Clogs「The Creatures In The Garden Of Lady Walton」(2010) 

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The Nationalのギタリスト、Bryce Dessner(G)を含む(他のメンバーはViolin+Percussion+Basoon)4人組の5th。私は全然知らなかったのだが既に10年近いキャリアを持つバンドらしい。女性ソプラノのShara Worden、The NationalのヴォーカリストMatt Berninger、弦楽四重奏のOsso等、多数のゲストを招いて製作されている。

使用されている楽器は全てアコースティックで、絵本の向こうの世界のようなジャケット同様、繊細かつ幻想的な音楽を奏でている。スキャット&チャントの多重録音からなるオープニング"Cocodrillo"からクラシカルなチェンバー・ロック寄りの風雅なインスト"I Used To Do"のファンタジックな流れがアルバムのカラーを決定付けている。バンジョーとソプラノをフィーチュアした"On The Edge"は曲名の通り、どこか一箇所をつつけば今にも崩れてしまいそうな繊細で危うい世界観が見事に表現されている。

メロディは牧歌的なフォーク寄りだが、ソリッドでシリアスなチェンバー・ロックのカラーもかなり色濃く反映されており、フォークとチェンバーの美味しいところのみを抽出してブレンドしたような味わい。決して懐古趣味に走ったアルバムではない。ありがちなようで案外そうでもなさそうな音、のような気がする。結構好き。

Dessenerのもう1つのバンド、The Nationalは大きな成功を収めつつあるが、彼のギターがことさら目立つようになっているワケではない(まあ、The Nationalでもそうだが)。ただ、朴訥な衣を纏ったクレヴァーさであったり、丁寧に音を重ねられながらもどこか尖った感覚がThe Nationalに通じるところがないでもない。ブルックリン発の音楽というものがそもそもそういう香りを漂わせているものなのだろうか。


Clogs"I Used To Do"

2010/09/23 Thu. 22:58  edit

Category: CD/DVDレビュー:C

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Thôt「With Words Vol. 1 & Vol. 2」(2009) 

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フランスのサックス奏者、Stéphane(Stephane) Payen率いるジャズ・ロック・ユニットの作品。Thôt(Thot) Agrandi名義の作品から数えると3rdになる、のかな?そのあたりはよくわからん。6月に書いた「CDを注文したら遅れてゴメンねメッセージとともに1枚オマケが入っていて、そのオマケが5年間探し続けていたブツだった」エントリの、元々注文してあった品がこちら。Sax,G,B,Drのカルテットに、曲によって朗読やアルト・サックス、エレクトロニクスといったゲストが混じる構成。

このユニットの何が凄いかと言えば、まずは何を置いてもその演奏のキレの良さ。これに尽きる。クールなジャズの体裁を保ちつつ、リズムは捩れまくり、サックスやギターが不可思議なリズムにうねうねと絡みつき、時にはミニマルやポリリズミックな表情を見せる場面も。かと思えば暴虐的なギターが、あくまでクールな表情を保持しつついやらしい旋律を爪弾いたりする。あるいはバンドがリズム隊と上物の妙な絡み具合はそのままに一丸となって直線的に攻め立ててきたり。とにかくまあ、全編に渡って容赦ない。「Vol. 1」にその傾向が特に強く、一方の「Vol. 2」はもう少しストレートでエッジの立った曲が多い印象。

物凄く複雑で難解なのだが、楽曲がコンパクトにまとめられている(1曲の平均が約5分、最長でも9分52秒)こともあってか、複雑怪奇なだけの音楽が苦手な私でもリピートできる。全くストレスを感じず、心地良さすら覚える(2枚通して聴くとさすがに少し疲れるが)。何だかよくわからないけど凄い、という言葉をこのアルバムに捧げたい。前述のエントリで書いたように、Payenの個人サイトでしか購入できないようだが、そのことがあまりに勿体無く感じる力作。

2010/09/17 Fri. 23:59  edit

Category: CD/DVDレビュー:T

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Pendulum「Immersion」(2010) 

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オーストラリア出身のRob Swire(Vo,Synth)とGareth McGrillen(B,DJ)を中心とする6人組バンドの3rd。国内盤にはボートラ2曲を収録。

打ち込みやシンセ・サウンドを音楽的な核に据えていながらドラマーが在籍しており、また、メタルを音楽的ルーツの1つに持っているということもあり、ダンサブルなエレクトロニクス・ミュージックとロックが溶け合ったり溶け合わなかったりしつつ大胆に共存しているのが作品の特徴。

大仰なオーケストラ・サウンドと8bitゲーム機のピコピコ音が交じり合うイントロ"Genesis"に続けて演奏される2曲目のこれまたインスト曲"Salt In The Wounds"は下品なシンセ・サウンドがこれでもかと鳴り響くダンス・ミュージックで「これが続くとキッツいなあ…」と思いかけたところでシングル"Watercolour"。これもバックはダンス・ミュージックそのものなのだが、有機的で力強く、キャッチーなヴォーカルとメロディが耳を惹く。

その後もエレクトロニクス/ダンス側に針が振れたインスト物と、ソッチ寄りではあるが少し(曲によっては結構大胆に)ロック側に色目を使ったヴォーカル物が大体交互に現れる展開。全体的にキャッチーなメロディで彩られていることもあり、下品なシンセも慣れてくると音の使い方などが面白く感じられてくる。

