非思量

Fear Factory「Mechanize」(2010)

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バンドから追放されたハズのDino Cazares(G)がいつの間にかBurton C. Bell(Vo)と仲直り、ドラマーとベーシスト(Cazares脱退後はギターにコンバート)を元Strapping Young Ladの2人に差し替えて「いや、これオレのバンドだけど何か?」みたいな顔して(かどうかは知らんが)リリースした7th。何がどうなってこうなったのか、彼らの動向に疎い私にはサッパリわからないのだが、気に入らないヤツを追い出したつもりがいつの間にか追い出された形になっていた2名は今、何を思う。

実はCazares脱退前のFear Factoryは3rd「Obsolete」しか聴いたことがないのでそれとの比較になってしまうが、先鋭的かつ直線的、緻密極まりないインダストリアル・サウンドが何故かここへ来て先祖返りを起こしていて、かすかにゆらぎを感じさせるスラッシュ・メタルに通じる味わいを醸し出している。これは曲調やサウンドの質(正直、もっと厚みが欲しい)もさることながら、Gene Hoglanとオリジナル・メンバーであるRaymond Herreraという新旧ドラマーの個性の違いも理由の1つとしてあるような気がする。どちらが優れているとか、そういう話ではなくて。Hoglanは大好きなドラマーの1人だが、個人的にはHerreraの方がFear Factoryのキャラクターに合っているように思う(オリジナル・メンバーだから当然なんだが)。

まあBurton C. Bellが不器用そうにメロディをなぞる普通声パートこそがこのバンドの最大の萌えポイントである私にとっては「Obsolete」の存在を頭から消しさえすれば結構楽しめるアルバムである。「Archtype」も好きだったからこれだって問題ないっす!前作「Transgression」のドン詰まり感は解消されており、攻撃的な中にリリシズムを漂わせるラストの“Final Exit”へ向けて、刻みに刻むギターとドラムのシンクロっぷりが気持ちいい楽曲群が押し寄せてくるサマはCazaresが復帰したからこそ成し得るFear Factoryならではの世界。

結論を言えば、仲直りの第一歩としては悪くない、そんな感じ(仲直りしたのは4人中2人だけですが)。ただ最初に聴くFear Factoryのアルバムではない。このバンドに興味があるのなら「19xx年、地球は核の炎に包まれた」的な北斗の拳を思わせる荒廃した世界(そういう設定の作品ではないが)をリアルに聴き手の脳内に描き出させることに成功した「Obsolete」を先に聴いてほしいところ。“Resurrection”なんて、超がつく名曲ですよ。


“Powershifter”


「Obsolete」より“Resurrection”

Pamela Moore「Stories From A Blue Room」(2006)

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どこにニーズがあるのか全くわからないまま進むPamela Moore祭り第2回。第1回はコチラ

彼女は80年代に2枚のソロ・アルバムを出しているらしいが当然未CD化。今回紹介するアルバムが最新作にして現在マトモな流通で手に入る唯一のソロ・アルバムということになる。アマゾンを見てみるとリリース日は「Operation:Mindcrime II」が出た直後ということで、なかなか商売上手なところを見せている(結果が伴ったのかどうかは知らん)。

ちなみにプロデューサーはQueensryche「Rage For Order」を手がけたNeil Kernon、ギターはNevermoreのJeff Loomis(ラストの1曲のみLoomisに加えてMichael Wiltonが参加)、冒頭2曲でBerlinのTerri Nunnが参加と、微妙にマニアックなところを突いた人選がなされている(レビューの下調べをするにあたってココに辿り着くまで「何となく名前は知ってるけど…誰だっけ?」な名前ばかりで少し困っていた。感謝!)。

内容はRadarから激変していると言ってもいいだろう。大雑把に言えばグランジ通過後のダークな装いにプログラミング・サウンドを軽くまぶした00年代の音。Queensrycheに例えれば「Empire」からいきなり「Q2K」あたりにすっ飛んだような感じ。曲によってはゆらめくキーボードが前に出てさらにモダンになり、Queensrycheを飛び越えてGeoff Tateのソロ・アルバムに似た佇まいを見せる場面もある。

そんな感じの音なのでPamelaのヴォーカルもRadarやQueensrycheで用いた唸るような高音はここぞというところで稀に顔を出す程度で、全体的には起伏の少ないメロディをささやくように、あるいはやや崩し気味に歌うスタイルがメイン。それでいてJeff Loomisは時折ピロピロとフラッシーなソロをかましていてそれがまた不思議な感じ。

ファン向け、というかマニア向けの域を出ない作品だとは思うが、繊細なヴォーカルが聴ける中盤の曲などは結構好みだし、Pamelaの多彩なヴォーカルを味わえるアルバムとしてはなかなか。ラスト2曲は物凄く(今の)Queensrycheっぽいけど、狙ったのか?こんなところ狙ってどうするんだという気もするが。80年代初期に出した2枚、どんな作風だったんでしょうね。どこかの物好きが発掘してCD化してくれんかしら。その日が来るまでPamela Moore祭りはしばし(多分永遠に)お休み。


Pamela Moore“Cross My Heart”


おまけ:Eden's Curse“Angels And Demons”
Pamelaが白ずくめなのはやはりSister Maryの印象が強いんでしょうなあ。

Radar「RPM」(2000)

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先日我が家を訪ねた友人(40代♂)に今回紹介する作品を聴かせてみた所、大変気に入っていただけたようなので唐突にPamela Moore祭り開催ー。なんと2回に渡って開催(つまり紹介するCDが2枚もあります)!

