非思量

Shining「Blackjazz」(2010)

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スウェーデンノルウェー産5人組の5th。2005年の3rd「In The Kingdom Of Kitsch You Will Be A Monster」がKing Crimson風シリアス路線からホラー映画のBGM、さらにはアコースティック・ジャズ、果てはムード・チェンバーまで突っ込んだたった39分でお腹一杯のゴッタ煮アルバムで、出来の良し悪しはともかく聴いていてとにかく疲れるので4枚目は何となくスルーしてしまったのだが、コチラを読んで興味を持ったので購入。

一言で言えば「どうしてこうなったのか」。これしかない。カミソリのごとくシャープなドラムが空気を切り裂く中、刺々しいシンセは雷鳴のように轟き、下卑たギターやサックスは槍のように降り注ぐ。そんな毒毒しいサウンドでもってブラック・メタルやインダストリアル、ポスト・ロックをアヴァンギャルドというミキサーにブチ込み「Will it blend? Yes, it blends!」と笑顔を振りまきながらミキサーの中で紫色になった何かを嬉々としてブチまけるような、そんな音楽。非常にタチが悪い。

個人的にこの作品のハイライトは5曲目の“Healter Skelter”。このサックスのフレーズ、3rdに収録されていた“Redrum”という曲からの引用なのだが、ドラムとサックスが一体になって僅か2分で駆け抜ける物凄くカッコいい曲が5分半にエクスパンドされており、「一気に駆け抜けようとして両足が複雑骨折を起こして坂道を転げ落ちる」ようなグッチャグチャな姿に変わり果ててしまっている。この曲に限らず、もう最初から最後まで押しの一手、ラストに収録されたKing Crimsonのカヴァー“21st Century Schizoid Man”も「現代に蘇った『Earthbound』」といった趣きで言葉も無い。「Crimsonのカヴァーが収録されているから」という理由だけでこのアルバムを買った古典プログレ・マニア(そんな人がいれば、だが)はどんな感想を抱くのだろうか。ちなみに演奏は非常に統率が取れているし「音そのもの」は意外と聴きやすかったりする。

この作品を聴いたら、恐らく反応は「絶賛」か「嘔吐」。このどちらかしかないと思うし、メンバーもそれでいいと思っているのではないか。まあ騙されたと思って聴いてみなせえ。吐いても知らんけど。

Asia「Omega」(2010)

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フジロックのロゴがAsiaのバンドロゴのパクリだと思ってる人この指止まれ!…あれ、私だけ

2007年のツアーの時は「新作を作る予定はない」と語っていたはずなのによほどいい思いをしたのか新作を発表、高い評価にさらに気を良くしたか勢い余って平均年齢オーヴァー60にして再結成2枚目まで出してしまった。

John Wettonがクッキリとした輪郭のあるメロディを歌えばバックが誰であろうが彼の色に染まってしまうワケで、そこにサウンドがどう絡むかでバンドの特色が決まるといっても過言ではあるまい。そういう意味では十年どころか三十年一日の如しなHoweのペケペケ・ギターとDownesのシンセ、そして個人的には驚くほど印象に残らないフレーズしか叩けないPalmerのドラム(彼のドラムが好きな人、すいません)が生み出すサウンドはまさにオリジナルAsiaの世界に他ならない。

もう全員がいいトシをした大ヴェテランなので、この期に及んでこっちが引っくり返るような仕掛けは用意されていないが、軽妙なシャッフルの“I'm Still The Same”や8分の6拍子を用いた少し南米の民俗音楽を思わせる崇高なバラード“There Was A Time”(この曲が一番好き)といった新しいアプローチもチラホラ。そんな中で王道路線を行く“Finger On The Trigger”“Light The Way”も光っている。70年代にレイドバックしたような日本盤ボートラの“Drop A Stone”はさすがにやや浮いている感がなきにしもあらずだが。

来日公演ではHowe不在時の曲も演奏したとのことで、メンバー間の関係も良好なのではないかと推察される。Wettonの声は前作以上に若々しさを取り戻しており、これはまだ続きがあるかも知れんな。しかしさっきJohn Payne在籍時の曲をYouTubeで初めて聴いて「コッチの方が好きかも」と思ったのはここだけの話だ。

Exivious「Exivious」(2009)

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CynicのTymon(G)とRobin Ziethorst(B:CynicのベーシストはSean Maloneだがスタジオのみの参加で、ツアーはこの人が弾いているらしい)プラスTexturesというCynicのフォロワー系バンド(私は未聴)のMichel Nienhuts(G)、Stef Broks(Dr)から成るテクニカル・フュージョン・メタルのプロジェクト第1弾にしてラスト作。私はこのアルバムを手に入れた日に解散のニュースを知りました。およよ。限定1000枚の豪華版(解散コメントに曰く、完売御礼だそう)とデジパック版(こちらはまだ買えるようです)が存在するが、何せ値段が倍近く違っていたので私は素直に安い方の後者を購入。

はじめにサラッと聴いた感じではCynicやGordian Knotといった系譜に連なる音かなと思ったが、あそこまでミステリアスだったりエキゾチックだったりすることはなく、割と素直にジャズ・ロック~フュージョンとメタルの境界線上を行ったり来たりしている印象。あまりゴリゴリしておらず、フレットレス・ベース込みのもやっとした音像はあの界隈のそれに近いのだが、さほどアトモスフェリックな空気は強調せず、むしろ変態的なキメの嵐や変拍子でテクニカルな側面をわかりやすく提示する作風。

結構ジャズ・ロック~フュージョン色を濃い目に帯びた曲が多いのだが、そんな中でMegadethばりの偏執的なカッティングを忍び込ませてみたり、唸るツーバスを存分に炸裂させたりと、テクニカル・メタルというありふれた枠組みの中でエキサイティングな瞬間を随所でクリエイトしている。非常に洗練された、完成度の高い作品。このテの自主制作盤は「気が向いた時に買おう」と思って気が向いた時には既に入手困難だったりするので、興味がある方は今すぐゲットすべし。

余談だが、この作品の非メタルなところに魅かれたメタラー諸氏にはAlex Machacek,Jeff Sipe,Matthew Garrisonの「Improvision」をレコメンドしておこう。これもなかなかの出来。


Exivious“Asurim”

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