Marillion「Happiness Is The Road」(2008) 

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前作「Somewhere Else」から約1年半という、比較的短いインターヴァルで発表された15th。「Essence」「The Hard Shoulder」というサブタイトルがつけられた2枚に分かれており、市場には1枚ずつバラで流通している。プレ・オーダー盤は2枚組が1セットになっており、Antonio Seijasというスペイン人イラストレイター(MySpace)の作品をフィーチュアした、非常に豪華な装丁のブックレットが2冊、紙のケースに収められている(一般流通は通常のプラケース)。「Essence」のほうには“Half Full Jam”という(ブックレットの表記から察するに)ボーナス・トラックが収録されているが、一般流通のバラ売りでも収録されているのかどうかは不明。

中身について触れていくと、これは「Essence」「The Hard Shoulder」の両方に言えることだが、例えば前作の“Most Toys”のようなアップ・テンポなナンバーは存在せず、情感溢れるラスト(“Happiness Is The Road”“Real Tears For Sale”)に焦点を合わせ、それに向かって他の楽曲がお膳立てをしているような感じ、とでも言えばいいだろうか。物凄く極端に言うと「1枚1曲」と言えるぐらい、CD1枚の中でサウンドの方向性、世界観が統一されている。ただ、そのラストへ向かうまでの音像が「Essence」「The Hard Shoulder」でかなり異なっており、「Essence」は「Marbles」の浮遊感を持つ叙情路線、「The Hard Shoulder」の方は「Radiation」「Anoraknophobia」あたりのオルタナティヴ路線で、それぞれ、そこに「Somewhere Else」の透明感が加えられたような雰囲気になっている。

穏やかな起伏の波に身を委ねるような音楽性には一点の揺らぎもないが、「Somewhere~」でゴッソリ抜け落ちてしまっていたドラマ性が見事に復活しているのが最大のポイント。それぞれ、ラストの“Happiness Is The Road”“Real Tears For Sale”が圧倒的な存在感を放っているが、そこまでの流れの中でも要所要所でヤマ場が用意されていて、初めから最後まで一音も聴き逃せないと思わせるパワーが漲っている。ここ10年の、まさに集大成を思わせる圧巻の出来。

私にとっては「Brave」「Afraid Of Sunlight」が音楽遍歴の物凄く重要な位置を占めているので、この作品を「最高傑作」と呼ぶことにはかなりのためらいがある。まあ、ムリ。しかし、「Afraid~」の後EMIをドロップされてから色んな意味での紆余曲折を経て、ここに1つの金字塔を打ち立てたことは間違いない。前述のように1枚ずつのバラ売りだが、2枚を聴き比べてくることでそれぞれの凄さが浮き上がってくるように出来ているので、この駄文を読んで興味を持った方は、是非、2枚とも購入していただきたい。

正直、彼らにまだこれだけのモノを作るパワーがあるとは思っていなかった。参りました。


Marillion“Happiness Is The Road”

2008/10/29 Wed. 23:11  edit

Category: CD/DVDレビュー:M

Thread: 洋楽CDレビュー - Janre: 音楽

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Steve Jansen「Slope」(2007) 

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元Japan(他にも色々参加してるみたいだが、恥ずかしながらJapan以外は全く知らん…)のドラマー、Steve Jansenの1stソロ。全曲、Jansen(と他の誰か)の作曲で、作品の根幹を成しているエレクトロニック・パーカッション、ドラム、サンプラー、シンセなどをJansenが演奏している「ほぼ一人芸術」だが、David Sylvian(Vo)やTheo Travis(Sax、Flute、Clarinet)をはじめとして多数のゲストが参加している。

エレクトロニック・パーカッションがパカパカピョコピョコミュンミュン言ってると思ったら唐突に分厚いストリングスが絡んできたりするけどやっぱりパカパカピョコピョコミョンミョンに戻って極端に醒めたムードを醸し出している冒頭の“Grip”で恐ろしく突飛な作風を期待したが、続くヴォーカル入りの“Sleepyard”でやや落ち着いたムードに。何と言うか、レトロでウォームな空気を作り出すエレクトロニカ・サウンド(これはこの作品の主流の一つ)。でも同じくヴォーカル入りの“Cancelled Pieces”では再度尖った面を押し出してきたりと、割とめまぐるしく楽曲のカラーが変わる。ラスト近くに配された“Conversation Over”は荘厳なストリングスが印象的な、映像感覚に富むサウンドスケープ。こういうの、好きだ。

