King Crimson「THRaKaTTaK」(1996) 

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70~80年代のクラシックスを怒涛のヘヴィ・サウンドで再現、大いなる衝撃と感動を与えた第5期King Crimsonだが、「過去の再利用」以上のモノを提示する前に活動を停止してしまったせいか、活動停止から10年以上経った今ではあまり語られることもないように思える。

今回紹介する「THRaKaTTaK」は「『過去の再利用』以上のモノ」になり得たかも知れない原石が収められた作品だ。第5期Crimsonを代表するナンバー"Thrak"の即興パートが1時間近く延々と続く拷問のようなアルバムで、95年10~11月の41公演から選りすぐりの8篇が選ばれており、1曲目の導入部とラストのエンディングを除く6曲には、それぞれ"Thrak"とは別の曲名が与えられている。

紳士然とした佇まいからは想像もつかない暴虐ギター・サウンドと、過剰に眩しい光を放つサウンドスケイプを使い分けるRobert Fripp+One and onlyのインチキ臭さを誇るAdrian Belewのギター×2、どうやって役割分担を決めているのか分からないけど、役割分担しようがしまいがどうやってもせわしなくなるBill Bruford+Pat Mastelottoのドラム×2、誰と組んでもその異様な存在感を発揮せずにはおれないTony Levin+時にギター・サウンドと同化してしまうためか(使用楽器はやたらと個性的なくせに)不可解なほどに存在感が感じられないTrey Gunnのベース×2の計6人が、極めてソリッドな即興演奏を展開している。

各々がそれなりにトシを食い、また技術やテクノロジーも洗練されているため、70年代(「Island」期含む)の暴発しそうなスリルとはちょっと違うが、全編に渡って繰り広げられるテンションの高い演奏は、正式なスタジオ・フルレンスが「Thrak」1枚で終わってしまったことを悔やませるに十分なもの。もっとも、リアルタイムで聴いたときは既に活動を停止していたこともあり「何この無茶なテンション?大好き!でもワケわかんね」ぐらいの感想しか持てなかったのだが。

腕に覚えありまくりの超絶技巧集団が繰り広げる、体脂肪率8%のウルトラマッチョ・ミュージック。年寄りが聴くとぐったりすること請け合いなので、我こそはと思う若人はどうぞ。3月26日に紙ジャケで再発されるらしいです。

2008/02/25 Mon. 20:31  edit

Category: CD/DVDレビュー:K

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Nik Bärtsch's Ronin「Holon」(2008) 

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スイス出身の作曲家/ピアニスト、Nik Bärtsch(Bartsch)率いるバンドの、ライヴ盤も含めて通算5作目。曲名は今回も「Modul ○○」(○○には数字が入る)で統一されている。ちなみに「Holon」とは、哲学者アーサー・ケストラーが著書「機械の中の幽霊」で提唱した概念のこと、だと思う。詳しいことはわからないので各自調べてください。

「ミニマルな反復フレーズ」と「ジャズ的なドラム&うねりまくるベース」のコンビネーションが描き出す独特の世界に変化はないが、今回は特にリズム隊の、私が彼らをナマで見たときに感じた躍動感が作品にフィードバックされていると感じた。メンバー5人中、Bärtschを除く4人が低音のリズム担当系楽器(ベース、ドラムス、パーカッション、バス・クラリネット/アルト・サックス。ピアノも打楽器なのである意味リズム楽器であると言える)という、リズムに尋常でなく注意を払われた編成だが、ピアノは柔らかい音色ながらもメロディックな輝きを強く放っており、複雑で広く受け入れられる音楽性ではないが、とても聴き易い仕上がりになっていると思う。 "Modul 45"で前線に出てくるアルト・サックスもピアノとは異なる風景を現出させていて、いいアクセントになっている。

奇数拍子を多用しつつも実にスムーズにまとめあげられており、聴いていて飽きの来ない作品。私が一昨年見た時は諸事情からトリオ編成(ピアノ/フェンダー・ローズ+ベース+ドラムス)での来日だったが、フル編成での来日も期待したい。彼らの驚異的なアンサンブルは一度見ておく価値がある。

で、今回は国内盤は出ないの?(※現在は発売されている模様)

2008/02/10 Sun. 17:29  edit

Category: CD/DVDレビュー:N

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Alex Machacek,Jeff Sipe,Matthew Garrison「Improvision」(2007) 

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オーストリア出身のギタリスト、Alex Machacek(日本語表記だとアレックス・マクヘイサック。Out TrioのDVDではTerry Bozzioから「アレックス・マカチェク」と紹介されていたが、オーストリアだとマクヘイサックと読むのだろうか?)のリーダー・プロジェクト。

MachacekのことはOut Trioで知ったのだが、この「Improvision」を乱暴に表現すれば「Out TrioからTerry Bozzioが抜けたらこうなった」てな感じで、まあ両者ともメイン・コンポーザーがMachacekで音楽性も似通っているだから当然なのかも知れんが、ハイテクかつクールなありがちジャズ・ロックをプレイヤーの強烈すぎる個性で別の次元に持っていくOut Trioと比較すると、こちらではMachacekの個性がより引き立つ作風。

Out Trioのライヴを観た時に、一緒に観たギターを弾く友人が「涼しい顔して弾いてるけど、かなりエゲツないことやってる」と教えてくれたのだが、Holdsworth系のロングトーン&レロレロした速弾きを基調に、光速フレーズからムーディなジャズまで何でもござれ。ピッキングも正確で、なるほどかなりの凄腕のようだ。魂のチョーキング!とか、むせび泣くギター・メロディ!とか、そういうのはないけど、ま、フュージョン寄りの音なんで…。

冒頭のバカテク炸裂ナンバー"There's A New Sheriff In Town"がインパクト大だが攻撃的なばかりでなく、それ以外の曲では抑制の効いた渋いプレイも聴かせる。メタル色は皆無だが静と動の表情の変化がダイナミックな、心地よい1枚。ドラマーとベーシストも凄腕。

2008/02/01 Fri. 22:59  edit

Category: CD/DVDレビュー:A

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