非思量

Hattler「Gotham City Beach Club Suite」(2010)

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以前はKraanというプログレ~ジャズ・ロック系のバンドで活躍していた(私は未聴)ドイツ人ベーシスト、Hellmut Hattlerのライヴ・アルバムを含めて(多分)7枚目のアルバム。

私が初めて聴いたHattlerのアルバムは2004年リリースの「Bass Cuts」(余談だが、このアルバムはThe Cuts Seriesとして一般のアルバムとは区別されている模様)なのだが、その中に収録されていた"Bass Camp"のベース・ソロにノック・アウトされて以来、スタジオ盤はずーっと(と言ってもまだ3枚目だが)追いかけている。


Hattler"Bass Camp"。「Bass Cuts」収録曲。ベース・ソロは4:30あたりから。

ジャンル的にはアシッド・ジャズと言えばいいのだろうか。このあたりの音には疎いので自信がないが、「Bass Cuts」でのサイケデリック/トリップ・ミュージックを引き摺ったような感じや、前作「The Big Flow」でほのかに漂っていたエスニックなテイストもすっかり消化されて、Hattler流のクールなサウンドに取り込まれている。Vo入りとインストの曲とがほぼ半々ずつ収録されているがどちらも出来が良い。

そして曲もさることながら、Hellmut Hattlerのベースがカッコいいんである。ピックを使ったオルタネイト・ピッキングによるプレイなのだが、フィンガー・ピッキングやスラップを駆使するプレイヤーとはまた違ったカッコ良さがある。この人のサウンドのキレの良さは聴いていて快感ですらある。そして、ベースが縦横無尽に鳴っているベーシストのアルバムであるにも関わらず胃がもたれるような重苦しさが全くない。センスええわあ。ベース好きの方は一度トライしてみては。


Hattler"Dimitri"

2010年下半期の3枚+α

いつものように。

1.Brother Ape「A Rare Moment Of Insight」
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レビューはコチラ

前作の作風を引き継ぎつつメロディを大幅に強化。文句なし。


Brother Ape"Chrysalis"


2.Nik Bärtsch's Ronin「Llyrìa」

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レビューはコチラ

少しずつ毒気が抜けている気がするがこういう「禅ファンク」での妙なグルーヴ感は健在。


Nik Bärtsch's Ronin"Modul 47"


3.Mr. Big「What If...」
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この出来の良さというか私の好みへのフィットぶりは全く予想外だった。なんかジャケットも微妙だし。


特別賞:青森最後の詩人ひろやー「津軽曼荼羅」(2008)

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レビューはコチラ

2008年の作品だが昨年購入したCDではダントツのインパクトだったので特別賞を。オリオン座の下で~。


青森最後の詩人ひろやー"お金をください"。オリオン座のアレとは別の曲。


さて今年はこれだけではなく「2010年の15曲」というのもやってみたい。アチコチで2010年ベスト曲の選出をやっていたので私もやってみたくなった。

ちなみに私の場合は「iPodに入れて聴く2010年ベスト」ということで、実際にiTunesで作成したプレイリストどおりの並びで紹介していく。一応、自分なりに流れを意識して作成しているので、ここに収録したものより好きな曲でも「なんか流れに合わんな」という理由で選出されていないものもある。

1.Brother Ape"Ultramarathon"
ツイッターのTL上で「Mute Mathっぽい」という意見があった。言われてみれば確かに。

2.Shining"Healter Sketler"
レビューでも触れたがこの曲は3rd収録の"Redrum"という曲が原型。

コレが


こうなった。


3.Nik Bärtsch's Ronin"Modul 52"
これも所謂「禅ファンク」タイプの曲。

4.Die Mannequin"Dead Honey"
ここでイキのいいヤツを。

5.Anathema"Everything"
きらめくようなピアノと奇数拍子。私の好きな要素が揃いすぎている。

6.James LaBrie"Euphoric"
Dream Theaterで言えば"Forsaken"タイプのシリアス系バラード。

7.Mick Karn"Tender Poison"

彼に関する記事を読むたびに天才肌だったのだなあと思わされる。合掌。

8.Lu7"Interlude #2 (Gene)"
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このブログの最初期に前作「L'esprit de L'exil」を紹介した日本のフュージョン・ユニットLu7の3rd「Bonito」に収録された1分半程度の小曲。前作の無国籍ワールド・ミュージックからオーソドックスなフュージョン寄りの音になっている(出来は結構いい)が、この曲は細かいピアノのフレーズをオーヴァーダブした、ギッチギチに音を詰め込んだ曲。

