Steven Wilson「Insurgentes」(2009) 

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Porcupine Tree(以下PT)の首領、Steven Wilsonのソロ・アルバム。何やら日本盤と欧州盤でフォーマットが異なるとか、さらにそれ以外に限定盤が存在するとか複雑な話になっているが、私は素直に国内盤を購入。本編とは別に5曲入りのボーナス・ディスクがついてきているのはいいが「アーティスト・サイドの意向により」歌詞もその邦訳も解説もないという超不親切仕様。

楽曲は同一フレーズの反復/発展を軸としたサイケデリックかつノイジーなものが多く、プログレ・ハード的な場面展開を用いるPTとはだいぶ方向性が異なる。8分を超える“No Twilight Within The Court Of The Sun”は第3期King Crimson、特にライヴ盤4枚組「The Great Deceiver」のインプロ曲を彷彿させる緊迫→一瞬の静寂→爆発という道筋をたどるインストメインのナンバーで、整合性よりも衝動性を重んじているようで実際の仕上がりは丁寧なパッケージングが施されている、という感のある本作を象徴する曲になっている。

一方、音楽的な方向性こそPTと異なるものの、殻の中に閉じこもってしまっているような、内省的で煮え切らない音像はPT「Fear Of A Blank Planet」と軌を一にしており、バンド編成のPTとは異なる組み合わせでPTと差別化を図っているのは分かるが、パッと聴く限りだとハッキリと見分けがつかない。

せめてドラマーはPTのGavin Harrison以外の人材を登用した方が良かったのではないかなあ、という気はするが、それよりもゲストの使い方に問題があるような。せっかくTony Levin(B)や八木美知依(筝)といった豪華なゲストを招いているのに、そういったゲスト陣までもが殻の中に押し込まれてしまっているような印象を受ける。八木の筝については「安易な東洋エキゾチシズムの導入」という使い方になっていないのがせめてもの救いではあるが。

PT「Fear Of A Blank Planet」のレビューで「ゲスト(Alex LifesonとRobert Fripp)が目立たない」点について少しだけ触れたが、結局はSteven Wilsonが「全て自分の色に染め上げないと気が済まない」タイプのミュージシャンなのだろう。これは良し悪しではなく好き嫌いの問題なので、まあ仕方なかろうて。しかし前述の“No Twilight~”や暗鬱なインスト“Twilight Coda”でピアノを弾いているJordan Rudessだけはモノトーンの世界に同化しつつも自らを輝かせているように思えた。やはりこの人は別格。

隅から隅までマニアックかつ神経質な作りなのであまり強くオススメする気にはなれないのだが、私自身そういうのは好き(かつ、音がいい)ので、なんだかんだ言いつつも結構聴いている。ただ、キャッチーなメロディのポップ・ソングも書ける人(ボーナスの2枚目に収録された、八木の筝をフィーチュアした“Collecting Space”は結構いい)なので、次(PTであれソロであれ)はそういうのも期待したいところではある。


Steven Wilson“Abondoner”アルバムとは少しアレンジが異なる。

2009/02/23 Mon. 23:34  edit

Category: CD/DVDレビュー:S

Thread: 洋楽CDレビュー - Janre: 音楽

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デーモン小暮「Girls' Rock Tiara」(2009) 

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デーモン小暮閣下が女性ヴォーカル曲をカバーした「Girls' Rock」シリーズ第3弾。楽曲解説とPVを収録したDVD付の初回限定盤及びCDのみの通常盤がリリースされている。ここで紹介しているジャケ写は私が購入した初回限定盤の方。私は安い通常盤の方で良かったんだが、職場近くのレコード屋にコッチしか置いてなかったんです。

収録曲及びオリジナルのアーティストは以下の通り。

  1. 熱くなれ(大黒魔季)
  2. 絶体絶命(山口百恵)
  3. そばかす(Judy And Mary)
  4. Piece Of My Wish(今井美樹)
  5. フレンズ(レベッカ)
  6. 地上の星(中島みゆき)
  7. Believe In Love(Lindberg)
  8. Cat's Eye(杏里)
  9. 夢見る少女じゃいられない(相川七瀬)
  10. 私は風(カルメン・マキ&Oz)~私は嵐(Show-Ya)
  11. Departures(Globe)

