Alter Bridge「ABIII」(2010) 

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Slashのソロ・アルバムに参加したことで日本でのステイタスも「知る人ぞ知る」から「シーン随一の」実力派シンガーへと上がったであろうMyles Kennedy(Vo)を擁するAlter Bridgeの3rd。インストの3人はご存知元Creed。あ、「元」じゃないのか。

音楽性は今までどおりのベースが低音でガランゴロンと唸る、Creedにも通じるモダンかつダーク&ヘヴィなアメリカン・ハード・ロックだが、80年代のメタルを構成していた大らかでメロディックな要素がこれまでになく多く取り入れられている。"Wonderful Life"と前作の"Blackbird"という、アルバムの中間に配され、アルバムの1つのピークとなっているパワー・バラードのキャラクターを比べればその変化は一目瞭然。実際のところ、曲調としてはこれまでよりも親しみやすいものが多いと思う。

今回はKennedyの歌唱にも大いに注目が集まると思われるが、「Slash」での抑え気味(そう、あれでも抑え気味なんです)な歌唱から一転、高音域を惜しみなく駆使してパワフルに歌い上げており、まあ少々クセはあるもののこちらのほうがやはりしっくりくる。昨年Creedが復活したが、少なくともYouTubeで見られるライヴ・パフォーマンスを比較する限り、歌唱力ではKennedyがScott Stappを圧倒している(というか、Stappてライヴだとちょっとアレですね…)。他にも理由があるのかも知れないが、Creedインスト隊にAlter Bridgeを放り出す意思がないのも道理である。逆にKennedyに逃げられないといいのですが。

しかしそれでも、トータルでのアルバムの出来はCreedの方が上なのである。それは何故か。1曲1曲は非常によくできているのに曲ごとの色付けの違いがあまり明確でないため、単調でアルバム1枚が長く感じられてしまうのだ。1stが11曲55分、2ndが13曲59分、そして今回は14曲65分(国内盤ボートラ除く)と遂に1時間の大台を突破したのだが、明らかにそれがマイナスに作用している。このバンドの場合、ヴォリュームとしては10曲、いや、9曲ぐらいで丁度いい。"Ghost Of Days Gone By""Still Remains""Wonderful Life""Words Darker Than Their Wings"等々、良い曲は多いだけに惜しい。

ただ、その「無駄に長い」という点は私のような集中力が欠けた人間でなければ全く問題のない話であり、その一点を除けば非常に優れたアルバムである。Slashのアルバム等からKennedyに興味を持った方や「最近80年代の華やかなメタルが復活してきてるけど、当時のパロディっぽいヤツはちょっと…」という向きに推薦しておきたい。

2010/11/30 Tue. 23:03  edit

Category: CD/DVDレビュー:A

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James Blackshaw「All Is Falling」(2010) 

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毎年、夏頃になると律儀にアルバムを出してくるイギリス人ギタリストの最新作。8枚目かと思ったがどうやら9thらしい。

12弦アコギによるめくるめく万華鏡のような音世界から一転、今回は12弦は12弦でもアコギではなくエレクトリック・ギターに持ち替えて製作されたアルバムとなる。だからなのかどうなのか、元々ピアノ等が目立つようになってはきていたが、お得意のアルペジオは随所で聴かれるものの、ここにきてギターが絶対的な主役という感はかなり薄くなっている。

前作「The Glass Bead Game」あたりから素っ気無くなってきていた曲名は1曲目から順に"Part 1"~"Part 8"と番号が振られているだけのいよいよ無愛想なものになっているが、クラシカルで翳りを感じさせる"Part 1""Part 2"から、"Part 3"~"Part 6"の4曲15分を跨いで一気に演奏されるアルペジオ狂い咲き→無機質なカウントとパーカッション・サウンドの繰り返しでエンディングを迎える中盤、再度クラシカルなテイストの"Part 7"を経てドローン調の"Part 8"で幕と、1つのサウンドスケープ作品としてよく考えられた作品になっている思う。ピアノ、パーカッション、ヴァイオリン等も効果的に使われている。

