Rush「Rush In Rio」(2003) 

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※「1997年~2006年の10枚+1」第10回→他のレビューはこちら

The BeatlesもLed ZeppelinもThe Rolling StonesもBlack Sabbathも…ええと、後は何があるかな?とにかく、年寄りからでも若者からでも(勿論、その両方からでも)いいのだけれど「これを聴かずしてロックを語るなかれ!」みたいな扱いを受けてるミュージシャンてどれくらいいるんですかね?恐らくその大半を私は聴いていないか少しかじっただけで「ま、これはいいや」とうっちゃったままにしてあるのだが、そんな私が数多ある伝説的ミュージシャンを差し置いて「これを聴かずしてロックを語るなかれ!」と声を大にしてお勧めしたいのが「Rush In Rio」である。

Rushも十分伝説的な存在だとは思うが、まあその話は措くとして、この作品はDVD、即ち映像も込みで1つの作品である。というワケで今回はCDではなく、DVDのレビューである。正味な話、コレはDVDで観ないと意味がない…とまでは言わんが、得られる感動が10倍ぐらい違うので、是非映像込みで鑑賞して欲しい(高いのがネックなんだが…)。

2002年発表の「Vapor Trails」アルバムのツアーを収録したもので、タイトルの通り、収録会場はブラジルのリオデジャネイロが選ばれている。ブラジルでの3日間で計12万5千人を前にして演奏したそうで、最終日のリオには4万人のフリークが集結している。

そう、フリーク。この日の観客にはまさにその呼称が相応しい。1曲目“Tom Sawyer”のイントロで早くもクライマックスに到達。主の帰りを喜ぶ忠犬のように昂ぶる感情を爆発させ、踊り、歌う。1曲終わるごとに爆音のような歓声。インスト“YYZ”ですら彼らは歌う。圧倒的なオーディエンスの反応に誘発され、バンドの演奏もまた、熱を帯びていく。まさに理想的なライヴのあり方であるが、特筆すべきは観客の熱狂ぶりがハンパではないことだ。飢えた野獣でももう少しジェントルだろう。日本人には到底マネできない、これがブラジリアン・クオリティ。このDVDのMVPは間違いなく彼ら。

私もここにいたかったと思うと同時に、日本での公演が半ば絶望的なことを思い知らされる映像でもある。要は「これくらい客(=金)を集めないと北米から遠く離れた地には来てくれない」ということだから。豪州やシンガポールあたりとセットでアジア・ツアーでも組めば4万人も集める必要はないが、それでも大阪城ホールや横浜アリーナぐらい満杯に出来ないとダメだろう。新宿厚生年金会館ぐらいなら満員にできるかも知れないが、それでは話にならんのである。冷静に考えたら、日本じゃムリよね。

Rushのファンでもなんでもない友人にこのDVDを貸したら、3時間に及ぶライヴを「ぶっ通しで4回連続観た」そうである。アホだ。アホだが、ファンでもなんでもない人間をそれだけ釘付けにできるだけの凄さがある、ということだ。新旧取り混ぜた選曲もベストオブとして最適、“La Villa Strangiato”やDisc 2に収められたドキュメンタリーでのAlex Lifeson(G)のお茶目すぎる振舞いなど、見所は有り余るほどある。3人の演奏は言わずもがな。一家に一枚、究極の一枚(2枚組だから二枚か)であります(海原雄山のほうが好きと仰るなら「至高の二枚」でもいいです)。




「Rush In Rio」より“YYZ”。ファンの熱狂ぶりに刮目せよ。

2009/07/17 Fri. 22:55  edit

Category: CD/DVDレビュー:R

Thread: ロック - Janre: 音楽

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Jamie Saft「Black Shabbis」(2009) 

