非思量

James LaBrie's Mullmuzzler「2」(2001)

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※「1997年~2006年の10枚+1」第6回→他のレビューはこちらから

Dream Theater(以下DT)のヴォーカリスト、James LaBrieのソロ・プロジェクトMullmuzzlerの2nd。Magellan、Dali's Dilemmma及びShadow Galleryのメンバーがソングライティングに参加、プレイヤー陣にはMike Mangini(Dr)やMike Keneally(G)の名も。

LaBrieは所謂「エゴ」が希薄なのだろうか、インスト・パートが肥大し、時にはジャイアニック・ヴォイスを持つ(要はヴォーカリストとしての才能に欠ける)ドラマーがヴォーカルを奪い取ってしまうDTにおける状況下で、表立って文句を言うでもなく精一杯のパフォーマンスを見せているのだが、率直に言って、このアルバムにおける歌唱の方がLaBrieの良さがよく発揮されている。

大きなくくりで言えば「プログレ・ハード」という、DTと同じカテゴリーに属する音だが、要は、焦点が「ヴォーカルを単なる1パートと捉えた上でのDTらしさ」に向けられているか「ヴォーカルそのもの」に向けられているかの違い。このアルバムが発表された時期は「Awake」ツアーで来日時に酷い風邪にかかって喉に負ったダメージから回復しておらず、LaBrieのヴォーカルに対する厳しい声が高まっていた頃だが、幼児虐待を取り上げたシリアスかつヘヴィな“Venice Burning”“Confronting The Devil”での力強い歌唱もさることながら、“Falling”“Believe”“Listening”といったバラード系楽曲での繊細な歌は特筆モノ。

アルバムには10曲収録されているが、前記の5曲は表現に深みが感じられて非常に良い。それ以外はDTの路線から長ったらしいインスト・パートを省いて歌モノに方向転換したような感じの曲が多数で、個人的にはまあまあかな。DTのようなエクストリームなモノを期待すると肩透かしを食らうだろうが、この作品はあくまでLaBrieのエモーショナルな歌唱を味わうためのものだし、その目的は十二分に達成されている。私は好きです。


James LaBrie's Mullmuzzler“Falling”

Disillusion「Gloria」(2006)

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※「1997年~2006年の10枚+1」第4回→他のレビューはこちらから

1stではプログレ・デスラッシュを演奏していた(チョロッとさわりを聴いたことがあるだけなので詳細はわからん)のに、突然とも言える変貌を遂げたドイツ産バンドの2nd。

ヴォーカルはエフェクトをかけた中低音の普通(?)声がメインでデス声はほぼ皆無。前作の路線を期待してた人は1曲目で脱落必至。ダークで重々しい空気を基調として、シンセやギターで緻密に作りこまれた重厚なノイズの波が押し寄せては引きを繰り返すのだが、出てくる音もさることながら曲そのものもどこか一筋縄で行かない。オールド・スクールなメタルのフォーマットに接近した曲もあるにはあるのだが、全然ソッチ方面の香りがしない。あえてジャンル分けするなら間違いなくメタルですけど。

ドイツ的なカクカクした直線的なノリなのだが、そのフォームから放たれるボールは全てナックル。どこまでもエグいというか容赦がないのだが、メロディは意外にキャッチーで、曲ごとに必ずフックが用意されている。聴き手を置き去りにする気満々と見せかけて実はそうでもない、というのがこのアルバムの最大の特徴かも知れん。

勿論、彼らの音楽は突然変異的に発生したものではなく、何がしかのルーツなり元ネタ(タイトル・トラックで唐突にゴシック・メタルみたいな音像が飛び出してきたりするし…)が必ずあるのだろうが、彼らはそれを完全に咀嚼し、自分のものにしてしまっている。ひねくれていて、それでいてキャッチーで、そしてやかましい。私の知る限り何にも似ていない。今まで聴いてきた中で、最も好きなアルバムの1枚。


Disillusion“Dread It”

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