Daughtry「Leave This Town」(2009) 

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アメリカのリアリティ番組「アメリカン・アイドル」から綺羅星のごとく登場、1st「Daughtry」がビルボード1位を獲得したシンガー、Chris Daughtryが「Daughtry」というバンド名義で発表した2nd。Daughtry本人のみならず他のバンド・メンバーも作曲クレジットに名を連ねている。

音楽性はと言えば、ミドル・テンポがメインで分厚いコーラスとソコソコの音圧で押してくる、コッテコテの正統派ど真ん中アメリカン・ハード・ロック。シングル“No Surprise”はNickelbackぽい(と思ったらNickelbackのChad Kroegerとの共作だった)し、“Supernatural”は「Crush」「Bounce」の頃のBon Joviの匂いを感じる(ついでに言えば“Tennessee Line”の歌いまわしに一部Jon Bon Joviを意識したような箇所がある)。オープニングの“You Don't Belong”のヘヴィなリフなどはCreedのようでもあり。

つたない知識で「○○を感じさせる」部分をあげつらってみたが、誰それに似ているのがいいとか悪いとかいう話ではなく、超がつくほどの「王道」を受け継いでいるというだけの話。そして収録曲のクオリティが、どれもこれも腰が抜けそうなほど高い。さりげないメロディがスッと耳に馴染む。「これ、わからないヤツにはわからなくていいとか思ってるでしょ?」なマイナーなプログレ方面を主に聴いている耳には感動的ですらある。日本盤ボートラですら本国でシングル・カットされてもおかしくない出来。

Chris Daughtryのクリアな美声を聴かせることに焦点が当てられており、他のメンバーの顔が見えてこないとか、ありきたりすぎるとかいうツッコミも可ないかにも「評論家ウケの悪そうなアルバム」ではある。でもいいよ。アメリカン・アイドル出身という肩書きにひるむ必要は全くない。前述のバンドが好きなら一聴の価値はある。


Daughtry“No Surprise”

2009/09/22 Tue. 22:21  edit

Category: CD/DVDレビュー:D

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聖飢魔II「悪魔Nativity “Songs Of The Sword”」(2009) 

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日本のアニメ監督とのコラボ&欧州からのオファーに応える形で突如再編を果たした聖飢魔II。欧州19カ国+カナダ、米国のiTMSから配信された音源プラス新曲(通常盤のみ)をCDにパッケージして国内向けに発売されたのが今回紹介する「悪魔Nativity “Songs Of The Sword”」である。再編と書いたが、ツイン・ギターの片割れエース清水は不参加、代わって3rd「地獄より愛をこめて」までエースと共にギターを弾いていたジェイル大橋が参加している。

基本的に旧曲の再録なのだが、海外での配信というのがそもそもの前提であるためか、歌詞の95%以上が英語となっており、また、純邦楽とのコラボレートを重ねている閣下の人脈から邦楽奏者が招かれ、曲によっては「和」のテイストを非常に強く打ち出しているのが特徴。

以下、オリジナルと趣きが変わっている曲や、通常盤(赤いジャケ)と限定盤(青いジャケ)でヴァージョン違いとなっている曲及び新曲について、通常盤の曲順に従い、自分が分かる範囲で記す。なお、英語化に際し改題された曲については、曲名の後に()カッコにて原題を記してある。

・Prince Of Jigoku(地獄の皇太子)
歌詞の英語化の影響を最も受けている曲。Aメロが一気にまくしたてるメタル・コア調(?)になっていてこれがまたカッコいい。「この期に及んでここまで変えてくるのか!」と感動したが、他の曲のメロディはさして変化していなかった。

・The House Of Wax(蝋人形の館)
限定盤には閣下の前口上が入っている。

・Masquerade
限定盤ではエンディングからシームレスで次曲“Create The New Century”(創世記)につながっている。

・Big Time Changes
この曲のギター・ソロが、ギタリスト編成替えの影響というか、効果が最も現れている。一音ずつ丁寧に弾いていたエースと比べて「俺たちロッカー!イエー!」なルーク&ジェイルのノリが前面に押し出されたテイク。