名前を聴いてすぐにピンと来る人はQueensrycheのファンと、あとEden's Curseというバンドが2008年にリリースした2ndを持っている人(私は持っていません)ぐらいだろう。彼女は最早クラシックと言っても差し支えないQueensrycheの88年作「Operation:Mindcrime」にシスター・メアリー役で参加してハスキーかつパワフルなヴォーカルを披露、ライヴ作品「Operation:Livecrime」のヴィデオ/DVDでも見事なブロンド・ヘアーと共に鮮烈な印象を残した人である。Eden's Curseには恐らく「Operation~」が大好きなメンバーがいるのだろう。“Angels And Demons”という曲でゲスト参加している。

その後、Queensrycheの「Live Evolution」や「Operation:Mindcrime II」までほとんど表舞台に出ることは無かった(ハズだ)が、その潜伏期の2000年にこっそりリリースされたのが今回紹介するRadar「RPM」である。メンバーはPamela Moore(Vo)を筆頭にDebbie Michels(G/Vo:以上2名が女性)、Scott Novello(B/Vo)、Steve Salerno(Dr)、Russ Salerno(Key/Vo)の5名。

この作品をリリースしたKivel Recordsは80年代のメロディック・ハード・ロックを意識したサウンドのアルバムをメインに取り扱っていて(このレーベルは現存しているが、今もそのテの音を扱っているかどうかは不明)、「RPM」をリリースした頃は作品のコメントにやたらと「80s」「Melodic Rock」という言葉が並べ立てられていたが、「RPM」はそんなレーベル・カラーを100%体現したメロディックなアメリカン・ハード・ポップである。分厚いキーボード、程よくエッジの立ったギター、ゴージャスなコーラス、そしてジャケ裏等に載っているモワモワのロング・ヘアーをしたメンバーの写真。これだけでもう完璧である。

いやこれだけではダメで肝心の曲が良くないと話にならんのだが、これがなかなか侮れないクオリティ。パワフルかつ華やかなハード・ロックをメインに、バラードやドラマティックな正統派寄りのナンバーも交え、このスタイルの教科書どおりとも言えるベッタベタぶりだが、Voのみならず演奏や録音も実にソツのないプロフェッショナルな仕事ぶりゆえ、そのベタぶりが逆にたまらない。

何せこのテの音楽が完全に死んでいた時代にリリースされたブツなので知っている人はほとんどいないと思うが、Wig WamとかH.E.A.T.とかがウケている(んですよね?)今なら逆にアリもアリ、大アリである。リリースのタイミングが遅すぎたとも言えるし、早すぎたとも言える不幸なアルバム。上の段落の「分厚いキーボード、程よくエッジの立ったギター、ゴージャスなコーラス、そしてジャケ裏等に載っているモワモワのロング・ヘアーをしたメンバーの写真」にピクリと反応してしまった人は買っても損はない。日本のアマゾンだとボッタクリみたいな値段で売っている(このレビューを書いている時点で中古が3,958円。アホか!)ので本国のアマゾン(12ドル程度からあります)からどうぞ。

Univers Zero「Clivages」(2010)

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99年の再始動以来、3枚のスタジオ盤と2枚のライヴ盤(うち1枚は80年代のアーカイヴ盤)をリリースと、比較的順調に活動を続けているチェンバー・ロック界の暗黒魔人Univers Zeroの新作(スタジオ9th)。ドラマーにして首領のDaniel Denisを筆頭に、バスーン、オーボエ、クラリネット、鉄琴、ベース、ヴァイオリンといったアコースティック主体の様々な楽器を複数担当する総勢7名のメンバーにゲスト3名(ドラム、アコーディオン、チェロ)を加えた編成。ゲストでドラム(ラストの“Les Cercles d'Horus”にのみ参加)としてクレジットされているNicolas DenisというのはDanielの息子?

一聴して感じるのはサウンドの持つ生々しいエネルギー。Michel Berckmans(Basoon,English Horn,Oboe,Melodica)の自宅でレコーディングされたことでコスト面の制約が減ったことが大きいのかも知れない。その点では再結成後の作品とは明らかに一線を画していて、特に人間臭さというか体温が感じられなかった(私はそこが好きだったんだが)「The Hard Quest」や、ミュージック・コンクレートの領域にまで踏み込み、抽象的な印象を強めた「Implosion」とはまるで異なるライヴ感溢れる音が全編を支配している。

楽曲も充実。突進してくるのではなく真上にピョコピョコ飛び上がるような独特なリズミカルさの“Les Kobolds”に始まり、2nd「Heresie」の「暗黒」という言葉を体現した音世界を現代に蘇らせた“Warrior”、満月に照らされた青白い闇を思わせる、じわじわと来るイントロから一転、爆裂ジャズ・ロックが唸りを上げる“Straight Edge”、「The Hard Quest」のラスト曲のうら寂しさに通じる“Retour De Foire”などなど、聴きどころは多い。再始動後のテイストを引き継ぐDenisの曲と5th「Heatwave」までの空気を漂わせる出戻り組(Andy KirkとMichel Berckman)の曲、Univers Zeroの持ち味を尊重しつつ新しいテイストを持ち込んだ若い(?)Kurt Budeの曲が上手く共存している。

鉛色の空の下でモノクロのピエロがダンスを舞っている様な、どことなくユーモラスな響きを持った曲ですら狂気じみた何かが漏れ出してくるバンドの個性は健在。多分、変拍子と不協和音の効果なのだと思うが、どこを切っても薄気味悪い(褒め言葉です)。「Ceux Du Dehors」「Uzed」が好きだったけど再結成後の作品はちょっと…という人にもオススメできる。皆で国内盤を買って来日公演を実現させよう!

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