非思量

捜血鬼 with 一噌幸弘「Quest For Blood」(2008)

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2008年の色モノ・オブ・ザ・イヤーはこの人達に決定。

能楽一噌流笛方の一噌幸弘(いっそう・ゆきひろ)は、本業の能楽以外にジャズ/プログレ等々西洋音楽とのコラボレーションも積極的に行っている。私はデーモン小暮と共演したライヴをナマで観たことがあるのだが、切れ味の鋭い笛の音色と、しょうもない駄洒落を執拗に飛ばすオヤジぶりが印象に残っている(詳細はこの辺りを参照)。

で、今回紹介するのは、その一噌幸弘が日本のブラック・メタル・バンドとコラボしてしまった驚愕の一枚。本当になんでもやるなあこの人。ちなみに捜血鬼は「そうけつき(そうけっき?)」と読むそうで、2005年に一噌とライヴでの共演歴があるとのこと。

楽曲のクレジットから察するに、日本の民族音楽を下敷きにしてソッチ系の音にアレンジしたもののようで、音圧のそれほど高くない、パタパタとしたブラスト・ビートをメインに据えつつリズムのアレンジが様々な表情を見せるブラック・メタル隊を従えて、一噌の各種笛類が随所でこれでもかと炸裂しまくっている。笛に関して言えばほとんどフリー・ジャズの域。

最初はさすがに「なんじゃこりゃ?」という感想しか出てこなかったのだが、暴れまわるドラムと笛の相性が意外に良好…というか、一噌の才能に負うところが大きい(アレンジは一噌が担当)のだろうが、とにかく類を見ないオリジナリティ+ファースト・インパクトの大きさに反して、トータルとしては「結構、聴けるんじゃない?」というところに落とし込んであるのがミソ。意外といいぞコレ。

キーボードやギター、あと時々挿入されている日本の祭りで用いられるような掛け声にキレを欠くというか、少々物足りなさを感じないでもないが、あくまで笛がメインと考えれば大した問題ではないかな。音楽を評価する上で、まず何より個性を重んじる方には大推薦しておこう。ラストに収録されたミッド・テンポがメインのオリジナル”落石覚悟”を筆頭に、曲の出来も悪くない。2~3曲目(“能伊勢”“三輪”)の畳み掛けなんかも結構カッコいいぞ。

Bill Bruford With Ralph Towner And Eddie Gomez「If Summer Had Its Ghosts」(1997)

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※「1997年~2006年の10枚+1」第2回→他のレビューはこちらから

YesやKing Crimsonなどの元メンバーとして、プログレッシャーで知らない人はモグリと言ってもいいぐらい有名なドラマー、Bill Brufordが第5期King Crimsonの活動休止後に発表したアルバムである。BrufordとRalph Towner(G,Key,Piano)、Eddie Gomez(B)というメンバーで録音されており、大半の楽曲がBrufordの作曲による。

名義上はBrufordのリーダー・アルバムだが、アコースティックな色彩が強いこともありCrimsonのような攻撃性はほぼ皆無。元々、Brufordはジャズへの憧れが強かった(現に今ではすっかりジャズの人になっている)ことで知られるが、このアルバムは完全にジャズ寄りの音になっている。ただ、変拍子バリバリの曲やインドネシアン・ベルを導入した曲、彼の色がモロに出たドラム・ソロのみで構成された曲、エレクトリック・ドラムを導入した曲などもあったりして一筋縄ではいかないのがBrufordらしいところか。

Brufordの優れたコンポーザーとしての一面を存分に味わえるアルバムで、3人の優れたプレイヤーが激しさよりも調和に重きを置いた優美な演奏を繰り広げる逸品。とにかく聴いていて心地良いし、飽きない。美しいアコギの音色が透明感を演出しており、親しみやすいアルバムだと思う。

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