Terry Bozzio@大阪BIGCAT(2008.11.26) 

Terry Bozzioは昨年1月にOut Trioで見ているのだが、共演者にTony Levinの名前があったので行ってきた。King Crimsonの活動が暗礁に乗り上げている上に自身も62歳と高齢で「これを逃したら二度と見られないかも知れない」と考えての参戦である(私、生Tony Levinを見たことがなかったんです…)。

会場に入ると客の数は130~140人と言ったところか。4人がけの小さな正方形のテーブルと椅子が20組並べられており、スカスカした感じはなかったがメンツを考えるとやや寂しいかも。私は後方に並べられていた椅子席のPA前に陣取った。ステージに目をやると、向かって左側にステージの半分を占拠するBozzioの常軌を逸した(バスドラが7個あったりする)ドラム・キット。開演前に沢山の人が写真に収めていた。真ん中にLevinのチャップマン・スティックと5弦のNSアップライト・ベース、そして右側にはもう1人の共演者、Pat Mastelottoのドラム・キット。普通のセットだがやたらとシンプルに見える。

内容は2部構成で、前後半いずれも40分ほどのインプロヴィゼーション(即興演奏)。メンツを見た時点で普通のロックやジャズをやるとは思えず「Mastelottoがサンプラーやシーケンスをひゃかひゃか鳴らして、それにLevinやBozzioが絡む」というスタイル以外考えられなかったのだが、ほぼ予想は当たり。というか、Mastelottoはドラムを叩かないものだと思っていました(叩かなくていい、とすら思っていた。理由は後述)。まあ普通に考えてそんなことあるワケないんだが。

でまあ、Mastelottoもドラムを叩いたのだが、この人、常に何かせずにはいられないタイプのプレイヤーのようで、純粋にドラム×2+ベース(またはスティック)でドコドコと突き進む場面はプリミティヴな衝動性が伺えて結構良かったのだが、Bozzioのエンジンがようやく掛かってきた、というところでMastelottoが余計な合いの手を入れて勢いを殺いでしまうシーンも…。また、シーケンスを駆使する場面では、Mastelottoがシーケンスを鳴らしつつ自分も結構な手数でドラムを叩くので、残り2名、特にBozzioの入り込む余地がなくなる場面多数。Bozzioはちょっと辛そうだった。アンコールでTony Levinの最新ソロ「Stick Man」から“Welcome”を演奏(ヴォーカルはなし)して終了。ちょっと長い休憩も含めて2時間15分程度のライヴだった。

休憩中に「Bozzioいらねえよ」という声まで聞こえてしまうぐらい存在感が薄く感じられる場面が多く、Bozzioには少し可哀相なライヴだったかも知れない。「Mastelottoは叩かなくていい」と思っていたのはMastelottoに対する好き嫌いの問題ではなく、まさに今回のような「どちらかが引いてしまう」という状況を危惧していたから。しかも引いたのがよりによってBozzioで、こちらにしてみれば随分ガッカリなことになってしまった。この音楽性にしてドラマー×2というのは、2人のキャラクターを考えると多すぎたのだと思う。

ヴァイオリンの弓を使ってスティックを弾いて中東風のフレーズを出したり、エフェクターが発するノイズのオンオフでリズムを作り出したりしていたTony Levinは、私が知っている独創的なベースおじさんそのものだったが、ライヴそのものからは「彼を見られて良かった」以上の興奮や感激は得られなかった。各人の出す音そのものは非常にカッコ良かったのですがね(Mastelottoて、8ビートのシンプルなロックを叩いたときが一番光るんじゃないかと思ったのだが、どうでしょうか?)。

ひょっとすると、即興演奏の鑑賞というのは聴き手に忍耐やある程度の素養が要求されるもので、私にはそれが足りなかった、ということかも知れない。

2008/11/27 Thu. 23:20  edit

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Art Zoyd「u.B.I.Q.U.e」(2001) 

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※「1997年~2006年の10枚+1」第1回→他のレビューはこちらから

フランスが誇る暗黒チェンバー・ロック集団、Art Zoyd(「アール・ゾイド」が正しい読み方だとユーロ・ロック・プレスVol.14に書いてあったが、今年リイシューされた初期の作品の帯には「アール・ゾイ」と記されている)の、2001年に発表された作品。2006年にジャケットのデザインと演奏の構成を一部変更したヴァージョンがリリースされている模様。

正式メンバーはGérard Hourbette(Key、Sampler,El-Percussion)、Patricia Dallio(Key,Sampler)、Daniel Denis(El-Percussion,Key)、Mireille Bauer(Midi-Marimba,El-Percussion,Key)、Emma Stephenson Poli(Key)の5名だが、この作品のためにギター×13、ベース×3、サックス×6、トランペット×4、トロンボーン×3、チューバ×1、ドラムス×10、パーカッション×1プラス指揮者という異様な編成のオーケストラが召集されており、総勢47名の大所帯で録音されている。

