」は相当凄い作品だったが、その後の作品はキャッチーさの減退ゆえ、音楽的な振れ幅の大きさからくる難解さが増した印象だった(なので前作「Royal Toast」は未聴)。この作品が以前より聴き易くなったとは言えないが、Voの導入が大きなインパクトを与えており、個人的には「I, Claudia」以来の快作だと思う。濃密な1枚。


The Claudia Quintet +1 feat. Kurt Elling "Job"

Benoit Moerlen「Rocking Roller」(2011)

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GongやMike Oldfield、Gongzillaでの活動で知られる(と書いておいて私はどの作品も未聴)マリンバ/ヴィブラフォン奏者、Benoit Moerlenの1stソロ。

Moerlenのマリンバやヴァイブ(ザイロシンセ〈Xylosynth〉という楽器でこれらの音を出しているらしい)及びキーボードにB+G+Dr+Perを加えた編成で繰り広げられる演奏は、フュージョンのような爽やかさの中に脂っこい変拍子を巧みに忍び込ませた、正統派の「ジャズ・ロックに踏み込んだ方面の」プログレ、というのが率直な感想。マリンバやヴァイブが主役のロック・アルバムを正統派と呼ぶのもかなり気が引けるが。

このアルバムのウリはキャッチーなメロディだろう。2曲目"Wasabi Time"のような精緻なアンサンブルを聴かせつつ人懐っこさを感じさせる曲が良い。演奏はシャープだがピリピリしたところはなく、複雑なリズムの曲でもリラックスして聴ける。朗らかかつ明るいノリが暑い夏にマッチする音。プログレだけど。しかももう冬だけど。まあそれはともかく、個性的な良いアルバム。


Benoit Moerlen With Sekar Sakura"Wasabi Time"
今年7月に来日した際の音源。

King Crimson「Starless And Bible Black」(1974)

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The 25 best basslines of all time

上の記事(ラインナップされた25曲全てが試聴可能)では残念ながらランク・インしていないが、ベース・ラインという語句から私の頭に真っ先に浮かんできたアルバムがKing Crimson「Starless And Bible Black」だった。ちょうどいいタイミングで40周年記念盤がリリースされ、それでもってこれがまたビックリするほど素晴らしかったのでここで紹介しようと思う。

このアルバムを知らない若人向けに解説しておくと、このアルバムはRobert Fripp(G)、John Wetton(B)、Bill Bruford(Dr,Per)、David Cross(Violon)の4人で録音されており、全8曲中、冒頭のVo入り2曲("The Great Deceiver"、"Lament")及びやはりVo入りである"The Night Watch"の一部を除いた全てがコンサートで演奏されたライヴ音源を元に製作されており、前記Vo入りの曲及びラストの"Fracture"以外は全てインプロヴィゼーション(即興演奏)である。

しかし予備知識無しに聴けば、これが即興演奏主体で製作されたアルバムだとは夢にも思うまい(観客の歓声や拍手は一切入っていないし、ライヴ・レコーディングである旨の説明も特に無い)。特に、Crossのヴァイオリンが甘美な音色を響かせる"Trio"(この曲名はBrufordが敢えて演奏に参加しなかったことから名付けられている)や、静かながらも混沌とした音の連なりがやがて一体となるも一瞬の爆発の後に音が霧散していく"Starless And Bible Black"は即興であることすら信じ難い曲である。

作曲された曲も冒頭2曲のドライヴ感、"The Night Watch"のリリシズム、ラスト曲"Fracture"の超絶アルペジオから静寂→爆発の展開における破壊力、全てが素晴らしい。所謂第3期Crimsonは(当初の5人から1人ずつメンバーを減らしながら)3枚のオリジナル・アルバムを残しており、一般的にはラスト作の「Red」もしくは1枚目の「Larks' Tongues In Aspic」が脚光を浴びがちだが、衝動性と創造性、バンドとしてのケミストリーといった様々な要素が最も高い位置で融合しているのはこの「Starless And Bible Black」だと思う。以上、若人向け解説終わり。

ここからは40周年記念セットのコンテンツに対する感想だが、まず何より新ミックスが素晴らしい。近年のテクノロジーの進歩により、70年代の作品も音質面であまり古臭さを感じることなく聴ける機会が増えているが、この新ミックスなどはまさに「テクノロジー万歳!」。音の1つ1つの輪郭がハッキリとして立体感が増しており、この傾向はインプロ曲でより顕著になる。これはボーナス・トラックの"The Law Of Maximum Distress"も例外ではない。ボックス・セット「The Great Deceiver」に収録された同曲のテイクと聴き比べれば一目瞭然。

また、ここで聴けるWettonのベースが尋常でない。先述の通り、元々ベースが印象に残りやすい作りなのだが新ミックスで迫力倍増、曲を牽引するというより、他の楽器を追い立てるように唸りを上げるサマはあたかも野獣の如し。King Crimsonは一分の疑いも無くRobert Frippのバンドだが、音楽面ではリズム隊が大きな役割を果たしていることが改めて分かる音に仕上がっている。

このアルバム、これまでは「傑作だけど一見さんにはかなり厳しい」という認識だったのだが、この音ならたとえKing Crimson未経験の人にも(難解な音楽に対するある程度の経験値は要求されるにしても)自信を持ってオススメできる。DVDに収録された30周年リマスターと聴き比べて欲しい。明らかに違うから。その他のライヴ映像を含むコンテンツも充実。国内盤は高くてちょっと…と仰るなら輸入盤でもOK。ちなみに私は輸入盤を購入。

もうRobert Frippのアコギな商売に付き合う気はないので40周年記念盤シリーズはことごとくスルーしていたのだが、これは本当に買って良かった。

Ex-Wise Heads「Schemata」(2011)

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英国人サックス/フルート奏者のGeoff LeighとPorcupine Treeのベーシスト、Colin Edwinのデュオ、Ex-Wise Headsの2011年作。ゲストとしてRick Edwards(Percussion)を加えた3人編成が基本で、1曲では更にアコースティック・ギターが加わっている。

アンビエントでサイケデリック。プログレというよりはジャズ・ロック。こう書けば分かる人には分かるのだろうか。ぎっしりと音を詰め込むフュージョンではなく、多彩な音色のパーカッションとベースを従えてLeighのサックス/フルート/チター/口琴等が奔放に舞い踊る音像はむしろ「間」というか、音の向こうにある空間を意識させる作風。

5年前に見たPorcupine Tree来日公演(2000人収容できるZEPP OSAKAに客が250人しかいなかった)でのEdwinはどうもパッとしなかった記憶があるのだが、このアルバムでのプレイは存在感があって良い。クールな体裁を保ちつつ、緊張と弛緩を自在に行き来する音。ほのかに漂うアジアン・テイストもマル。秋の夜長、酒のお供に。


Ex-Wise Heads"Ascendance"

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