非思量

Brother Ape「Turbulence」(2009)

turbulence.jpg

スウェーデンのシンフォニック・ロック3人組の4th。過去作は未聴(3rdはさっき注文したばかり。下のYouTube参照)。

シンフォ・ロックと書いたが、じわじわと緊張感が満ちていくイントロに続くドラムンベース調のプログラミング・サウンドからスピーディーに駆け抜ける“Welcome Future”からして冷たい感触と浮遊感を併せ持ったモダンな色合いが濃い。ナイーヴな声質のヴォーカルが歌うメロディもサウンドに沿ったクドさのないもの。

その割にはギター・ソロはかなりこなれたハード・ロック的なものでなんじゃこりゃ、と思ったらメンバーは80年代から活動している(バンドは90年代に結成)とのことで、結構なヴェテランなんですな。恐らく根っこにあるのはGenesisやYesといった古典プログレなのだろうが、今のエッセンスを上手く取り込んで、オリジナリティ溢れる立体的なサウンドに仕上げている。ストリングスによる叙情感やサンプルっぽい音によるSF的空気、あるいはエスノ的ムードの演出も巧みで、個人的過ぎて恐縮だが夜の阪神高速を流す時にBGMにしたい音。大好き。

マッチョイズムを省いたDream Theaterという印象が一瞬だけ頭をよぎったり(全然似てませんよ)、Voの声質やハードな中に湿り気を帯びた音像がTrevor Horn在籍時のYesを想起させたり(全然似てませんよ)、タイトなリズムがMute Mathを思い起こさせたり(略)。買ってから数日経ったがこればかり聴いている。いいなあこれ。おすすめ。


Brother Ape“Welcome Future”


Brother Ape“New Shangri-la”
3rdアルバム「Shangri-La」より。メロディがGenesis“It”を想起させるリリカルなポップ・チューン。ギター・ソロも実にナイス。YouTubeでこれを聴いた瞬間に米Amazonでこの曲が入ったアルバムを注文してしまった。

Halford「Winter Songs」(2009)

wintersongs.jpg

Judas PriestのVo、Rob Halfordが自らのソロ・プロジェクト、Halfordを再始動。7年ぶりの3rdアルバムはなんとクリスマスを意識したアルバム。全10曲中、“We Three Kings - 賛美歌第二編52番「われらは来たりぬ」””Oh Come O Come Emmanuel - 賛美歌94番「久しく待ちにし」”といったパブリックイメージとかけ離れたカヴァーが6曲を占めている。ちなみにRob以外のメンバーはRoy Z(G)、Metal Mike Chlaciak(G)、Mike Davis(B)、Bobby Jarzombek(Dr)、あとブックレットにその姿は写っていないがEd Rothがキーボーディストとしてクレジットされている。

鍵盤奏者がメンバーとしてクレジットされているのがこの作品のミソで、しょっぱなのオリジナル“Get Into The Spirit”こそ例のヒステリック声で全編通すHalfordらしいゴリゴリした曲だが、続く“We Three kings”“Oh Come O Come Emmanuel”(ブックレットのクレジットではEmmanuelではなくEmanuelになっているが、まあ同一の曲だろう)はピアノも入っていてどことなくHelloween風。彼らにしてはソフトな仕上がりなのだが、Sara Barelles/Ingrid Michaelsonのカヴァー“Winter Song”はもっとソフトなピアノ・バラード。途中からはストリングが入ってくるが、ギターのトーンは終始クリーン。これまでのイメージとは180度正反対と言ってもいい雰囲気になっている。後半もオリジナルのR&R風や賛美歌(“Oh Holy Night - さやかに星はきらめき”等)も飛び出すがキーボード/シンセが前に出ていてギターは控えめ、メタル色はほぼ皆無で、まがりなりにもメタル・ゴッドの称号を持つ人のアルバムとしてはかなり異色である。