冒頭でBlackshawを「ギタリスト」と書いたが、この作品においては「ギタリスト」としてよりも「コンポーザー」としてのBlackshawのキャラクターが前面に出た作品だ。そんな中にも近作のモノクロームな世界観はしっかり息づいている。深~い作品。

2010/11/26 Fri. 22:55  edit

Category: CD/DVDレビュー:J

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Paula Cole「Ithaca」(2010) 

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アメリカ人女性SSW、Paula Coleの5thアルバム。

タイトルの「Ithaca」はギリシャのイオニア海に浮かぶイタキ島から取られている。Peter Gabrielのツアーに帯同という形でシーンに出現、その後アルバムを3枚発表、出産を契機に音楽ビジネスとは距離を置き、そして復帰、離婚を経て自身の故郷であるロックポートに戻ったことを、ギリシャ神話「オデュッセイア」においてオデュッセウスが苦難の末に故郷であるイタキ島に帰ったストーリーになぞらえているようだ。そんなことが公式サイトのバイオに書かれている気がする。すいません、英語苦手です。ちなみに件のバイオはコチラ。興味のある方はご一読を。

復帰作となった「Courage」(2007)はどちらかと言うとジャズ寄りで全体的に落ち着いた作りになっていたが、ここに来て持ち前のパワー&エキセントリシティを解放、高音でもまったく痩せない地声で歌い上げる一方で強烈なファルセットもさも当たり前のように軽々と使いこなす。楽曲も多彩なゲストを使い分けて(みんなの大好きなTony Levinおじさんも3曲で参加)、ロック色の強い"The Hard Way"からストリングを従えて切々と歌う"2 Lifetimes"まで様々な表情を見せる。

私自身は猛獣のような歌唱を見せる"The Hard Way""Music In Me"やソフトでポップなバラード調の"Come On Inside""Violet Eyes"あたりの曲が好みだが、Marc Ribotにバンジョーを弾かせて脱力気味に歌う"P.R.E.N.U.P."のような曲も含め、どんな曲でもその声でもってして彼女の色に染めきってしまうパワーにはただひれ伏すばかり。

ライヴ活動も積極的に行っているようで、音楽ビジネスへの本格的な復帰という意味合いでは、この「Ithaca」こそ真の復活作と呼べるかも知れない。死ぬまでに一度ナマで聴いておきたい人である。日本ではほとんど忘れられた存在だが、何とか来日してくれんもんかねえ。国内盤出してよ。


Paula Cole"Music In Me"


Peter Gabriel"Don't Give Up"。ColeがKate Bushのパートを務めている1993年のライヴ。

2010/11/15 Mon. 23:07  edit

Category: CD/DVDレビュー:P

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Mick Karn「The Concrete Twin」(2010) 

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現在癌で闘病中と伝えられる元Japanのベーシスト、Mick Karnのソロ・アルバム。昨年ダウンロードで先行発売され、今年になってCD化されたものらしい。

私にとってJapanはかなり遠い存在である。初めて買ったJapanのCDがよりによってシングル収録曲をヴァージョン違いとは言え同じ曲の重複もいとわずにブチ込んだ「Singles」で、その構成もさることながら当時Dream TheaterやKing Crimsonのようなギッチギチにテクニカルなプログレを信奉していた私には音そのものもかなりキッツいシロモノだった。「Singles」は早々に里子に出され、Japanの作品はそれっきり一度も手にした事はない。

でも何故かメンバーのソロ・アルバムはポツポツとではあるが所持していて、特にRichard Barbieri「Things Buried」(2005)とSteve Jansen「Slope」(2007)は私のお気に入り。ということで今回初めて聴くMick Karnにも結構期待していたのだがこれもなかなか面白い作品。ベースは勿論のこと、その他のほぼ全ての音がKarnの手によるもので、全10曲のうち4曲で参加しているPete Rockett(Dr,Per)が唯一のゲスト。Pete Rockettはイギリス人パーカッショニストで、1999年にはBill Bruford等のドラマー/パーカッショニストばかりを迎えたNetwork Of Sparks名義の「One」というアルバムをリリースしている(こちらにレビューあり)。

