こんなこともある。 

インディー・レーベルや自主制作系のCDは「見つけたときに買え」が鉄則である。何せメジャー流通の製作物とは違い、プレス数が小量な上、基本的にそれが売り切れたらその時点で絶版。その時点でその作品が手に入る確率はほぼゼロになってしまうからである。

フランスのサックス奏者、Stephane Payenが中心のユニット、Thôt(Thot) Agrandiの「Work On Axis」という作品が6年ほど前に出ていて、これが某雑誌で10点満点の評価が下されていて「欲しい」と思いずーっと探していたのである。しかしどこにも売っていない。そもそもその雑誌に載ったのがリリースから1年経ってからのことで、アマゾン等のめぼしい大手系は全滅。東京に出たときに店をいくつか回ってみたがやはりどこにも置いてない。私にとっては幻の1枚となっていた。

そして時は流れて2010年。Thôt名義の新作が2枚同時に出ていたことを知る。しかしこの新作、「自主制作なのでStephaneの個人サイトでしか手に入らない。本人が発送してくれます」とのこと。早速、なくなってしまう前に2枚まとめて注文。

注文して数日後「今ロードに出てるから、戻ったらすぐ発送するね!」という返信メールが。で、それから3週間ほどして届いたので中身を開けたらなぜかCDが3枚入っている。…おお、これは「Work On Axis」そのものではないか!

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CDの横に並べてあるのが同封されていたメッセージ。コピー用紙に手書きという手作業感溢れるフォーマットで「ムチャクチャ遅れてゴメンね!お詫びにCD1枚タダであげるよ!楽しんでね!」と(ザックリ訳せば)書いてあった。そのフリーCDが4年間探しても見つからなかった幻の1枚なのだから人生わからない。Stephane、オマエ、イイヤツ!

しかし管理人がワールドカップに夢中であまり集中して聴けていないのであった(断っておくが、超にわかです。サッカーをこれだけ熱心に観たのは25年ぶり-プラティニ伝説のオフサイドがあったトヨタカップ以来-という有様)。あらら…。

2010/06/29 Tue. 22:01  edit

Category: ライヴレポ、雑記等

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Marillion「Seasons End」(1989) 

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Marillionの5thアルバム「Seasons End」を手に入れたのが忘れもしないいつだったか…(各自「忘れとるやないの!」というツッコミを入れてください)、多分ハタチになるかならないかの(2012/02/19訂正。20世紀が終わる直前、私が大学を留年してウダウダしていた)頃だったと思う。当時私は四国の片田舎の大学に通っていて、中学時代の同級生で埼玉に住んでいたK君の家に遊びに行ったついでに東京のどこかのレコード屋で手に入れたのだった。

K君の家に遊びに行ったついでに、などと書いたが実際は「MarillionのCDを手に入れる旅の寝床を確保するためにKのところに遊びに行くフリをした」と言ったほうが正しい。勿論そういうつもりは微塵もなかったが後から考えたらそう言わざるを得ない。何せ滞在中、新宿や渋谷等のタワレコ、HMV(そういえば渋谷HMVが閉店だそうで…)といったレコード屋を回りまくって、当時国内盤が存在しなかった「Seasons End」「Holidays In Eden」(以上2枚は今も国内盤は廃盤のまま)「Clutching At Straws」(これは数年前に紙ジャケで再発された)等のアルバムや「B'Sides Themselves」のようなコンピ物をガシガシ買っていたからなあ。戦利品のCDを抱えてホクホク顔の私を見て「良かったね」と言ってくれたKはいいヤツだが、本当にCD漁る以外のことを何もしていないのだからつくづく悪いことをしたと思う。

ただまあ、当時はまだインターネットという言葉も一般的ではなく、「地元にタワレコがない地方在住者がネットで輸入盤を気軽に購入する」などということは想像すらできなかった時代である。世界で1番好きなバンドの作品を手に入れることすらままならない若者が、まさにその世界で1番好きなバンドのCD群を目にして平常心でいろというのがどだいムリな話で…。大昔の話である。

2代目VoのSteve Hogarth加入20周年を記念して(?)Hogarth加入後最初のアルバム「Seasons End」を再現したライヴを含む3枚組DVD「Out Of Season」(バンドの公式サイトより販売。興味のある方はコチラからどうぞ)を観て、唐突に「Seasons End」のことを書きたくなった。

というワケでいきなり回顧モードになってしまったがアルバムの解説をしておくと、シアトリカルで影のある攻撃性を帯びていた初代VoのFish脱退を受け、ソフトで透明感のある声を持つSteve Hogarthを迎えて製作されたアルバムである。そもそもデモ・テープはまだFishがいる時に製作されているためか、ブリティッシュ・テイスト溢れるハード・ロックという方向性そのものは4th「Clutching At Straws」から変わっていないが、それだけにFishとHogarthの個性の違いがアルバムのカラーにクッキリと反映されているのがわかる。

Fishのキャラクターでは絶対にありえない(彼らにしては)派手目なハード・ロック“Hooks In You”はその最たるものだし、プログレ寄りの大作“The King Of Sunset Town”を含め、全体的に明るいというか、Fish時代の仄暗いムードからガラッと趣の変わった清冽さを感じさせる。

