非思量

As I Lay Dying「An Ocean Between Us」(2007)

anoceanbetweenus.jpg


米国産メタル・コア5人組の4th。

私のメタル・コアに対する認識は「メロディ/歌心皆無」というもので、率直に言えば嫌いなジャンルである。食わず嫌いなのは認めるがあの辺のバンドで最初に聴いたのがLamb Of God「As The Places Burn」で、Devin Townsendがプロデュースしたというだけで買ってみたが、もう何がいいのか全然わからなくて、数回聴いて売り飛ばしてしまった(ちなみに「As The Palaces Burn」についてはDevin本人が「売れたけど、正直サウンドは酷かった」とゲロっている)。

なまじ「As The~」が評価高いだけに「こりゃ私には縁のないジャンルやな」と思っていたが気の迷いでAs I Lay Dyingの新譜を御茶ノ水Disk Unionで購入。散財目的で東京に行く、という馬鹿げた行動を起こしてなかったら絶対買ってなかったと思う。

で、恐る恐る聴いてみたらイントロ的な1曲目を経て続く“Nothing Left”のリフがいきなりMetallicaの“Blackened”風。あれれと思っていると、メロディックなギターはArch Enemyを、デス声の畳み掛けと普通声のキャッチーな歌メロはSoilworkを思い出させる作りになっていて、まあ、現代風のオーソドックスなヘヴィ・メタルと言っても差し支えないと思う。コレならボクにも大丈夫!

本人たちも今回のアルバムが「ヘヴィ・メタル」だということには自覚的なようだが、何はともあれ、疾走感とメロディを両立させたヘヴィ・メタルの美味しいところを余すところなく伝えているのは頼もしい限り。普通声のヴォーカルなど、もうちょっとこのバンドならではの個性があればいい(デス声はどうせ区別がつかんのでどうでもいいです)とは思うが、アメリカで売れているのも納得できる良作。

Le Lann Top「Le Lann Top」(2007)

lelanntop.jpg

フランスのジャズ・トランペット奏者、Eric Le Lannと、元Magmaのベーシスト、Jannick Topの2人を中心にして結成されたプロジェクトの1stアルバム。

Topが終始地鳴りのようなベースを響かせていて、それも確かにこのバンドの個性ではあるが、Le Lann及び正式メンバーであるほかの2名-Damien Schmitt(Dr)&Lionel Loueke(G)-も相当の手練で、特にドラマーの「何でも叩けますけど何か?」っぷりは異常。

ホント、何をやってもサマになっているのが特徴と言うか、凄みを感じさせる。第3期Crimson風突進ナンバーからリズム感を強調したフューチャー・ジャズ風の曲、スロー・バラードにポリリズム、何でもござれ。それでいて心地良さの追求に主眼を置いたようなクールさで全体が統一されており、これからの秋の夜長にピッタリのアルバムと言えるだろう。

ギタリストが多忙のため交代してしまったらしいがライヴでの演奏も披露されており、Top及びLe Lannもプロジェクトの継続を望んでいるらしい。そんな彼らの手応えが聴く側にも伝わってくる良い作品だと思う。

今沢カゲロウ「Bass Ninja DVD」(2007)

bassninjadvd.jpg

ループマシンを使って自身の弾くフレーズを重ねまくって曲を仕立て上げる、というスタイルで突き進む孤高のカルト・ベーシスト、今沢カゲロウの初映像作品。内容は、2007年5月18日に渋谷Duo Music Exchangeで行われたワンマン・ライヴからの抜粋+スタジオで収録されたソロ・パフォーマンス+ライヴ1曲目“Encyclopedia Of Bass Art”の奏法解説+自作の教則曲“コオロギ王子”を用いたベース・クリニックの4本立て。

ライヴの模様が収録されているのは正味40分ほどで、「今までやってきたことをギュッと凝縮して…」とMCで言っていた当日のライヴをさらに凝縮したような感じ。もっと収録して欲しかったというのが本音ではあるが、前述の“Encyclopedia~”などの代表曲や、ループマシンとベースシンセ(469種類の楽器の音をシミュレートできるらしい)を使用した自身の演奏を説明するための“高速かえるの歌”をはじめとする「1人32ビート」「人間メトロノーム」「昆虫漫談」といった基本的な持ちネタは網羅されている。一部の曲ではゲストとしてアート・ハンド(Dr/Per)が登場、タイトなプレイを繰り広げている。

