非思量

Jean-Philippe Goude「Aux Solitudes」(2008)

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フランスの作曲家、Jean-Philippe Goudeが自らの名を冠したアンサンブル(ヴァイオリン+チェロ+クラリネット+バスーン+ピアノ)やゲストを率いて録音したアルバム。私はGoudeのことをこの作品で初めて知ったのだが、30年ほど前にMagma人脈で結成されたWeidorjeというグループに参加、唯一のアルバムを出して解散後はソロ名義で活動、映画音楽等に携わっている模様。

作品の核を成しているのは室内楽~ミニマル・ミュージック寄りのテイストが漂う繊細なアンサンブルだが、その合間に差し挟まれるシンセ独奏やゲストに迎えられたカウンター・テナーや朗読、オンド・マルトノなどがアルバム全体に奇妙な緊張感を加えているのが特徴。全体を包む空気が開放と閉塞をめまぐるしく行ったり来たりする感じがして、不気味なジャケットと相俟って何とも言えない雰囲気。

大向こう受けするようなケレン味はないものの、アンサンブルの美しい音色に静かに耳を傾けるだけでも十分楽しめる。ただ、重苦しさはないが色彩としてはモノトーンでひんやりとした感触で、実際のところは地味なようでいて結構クセの強い作品だと思う。

Devin Townsend Ocean Machine「Biomech」(1997)

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※「1997年~2006年の10枚+1」第4回→他のレビューはこちらから

Devin Townsendのクリエイティヴィティが最も充実していた1997年(この年にはStrapping Young Lad「City」も発表している)にリリースされたOcean Machine名義というか、自身の名を冠した最初のアルバム。

「Physicist」(2000年)までのゴチャゴチャとした音像はS.Y.L.名義もソロ名義も共通だが、アルバム/楽曲のテーマは直接的な「怒り」が表現の源だったS.Y.L.とは異なり、もう少し複雑な感情が織り込まれているようだ。S.Y.L.が剛ならOcean Machineは柔といった趣きで、ジャケットどおりの、海を思わせる広がりのあるアンビエント・メタルとでも形容できそうなサウンド。

Devin節とでも呼べそうなキャッチーなメロディはこのアルバムの時点で既に個性を確立しており、特に“Life”は名曲だと思う。これより後にリリースされるS.Y.L.「City」「Strapping Young Lad」以外のアルバムは、多かれ少なかれこのアルバムが持つアンビエント感を引き継いだ作りがなされていて、そういう意味では彼の「原点」と言えるかも知れない。

とは言え当時のDevinはまさに「怒れる若者」だったせいか、ソフトな中にも神経質というか、パラノイアックな感触が色濃く現れており、その辺で好き嫌いが分かれそうではある。私はそんなピリピリしたムードと大らかで穏やかな空気が微妙なバランスで混ざり合っている脆さ、危うさというものに強く魅かれ、同年リリースの「City」以上によく聴いた記憶がある。


Devin Townsend Ocean Machine“Life”

Chris Cornell「Euphoria Morning」(1999)

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※「1997年~2006年の10枚+1」第3回→他のレビューはこちらから

exSoundgarden、Audioslaveで現在ソロ活動中のChris Cornellが、Soundgarden解散後に出した1stソロ。

私はSoundgardenについては最終作「Down On The Upside」を持っていたことがあるぐらい(内容はほとんど覚えていない)で何とも言いようがないが、Rage Against The Machineのインスト隊と結成したAudioslaveは暑苦しくガナっているだけ、Audioslave解散後のソロ「Carry On」に至っては大物風を吹かせてしょうもないものを作ってしまった、という印象しかない。それでも「Carry On」まで辛抱強く追いかけてしまった(あ、Audioslaveの3rdはスルーしたなあ)のも、この「Euphoria Morning」がとても良かったから。

どうやったってこの人の声は暑苦しくなってしまうのだが、バックの演奏はあくまで歌を引き立てるための脇役に徹しているためか、向こうを張って無理やり大声出す必要がないのがいい方向に作用している。(多分)ここでしか聴けないメロウで繊細なムードの曲も多い。まあ結局サビは絶叫調になるのだが“Preaching The End Of The World”などには、その絶叫すらしっとりと包み込むような空気が漂っている。この曲をはじめとして“Follow My Way”“Pillow Of Your Bones”“Steel Rain”といったマイナー調の曲が私のお気に入り。