過去2枚同様、スウェーデンのCodeというバンドの主宰Anders Rydholmがアレンジを担当しているのだが、ピアノ・バラードに変貌を遂げた“Raspberry Dream”(レベッカ)や、Queen風のコーラス/ギター・ワークを導入した“Mr.サマータイム”(サーカス)のような大胆極まりないアレンジよりも、よりストレートなハード・ロック・サウンドに接近したものが多くなっている。

まあ“夢見る少女じゃいられない”はシャッフル調のビートに改められているし、“Piece Of My Wish”なんかもハード・ロックに大胆に変貌してしまっていたりで、いずれにしても原曲とは随分と趣きが変わっているのだが。スケールの大きさを感じさせる仕上がりになっている“地上の星”はある意味原曲と共通のイメージを残しているかも。この曲が個人的にはベストかな。スロー・バラードに姿を変えた“Believe In Love”や、どことなく寂寥感を感じさせる“Departures”も結構好き。

Rydholmのアレンジは冴えているし、閣下の粘りの効いた艶っぽい歌唱も健在。ファンなら必ず買うだろうし、買っても損はしないだろう。問題はこの路線が新規ファンの開拓につながっているかどうかだがその辺りはよくわからん。ただ、移籍3作目にして初めてシングルが切られたところを見ると、ビジネスとしては十分成り立っているのだろう。

それにしても、元来はヒットを飛ばした大物の余興的な位置づけでしかなかった「カヴァー」がこれほど前面に押し出されている今の状況というのはどうなのだろう。「往年の名曲」という、いわば他人のふんどし(それも極上の)で散々相撲を取った後にどういう展開が待っているのか。閣下に限った話ではなく、少し怖くもあり、面白くもあり。Eric Martinの「まさかのオリジナルMr.Big再結成」のようなウルトラCなんて、誰でも使える技じゃないぞ。

今後の閣下に対する個人的な願望は聖飢魔II再結成…では断じてなく、前作でのツアー・メンバー(Rydholm(B,Key)とOla af Trampe(G)のThe Code組+ex聖飢魔IIの大橋隆志(G)+聖飢魔IIのサポートメンバー松崎雄一(Key)+五十嵐公太(Dr))でのバンド結成→オリジナル・アルバム発表、作曲は各メンバーが分担して担当、というものなのだが、まあ、ちょっと難しいだろうな。

このメンツでのライヴは本当に素晴らしかったし、閣下もかなり手応えがあったみたいだけどねえ…。なんならドラムはアルバムで叩いているGregg Bissonetteでもいいけどもっと難しいか。


新作の曲がYouTubeで見つからなかったので、「Girls' Rock」から杏子が92年に歌ってヒットした“Distancia~この胸の約束~”のカヴァーを。玉置浩二はいい曲書くねえ。ツーバスドコドコのパワー・メタルにアレンジされている。

2009/02/17 Tue. 22:45  edit

Category: CD/DVDレビュー:国内た

Thread: HR/HM - Janre: 音楽

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Fromuz「Overlook」(2008) 

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ウズベキスタン発インスト4人組(G+B+Key+Dr)の2nd(1stは未聴)。

1曲目はKing Crimsonあたりを彷彿させるヘヴィなリフのミッド・テンポで幕を開けるのだが、そこからの展開が実にめまぐるしい。キーボードが前に出てスペイシーな空気を作ってみたり、かと思えばジャズを思わせる軽やかな空気を纏ってみたり、でも最後にはヘヴィなリフのメイン・テーマにちゃんと戻ってくる。15分を超える大曲だが、1曲聴いただけで既に4曲ぐらい聴いた気分になる。

2曲目以降も曲毎に雰囲気は違えど楽曲の構成や傾向は似通っている。全5曲が10分超え、1曲の中でハード・ロック~シンフォニック・ロック~プログレッシヴ・ロック~フュージョン~ジャズ・ロックを縦横無尽に行き来。しかもいずれのパートにおいても引き出しを多く持っている上、かなりサマになっている。唐突でありながら説得力が感じられる曲構成にはDream Theaterの影響が感じられないでもなかったり。

空中に浮かぶクラゲやエイのジャケットがB級どころかZ級臭さプンプンだが、どっこい中身はマイナー臭さを微塵も感じさせない充実した出来映え。サウンドもしっかりしていて、なかなか面白い作品である。

2009/02/11 Wed. 23:09  edit

Category: CD/DVDレビュー:F

Thread: 洋楽CDレビュー - Janre: 音楽

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