・Pandemic Careers
通常盤にのみ収録の新曲。いかにも「今の」ジェイルが書きそうなアメリカナイズされたルーズかつストレートなロック・ナンバー。

・Oni(鬼)
個人的にはこれがベスト・トラック。福田千栄子の地唄&三弦(途中からかけられているエフェクトが限定盤と通常盤で異なる)や題名などから最も「和」テイストを感じさせる。重量感あふれる今回の音はこの曲にハマっており、この音をバックに15年前の閣下が歌っていたらさぞかし凄いことになっていた、かも知れない。今の閣下は基本的にクリーンなトーンで滑らかな歌唱を聴かせる。それ自体に文句はないが、90年前後の技術と荒々しさがせめぎ合っていた頃の太い声で歌えていたらなあ、と、曲によっては思わされる。

・A Demon's Night(Demon's Night)
2007年に行われた閣下のソロ・ツアーで演奏されたヴァージョン(アレンジは石垣愛)が元になっており、「The End Of The Century」に収録されたオリジナルとは雰囲気が全く異なる。限定盤では薩摩琵琶をバックに閣下が前口上を述べている。

なお、“Oni”については限定盤、“A Demon's Night”については通常盤においてのみ笙、篳篥(ひちりき)のクレジットがあるのだが、数回聴き比べても限定盤と通常盤の区別がつかなかった。それぞれどこで鳴っているのか、わかる方がいたら教えてください。

・Humane Society(害獣達の墓場)
通常盤の間奏はジェイルによるE-Bowを使用したギター・ソロ、限定盤の方は笙、篳篥による演奏。限定盤は尺八を従えた閣下の前口上あり、F/Oでエンディング。

だいたいこんなところかな。“Big Time Changes”の項で書いたが、ギター・セクションのメンツ変更により「イケイケ+カッチリ」から「イケイケ×2」になったことで非常にノリの良い-所々では「ライヴかよ!」つーくらいラフな-仕上がりになっている。キーボードの使用はかなり控えられ、解散前のラスト・アルバム「Living Legend」のほぼ延長線上にあるサウンドも相俟って(あ、あとモロにバラード調の曲がない)、迫力溢れるヘヴィ・メタル・アルバムになっている。邦楽の導入も付け焼刃ではないので違和感はなく、雰囲気作りに一役買っているのは間違いない。

解散後にファンになった人にとってはリアルタイムで接する初の新譜ということで、これ以上ないプレゼントとなろう。新参者がこのアルバムに興味を持ったのなら、とりあえずは新曲入りの通常盤だけ買っておけばいいと思う。限定盤にはPVを収録したDVDがついているが、別に金を払って見るほどのものでもないし、ヴァージョン違いと言っても前記のように「曲の前にちょっとなんかくっついている」程度なので。

2009/09/19 Sat. 00:04  edit

Category: CD/DVDレビュー:国内さ

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Megadeth「Endgame」(2009) 

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ロードランナー移籍2作目となる新作(12th)。

「The World Needs A Hero」以降、80年代の所謂「インテレクチュアル・スラッシュ」路線と、90年代のキャッチー/メロディック指向の間でどう折り合いをつけるか苦心していたフシがあるが、長きに渡る試行錯誤がようやく実を結んだようだ。

“The Hardest Part Of Letting Go...Sealed With A Kiss”“The Right To Go Insane”で「歌メロをお座なりにしているワケではありませんよ」とアピールしつつ「とりあえず弾きまくってみる&疾走してみる」という基本ラインをヴェテランらしい手堅さでまとめた曲が多数。目新しい点は皆無で、恐らく、Dave Mustaineに新しい音楽的な引き出しはもうない。仮にあったとしても最早Megadethには必要とされていない。

ただ、手堅さでまとめた…と書いたが、インタビューで初期の音楽性への回帰を目指していることを積極的に肯定していることからもわかるように、「オマエらが聴きたいのはこれだろ!どうだ、オラ!」みたいな開き直りが良い意味での荒々しさに繋がっており、私がリアルタイムで接している「Cryptic Writings」以降では最もテンションの高い作品になっていると思う。