9.Soilwork"Deliverance Is Mine"
Soilwork風ポップ・ソングのど真ん中を往く曲。

10.Pendulum"Encoder"
メタラーかつプログレッシャーとしてはIn Flames参加の"Self vs Self"かSteven Wilson参加の"The Fountain"を選ぶべきなのかも知れないが、地味目ミッド・バラード好きな私はコレを選んでしまうのだ。

11.The National"Afraid Of Everyone"

ライヴ見てみたいなあ。

12.Slash"Beautiful Dangerous"
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作品全体としてはさほど好みではないが、FergieのAnn Wilsonばりのパワフルな歌唱は良かった。

13.Clogs"I Used To Do"
繊細で格調高いチェンバー・ロック。

14.Kings Of Leon"Radioactive(Remix Featuring West Angeles Mass Choir)"
この曲に限らず何かに似てるなーと思ったらアレだ、U2だ。

15.Fear Factory"Final Exit"

Burton C. Bellのメロディックなパートにおける歌唱力がサッパリ上達しないな!だがそこがいい。

Mr. Big「What If...」(2010)

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明けましておめでとうございます。昨年末にザザッとメモ書きしておいたものを誤ってアップロードした状態で放置状態になっていたMr. Bigの新譜レビューから今年はスタートであります。あれを書いた翌朝ブログを開いた瞬間に眩暈がした。あのメモに言いたいことのほぼ全てが詰まっているので、あれを読んだ方はここから下は読まなくても大丈夫です。いやまあそれは冗談ですが。いや、あながち冗談とも言えないな…。

私は解散前のMr. Bigなら「Lean Into It」「Hey Man」「Actual Size」の3枚を持っているが、特に熱心なファンだったことはない。しかし「Hey Man」だけは別格に好きである(余談だが、当時「炎」で酒井康がこのアルバムをボロカスに叩いていた記憶があるなあ)。"Trapped In Toyland"、"Take Cover"あるいは"The Chain"といった煮え切らないジトジトした空気を纏った曲がたまらなくツボに入ったのだ。今でもこの作品だけはたまに聴いている。

だから最初は完全スルーの構えでいたのにひょんなことで1stシングル"Undertow"を耳にした翌日に速攻でCDショップに走るのも必定であった。どうせ劣化版「Lean Into It」だろうと思っていたのがまさかの「Hey Man」テイストだったのだから。



しかし、そんなことよりもBilly Sheehanの過剰なまでに音の大きく、スキあらばムチャなフレーズを押し込んでくるベースは一体どうしたことか。このベースのおかげでアルバムを貫くグルーヴが尋常ならざるものになっている。そんな中、Paul Gilbertも負けじと速弾きを炸裂させ、場合によっては狂ったようなユニゾンやギター&ベース・バトルも辞さずの、生半可なプログレ・メタル勢が裸で逃げ出すスーパー・プレイ博覧会。キミタチサイコダヨ。一方、Pat Torpeyだけは辛うじて理性を保っているように聴こえる。

そんな「もうこの1枚で終わっても知ったことか!」と言わんばかりに狼藉三昧のヤケクソなエネルギーを放ちまくるアホアホ弦楽器隊を向こうに回して大立ち回りを演じるEric MartinのVoが全く負けていないのがまた凄い。CDショップで流れていた「Mr. Vocalist 3」を聴いて「昔より上手くなってる?」とは思ったが、歌が入っているパートでの「オレが主役だ!」という自己主張はこれまでになく強烈。"Nobody Left To Blame"でのファルセットを交えた歌唱などはヘヴィな演奏に一歩も引けをとっていない。

なんでこれで歌モノとして成立しているのかが不思議でしょうがないぐらいどっしりした音なのにしっかり歌モノになっていて、しかもポップ。実は弦楽器隊もVoや曲の光を消すようなプレイはしていない。まさに「祝・仲直り」である。「Lean Into It」的なものは後半のいくつかの曲で僅かに垣間見えるだけだが、シブ過ぎるバカテク・メタルというワケのわからない境地を開いたこのアルバム、個人的には手放しで褒め称えたい気分。

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