21世紀に入ってからの彼の作品からは想像もつかないほどにウェットでシンプル、かつプライヴェートな雰囲気を強く感じさせるのだが、個人的にはこの芸風でこういう作品を作ってしまったミスマッチ感がツボ。いや実際のところは凄くハマッていると思うのだけれど、もうこういう作品は作らないんだろうなあ。


Chris Cornell“Can't Change Me”

2008年下半期の5枚

既に1つエントリ上げてるけど、明けましておめでとうございます。2009年最初に買ったCDはNickelbackが11月にリリースした新作「Dark Horse」。試聴機で最初の数小節を聴いただけでどんな作品なのか想像できてしまい、なおかつ内容が想像通りのベッタベタなアメリカン・ハード・ロックだったのには笑った。普段、なるだけ売れ線寄りのベタな音楽から遠ざかろうとしているので、たまにこういうのが欲しくなる。結構気に入っています。

さて恒例のアレ。2008年7~12月の間に購入したCDから印象に残ったものを5枚セレクト。例によって2007年にリリースされたものにはタイトルの後にリリース年を入れてあります。

1.Anathema「Hindsight」
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半分企画モノみたいなモンだが、私がこのバンドで一番好きなジトジトした部分が極大化されていて、そこがツボにはまった。

2.Marillion「Happiness Is The Road」
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レビューはチト褒めすぎたかな。ファンとしては濃密な作りに大満足な1枚(いや、2枚か)なのだが。

3.Steve Jansen「Slope」(2007)
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これまた濃ゆ~い1枚。この、醒めていながら稠密さを感じさせる音は結構好みだ。

4.Metallica「Death Magnetic」
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ちょい中だるみがあるが、個人的には結構エキサイトできた作品。

5.捜血鬼 With 一噌幸弘「Quest For Blood」
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とにかくインパクトは絶大でした。

これ以外にも聴き所の多い作品はチョイチョイあって、少々お寒い思いをした上半期よりはずっと充実していた、てほぼ毎年そんなパターンなんだよな。なんでだろ。

一噌幸弘・しらせ「よしのぼり」(2008)

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一噌幸弘が自身の名を冠したしらせの初スタジオ盤。しらせ名義では以前に「ふ、ふ、ふ」というライヴ・アルバムをリリースしている(私は未聴)。「よしのぼり」におけるメンバーは一噌(能管、篠笛、田楽笛、リコーダー、ゲムスホルン)の他に山田路子(能管、篠笛)、壺井彰久(ヴァイオリン)、高木潤一(ギター)、村中俊之(チェロ)、吉見征樹(タブラ)、茂戸藤浩司(太鼓)の総勢7名。

最早ジャンル分け無用というか、和洋入り乱れすぎで構成楽器だけ見ても出てくる音がさっぱり想像がつかないと思うが、実際の音も、日本的なメロディ、クラシカルな室内楽テイストが前面に出ている部分、そしてタブラや太鼓が醸し出すプリミティヴなムード、これらのうちいずれかの要素が前面に出てくることもあれば、ごくごく自然に共存していたりもする。簡単にまとめてしまえば「邦楽+インド音楽+チェンバー・ロック」なのだろうけど、そんな組み合わせを考えるヤツ、普通いないだろ。洋の東西、時代の今昔に対する意識の壁、というものが全くないのだろう。一見ムチャな組み合わせなのに肩の力が入っていないように聴こえるのが面白い。

組み合わせ云々はともかく、アンサンブル重視のキチンと作曲された曲を演奏していて、安直なソロ回しに走っていないのは個人的に好感度大。NHKのBSでやってそうな紀行モノのBGM風の典雅なムードを纏う“メトリエ”から、笛がアグレッシヴに突っ走る“バッサ・カスティーリャ”まで息をつかせぬ59分。とりあえずはチェンバー・ロックが好きな方に推薦しておきたいが、「今まで聴いた事のない音との出会いに飢えている人」「チェロ萌えな人」「エレクトリック・ヴァイオリンがピュルルルーって言ってるのが好きな人」にもオススメ。

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