Within Temptation「The Unforgiving」(2011) 

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メタル界隈ではすっかりトップ・アクトとして定着した感のあるオランダ産6人組(クレジットはDrを除く5人になっているが、現在新ドラマーが加入した模様)の5th。

B!の女性Voをフィーチュアした特集だったと思うのだが、Sharon Den Adelを初めて見て「うわこの人、可愛い!」と衝撃を受けてからもう10年以上は経ってるんだなあ。彼女もすっかり風格のある表情を見せるようになった。実は同学年なので思わず遠い目をしてしまう。自分も同じようにトシを食ってるんだなあ、という意味で。別にそれが悪いってワケではないんだがね。

まあヨタ話はこれぐらいにして、前作「The Heart Of Everything」、私は全く入り込めなかった。その前の「The Silent Force」がこのバンドに接した初めての音源で、これを聴いた時は軽い衝撃すら受けたものだが、一方の「The Heart~」はゴージャスを極めたサウンドにメロディが埋没してしまい、「The Silent~」の成功に囚われて袋小路に迷い込んだような印象だけが残るアルバムだった。「ひょっとしてもうメロディのストックは尽きたのか?」と思ったので今回の新作はあまり食指が動かなかったのだが、ジャケットを見ると随分これまでと雰囲気を変えてきていたのでコレはひょっとするとひょっとするかも、と購入。

音楽的にはモデル・チェンジと言ってもいいほどに方向性を変えており、サウンドの分厚さはそのままにどことなく身軽さというか、風通しの良さが感じられるようになっている。前作にないスピード感を持つ"In The Middle Of Night""A Demon's Fate"は繊細なファルセットを封印し力強さを強調したヴォーカルと共に新鮮な風を吹き込んでいる。これらのハードな曲とミドル・テンポの"Shot In The Dark""Faster"といった王道路線の曲や16ビートを導入した"Sinéad"、荘厳な6拍子のバラード"Lost"といった様々なカラーの曲がアルバムに起伏を生み出し、聴き応えのあるものにしている。

「全てはSharon様のために…!」と言わんばかりにSharonのVoを際立たせることに集中する男性インスト陣の存在感(及び頭髪)の薄さは相変わらずだが、これまでと較べると少しだけギター・ソロとかが耳に残るようになっている。ま、ソロっつーてもせいぜい10秒ほどですが。でもこのバンドに1分半のギターorキーボードの華麗なソロを期待している人は皆無だと思うのでこれでいい。

アルバムと同名のコミックを作成し、そのストーリーに沿った12曲でアルバムを構成しているそうだが、そういったギミックに興味がなくても楽しめるアルバムだ。アマゾンのレビューを見ると音楽性の変化に心中複雑なファンもいるようだが、Sharonの声が持つ説得力と臆面のないキャッチーさは私にはかなり魅力的。ポップなメタルを聴いている時の気持ち良さをストレートに味わえるアルバム。

2011/04/22 Fri. 21:29  edit

Category: CD/DVDレビュー:W

Thread: HR/HM - Janre: 音楽

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Minnemann, Brinkmann「Shining」(2010) 

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Mike Portnoy脱退後、Dream Theaterのドラマー候補の1人として噂に上がっていた(本人は加入を否定)Marco Minnemannがドイツ人シンセサイザー奏者であるMario Brinkmannとの連名でリリースした作品。

UKZで彼のプレイを耳にして以来ずーっと気になってはいたものの彼の作品をなかなか手に入れる機会というかキッカケがなく(他に優先して買うべき作品があってお金がなかったとも言う)、これがようやく手に入れた作品なのだが…。音楽を聴いているというよりは、66分の映像作品を見ているような感じがするとても不思議な作品で、最初は正直、聴いていて戸惑いもあった。視覚的なイメージを喚起する音楽というのはいくらでもあるが、ここまで「映像そのもの」感を漂わせる音楽も珍しいと思う。