極端なアンサンブル指向の冷たい感触を持つ音に邪悪かつ不穏なムードを封じ込めて、体中の神経を逆撫でするような音を聴き手に突き立ててくるのが彼らの特徴で、さらに80年代中ごろからサンプラーなどのデジタル技術を積極的に導入し、冷徹かつ無機質な色合いが一層強くなっている。

この作品は「Glissements Progressifs Du Plasir」「Métempsycose」の2つの組曲で構成されており、前者はオーケストラの圧倒的な音圧で押しまくるパートが多く、後者は逆に音圧は控えめで、個々の楽器やサンプラーを並べ立ててフレーズを構築していくスタイルが目立つが、いずれにせよ極めてシリアスで、不吉で、非人間的。確実に聴き手を選ぶ音である。部屋を暗くしての鑑賞を推奨。

2008/11/23 Sun. 02:51  edit

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今沢カゲロウ@鳴門D-BOX(2008.11.15) 

大雪に見舞われた3年前の12月以来、私にとって年末のお楽しみの1つとなっている今沢カゲロウのソロ・パフォーマンス。今年は12月ではなく、7年ぶり(本人談)となる11月に開催となった。

シンセサイザーを内蔵した6弦フレットレス・ベースと各種エフェクターを駆使して、自らの演奏をサンプリング→ループを重ね、情報量過多のジャンルレスな音楽を演奏するスタイルは当然変化無し、なのだが、昨年と今年の違いと言えば、ややもすると「作業」感が漂っていたサンプリング用バッキング・トラックの演奏中も、歌心を感じさせるフレーズやメロディを織り込んできていたこと。それが功を奏したか、以前と比較すると明らかに楽曲の表情が豊かになってきている。

最新作「Bassist,Electric」はドラマーをゲストに迎えた曲が多いので、ライヴではどうするんかいな、というかそもそもやるのか?と思っていたのだが、リズム・トラックをサンプリングする際にシンセでドラムの音を用いてカヴァー。リズムの裏もハイハットの音で埋め尽くすマニアックさにほれぼれ。確か2曲披露された(11/16 11:11訂正 公式サイトの日記を確認したところ、5曲やった模様。言われてみればオープニングやセッションでやった曲なんかも確かに新曲だ)アルバム未収録の新曲は、ブチ切れ気味ハイスパート路線の曲と、「今沢カゲロウが『みんなのうた』用に曲を作ったらどうなるか」がテーマだというベース弾き語り。表現の振れ幅もさらに大きくなっております。

恒例の観客参加型の“コオロギ王子”や、ドラマーが途中で必ず半笑いになる(ここで本来の「ベーシスト」の役割を担う今沢のプレイがまた凄いんだ)これまた恒例の地元ミュージシャンとのセッション、ファンにはお馴染みの昆虫漫談も披露してくれて充実しまくりの2時間+α。彼のライブを初めて見た友人K君も満足してくれたようでめでたしめでたし。個人的にも今回のパフォーマンスが一番楽しめた。

…でこの記事を締めることが出来ればできればいいのだが残念なこともチラホラとあって、演奏を始めて間もなくステージの前に無造作に放置されている楽譜台やマイクスタンドに気づいた今沢がそれらをわきにどけるという衝撃のシーンを目の前で目撃(私、最前列に陣取ってました)。ジャマだからと言って私らが動かすのも妙な話であって、要は店の人の不手際。客である私の背筋が凍ったぞ。

あと、ビックリするぐらい客がいなかった。元々、会場は3~40人も入れば満杯になるような小さなバー、3年前はそのバーの入口辺りにまで人が溢れるほどの大盛況だったのに、今年は私を含めて10名程度…。昨年、一昨年も多くはなかったがそれでも椅子席が全部埋まる程度には入っていたので少々ショックだ。いつもと違う日程で来たから、来たこと自体、知らなかった人も多いのかも知れんが…。ちょっと残念。

2008/11/16 Sun. 02:00  edit

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Metallica「Death Magnetic」(2008) 

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Metallicaの9th。プロデューサーが「Metallica」以降のBob RockからRick Rubinにチェンジしている。

ネット上でこの作品のレビューをザッと見渡したところ、過去の楽曲との共通点を見出す文章が多いと感じたのだが、プロデューサーがチェンジして一番の変化というのは「自分達が過去に生み出したマテリアルの再利用は『悪』ではない」という結論にバンドが達したことであろう。「St.Anger」製作前に「新しいサウンドやテクニックに挑戦する気がないなら一緒にやりたくない」と言った(「St.Anger」のライナーより)とされるBob Rockの呪縛が解けた、とでも言えばいいか。

