Queensÿche(Queensryche)「Take Cover」(2007) 

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「Operation:Mindcrime II」に続く新作はカヴァー・アルバムとなった。曲目及びオリジナルは以下の通り。

1. Welcome to the Machine(Pink Floyd)
2. Heaven on Their Minds(Andrew Lloyd Webber & Tim Rice)
3. Almost Cut My Hair(Crosby, Stills, Nash, & Young)
4. For What It's Worth(Buffalo Springfield)
5. For the Love of Money(The O'Jays)
6. Innuendo(Queen)
7. Neon Knights(Black Sabbath)
8. Synchronicity II(The Police)
9. Red Rain(Peter Gabriel)
10. Odissea(Carlo Marrale & Cheope)
11. Bullet the Blue Sky (Live)(U2)

冒頭のPink Floydはいかにも、といった感だが、むしろCSN&YとBuffalo Springfieldのような意外性の高い曲のほうが近年の彼らのイメージに近い仕上がりになっている。ヌルいっちゃヌルいんだが違和感はない、と言うか。空気が変わるのは"Innuendo"からで、シンセのパートはツイン・ギターに置き換えられており、元々プログレ・ハード的雰囲気が強い曲ということもあってか締りのある出来になっている。

後半はこの引き締まった空気が終始維持されているが、テノール・ヴォーカルを多重録音した"Odissea"とライヴ録音された"Bullet The Blue Sky"で遂にGeoff Tateが暴走を開始。前者はバックの演奏の、他の曲(というか、近年のバンドのキャラクター)に歩調を合わせたかのような色彩感の乏しいアレンジがちょっと勿体無いが、「Geoffがこの曲をやりたいからカヴァー・アルバムなんて企画したのでは?」と勘ぐりたくなる気合の入りよう。後者は中盤からGeoffが凄い勢いでアジり出す。何を言ってるのかわからんが、どうせ「今のアメリカはうんたらかんたら」と一席ぶっているのであろう。どっちかっつーとコッチのほうがゲップが出る。

それにしても、いかにもメンバーが「好きな曲」「やりたい曲」を持ち寄ったという感じで、いやに捻りの利いた、かつ商売っ気ゼロな選曲である。「Operation~」でひとしきり盛り上がったのでここらで一息、と言ったところだろうか。基本的には熱心なファン向けのアイテムだが、近年のモノトーンでダルな感触の中にかつてのタイトさが顔を覗かせているのは嬉しいところ。

2007/11/23 Fri. 23:37  edit

Category: CD/DVDレビュー:Q

Thread: HR/HM - Janre: 音楽

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King Crimson「The Great Deceiver 1&2」(2007) 

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ブートレグ対策として92年にリリースされた4枚組ボックスセットが、2枚ずつにセパレートされて再発されたライヴ・アルバム。

私がオリジナルの4枚組を入手したのは97年のことで、当時、私は病気で入院中だった。外出許可をもらって何気なく入った開店したばかりのレコード屋でコレを見つけたときの興奮は今でもリアルに思い出せる。既に絶版となっていたのだが、開店に当たって様々な在庫を押し付けられる(と店員は言っていた)新規開店にたまたま立ち会ったがための幸運。当時、King Crimsonの公式ライヴ音源というのは非常に貴重であったため、病室に持ち込んだCDウォークマンで、文字通り食い入るように聴き入ったものである。

73~74年に渡る複数の公演の音源を、曲の重複もいとわず無造作にブチ込んだ構成は異様ではあるが、今では数多あるオフィシャル・ブート群の先陣を切って出てきた作品なだけあって、Robert Fripp(G)+Bill Bruford(Dr,Per)+John Wetton(B,Vo)+David Cross(Vln)からなる第3期Crimsonが持つ異様なテンションを存分に堪能できる。この神経質すぎるほどの緊張感、マス・ロック愛好家にはぜひ試していただきたいところ。