曲によってはいやにアッサリ終わる感じがするのだが、生ライヴにおける音の洪水(ドラムスなどの他の楽器が入ったときよりもソロの方がアウトプットされる情報量が多いのだよこの人は)とは違って、随分と音が整理されて聴きやすくなっているのが原因かも。その分、1つ1つの曲をじっくり味わうことができて、私のようにライヴを見たことはあるけどちゃんと咀嚼しきれない部分があった人間には「ああ、こういう曲だったのか」という意味でいい復習になるし、まだ彼のライヴを体感していない人なら、生で見るとまた違った衝撃を受けることが出来ると思う。

スタジオ収録のソロ演奏は、ライヴで収録されなかった代表曲を収録。弾いている本人の顔がほとんど映らない(トーキング・モジュレーターを使うときだけ画面の端に小さく映る)と言う、観る側の「もっと手元見せろ」という思いに可能な限り応えようとした(?)映像になっているがそれはともかく、個人的には“Schwartz Markt”が三味線や笛、シタールを用いて(勿論、ベースで弾いている)アルバム版とは異なるトランス感をもたらしているのが興味深かった。それにしても、ループ・マシンを用いてバッキング・トラックを作る時のタイム感だとかセンスはTerry Bozzioを生で見たときの「凄すぎて逆に気持ち悪いかも」感に通じるものが。気持ち悪いというと語弊あり過ぎですが。

奏法解説+コオロギ王子は生徒(キング・レコードのスタッフ?)との対話形式による教則映像仕立て。コッチもコッチでかなり濃密な仕上がり。特に奏法解説は楽器を弾かない人でも興味深く観られるのではないかと。

ライヴにおけるループマシンのフットスイッチを押すタイミングが観られるだけでも美味しいDVDです、て目線がマニアック過ぎるか。いやでも実際の話、物凄い訓練積んでるんだろうな、と思わされた。全編100分、通して観ると満腹になれるぞ。

Divine Heresy「Bleed The Fifth」(2007)

bleedthefifth.jpg


Fear Factory解散→再結成の流れで村八分の憂き目に遭ったDino Cazares(G)の新ユニット。G+Dr+Voの3人編成で、ベースは一部の曲を除きCazaresがプレイしている。

「音の壁」とでも形容できそうな異様にキメの細かいギターとツーバスのユニゾン、Aメロ/Bメロのデス声とサビでのノーマル声のギャップ、キャッチーでありながら非人間的なメロディなどがアルバムの特色で、インダストリアル色は控えめ、ギター・ソロもちょろっと挿入されているが、まあ、大筋ではFear Factoryそのまんま。

無名ヴォーカリストのなんちゃってBurton C. Bellぷりにもやや思うところがないではないが、でもまあ、個人的にはこういう音以外の何者も期待していなかったので問題ナシ。一本調子の曲も目立つが、ノーマル・ヴォイスを使用しているパートのメロディはフックがあり、良い仕上がりになっている。

タイトルの「Bleed The Fifth」というのはFear Factoryへのあてつけ(5枚目のアルバムはCazares脱退後に製作された「Archtype」)という見方もあるようだが、確かにアルバム製作のエネルギーになったのが「怒り」だというのは歌詞やサウンドからも何となく伝わってくる。このテのユニットは将来性となるとやや「?」だが、いずれにせよ「Fear Factoryサウンドを作り上げたのはオレだ」という意地は十分に伝わってくる。このテのマシーナリーなメタルが好きなら、買って後悔はせんでしょう。