これはあくまで私個人の憶測だが、この作品は以前のようなハイトーンのメタル・ソングを歌うのが苦しくなってきたRobの、クリスマス・アルバムという皮を着た実験なのではないかなあ、という気がする。というのも、唯一ゴリゴリしている“Get Into The Spirit”もレンジとしては「無理にその声で歌わなくてもいいのでは?」という程度の高さなのね。メタル・シンガーとして限界が近い(既に限界だと私は思っているが)ことを見越して低中音域で歌えるスタイルをこのアルバムを通して模索している、通して聴いてそんな印象を抱いた。

まあ私は「Angel Of Retribution」のボーナスDVD収録の、ライヴでアコギを従えて朗々たる歌唱を聴かせる“Diamonds And Rust”に深い感銘を受けた身なので「とっとと別の道に進めば?」と思うのだが。バックをディストーションをかけたギター+ツーバスのドラムからアコギ+ピアノ+ストリングスに替え、あの独特な声だからこそ切り拓ける新境地を見せて欲しいのだ。いやマジで。

しかし世界中のヘヴィーメタルメイニア達がそれを許さないんだろうなあ。来年で還暦になんなんとする老いたシンガーが“Painkiller”を求められるというのも少々残酷な話である。まあそれはともかく、少し地味な感じもするがRob Halfordというシンガーの様々な表情を味わえる作品としては悪くない。10ヵ月後にこれを聴きながらクリスマス気分を味わうというのはどうでしょうか。


Halford“Get Into The Spirit”
このタイプの曲はこれだけ。

Anneke Van Giersbergen & Agua De Annique「In Your Room」(2009)

inyourroom.jpg

exThe Gatheringで、2009年リリースのDevin Townsend Project「Addicted」に参加して日本でも少しだけ知名度を上げたAnneke Van Giersbergenの新作。彼女の公式サイトで購入(ジャケットの裏にAnnekeのサインつき)。全くの余談だが、ジャケで左斜め前からAnnekeの顔を写しているのは鼻の隠れている方にピアスの穴があるから。

The Gatheringを脱退して立ち上げたAgua De Anniqueは1st「Air」(2007)こそバンド名義だったが、アコースティックによるカヴァー集「Pure Air」(2009:実質Annekeのソロ)では「Anneke Van Giersbergen With Agua De Annique」名義で、今回さらに「Anneke Van Giersbergen & Agua De Annique」に変更になっている。理由は不明だが、彼女の名前を前面に出した方がリスナーに認知されやすい、ということかも知れない。元々がAnnekeのヴォーカルありきのバンド(ちなみに作詞作曲もほとんどAnnekeが手がけている)で、バック・メンバーはそれほど目立たないこともあるし、これで問題はないと思う。

ジャケットから何となく想像がつく感じだが、音はVo+G+B+Key+Drのシンプルなバンド・サウンドによるロック。1stに残っていた中途半端なThe Gatheing色-サイケやトリップ・ホップの鬱々としたテイスト-は払拭され、ピアノがメインのバラード“Home Again”や、このアルバムの中ではハードなテイストの“Wide Open”“Adore”で微かにその残り香が感じられる程度。

ラスト手前に配された“Just Fine”はDevin Townsendとの共作(ブックレットにはAnnekeからのDevinに対する賛辞が載せられている)で、メロディには紛うことなきDevin印が刻みこまれており、ファンならクレジットを見なくても一撃でわかりそうなほど。Devinのアルバムよりもアレンジがぐっとシンプルなので、メロディがより際立っているように思う。

地に足のついた快活なムードの中にほのかにかげりが感じられる作りもさることながら、The Gathering時代から随分と趣きを変えたシャキシャキとしたAnnekeの歌唱が印象的で、どことなく吹っ切れたような印象を抱かせる。ヴェクトルがAnnekeの歌を聴かせる、という一点に向けられており、Annekeの歌唱もそれによく応えている。


“Hey Okay!”


オマケ。「In Your Room」収録“I Want”のMetropole Orchestra等との共演ヴァージョン。

あ、あとこれはお願いなのですが、AnnekeとAnathemaのDanny Cavanaghが共演した「In Parallel」というアルバムがあるらしいのですが、これがどこで手に入るのか、ご存知の方はコメント欄で教えていただけるとありがたいです。

Newest