非思量

La Compagnie Des Arts「Detour」(2009)

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フランスのクラシック・ギター奏者、Benoit Albertが作曲、Albertの他にオーボエ/イングリッシュ・ホルン+ヴァイオリン/ヴィオラ+クラリネット/バス・クラリネットの計4人による演奏で録音されたアルバム。ネットで調べても関連情報がなかなか出てこないので詳しいことは全くわからないのだが、どうやらこれがデビュー作らしい。

使用楽器から想像がつくかも知れないが、音楽性としてはいわゆる室内楽。各メンバーのソロを交えたりしながら、ギターを土台に弦/木管が気品のあるメロディをテンポ良く聴かせる。あまり叙情性を強調せず、重厚さよりは軽やかさの方にやや意識を向けつつ、シリアスな空気を微かに漂わせる作りになっている。

タンゴあたりからも影響を受けているようで、“Five Four Tango”(冒頭が5拍子で奏でられるのだが「4分の5拍子のタンゴ」という意味でいいのだろうか)は仄かな哀愁を感じさせる佳曲。いかにもクラシック然としたアンサンブル重視の作品だが、柔和な音像や楽曲は親しみやすさを感じさせる。バタ臭さのない優雅さが心地良い約1時間のチェンバー・ミュージック。

今沢カゲロウ「Standards」(2009)

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今沢カゲロウの13thは菰口雄矢(G)、若林良輔(Dr)という気鋭の若手2名を従えたトリオ編成での録音をメインに、様々なジャンルの「スタンダード」とオリジナルを取り混ぜた全13曲。曲目及びオリジナルは以下の通り。曲名の後ろに名前等が入っていないのはこのアルバムのために書かれた今沢のオリジナル楽曲、(※)がついているのは今沢のソロ演奏。

  1. History(※)
  2. Mr. P.C.(John Coltrane)
  3. All Blues(Miles Davis)
  4. Help!(The Beatles)
  5. Cantaloupe Island(Herbie Hancock)
  6. Sex Machine(James Brown)(※)
  7. Back In The U.S.S.R.(The Beatles)
  8. ひょっこりひょうたん島(NHK人形劇のテーマ)
  9. Kanon(Johann Pachelbel)(※)
  10. Play
  11. とまりぎ(※)
  12. Child Chile
  13. Alfie(Burt Bacharach)(※)

に今沢の特徴を「他人の曲ですら強烈なオリジナリティを刻み込む」と表現したが、選曲もオリジナリティ溢れるというか、“ひょっこりひょうたん島”を選んでいる時点でかなり独特。演奏もジャズ・ロック/フュージョン路線が一応基本とはなっているが、「ColtraneからPanteraまで何不自由なく弾ける」ギタリストを探していて出会った菰口と、バークリーでジャズを習ったけど元々はメタル・ドラマーだったという若林で脇を固めているだけにソッチ方面で堅く収めるワケもなく。

“Mr. P.C.”ではKing Crimsonのようなギターのリフを挿入し、“Help!”では中間セクションで“Encyclopedia Of Bass Art”のフレーズを確信犯的に忍び込ませ、“ひょっこりひょうたん島”ではベース・ソロの背後におなじみ(?)ベース・シンセによるメロトロン・サウンド…と、まあ何と言うか「こういうこと、この人以外で思いつく人ってなかなかいないよな」という濃い音のオンパレード。

オリジナルの“Play”“Child Chile”ではメンバー各々が存分に暴れまくっており(特に“Child Chile”は、スラップが唸りを上げるところでライヴを観た人ならトランス状態に突入して崩壊した今沢の顔が浮かんでくる必殺ナンバー。“Play”はほとんど変態プログレ・メタル)、単純に激しい音が好きならコチラの方が楽しめるだろう。人数を増やした分だけ表現の幅をキッチリ広げた秀作であるが、ソロでも4弦ベース、エフェクトなしで弾いたソロ小曲“History”や、アコースティック・ベースのスラップで弾ききった“Sex Machine”など、今までと少し違うカラーを見せており、「ホント、次はどうするんだろこの人」というこちら側の期待/不安をいともた易く(少なくともそう見える)越えて来るあたり、感嘆するほかない。ホント、次はどうするんだろこの人。

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