ベーシストのソロ作品ということで、ベースが楽曲の土台を支えるというよりは、ベース以外の音によってあらかじめ構築された枠の中でベースが前面に出て舞っているような印象を受ける。John Paul Jonesのソロにも同様の印象を持ったが、フレットレスで奇妙なフレーズをうねうねと弾き出すKarnの作品においてその傾向はより顕著。

とは言えまずベースありきの作品というワケではなく、ピアノやギター、シンセ等々を組み合わせたアンサンブルは非常にクールでミステリアス、それでいてポップさも持ち合わせたかなり独特なもの。別に悪い意味ではなく、どこか「芯」の感じられない作品なのだが、この気ままな浮遊感というのもこの人の個性なのだろう。

Jansenのソロとかからも感じたのだが、ロックというよりは「アート」といった雰囲気の、格調高い作品(但しやや変態度高め)。ジャケットのデザインもアーティスティックで好き。

2010/11/08 Mon. 23:49  edit

Category: CD/DVDレビュー:M

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Fish「Yin」「Yang」(1995) 

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Marillionの日本における評価というか立ち位置は「ハマる人はハマるが、そもそもハマる人が少ない」というもので、それゆえに近年は国内盤の発売もない(と書いておいてナンだが11月24日にライヴ・アルバムがディスクユニオンから出ます)が、この「Yin」「Yang」は、バブルの残り香も色濃く漂っていた1995年に「当時最もプログレに優しいメジャーレーベルの1つ」だったポニーキャニオン(何せDiscipline Global Mobile所属の無名アーティストの作品までリリースしていた)から堂々リリースされた、スコットランド出身でMarillionの初代ヴォーカリスト、Fishの1st~4thソロ及びMarillion時代の楽曲をコンパイルしたアルバムである。

タイトルは陰(=Yin)陽(=Yang)から取られており、その名の通り「Yin」はややダークな色合いを帯びた楽曲、「Yang」は比較的ポップで明るい楽曲がメインとなっている。ちなみにアートワークも陰陽を表す太極図と自らの名前(Fish)をモチーフとしたもの。Yesのカヴァー"Time & A Word"ではSteve Howeが、The Sensational Alex Harvey Band(以下SAHB)の"Boston Tea Party"では故人のVoを除くSAHBのメンバーが迎えられているのだが、特に後者は自身のカヴァー・アルバム「Songs From The Mirror」に収録されているにも関わらずこのコンピのために再録音されたもので、この曲に限らずこのコンピ用に再レコーディングされた曲がかなり多く、かなり贅沢な環境で製作された作品であると言えよう(Marillionの曲をはじめ、権利関係に問題があるケースも含まれていると思われるが)。その他、やはり再レコーディング曲である"Just Good Friends""Favorite Stranger"にはSam Brownがゲスト参加、麗しい歌声を披露している。

既にMarillionにおける最終作「Clutching At Straws」(1987)の時点で「欧州で大人気とかいうけど聴いてみると案外とっつきにくい」面は楽曲からもFishのヴォーカルからも払拭されつつあったが、その後ソロ作を重ねるにつれて味のある歌いまわしや秀逸なメロディ・センスはそのままに、繊細なバラード"A Gentleman's Excuse Me"からスコティッシュ色の濃い"Internal Exile"、ドメスティック・バイオレンスを扱ったシリアスな"Family Business"、ダイナミックな"Credo"にMarillionの面影を残す"Toungue"等々幅広く取り揃えた楽曲はより洗練志向となり、Marillion時代の楽曲も含めて聴き易く、入門編としてはうってつけ、かつお得な作品。

こないだ久々に何気なく聴いてみたら妙に心に沁みたので半分勢いに任せてレビューをしたためたが、初めて接したFishのソロ作品であるこのコンピ2枚は買った当初は結構聴き込んだ記憶がある。B!誌のレビューでも高得点をマークしていた。懐かしいな。ちなみにFishは今も活発に活動中。私は楽曲志向からシアトリカル路線への回帰を明確にした感のある「Fellini Days」(2001)を最後に脱落してしまって以来ご無沙汰なのだが、こちらも老いてなお盛んなMarillion同様、元気で頑張って欲しいな、と思う。


Fish"Credo"

2010/11/02 Tue. 22:45  edit

Category: CD/DVDレビュー:F

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