とは言え私はロックにどっぷりの人間なので作品のハイライトとなるのは本編ラスト3曲。In Flames参加のデス・メタルをフィーチュアした壮大なシンフォニック絵巻"Self vs Self"、Steven Wilsonのじとっとしたキャラがしっかり反映された"Fountain"、ダンスというよりは単なる地味目ミッド・バラード(こういうのが大好きなんですよ私)"Encoder"という流れは、特に"Self vs Self"でメタリックがギターがいきなりギュワーン!と現れることもあって、それまでと一線を画している感がある。

国内盤オビに「ドラムン・ベースを基盤に宇宙規模のシンフォニック・ロックを轟かす」とあって面食らったが、乱雑でカラフル極まりない作風はかなり面白い。充実した作品。


Pendulum"Watercolour"

2010/09/11 Sat. 01:37  edit

Category: CD/DVDレビュー:P

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Mike Portnoy脱退によせて。 

Blabbermouth.Net-Mike Portnoy Quits Dream Theater

だそうですよ奥さん!

そりゃ長いことバンドをやっていればメンバーの出入りのひとつやふたつあってもおかしくない(現にヴォーカリストやキーボーディストが替わっているわけだし)がさすがにMike Portnoyが抜けるというのは全くもって想像の埒外だった。

「近頃他のバンドやプロジェクトでやってるほうがDream Theater(以下DT)より楽しかった」
「20年間作曲→レコーディング→ツアーの繰り返しで燃え尽きそうだったんで少しDTを休みたかった」
「でも他のメンバーは休むよりも自分抜きで続けることを決めた」
「自分抜きのDTなんてあり得ない!でも今の状況には耐えられないから自分が犠牲を払ってバンドを去ることにした」

大雑把に要約すればこんな感じ?DTが活動してない時も色んなプロジェクトに顔を出して休もうとしなかったのは自分じゃないの!というツッコミを入れたくなるが、まあ決まったものは仕方が無い。残ったメンバー側の主張にも耳を傾ける必要があるが、アホの子じゃないから醜い罵り合いにはならないだろう。というか、DTは私を洋楽(主にプログレとメタル方面)の底無し沼へ誘ったバンドで、今まで聴いた全ての音楽の中でもMarillionと並んで思い入れがあるので、彼らの批判合戦など見たくもない、というのが偽らざる本音。

バンドのエンジンであり司令塔だった人間が去ったのだからこれはもう大ピンチ以外の何者でもないが、個人的には近年(特にRoadrunner移籍後)のセルフ・パロディ化著しいマッチョ・プログレ・メタル路線にはかなり辟易していた(最新作なんてレビューすら書いてないし。通算で10回ぐらいしか聴いてないし)ので、上手く新しい血を導入するなり、ジャム・セッションをダラダラまとめるような現在の曲作りの流れを根本的に見直すなりすれば、楽曲面において新しい地平を開くチャンスでもある。個人的に思い入れがあるのは4th「Falling Into Infinity」あたりまでなのだが、2nd~4thに収録されていた"Learning To Live""Lifting Shadows Off A Dream""Trial Of Tears"といったJohn Myungが歌詞を書いた楽曲のような、心の底に響くようなディープで美しい曲をまた書いて欲しい。

ドラマー探しは難航するだろうが、とりあえずLaBrie人脈でMike Manginiを呼んでくるとか、まだ今のうちなら安いギャラで呼べるかもしれないMarco Minnemannとか、最強の飛び道具としてTerry Bozzioを連れてくるとかしてとりあえず1枚作ってみて、後のことはそれから考えてもいいのではないかな。マイキー、バンド双方に幸多からんことを。


"Learning To Live" DTで一番好きな曲。この動画で7:05あたりからの舞い上がるベースのフレーズで涙腺が決壊しそうになるんですわー。

2010/09/09 Thu. 23:06  edit

Category: ライヴレポ、雑記等

Thread: HR/HM - Janre: 音楽

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Nik Bärtsch's Ronin「Llyrìa」(2010) 

llyria.jpg

ECMからは3作目、通算では6作目となるNik Bärtsch(Baertsch、Bartsch)率いるピアノ+サックス、クラリネット+ベース+ドラム+パーカッションのクインテット、Roninの新作。タイトルにあるLlyrìa(Llyria)というのは、海底に住む発光性を持つ動物で、最近発見されたものだそう(ググッてみたが詳細は何もわからず)。

ECMデビュー作「Stoa」までの極端な構築主義が行き着くところまで行ったせいか、前作「Holon」から音楽性にやや拡散の兆しが見え始めていたが、今回もそんな「Holon」の路線を引継いでいる。静謐なムードにサックスが映える"Modul 48"、どんなに奇妙なリズムでもスムーズに聴かせていたのに、逆に6拍子の繰り返しをカクカクと引っかかりのあるリズムに解体した"Modul 52"、ピアノ、ベース、パーカッションがやたらと切れ味の良いフレーズを繰り出す"Modul 47"、ドラムとパーカッションがダイナミックな"Modul 51"等々。

ブイブイ言わせるベースが少しだけ退いて、ミニマルで肉感的な側面を強調するのではなく、そういった部分を楽曲の中の一要素として溶け込ませる方向へと進んでいる。刺激的かどうか、の一点においては「Stoa」が上だ(こちらも大概慣れてきたしな)が、バンドの音楽的なコアはそのままに高い一般性を獲得した佳作。「Holon」から順調に進化していると言えるだろう。ついつい繰り返し聴いてしまう聴きやすさと中毒性は健在。

で、国内盤は出ないんですか?

2010/09/05 Sun. 02:03  edit

Category: CD/DVDレビュー:N

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