“Berlin”のようなFish時代をやや引きずったような影のある曲から前述の“Hooks In You”まで幅広いカラーの曲を上手く歌いこなしているが、現在に至るまでライヴでのハイライトとなっている“Easter”や、環境汚染をテーマとした荘厳な大曲“Seasons End”でHogarthの繊細な声が最も活かされているように感じる。個人的には後者はこの世で最も美しい曲の1つ。

穏やかな叙情性が最大の魅力の、ポップな中に壮大なドラマ性と深い奥行きを感じさせる作品で、冬から春へ移り変わる中に空気の冷たさを感じさせる3月半ばに物凄く聴きたくなる。知られざる傑作。現在は1997年にリマスターの上、デモ等やシングルB面を追加した2枚組が流通している。アルバムから漏れた“The Bell In The Sea”がボーナス・ディスクに収録されているのだが、これがまた名曲なのですよ。


Marillion“Seasons End”

2010/06/23 Wed. 22:53  edit

Category: CD/DVDレビュー:M

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Anathema「We're Here Because We're Here」(2010) 

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英国産ゴシック・バンドの8th。過去の曲をセミ・アコースティックでリアレンジの上再録した「Hindsight」からは2年ほどのインターヴァルだが、純然たる新譜としては「A Natural Disaster」以来実に7年ぶりとなる。私が購入したのはDVDオーディオ付のデジパック限定盤。

Blood Red Skiesなジャケットを逆さにして振ると赤い血が滴り落ちてきそうなじゅわっとした手触りが「涅槃メタル」とでも呼べそうな虚無感を感じさせた「A Natural Disaster」のサイケデリック的な浮遊感溢れるアレンジは後退(ついでにただでさえ希薄なメタル色もさらに後退)、地に足のついたウェットな感触のプログレッシヴ・ロックといった風情に仕上がっている。これまでのダウナーなイメージは、ジャケットに描かれた1人の男と水面を照らす陽光のようなポジティヴさを感じさせるものに取って代わっている。

「Hindsight」を経て感傷的なメロディの演出力にはさらに磨きがかかっており、女性Voをコーラスに起用した“Summernight Horizon”“Everything”は泣きのメロディを引き立てるピアノが絶妙。その“Everything”から一転、陰や重さを感じさせるムードの“Angels Walk Among Us”~“Presence”~“A Simple Mistake”の流れも良い。Steven Wilsonがミックスを担当したとのことで、あえて音圧を抑える彼の音作りの傾向がAnathemaの繊細な世界観とよくマッチしている。

いかなる事情があったのか、「新作、出るよ」というアナウンスから3年以上経ってのリリース(しかも合間に「Hindsight」をはさんで)となったが、長い間待たされた甲斐があったと言える出来になっている。一見さんには少し地味に聞こえるかもしれないが、良いよ。できればこんなクソ暑い時期ではなく、気温が下がってくる秋ごろに酒を飲みながら浸りたい逸品。


Anathema“Thin Air”

2010/06/10 Thu. 22:23  edit

Category: CD/DVDレビュー:A

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The National「High Violet」(2010) 

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2005年の3rd「Aligator」と4th「Boxer」で(日本以外では)ジワジワと人気が上昇していたNY発5人組の5th。ここにきて人気も(日本以外では)本格化してきたようで、公式サイトのツアー・スケジュールを見ると半年先までビッシリ。欧米各国でひっぱりだこの模様。

「Aligator」→「Boxer」ときて「もっと尖った音になる」という私の予想(というか期待)に反して、ドラムを筆頭に音はやや柔らかくなった。楽曲の方向性は前作「Boxer」の延長線上にあるが、歌は「Aligator」の熱を帯びたヴォーカリゼーションが復活していて、全体的にはやや饒舌になった印象。

それはまあいいとしても、前作の“Fake Empire”“Brainy”といったような強力な楽曲がないことがこのアルバムのウイークポイントになっている。“Afraid Of Everyone”“England”等々良い曲はあるのだが、前作のようなフックやメリハリに欠ける、言い換えるとアルバムの中で陰影があまり感じられず、それが個々の楽曲の印象の薄さに繋がっているような気がする。

ゲストを多数迎えたインストはより緻密さと奥行きを増し、慎重に重ねられた豊かなサウンドをヘッドフォンでじっくり聴き込むとか、あるいは音の波にただ浸るには非常に適したアルバムで、これはこれで中々の快作ではある。実際、購入してから結構な回数聴いているし、聴くたびに「いいなあ」とも思っている。ただ、前作「Boxer」がとにかく私にとっては00年代を代表するほどの傑作なので、期待が大きかった分、どうしても向けられる言葉が厳しくなってしまうのだ。どうしても「まずは『Boxer』を聴いてね」という結論になってしまうなあ。

ついでに書いてしまうと、正確には「ヘッドフォンをして」「歌詞カードとにらめっこしながら」じっくり聴き込みたいアルバムなのだが今回も歌詞カードはなし。そういうところ、ケチらないでよ。私は輸入盤を購入したが、国内盤には歌詞カードはついてるんですかね?もしついているのなら国内盤を買うべし。

2010/06/02 Wed. 21:36  edit

Category: CD/DVDレビュー:N

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