非思量

Aranis「Roqueforte」(2010)

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2010年の一発目に「Songs From Mirage」(2009)のレビューを書いたベルギー産チェンバー・グループの最新作。

2人いたヴァイオリンのうち1名がヴィオラ奏者にチェンジ、ピアニストも交代していることに加え、LAのアヴァンギャルド・ロック5uu's(私は未聴)の創始者でThinking PlagueやベルギーのPresent(「プレザン」と読みます)に参加したこともある(私はThinking~、PresentいずれもKerman在籍時の音源は未聴)ドラマーのDavid Kermanが参加しており、総勢では1名増えて8人体制となっている。

アコースティック楽器によるアンサンブル重視でミニマルも取り込んだクラシカルなチェンバー・ロックという基本的な構造に変化はない。ドローン調小曲の存在やドラムの加入等、同郷のUnivers Zeroへの接近を感じる箇所もあるが、初期~中期Univers Zeroのような禍々しさはなく、どちらかと言えば穏やかな空気の中でダイナミックなフレーズがしずしずと舞っているような感じ。

前作でフィーチュアされていた女性Voがいなくなった(全曲インスト)ことで神秘性が失われてしまった感があるのが個人的には少し残念だが、ミニマル/クラシカルなメロディによる引き締まった空気の中からタンゴ的な軽やかさが時折顔を覗かせるダーク・チェンバー作として高品質を保っている。良作。

今年の更新はこれでおしまい。良いお年を。

Brother Ape「A Rare Moment Of Insight」(2010)

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今年の上半期ベスト3に入った前作「Turbulence」(2009)から約1年という速いペースでリリースされたG兼Vo、B、Drからなるスウェーデン産トリオの5th。個人的にはこのバンドが現在のイチ押しなのだが、新作も期待を裏切らない仕上がりとなっている。

「Turbulence」では古典シンフォ・プログレのエッセンスをほのかに漂わせつつ多彩なリズムやモダンなアンビエンスに独特のセンスを見せていたが、新作ではそのアプローチをさらに推し進めている。1曲目"Juggernaut Now"はひたすらタイトなドラムを強調、続く"Chrysalis"はヘヴィなベース・サウンドの中でVoがメロウな表情を見せ、3曲目"Ultramarathon"は前作のオープナー"Welcome Future"の小気味良さを髣髴させつつ瑞々しいメロディを聴かせる。その後もアコギメインの叙情ナンバーや、ゴロゴロ唸るベースとストリングス調のシンセが寂寥感を醸し出す曲等を交えた全8曲54分。どの曲も良い上に曲ごとのカラーがハッキリしているため飽きない。

ドラムのタイトさもさることながらベースも良く「優れたリズム隊のいるバンドに外れなし」を地で行くバンド。残るギタリストにおいても派手な感じはないがキャッチーなフレーズを弾くし、ギタリストが兼任している鍵盤類も深い奥行きの構築に大きな効果を挙げている。何というか、自分達の出すべき音を手中に収めている感。

ブックレット巻末に「あふれ出るアイデアを無駄にしないために(「Turbulence」から)1年以内にアルバムを作ることにした」というようなことが書かれてあり、今がまさに充実期なのだろう。彼ら自身の手応えがビンビンに伝わってくる力作。


Brother Ape"Ultramarathon"

Kings Of Leon「Come Around Sundown」(2010)

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テネシー出身4人組の5th。

元々イギリスで人気を博しており、前作「Only By The Night」でイギリスのみならず本国アメリカでも本格的にブレイクを果たしたバンドだそうで、その「Only By The Night」を聴いてみたところ、これでバカテクだったらLes Claypoolみたいなアヴァンギャルド・ポップになっていてもおかしくないぐらいプリンプリンしたベースを核とした、隙間の多さが逆に雄弁さを感じさせるキレのいいサウンドが気に入った。

中でもキレの良さが際立っている"Manhattan"が私にとってのベスト・トラックだったこともあり、彼らを形容する際に使用される「スタジアム・ロック」という言葉には正直「?」だったのだが、この新作「Come Around Sundown」を聴くと、ああ、なるほどな、と。力強さの中に臆面もないベタな開放感をにじませ、結構モロにレイド・バック感を漂わせる楽曲群は、狭いライヴハウスで鳴らすよりも陽が落ちた後の屋外スタジアムが似合う、まさに「スタジアム・ロック」と呼ぶに相応しい仕上がり。良く言えば大らか、悪く言えば緊張感に乏しい曲が大半を占めている。

サウンドは前作そのまま、楽曲はより幅広い層にアピールするようにブラッシュアップされた「大ヒット作の次」のお手本のような作品。なんだかんだ言いつつ結構聴いてるし"Radioactive""The Immortals"等良い曲の入った良いアルバムだとは思うが前作の凛とした空気がやや損なわれているのは確かで、先に述べたように前作では"Manhattan"が好きだった私には、まったり系の曲に流れる温い空気が時々キツく感じる。きっと売れたのだろうがネタの引き出しはまだあるのかな?私の好み云々とは関係なく、次の作品が試金石となりそうな気がする。

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