音質も公式リリース音源レヴェルとして問題ない(そこが後に乱発された「The Collectors' King Crimson」シリーズとの大きな違い)が、マスターは92年のオリジナルと同一でリマスター等はナシ。てっきり私はリマスター音源だと思っていた。近年のFrippはアコギな商売人根性が丸見えでさすがにうんざりしてきたので、Collectorsモノや再発モノには一切目もくれなかったけどこの作品はまあ上記のような事情もあって私の中ではやや特別な作品なので勢い込んで買ったら中身は昔のブツとまるっきり一緒だったという。ナメとんのか。

購入したAmazonではそのあたりに関する言及が全くなかったが、後からHMVを見ると「マスターは’92年版と同じながらCD原盤制作のプロセスにおいて15年前と比べるとテクノロジーが飛躍的に向上。’92年版と比較して明らかに音質は向上。」という記述が。ちょっと苦しくないか、ソレ?少なくとも、私の耳には音質の向上は全く感じられなかった。あと、国内盤ブックレットも92年版についていた日記等の邦訳(しかもカットされている箇所アリ。雑誌等のレビューは丸ごとカット)、だけ、あまつさえ92年版にはなかった誤植アリ(これは本当に意味不明)。

そういうワケで、遅れてきた若いマニアにはマスト・アイテムだが、既にオリジナルを持っている人は買う必要ナシ、ていうか買ってはいけない。

2007/11/22 Thu. 23:18  edit

Category: CD/DVDレビュー:K

Thread: プログレ - Janre: 音楽

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Mercedes Peón(Peon)「Sihá(Siha)」(2007) 

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スペインはガリシア地方の女性シンガー、Mercedes Peónの3rdアルバム。

前作「Ajrú」においてもトラッド音楽とエレクトロニクスの融合に積極的に取り組んでいたが、新作ではさらに先鋭の度合いを増しており、ガイタをはじめとする民族楽器を大フィーチュアしていて野性味溢れるも泥臭さはほとんど感じられず、ライヴでの再現性をハナから無視したヴォーカルの多重録音も含めて、精緻を極めたアレンジで一瞬たりとも気を抜けない作り。

ガリシア地方の伝承音楽をフィールドワークによって収集しまくった経験を血肉として、そこにロックのダイナミズムとエレクトロニクスの精密さをブチ込む路線が行き着くところまで行ってしまい、恐らく誰も到達していない地点にまで達してしまった感すらある。極めて洗練されていながら骨太で、何より際立った個性と有無を言わせぬ迫力が大波となって全てさらっていくかのようなパワーに満ち溢れた1枚。

2007/11/08 Thu. 00:06  edit

Category: CD/DVDレビュー:M

Thread: 女性アーティスト - Janre: 音楽

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Artemiy Artemiev&Karda Estra「Equilibrium」(2002) 

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モスクワ五輪のテーマソング等で知られるロシアの作曲家、Edward Artemievの息子であるArtemiyと、イギリスのアンビエント・ゴス・ユニットKarda Estraのコラボレーション。

我が家に唯一置いてあるEdwardの作品('75~'95年の楽曲をリミックスして収録した「A Book Of Impressions」)を聴く限り、親父の音楽性はギュワワーンとかキラキラとかビカビカとか、アッパーな擬音がよく似合う壮大なスケールのシンセサイザー・ミュージックなのだが、息子がこの作品で紡ぎ出す音はとにかくダウナー志向。

ゴシック系特有の重厚さがあまり感じられないのはKarda Estraのキャラクターゆえだろうが、もやっとした深い霧を思わせる空気を作り出すシンセと、霧の向こうからかすかに聞こえてくるKarda Estra組のギター、女性コーラスetcは、芥川龍之介が言うところの「ぼんやりとした不安」を具現化しようとしているのではないか、そんな印象を受けた。ジャケットのイメージも然り。

73分全編が喜怒哀楽の感情を一切表に出さない、無表情な感覚で塗りこめられていて、泣く子だけでなく、笑う子も黙る1枚。Klaus Schulze「Mirage」のような、視覚的でありながら抑制の効いたフラットなサウンドを好む方にお勧め。

2007/11/01 Thu. 22:35  edit

Category: CD/DVDレビュー:A

Thread: プログレ - Janre: 音楽

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