Marillion「A Sunday Night Above The Rain」(2017) 

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昨年「Fuck Everyone And Run」をリリースしたMarillionのライヴ・アルバム。…と言っても新作に伴うツアーを収録したものではなく、2012年発表の佳作「Sounds That Can't Be Made」リリースの翌年にオランダで行われた「Marillion Weekend」(3日連続で行われる、ファン感謝デー的な企画ライヴ)の一夜を収録したもの。

Marillion、毎年のようにライヴ盤をこれでもかとリリースしてくるので、近年はいちいち追いかけるのが面倒臭くなって「Live From Cadogan Hall」(2010)以来、ライヴ盤はスルーしていたのだが、久々にライヴ音源を聴いて、しょっぱなの“Gaza”で彼らの力量に改めてハッとさせられた。CDで聴く分には17分を超える演奏時間にこちらの集中力を殺がれてしまうためあまり印象に残らない曲だったのだが、映像付きで聴くとその静と動を自在に行き来する彼らの持ち味が凝縮された曲なのだな、という印象が。こりゃ凄い。

選曲は「Sounds~」全曲に、尺の長い“This Strange Engine”“Neverland”等5曲を加えた全13曲135分。Steve Hogarthのヴォーカルだけはやや安定感を欠き、彼がMarillionに加入して間もない時期の曲(“Waiting To Happen”“The King Of Sunset Town”)で危うい部分もあるが、前述のように演奏力は確かで、バンドの実力を存分に味わえる仕上がり。Marillionはオランダでの人気が非常に高いそうで、ファンのポジティヴなリアクションや盛り上がりがライヴをさらに魅力的なものにしている。

ところで、この2月にMarillionの国内盤を手掛けているワードレコーズが「A Sunday~」及び「Marbles In The Park」「Live From Cadogan Hall」というライヴ盤3タイトル、さらに過去曲をアコースティック調にリアレンジした「Less Is More」(2009)の計4タイトルのライヴ盤を一気に(それもライヴ盤はブルーレイ+2CDだの2DVD+2CDだの様々なフォーマットで)発売してきた。

これらは輸入盤では以前から入手可能だった作品で、突然こんなことをして一体何をトチ狂ったのだろうかと思わずにはいられないが、売れる見込みはあるのだろうか。いや売れて欲しいしその果てに来日という話にでもなれば狂喜乱舞モノですが。CD2枚組というフォーマットもあるけど、ここは是非ブルーレイorDVDの映像付きフォーマットを。値段の高さが難だが、やはりライヴ作品は映像込みでないと、ね。


Marillion“Gaza”

2017/02/26 Sun. 17:12  edit

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Marillion「Fuck Everyone And Run」(2016) 

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スタジオ17th(「Less Is More」(2009)を含むと通算18枚目)。ジャケットに表記されている「FEAR」はタイトルの頭文字を取ったもの。その名のとおり、Fear=恐怖を各曲共通のテーマとしているらしい。

インデックス上では17曲クレジットされているが、実際は15分超の大曲が3曲と、それぞれ6分、7分、2分の小曲が大曲の間及びラストに配された全6曲。大作もあったが全体的には個々のキャラ立ちが明確であった前作「Sounds That Can't Be Made」(2012)とは明確に異なる作風を打ち出しており、Steve Rotheryのギターに代表される淡いサウンドが、時間をかけてゆっくりと水彩画のグラデーションのように色彩を変えながらクライマックスへ到達する。

これは元々の彼らの持ち味の一つであり、大曲でも小曲でもその傾向に大差はない。まあそういう作風なので、一聴で聴き手のハートを鷲掴みにするドラマティックな曲はないんだが、少しソウルっぽいムードを織り込んでみたり、リズム隊に結構存在感があったりと、コテコテのプログ・ロックでありながら茫洋としたアトモスフェリックなそれに流れないあたり、さすがキャリア30年超にして欧州のプログ・ロック・シーンで先頭集団を疾走している貫目というものを感じさせる。

私が最初に購入したMarillionのアルバム「Brave」(1994)から既に22年、写真を見ると彼らも随分トシを取った(などと書いているが私自身その「Brave」当時のメンバーよりも年上になっているのであった)ものだが、近年の作品はいずれも好評をもって迎えられており、今作では遂に「この20年で彼らが出した作品の中でベスト」という評価を得るに至っている。「この20年」だと私のオールタイム・ベスト「Afraid Of Sunlight」(1997)が入ってくるし他にも好きな作品はあるのでその評価は首肯しかねるが、良い出来なのは間違いない。

2枚連続で国内盤がリリースされ、我らがマサ・イトーはライナーノーツで「久々に来日する大義名分は、このニュー・アルバムの登場によって固まった」と書いた。来日はありますかねえ。来日して欲しいんでプレオーダー盤と別に国内盤まで買ってしまったのは私だ。報われる日は来るのか。


