非思量

Lena Platonos「Diaries」(2008)

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ギリシャの女性シンガー、Lena Platonosの8年ぶりとなるソロ。彼女の作品を聴くのは初めて。

全般的に実験的というかアヴァンギャルドな色彩が濃く、ゲスト・ヴォーカルを招いた2曲を除いて、無機質なエレクトロニカ・サウンドを従え、これまた感情の起伏に乏しいLenaの語りが淡々と繰り広げられる、というのが基本パターンで、平均2分台の短めのナンバーが14曲40分弱に渡って雑然と並べられているような感じ。

各楽曲はヤマが来る前にプツッと終わってしまったりフェードアウトしてしまう曲が多いのだが、個々の楽曲は結構なインパクトを有しており、何より作品を取り巻くダークネス、緊張感、妖艶さというのは「孤高」という言葉すら想起させるほどに圧倒的。

ポップではあるのだがモノ凄くクセの強い、ハッキリ言ってしまえば異様な作品で、ダメな人は匂いをかいだだけで拒絶するけど、一旦好きになるとその匂いも含めてハマッてしまいそうな珍味の趣き。結構キャリアの長い人なのだが、過去の作品や、Savina Yannatouとの共演作も聴いてみたくなった。個人的には結構オススメです。


Lena Platonos“I Love You”

Kip Winger「From The Moon To The Sun」(2008)

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Wingerのフロントマン、Kip Wingerの8年ぶりとなるソロ・アルバム。

バンド名義での暑苦しい(?)サウンドとは一線を画した作りになっていて、ヴァイオリンやチェロなどのストリングス、ピアノ等を積極的に起用、Kipのヴォーカルも押しの強さは控えめ。笛の音のようなシンセのフレーズとドラム・ループが絡み合うイントロが印象的なミドル・テンポのオープニング“Every Story Told”と、エスニックでミステリアスなムードがパワー・バラード風のサビに転化する2曲目の“Nothing”が作品のハイライトではあるが、ピアノの弾き語りがメインのAORバラード“Where Will You Go”を挟んでの4曲目“Pages And Pages”以降の繊細でジェントルな雰囲気こそが、この作品の目指している方向性だと思う。

ヴァイオリン×2+ヴィオラ+チェロ+ベース+ハープ+ピアノという室内楽テイストバリバリのインスト“Ghosts”のような曲まで収録されており(ちなみに、この曲ではKipは演奏していない)、Kipのミュージシャンとしての多様性を感じさせる。派手さこそないものの、ほの暗くも柔らかい空気がじんわりと心に染み入る感覚が心地よいアルバム。

The Gathering「Souvenirs」(2003)

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「How To Measure A Planet?」以降、バンドが徐々に進めていた「重厚なゴシック・メタル路線からの脱皮」を完了させた7作目。

淡々とビートを刻むドラム、フィードバック等を用いつつ多様性を増したギター・サウンド、空間をうっすらと色づけるように漂うキーボード。サウンドのヴェクトルは「抑制」の一点へ向けられており、漢字で表現するなら「冷」「淡」「透」といったような、あまり色彩感の感じられない内省的なムードが支配的である。

Annek van Giersbergenのヴォーカルもおおよそバッキングの方向性に添っており、力強く歌い上げる場面は極めて限られている。が、情感の爆発を抑えに抑えた中での表現力、これが冴え渡っている。オープニング“These Good People”の最初の一声で全てを掌握してしまうかのような説得力は言葉に表しようがない。9曲目が終わってから1分以上の無音部分を経て演奏されるラストのデュエット曲(UlverのTrickster G.が参加…てこの人のこと全然知らないや)“A Life All Mine”の出来もなかなか。

「Mandylion」~「Home」までの、Annek在籍時のアルバムの中ではこれが一番好きかも知れん。モノトーンでありながら実に豊かな表情の詰め込まれた、良いアルバムだと思う。



The Gathering“You Learn About It”

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