Steve Hackett「Darktown」

darktown.jpg

初期Genesisのギタリスト、Steve Hackettが99年に発表したソロ・アルバム。

他の作品を聴いたことがないので比較ができないのだが、この作品は「暗い」と言われているようだ。Hackett自身もライナーで「とても物悲しく、陰鬱なアルバムに感じられるでしょう」と述べており、確かに、感情を押し殺したような語りとIan McDonaldの妖しげなサックスが重苦しい印象を与える“Darktown”や、虚ろなメロトロンの響きからどうしてもKing Crimson“Starless”を連想せずにはおれない(しかもBassの音はJohn Wettonのサンプリング)“In Memoriam”を代表に、ゴシック的な重厚なムードが全編を通して感じられる。

ただ、全編通して気が滅入るようなダークネスに覆われているのかといえば決してそんなことはなく、むしろ、長い絶望の時間を越えた先にある希望への希求が強く感じられる。情熱的なギター・インスト“Twice Around The Sun”から空を覆っていた厚い雲の間から光が差してくるときの神々しさを感じさせ、“Rise Again”は序盤の静かな立ち上がりから軽やかなシンフォ・ロックに移行し、まさにタイトル通り「復活」を感じさせるポジティヴなカラーの曲だ。

どの曲も繊細で美しいメロディ、演奏で彩られており、そんな中でジャンクな“Omega Metallicus”“Darktown Riot”もしっかりと聴かせる。勿論、Hackettのギター・プレイも素晴らしくて、ギターを弾く人にとっては聴きどころ満載(私のような素人が聴いてもこの人はメチャクチャ上手いのだろうな、と思う)なのだろうが、決してギターを弾くこと/聴かせることが主眼ではなく、曲を構成する一つのパーツとして、その中でギターを光らせている。ギタリストのアルバムなのに「ギッター!」という感じがあまりしないあたり、Alex Lifeson(Rush)のソロ「Victor」を想起させないでもない。アッチにも重苦しい語りのナンバーがあったし。

特にGenesisのファンというワケではない(私、いわゆるプログレ5大バンドでマトモに聴いているのはCrimsonだけです)のでSteve Hackettもここまでスルーしまくってきた(Peter Gabrielは元々好きだが…)が、これほどのアルバムを作り出せる力量があったとは。正直、見くびっておりました。いやはや、これは凄い。

ここまで触れなかったが一番好きな曲は“The Golden Age Of Steam”。中世を模した仮想世界を舞台にしたRPGのBGMにありそうな(?)管弦楽やクワイアをフィーチュアした曲で、Hackett本人も気に入っているそうだ。

Two「Voyeurs」

voyeurs.jpg

「昔、何となく聴きそびれたCDを買ってみる」ウィーク最終回。Rob Halford苦難の時代を象徴する1998年発表の1枚。米Amazonで何気なく探してみたらあったので買ってみた。送料込みで10ドルしなかったんで、外れでもあまり後悔しなくて済みそうだったし。

タイトルの意味するところは日本語で言えば「出歯亀」で、ジャケをパラッと開いてみると、表ジャケの電車の窓を通して男女の怪しげな行為が映し出されており、毛皮に身を纏い、目の周りを黒く塗った面妖な出で立ちのRobと相俟って、アブノーマルなムードを醸し出している。

まあそんな感じでブックレットは結構期待させてくれるのだが、肝心の中身がまあ、何と言うか…。出音が打ち込みを多用した密度低めのインダストリアル・ロック(メタルではない)なのは一向に構わないのだが、楽曲は総じて50点平均で魅力に乏しいだけでなく、Robの持ち味をとことんスポイルしまくっているのが逆に凄い。

マシーナリーなサウンドをバックにあのハイトーン・スクリームを炸裂させたらさぞカッコ良かったであろうに、終始Robは中低音域でモソモソと歌っていて冴えないことこの上ない。勘違いにも程があるというか、まあ、試行錯誤の時代だったんでしょうなあ。後にMarilyn Mansonに加入するJohn Lowery(John 5)がギター・ソロで才能の片鱗を見せ付けてはいるが、作品のグレードを上げるには至っていない。それこそ当時のMarilyn Mansonばりにハジけたら良かったのに、何か関わった人間が揃いも揃って遠慮しまくってる感じで、どうしようもないワケではないけど聴いた後に何も残らないという、実にもどかしい出来。

というワケで、まあ、よい子のみんなは買うな。

Newest