Marillion“The New Kings”
17分近い曲のうち、前半6分程のみのチラ見せ。

2016/10/14 Fri. 23:06  edit

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Myrath「Legacy」(2016) 

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北アフリカ沿岸に位置するチュニジア共和国出身のヘヴィ・メタル・バンド、Myrathの4th。チュニジアの音楽に触れる機会など、よほどの辺境マニアでない限り滅多にないと思われるが、彼らは既に前作「Tales Of The Sands」(2011)で日本デビューを飾っているのだそう。

勇壮かつエキゾチックなイントロ“Jasmin”に導かれて始まるミッド・テンポの“Believer”が聞き手の期待を煽るなかなかの出来栄え。初期はSymphony Xからの影響が大だったそうだが、ここでは速い曲こそ皆無ではあるもののジャーマン勢の影響が伺えるように思える。クサいほどにドラマティックな曲調もそうだし、ヴォーカルの声質は曲によっては割ともろにAndi Derisっぽい。メロディの質感はなかなかに日本人好みのそれなのではないかと思う。“Nobody's Lives”におけるコブシの効いた歌唱等、ちょっと演歌っぽい場面もそこかしこに。

ストリングスやキーボードを大胆に導入しており、剛健さよりもシンフォニックな鮮やかさが際立つ出来。特異な音楽性の割に綺麗にまとまっていて、違和感なく受け入れられる音に仕上がっていると思う。欧米でツアーに出たり大きなフェスに出演して培われた実力がいかんなく発揮されていると言っていいだろう。


Myrath“Believer”

2016/04/08 Fri. 22:18  edit

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Morgan Ågren「Batterie Deluxe」(2015) 

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Mats/Morganでの活動等で知られるスウェーデンのドラマー、Morgan Ågren(Agren)の1stソロ。盟友Mats Öbergをはじめ、多数のゲストを迎えて製作されている。

Devin Townsend(Vo,B,G,Key)とMeshuggahのFredrik Thodental(G)が“F Files”という曲に参加していて期待が高まるが、後半でマス・ロック的なギターが暴れるもののテクノ風味の浮遊感を保っており、ヘヴィ・メタルからは結構遠い音に仕上がっている。この浮遊感が全編に渡って貫かれている印象。

全体的に、Mats/Morgan「Schack Tati」(2014)の続編というか、兄弟作と言ってもいいのではないかというぐらい、作風が似通っている。たださすがにドラマーのソロ・アルバムなので、ドラムが盛大に暴れまわる場面は随所に用意されている。プログラミングも交えたリズムのパターンも多彩。

アレンジは多彩でメロディもポップなのだけれどサウンドは極めて乾いていて、満面の笑みをたたえつつも目が全く笑っていない感じ。不思議な手触りを持つ作品である。

2015/02/18 Wed. 21:10  edit

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Marilyn Manson「The Pale Emperor」(2015) 

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アメリカのショック・ロッカー、Marilyn Mansonの9th。あの「Antichrist Superstar」(1996)からもう20年近く経つのか…。

ここ10年の間に出た何枚かの作品のうち購入したのは「The High End Of Low」(2009)だけで随分彼の音楽とはご無沙汰していたので、新作を一通り聴いた後、家にある「Antichrist Superstar」から「The Golden Age Of Grotesque」(2003)までのスタジオ盤4枚プラス「The High End Of Low」を聴きなおしてみた。

楽曲の質が低下して上がり目が感じられなかった「The Golden Age Of Grotesque」や、Twiggy Ramirez復帰に一縷の望みをかけて購入したら全くの期待外れだった「The High End Of Low」が今聴いてみると案外悪くないと思ったが、「Mechanical Animals」(1998)と「Holy Wood」(2000)の出来の良さが突出していると感じたのは以前と同じ。

で、盟友Twiggy Ramirezは不参加、Tyler Batesを共同プロデューサー/ソングライターとして招いた心機一転の風情漂う新作、メロディの質が「Mechanical Animals」「Holy Wood」に肉薄するものになっているかと問われれば、残念ながら答えは「否」。ただ、これまでの作品に色濃く漂っていたこけおどしめいた猥雑さが、どこか一歩引いた視線からのそれになっているというか、年齢相応に渋みを帯びたものに変化している。

見た目やら声質やら、相変わらずビザールな要素満載ではあるが、アコギがメインのボーナス・トラック(本編のアレンジ/曲名違いを3曲収録)を筆頭に、退廃的な中に程よく枯れた味わいがそこかしこに現れていて、これはこれで悪くないのではないか。


Marilyn Manson“Deep Six”

2015/02/01 Sun. 17:10  edit

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