「才気走り過ぎていて作品としては破綻寸前」という印象すら持ったのだが、その印象を覆したのがどことなく懐かしさを覚えずにはいられないヴォコーダーや重厚なシンセ・サウンド等で奏でられるキャッチーなメロディ。アヴァンギャルドな枠組みの中で躍動するフュージョン~サイケデリック寄りの音像の中でポッと浮かび上がってくるメロディに癒される瞬間、多数。ドラマーの作品であるにも関わらずドラムが前面に出てくる場面はあまりなく、むしろマルチ・インストゥルメンタリスト(ギター等もプレイ)/コンポーザーとしての側面や、共同制作者であるMario Brinkimannとの相性の良さを堪能する作品であると言えよう。

浮遊感漂う中に確かに存在する美や混沌が妙に印象に残る作風は万人向けとは言い難いが、なぜか繰り返し聴きたくなってしまう魅力がある。好事家を自認する方にはオススメ。



本作とは関係ないが、モンティ・パイソンのセリフに併せてドラム・ソロを披露するMarco Minnemannの動画を紹介。これを見てるとドラマーというよりも芸術家気質の人のようで、確かに本人が「(Dream Theaterに加入しても)上手くいかない」とインタビューで言っていた通りで、Dream Theaterの器にスンナリ納まるような人ではないな、という気がする。

2011/04/17 Sun. 22:49  edit

Category: CD/DVDレビュー:M

Thread: 洋楽CDレビュー - Janre: 音楽

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Anna Pingina「Moy」(2010) 

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ロシア人女性シンガーAnna Pinginaの、これがデビュー作だそう。ロシア語表記はАнна Пингина「Мой」。ただでさえ普通のレコード屋で見つけるのは困難でしかも自主制作。どこで買えばいいのかね…と困った時はとりあえずGarden Shedを探せばたいていのブツは出てくる。恐ロシア。この作品、「LEVEL4 & LEVEL5」の項をよく探すと出てきます(Ctrl+Fキーを押してAnna Pinginaで検索をかければすぐ出てくるハズ)。

Garden Shedでは同じロシア人女性シンガーのInna Zhelannayaが引き合いに出されていたが、同時期に買ったZhelannnayaの「Cocoon」(Trey Gunn参加)をまだちゃんと聴けていないので、似ているかどうかはちょっとわからない。Pinginaのヴォーカルは、最初の前衛トラッド的な2曲では素朴な響きを持っているが、フィーメイル・ポップスの王道メランコリック・ナンバー的な3曲目あたりから徐々にロック/ポップ・フィールドのシンガーとしての顔を見せる。かと思えば後半ではシリアスかつドラマティックに歌い上げたりと、良い意味で「個性がないのが個性」とでも言えそうな声質で様々なスタイルの歌唱を見せている。上手いと思う。

上記の通り楽曲のカラーも多岐に渡るが、トラッド色の濃い曲でもベースとドラムが結構ズッシリとロックしていたり、ポップス色の強い曲でもアコーディオンやら笛やら木管やらが豪快に鳴り響いたり突然ダーク・アンビエント調になったり、「とっ散らかっている」という言葉がこれほど似合う作品もないなあ、というぐらいの拡散ぶり。10曲目なんてケルト色まで取り込んでるぞ。しかもどの曲も出来が良いし聴き易い。いやあ、これは凄いぞ。

クレジットを見ても全部ロシア語で何を書いてるのかさっぱりわからないんだが、これがセルフ・プロデュースだったら末恐ろしいな。でも違うだろうな。この作品以前に様々なミュージシャンとのコラボを経験してはいるみたいだが、デビュー作でこの完成度はちょっと普通ではない。洗練されたサウンドから察するに、様々な面でキッチリ金をかけて作られた作品だろう。まあいずれにせよ傑作。オススメ。


Анна Пингина"Реченька" アルバムの3曲目。

2011/04/12 Tue. 22:18  edit

Category: CD/DVDレビュー:A

Thread: 洋楽CDレビュー - Janre: 音楽

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