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ユダヤ系(恐らくアメリカ人)の鍵盤奏者、Jamie SaftがJohn Zorn主催のTzadikレーベルからリリースしたブラック・メタル(!)のアルバム。ブックレットのSaft本人の楽曲解説には「blood libel(血の中傷-詳しくはWikipedia参照のこと)」「anti-Semitism(反ユダヤ主義)」という言葉が頻出しており、長きに渡るユダヤ人迫害の歴史に関する「反・反ユダヤ主義」とでも言えそうな彼の見解や主張が記されているものと思われる(英語力がないので意味がよくわからんのです…)。

ピアノ・トリオでBob Dylanの曲をジャズ調にアレンジして演奏したりしてるような人が作ったこのアルバム、果たしてマジなのかジョークなのか、さっぱりわからん。ジャケットやタイトルを見るとギャグにしか見えないけどなあ。でもブックレットの内容は真剣そのものに見えるし。

大昔の海外ハードボイルド・ドラマのオープニングみたいな1曲目でいきなるズッこけるが、そこからはオビでSlayerやBlack Sabbathの名前が記載されているのも納得なスラッシュ~デス~ドゥーム路線のオンパレード…と思いきやなぜかオビで並んで記載されているAlice Cooperに通ずるパーティ・ロックっぽいフレーズ(音像としてはデス~ブラックなんですけどね)が。オビに「returns to his roots」とあるが、やっぱオマエ、こういうのがやりたかっただけだろ。

このテの音は普段は全然聴かないので本職との比較はできないが、Saft本人が一部のベース、ドラム、ヴォーカルを除く全楽器(ギター、ベース、ヴォーカル、オルガン、メロトロン、オプティガン、シンセサイザー)を担当しており、なかなかに気合の入った音。ユダヤ人虐殺が行われたポーランドの地名をそのまま曲名に冠し、まさにその虐殺を音で表現したようなドローン・ドゥーム“Kielce”や、不安定な女性Voがリリカルでキャッチーな歌メロを聴かせる“Remember”など聴かせる曲もあり、その混沌ぶりが結構楽しい怪作。普段ここで紹介している作品にも増して一般向けではありませんが。

2009/07/13 Mon. 22:05  edit

Category: CD/DVDレビュー:J

Thread: HR/HM - Janre: 音楽

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Rachel's「Music For Egon Schiele」(1996) 

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※「1997年~2006年の10枚+1」第9回→他のレビューはこちら

Rachel'sを初めてリアルタイムで聴いたのは現時点での最新作「Systems/Layers」(2003)なのだが、ユーロ・ロック・プレスに掲載されていた「Systems~」のレビューで絶賛されていた「Music For Egon Schiele」を先に購入し、インパクトもコッチのほうがあったのであえて「Music~」を紹介。企画名の「+1」はコレです。

というワケでケンタッキー州はルイヴィルという街で結成されたグループの2nd。これ以外の作品では様々なミュージシャンが参加しているが、「Music~」はRachel Grimes(Piano)+Christian Frederickson(Viola)+Wendy Doyle(Cello)というトリオ編成で録音されている。オーストリア出身の画家、Egon Schiele(エゴン・シーレ、1890-1918)を題材としたダンスのサウンドトラックして製作されたもののようだ。

ポスト・ロックや音響派に属すると見られているようだが、プログレ耳で聴けばチェンバー・ロック…というか、ここまで来るとモロに室内楽と言ってもいいのかも知れない。ごくまれにSEが挿入されているが、基本的には3人の演奏が淡々と繰り広げられる非常に落ち着いた音楽で、そのメロディは思わず居住まいを正してしまうほどに凛としていて、美しい。乾いてひび割れた心の隙間を潤すような、シンプルで淡い色彩ながら実に豊かな音。

アルバム全体の雰囲気が、ジャケットやブックレットで見られるSchieleの作品の、どこか退廃的な中に漂う憂いを帯びた色彩に通じている。美しい音楽、物悲しい音楽、暗い音楽が好きなら生涯の友となり得る必殺の1枚。


Rachel's“Wally, Egon & Models In The Studio”

2009/07/07 Tue. 22:42  edit

Category: CD/DVDレビュー:R

Thread: 洋楽CDレビュー - Janre: 音楽

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