前作「United Abonations」は個人的には満足度の低い作品で、新作発売のアナウンスがあった時は「もう今回はスルーでええかな」と思ったが、正直、見捨てないでよかった。昔自分がやっていたことも、20年の時を経ると、古臭いどころかやりようによってはクールに映ることを証明してみせた力作。


Megadeth“1320'”

2009/09/13 Sun. 21:35  edit

Category: CD/DVDレビュー:M

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Mute Math「Armistice」(2009) 

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米産4人組の2nd。1stは未聴。

エレクトロニカやファンクを積極的に取り込んだ、ダンサブルでエモの香り漂うポップ・ミュージック。まとめてしまえばそんな具合。シンセやギターといった上モノはスッキリとした音でまとめられているが、リズム隊は実にしっかりとした音を出しており、スマートな中にも骨太さを感じさせる。

そして何より、メロディの説得力が尋常でない。“Clipping”“No Response”のようなスピードを抑えて繊細さを前面に押し出した曲が個人的には好みだが、サビのメロディが耳にこびりついて離れない“Goodbye”、ドライヴ感を前面に押し出すオープナー“The Nerve”など、佳曲が目白押し。ピアノ&ストリングスのバラード~叙情豊かなミドル・テンポ~スピーディーなロック・ナンバー~多幸感すら漂うテクノ・ポップ風と曲のヴァリエーションが実に豊か(他にもある)で、それを己が力量で「Mute Mathカラー」に染め上げているのが実に頼もしい。

アルバム製作のプレッシャーでバンド内部は一時緊張状態にあったらしいが、そういった負の要素は聴いていて微塵も感じられない。確かに訳詞を読むと歌詞は重苦しさが漂うが、どんなにマニアックさを漂わせていても最終的な到達点は「わかりやすい大衆性」に向けられている。それが素晴らしい。まさに今が旬のバンドの、最高の瞬間を切り取った作品。

2009/09/08 Tue. 21:18  edit

Category: CD/DVDレビュー:M

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大橋隆志「Child Of Nature」(2006) 

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もう「元」聖飢魔IIじゃないな。突如新譜(過去の曲の再録+新曲)を出すことになった聖飢魔IIにその名を連ねている(その代わりと言ってはナンだがエース清水が不参加)ギタリスト、ジェイル大橋こと大橋隆志の、キャリアの中で初となるインスト・アルバム。この作品はいつかレビューしようと思っていたのだが、聖飢魔IIの復活作リリースまで2週間を切ったこともあり、その記念というワケでもないがここで取り上げることにした。

大橋自身がブックレットで述べているように、ロック・バンドのカテゴリーには収まらず、適切なアウトプットの場がないためにこれまで発表されることのなかった「不可解な思いつきを突き詰めていった音楽」(ブックレットより)の集積。甥っ子の声や自然音のサンプリング、生ドラムやデジタル音などを従えて、大橋のアコースティックを中心としたギターが軽やかに躍動している。

大橋の人となりについては、過去の発言等を見ても「(良くも悪くも)純粋な人なんだろうなあ」と思わされるが、一歩間違えれば「気色悪い」と言われかねない純粋さゆえのポジティヴィティが、自由な発想と高い音楽性によって独創的な音楽へと昇華している。何やら抽象的な表現が並んでいて何のことやら、みたいな文章で恐縮だが、自分の知る限り似たような音楽をやっている人の名前が思い浮かばんのですよ。

当然、聖飢魔IIやCats In Bootsでの彼を期待すればエラいことになるワケだが、そういった束縛から完全に解き放たれて、持てる才能をいかんなく発揮した傑作だと思う。ポジティヴ一辺倒な中にもエモーショナルな憂いをほどよくにじませていて、聴き応えがありながらもけだるい休日のBGMとしても絶好という、なかなかに物凄い作品。メロディが本当に良いです。

2009/09/04 Fri. 22:24  edit

Category: CD/DVDレビュー:国内あ

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