非思量

Szalóki Ági & Borlai Gergö「Kishúg」(2011)

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ハンガリーの女性シンガー、Szalóki Ági(Szaloki Agi。サローキ・アーギと読むらしい)の新作。彼女の作品は初めて聴くのだが、トラッド/フォーク系のミュージシャンで、過去の作品は国内盤もリリースされている模様。

今作はドラマーのBorlai Gergö(Borlai Gergo)との連名作となっているが、ソロ名義との作風の違いを意図してのことだろうか。その辺りの事情は分からないが、こちらはトラッド・ソングをプログラミング・サウンドがメインのエレクトロニカ調アレンジで聴かせる、まさにラディカル・トラッドと呼ばれるサウンド。

このアルバムの特色は、エレクトロニクス・サウンドが非常に緻密、かつ多彩なこと。1曲目"Föld Ég"はダークなインダストリアル調だが、その後は奥行きのあるトリップ感を強調した"Porondos"、ハンガリー・トラッドをベースにしながらアッパーなテンションがトロピカルなムードすら感じさせる"Vörösbor"、コケティッシュさを強調した"Chanson De Vanille"等々、曲調は非常に幅広い。ほんのり切なさを漂わせるガーリーな曲やロック色の強い曲、ドラムン・ベース入りのアッパーな曲まで取り揃えており、この何でもアリ感はまさにラディカル。

彼女の声は硬質でエキセントリックな中に柔らかさも感じさせる、なかなか特徴のある声。曲調によって表情がコロコロ変わる万能タイプで、本当にどんな曲でもその曲のカラーにマッチした歌唱を聴かせている。トラッド、オリジナル取り混ぜた楽曲もキャッチーなメロディを備えており秀逸。傑作。オススメですよ。

Queensryche「Dedicated To Chaos」全曲解説。

時期的に「2011年上半期ベスト」的なエントリーを書く頃合なのだがQueensryche「Dedicated To Chaos」に激ハマリしているので、この作品の全曲解説をもって上半期ベストに代えたい。とは言え他に気に入った作品もチョコチョコとあるので、それらについては年末年始あたりでフォローする。

1.Get Started
「Q2K」以降のメロディやサウンド・メイクのセンスで"Best I Can"をやったような、アップ・テンポなハード・ロック。軽快な印象。

2.Hot Spot Junkie
「Q2K」以降のメロディやサウンド・メイクのセンスで"Damaged"をやったような、アップ・テンポなハード・ロック。"Damaged"を引き合いに出したがリズムの使い方が似ているだけで別段ダークなワケではない。オーソドックスな"Get Started"からの流れを順当に引き継いでいる印象。

3.Got It Bad
ここで空気を変えて、やたらトガッた曲が登場する。シタール風の怪しげなサウンドとルーズなヴォーカル・ラインが絡む、メタル色皆無の妖しいグルーヴ曲その1。

4.Around The World
ストリングスを従えたミッド・テンポのバラード。出番は多くないがギターの音もハード・ロック色が濃く、あまり極端な作風を好まない層にも受け入れられそうな曲調。ライヴで映えそうな感じ。

5.Higher
ハードな曲調の中にファンク風味が見え隠れする、うねるリズム隊が曲を牽引する曲。サックス・ソロもフィーチャーされている。

6.Retail Therapy
「Hear In The Now Frontier」に収録されていてもおかしくない、いかにもグランジに感化されたメタル・バンドがやりそうなラフなタッチの曲。

7.At The Edge
"Retail Therapy"と同じ90年代の空気を感じさせる曲だが「『Hear In The Now Frontier』みたいなラフ&ルーズ路線じゃなくてコッチに行けば良かったのに」と思わないでもないダーク&ディープ、かつハードな曲。あ、それは「Promised Land」でやってたか。曲の後半、最後のサビ前に切れ込んでくるサックスがカッコいい。

8.Broken
ボーナス・トラック。映画のワンシーンを思わせる荘重なストリングとメランコリックなヴォーカルの小曲。続く"Hard Times"のイントロ的な感じもする。

9.Hard Times
ボーナス・トラック。Geoff Tateのソロ・アルバム「Geoff Tate」収録の"In Other Words"に通ずる、ムーディで叙情的なバラード。Chris DeGarmo脱退後のQueensrycheが曲単位で注目されることはほとんどないが、「Q2K」の”Liquid Sky"や「Tribe」の"Rhythm Of Hope"等のしっとりとした感触の曲はかなりいいモノが多い。この曲もその系譜に連なる曲だと思う。個人的にはこのアルバムのベスト曲。

10.Drive
ダークで抑制の効いた序盤からパッと視界が開けたようなサビまでの展開が結構ダイナミックなミッド・テンポの曲。

11.I Believe
ボーナス・トラック。メタル色皆無の妖しいグルーヴ曲その2。トライバルなリズムに乗るGeoff TateのVoが艶かしい。

12.Luvnu
ボーナス・トラック。「ラヴィン・ユー」と読ませる。ややルーズな感触も取り混ぜたハード・ロック。

13.Wot We Do
キワモノ・オブ・ジ・アルバムはこの曲!メタル色皆無の妖しいグルーヴ曲その3。既にレビューで触れたし動画も貼ったからそちらを参照していただければ。でりしゃ~す♪

14.I Take You
スローでやや重々しい、ある意味、現在のQueensrycheにおける正統派ナンバー。

15.The Lie
これまた「Q2K」以降のQueensrycheらしい曲。ツイン・ギターがフィーチュアされた数少ない曲の1つ。

16.Big Noize
波間を漂うような浮遊感と凝ったコーラス・ワークがサイケデリックな空気を作り出し、Geoffの高音がそれを切り裂く。ラストに相応しいスケールで、歌詞の世界観に合わせたようなどこか落ち着きの無い曲調も含め、プログレ色が一際濃い。

17.Around The World(Live)
国内盤ボーナス・トラック。オーケストラとの共演ライヴ。

これを読んだら「買ってみようかな」と思ってくれる人が出てきそうな気が…しません!参ったなあ。

ちなみに国内盤は海外盤のスペシャル・ヴァージョンに国内盤のみのボーナス・トラック1曲を加えた17曲入りになっており、購入するなら通常盤よりもコチラをお勧めする。正直曲数が多すぎると思うが、それでも流れとしては12曲入りの通常盤よりもコチラの方がいい。

ベースが結構目立っていて「Kings Of Leonみたいなのがやりたいのかな」と思わせるところもあったりで、いよいよChris DeGarmo在籍時とは別のバンドになってきた。思えば遠くへ来たもんだ。しかし、音楽的な野心を剥き出しにして一向に落ち着く気配がないところはいかにも「らしい」し、今回はその野心が結構高いレヴェルで実を結んでいると思うのだが、どうだろう。作曲、演奏の両面でリズム隊が結構目立っていて「Michael Wiltonは今回のアルバムの出来に納得しているのだろうか」と余計な心配をしたくなるアルバムではあるのだが。

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