非思量

Sixx:A.M.「This Is Gonna Hurt」(2011)

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Mötley CrüeのNikki Sixx(B)とJames Michael(Vo)、DJ Ashba(G)の3人で結成されたSixx:A.M.の2nd。1stは未聴。ついでに言ってしまうと実はMötley Crüeもマトモに聴いたことがない。LAメタルはW.A.S.P.(このカテゴリーに入れていいのかどうかわからないが)以外はどうもダメなんすわー。主にVoの声とかが。

一方、こちらのヴォーカルは実に魅力的な声を持っている。適度に荒れていて、パワフル。そして上手い。"This Is Gonna Hurt"、"Lies Of The Beautiful People"のようなNickelbackに通ずるベタかつモダンなアメリカン・ハード・ロックも、どことなくU2の影響を感じさせる荘重な"Oh My God"も、Muse的な過剰なドラマ性を撒き散らす"Goodbye My Friends"も、本当に器用に歌いこなしている。

敢えて元ネタと思しきミュージシャンの名前と曲名を並べてみたが、メイン・ストリームのロックを沢山聴いている人なら別の曲でまた別のミュージシャンが頭をよぎるだろう。それがこのアルバムの弱点といえば弱点。オリジナリティや一貫性という意味ではやや弱いところがあるかも知れない。ただまあ、これだけ上手いシンガーがいたら色々試してみたくなるのが人情というものかも知れないし、そもそもパーマネントのバンドではないこのプロジェクトにそういうツッコミを入れるのは野暮というものだろう。

個人的にはメロディと声が自分の好みにフィットしているので、そのあたりはあまりマイナスにはならなかった。シンプルかつコンパクトで良質な楽曲が揃っていて、何のストレスも感じず気持ちよく聴ける。良い雰囲気のアルバムだと思う。


Sixx:A.M."Lies Of The Beautiful People"

Van Der Graaf Generator「A Grounding In Numbers」(2011)

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70年代に活躍した英国産プログレッシヴ・ロック・バンドの、2005年に何度目かの再結成を果たして以来3枚目となるスタジオ・アルバム。これが私にとってVDGG初体験となる。YouTubeとかで音源を聴いたことすらなく、本当に初めて。

というのもRobert Fripp「Exposure」(私が最初に聴いたのは1989年に輸入盤でリリースされたDefinitive Edition)で聴いたPeter Hammill(Vo,G,Pf)の黒板を爪で引っかいたような刺々しいヴォーカルがいまひとつ馴染めなかったのと、書籍で読んだ彼らに関する文章を読んで「多分、自分の好みじゃないだろうな」と判断してしまっていたからである。今回もレコード屋で目当ての物件がなく、たまたまこの作品が目に付いたので興味本位で買ってみただけだったりする。しかしなんでこんな田舎町のレコード屋にVDGGの作品が置いてあったのだろう?

それはともかく、初めて聴いた時の印象は「装飾を剥ぎ取った(Peter Gabriel在籍時の)Genesis」といった感じだったが、漂う空気はPeter Gabrile「2」やRobert Fripp「Exposure」の方が近いかな。最初の2曲はたゆとうオルガンをバックにジェントルなヴォーカルがゆったりと舞っているが、ヴォーカルや演奏にエキセントリックな色彩が濃くなってくる3曲目以降でグッとその傾向が強くなる。どこか捩れていてタガが外れている。それでいて演奏がどことなくぎこちないというか、あまりタイトさを感じさせないため、ミステリアスな中に牧歌的な印象も。

ややローファイ気味なサウンドもあって「70年代的な音を期待していたワケではないんだがなあ」と少し思ったが、インディー系でこういった感じの、テクニック至上主義的なものとは一線を画したサウンドを志向する若いバンドは確実に存在しているワケで、不思議と古臭さというのは感じなかった。大曲は一切ないし、古参のファンがこの作品を聴いてどう思っているのかは知らないが、案外若いリスナー(というか、インディー・ロックのようなプログレ以外の音楽を好む層)にアピールする作品かも知れない。聴く前の見込みどおり、必ずしも好みの音楽性ではなかったワケだが、これはこれで結構好きかも。

Acoustic Asturias「Legend Of Gold Wind」(2011)

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Asturiasは作・編曲家/マニピュレータの大山 曜(Gut Guitar)をリーダーとする自称「癒し系プログレ・ユニット」だそうで、今回紹介するAcoustic Asturiasはその名の通りGut Guitar+Piano+Clarinet,Recorder+Violinの4人からなるアコースティック編成のバンドで「Legend Of Gold Wind」は3枚目にあたる。これ以外にも多重録音のMulti Asturiasやエレクトリック編成のElectric Asturiasもあるらしい。

Asturiasの作品を聴くのはこれが初めてだが、率直に言うと「清く正しいチェンバー・ロック」となるだろうか。ギッチギチに音を詰め込んでバカテクに走るとか不穏な濁った音、奇妙な変拍子を混ぜ込んでダークに装うことは一切せず、滑らかなアンサンブルと透明感溢れるサウンド&メロディでもってして、チェンバー・ロックという特殊な枠の中でクラシック音楽に接近しつつ「マニアでない層にも届く音楽」であろうとしている、そのような印象を受ける。

と言っても根拠のないゆるいポジティヴィティを撒き散らすようなことはなく、爽やかな中にもチェンバー・「ロック」と呼ぶに相応しい、凛とした空気の漂う、ピシッとした作品に仕上がっているのが良い。聴き終えた後に清々しさを覚える音楽。いつも邪悪な音楽を聴いているので、たまにこういうのを聴くと心が洗われますな。


Acoustic Asturias"Perpetual Motion"(Excerpt)

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