製作に5年の歳月をかけたそうだが、なるほど楽曲はよく磨きこまれているというか、一つ一つの音がとても丁寧で優雅な雰囲気をまとっている印象を受ける。良い作品だと思う。それにしても、“Playgraound Martyrs”“Ballad Of A Deadman”の2曲でDavid Sylvianがヴォーカルを取っているのだが、この人の声が入ると空気が変わるねえ。



Steve Jansen“Playground Martyrs”

2008/10/28 Tue. 21:10  edit

Category: CD/DVDレビュー:S

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Alex Skolnick Trio「Last Day In Paradise」(2007) 

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Testamentのギタリスト、Alex Skolnickがドラムとアップライト・ベースを従えたトリオ編成で製作したアルバムである。御茶ノ水ユニオンで購入。

アップライト・ベースを…という時点でお気付きかとは思うが、これはジャズのマナーに沿って製作されたアルバム、と言っていいでしょう(多分)。冒頭の2曲“Mercury Retrograde”“Last Day In Paradise”は紛うことなきフュージョンで、7曲目の“Cahnnel 4”ではウォーキング・ベースのラインも顔を出す。3曲収録されているロックのカヴァー(Rush“Tom Sawyer”、Testament“Practice What You Preach”、Ozzy Osbourne“Revelation(Mother Earth)”)も、Alexの軽やかで綺麗なトーンのギターを基調とした、極めてジャズ色の濃い音に換骨奪胎されている。ただ、ラストの“Wetstern Sabbath Stomp”だけはアメリカン・ロック調に仕上げられており、明らかにこの曲だけギターのトーンが異なる。

カヴァーのみならずオリジナル曲もこなれており(トリオ名義のアルバム、既に3枚目だそうだ)、ドラムとベースも含めて聴き応えがあり、かつ心地よいアルバムだ。自分はこういう音にはあまり縁がないと思っていたが、徳島に戻って以来、愛聴盤となっている。

このアルバムを聴いた後にTestamentの新譜「The Formation Of Damnation」を聴くのもまた、オツなもんです。


Alex Skolnick Trio“Tom Sawyer”

2008/10/07 Tue. 22:58  edit

Category: CD/DVDレビュー:A

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デーモン小暮「√Hakurai Culture Rock Show」(2008) 

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女性ヴォーカル曲のカヴァー・アルバム第2弾「Girls' Rock √Hakurai」ツアー最終日@渋谷AXを収録した2枚組DVD。

以前書いたライヴレポを読んでもらえればわかるように、大阪で見たライヴはかなり満足度の高いものだったが、DVDに収録されている演奏も非常にまとまりが良く、何より弦楽器(ギター+ベース)がハード・ロック/ヘヴィ・メタル完全対応型なのが前作「Demon's Rock Show」との大きな違いであり強み。前半は新譜からのカヴァー曲を中心とし、徐々に閣下のソロや聖飢魔IIの楽曲中心に移行。大橋隆志(g)がいたからこそできた“魔界舞曲”“Fire After Fire”も当然収録(後者で大橋がギター・ソロを弾くパートで五十嵐公太(dr)がツーバスを炸裂させていたのが聖飢魔IIと一味違っていてまた良かった)されている。閣下のヴォーカルも非常に調子が良い。

トーク全編で英語字幕が表示されたり(スウェーデン人がツアーメンバーに加わっていたため、彼ら目当ての、あるいは彼らを通じてこの作品を知った外国人に対する配慮、かな?)、2枚目にオマケとしてツアーのドキュメンタリーが収録されるなど、かなり気合の入った作りだが、これも閣下がこのツアーにかなりの手応えを感じたからであろう。

全編から伝わってくるのは、「ステージ上の演者が心から楽しそう」なことだ。楽しそう、というか、充実感が伝わってくると言った方が正しいか。終演後の閣下、やたらとサービス満点というかご機嫌なのだが、生でライヴを見た人なら理由はわかるだろうし、生で見られなかった人も、このDVDで演者や観客が味わった感動の何分の1かでも感じることが出来れば幸いである。

2008/10/06 Mon. 21:55  edit

Category: CD/DVDレビュー:国内た

Thread: HR/HM - Janre: 音楽

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