とは言え、オールド・ファンが望むような「『Master Of Puppets』の再現」にはなっていないのが面白いところで、Cliff Burtonがいなくなってしまった混乱の中で製作された「...And Justice For All」や、ジャム・セッションで録音された音源をBob Rockが強引にまとめあげた「St.Anger」の「ゴリ押しリフ&牽強付会テンポ・チェンジ」路線を、Lars Urlichの個性的なドラムが生み出す独特のグルーヴを介して味わう作りになっていて、まあざっくりと言えば「『Master Of Puppets』までのノリはJames HetfieldとLars Urlichの2人では絶対作り出せない世界なのね」ということをハッキリと認識させられるアルバム。逆に言えば、このグチャグチャダラダラとした音世界こそが真のMetallicaの姿なのかも知れん。

トンテンカンテンとけたたましいことったらなかった「St.Anger」の後ということで、その反動で、というかこれまでの彼らの傾向として同じものが2回続いた例があまりないだけに「次はメロディックなアルバムが出てくるぞ」と予想していたのだが、予想はものの見事に外れた。でも私は数少ない(?)「St.Anger」支持派なので、前作とは少々違う味わいだがやはりトンテンカンテンとやかましいこのアルバムは好きだ。「過去のマテリアル」てのは何も2ndや3rdに限った話ではないワケでね。いやあ、痛快ですな。

2008/11/13 Thu. 22:41  edit

Category: CD/DVDレビュー:M

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Anathema「Hindsight」(2008) 

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英国の(元)ゴシック・メタル・バンド、Anathemaの久々の新作。4th「Alternative 4」以降の楽曲をセミ・アコースティックにアレンジし直して再録音した9曲プラス新曲1曲で構成された企画盤。

私が持っているAnathemaの作品といえば「A Fine Day To Exit」「A Natural Disaster」の2枚だけなので、オリジナルと比較できるのはこの2枚から選ばれた4曲のみだが、元々強い叙情性をアピールしている楽曲が選ばれている上に、アコースティック・ギターやチェロがさらにエモーショナルな響きを与えており、非常にディープな心地良さを湛えたアルバムに仕上がっている。恐らく他の楽曲も、オリジナルよりもリリカルさを増す方向でリ・アレンジされているものと思われる。

繊細なVincent Cavanaghの声に乗せて流れ出す妙なるメロディが細胞の1つ1つにじわじわと染みこんでくる様な、「呪い」「破門」という意味のバンド名からは想像もつかない音。たかが再録と侮るなかれ。個人的には、ドラマティックな展開を見せる“One Last Goodbye”と、遠くで鳴り響く男性クワイアが印象的な“Are You There”が特に気に入った。オリジナルを全て聴いている人の耳にどう響くかはわからんが、個人的には今年のナンバー1候補。ムチャクチャいいですよ、コレ。


Anathema“One Last Goodbye”

2008/11/08 Sat. 00:50  edit

Category: CD/DVDレビュー:A

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Everon「North」(2008) 

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95年発表の2nd「Flood」が知る人ぞ知る名盤として一部で有名なドイツのシンフォ・ロック・バンド、Everon。ここ5年ほど音沙汰がなかったので「活動停止したのかな?」と思っていたのだが、夏に久しぶりの新作(7th)を出していた。

「Flood」を特徴付けていたダイナミックかつエネルギッシュなサウンドはここでは大幅に後退しており、ミドル~スロー・テンポのヴォーカルをメインに据えた、ややダークな色合いの濃い、スケールの大きなシンフォニック・ロック/プログレ・ハードの歌モノに仕上がっている。正直、2ヶ月ほど前に購入したときは展開の起伏が少なくてアルバムとしてのピークが掴み辛く、あまりピンと来なかったのだが、気温が下がり秋が深まってきた今聴くと、これが実に染みる。ジャケットのデザインから連想されるイメージ通りで、桜咲く春や太陽の降り注ぐ夏よりも、葉が色を変える秋や雲が重く垂れ込める冬のほうがこのアルバムには合っているようだ。

前述のようにアルバムを通してリズム面での起伏があまりないのだが、ゲストにチェリストを招いたり、軽いテイストのインスト曲を挟んだりこれまたゲストで女性Voを起用するなどして、単調にならないような工夫がなされている。重厚ながらも出しゃばり過ぎないインストと、良質で前向きな光を放つメロディのバランスが心地良く、これからの季節、孤独な夜のBGMとしてオススメ(何のこっちゃ)。


Everon“North”

2008/11/01 Sat. 00:46  edit

Category: CD/DVDレビュー:E

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