非思量

Queensrÿche「Condition Hüman」(2015)

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めでたくバンド名使用権を獲得したTodd La Torre(Vo)を擁するQueensrycheの新譜。そのバンド名使用権でもめている最中にGeoff Tateが作った「Frequency Unknown」(2013)はノーカンとして、オリジナルとしては14枚目、でいいのかな?クラウドファンディングで資金を募って製作されている。

前作「Queensrÿche」(2013)のJames “Jimbo” Burtonに替えてRob ZonbieやSoulflyを手がけたChris “Zeuss” Harrisをプロデューサーに迎えたのは明確な意図があってのことだろう。初期のクラシカル・メタル路線への郷愁を感じさせる“Arrow Of Time”など一部の曲を除けば、コロコロと作風を変えてきたバンドのキャラを隠れ蓑にして「今っぽい重々しさ」を核にしつつ結構やりたい放題の作品に仕上がっている。Toddの歌唱もヘヴィなサウンドの中で冴えている。もっとヘヴィでもいいくらい。

個人的には、ヘヴィな雰囲気の曲が続いた後に現れるソフトなミドル・テンポの“Just Us”のフワッとした手触りが好き。一見さんの目を引くどキャッチーな曲がないのが課題といえば課題だが、聴き込むとなかなかに味わい深いものを感じさせる。もう一段高いレヴェルでやれる筈だとは思うが、ひとまず歩みは順調、ということでよろしいのではないかと。アルバムの売れ行きは好調な滑り出しを見せているようで、本国アメリカではチャートイン2週目にしてビルボード15位まで食い込んでいる由。誠にご同慶の至りである。


Queensryche“Hellfire”

Queensrÿche(Queensryche)「Queensrÿche」(2013)

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Scott Rockenfield(Ds)、Michael Wilton(G)、Eddie Jackson(B)、Parker Lundgren(G)がCrimson GloryのTodd La Torre(Vo)を招いて結成されたRising Westが、Geoff Tateのバンド追放を経てQueensryche(以下QR)に名前を変えて製作されたアルバムである。以前のエントリで「どうせ初期の音楽性に戻るだろうから聴かない」と書いたが、まあ、やはり気になるので。

とは言え、正直、あまり期待していなかった。シングルの“Fallout”を聴いて「Operation:Mindcrime 2」(2006)収録の“I'm American”レヴェルの曲だよなあ…ぐらいの感想しか持てなかったので。しかし、購入して全体を通して聴いてみると案外悪くなかった。“Redemption”や“Vindication”、“Don't Look Back”あたりは結構カラッとしたメロディを聴かせており、「The Warning」(1984)や「Rage For Order」(1986)を思わせる冒頭の“X2”~“Where Dreams Go To Die”~“Spore”の流れよりも、個人的にはこっちの路線の方が好きかも。Todd La Torreのヴォーカル、全盛期のGeoff Tateと比較するとさすがに厳しいが健闘している。

全体的にはここ数年の彼らが採ってきた路線から、実はそう大きくは逸脱していないと思う。ただ、作品の色合いとして近いのは前述の「Operation:Mindcrime 2」及び「American Soldier」(2009)あたりのメタル色が強い作品で、かつてのファンを振り向かせるに十分な出来ではあろう。あとは新規のファンを掴めるだけの強力な楽曲(良いメロディも多いがもう一息)と潤沢なレコーディング資金(正直、音はやや薄っぺらい)。これらが揃えば未来は明るいのではないか。少なくとも「QRに求められている音」を理解し、実行しているのはコチラ側だろう。


Queensryche“Fallout”

Queensrÿche(Queensryche)「Frequency Unkown」(2013)

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昨年6月から分裂状態のQueensryche。今回紹介するのは、バンドから放逐されたGeoff Tate率いる方のQueensryche(以下GT版)から4月にリリースされた新作である。国内盤発売の予定は今のところなし。

現在、GT版の公式サイトでクレジットされているメンバーはKelly Gray(G)、Robert Sarzo(G)、Rudy Sarzo(B)、Simon Wright(Dr)、Randy Gane(Key)だが、奇妙なことにどのメンバーも本編の10曲中、数曲ずつしか参加していない。ギタリスト2名に至ってはソロで1曲の参加に留まっている。じゃあギターは誰が、というとリズム・ギターはForbiddenのCraig Locicero(G)が全曲でプレイ。全曲に参加しているの、Geoff以外だとこの人だけ。曲ごとに様々な人材が入れ替わり立ち代わりして録音されているが、私が名前を見てわかるのはギター・ソロのK.K. DowningやBrad Gillis、Dave MenikettiにTy TaborとChris Poland、ドラムのPaul Bostaphあたりか。プロデューサーはJason Slater。

イントロでインチキR&Bシンガーみたいな「いえぇぇぇえいはぁあん~~」というクソを聞かせる3曲目の“Give It To You”でSTOPボタンに手が伸びそうになるが、「American Soldier」(2009)に通じる叙情性を持つ“In The Hands Of God”“Life Without You”“Everything”は悪くないと思う。モダンなアメリカン・ハード・ロックという枠組みの中で、「Q2K」(1999)以降の各アルバムの要素を抽出して曲ごとに配合を変えつつ仕上げている感じで、これまでと違うと言えば違うし、代わり映えしないといえば代わり映えしない。前進していると言えなくもないし、すっかり停滞しているとも言える。

明らかに後退しているのはプロダクション。聴いていて気持ちの良い音ではない。Jason Slaterが関わるようになってからこの方、心から満足できる音質のアルバムが出たためしがないが、「Empire」(1990)を作り上げたバンドとは思えないレヴェルにまで落ちている。あと、過去の代表曲のリメイクが4曲収録されているがこれが悲惨の一言。全般的にGeoffのヴォーカルが筒一杯な感じで、特に“Silent Lucidity”では音程ヨレまくり。なぜこのテイクを採用しようと思ったのか。あんまりなデザインのジャケットと合わせて、作品のグレードを思いっきり下げてしまっている。Geoffのヴォーカル、現在のレンジに合わせた新曲を歌っている限りにおいては相変わらず良いけどねえ…。


Queensryche“Cold”

Queensryche「Dedicated To Chaos」全曲解説。

時期的に「2011年上半期ベスト」的なエントリーを書く頃合なのだがQueensryche「Dedicated To Chaos」に激ハマリしているので、この作品の全曲解説をもって上半期ベストに代えたい。とは言え他に気に入った作品もチョコチョコとあるので、それらについては年末年始あたりでフォローする。

1.Get Started
「Q2K」以降のメロディやサウンド・メイクのセンスで"Best I Can"をやったような、アップ・テンポなハード・ロック。軽快な印象。

2.Hot Spot Junkie
「Q2K」以降のメロディやサウンド・メイクのセンスで"Damaged"をやったような、アップ・テンポなハード・ロック。"Damaged"を引き合いに出したがリズムの使い方が似ているだけで別段ダークなワケではない。オーソドックスな"Get Started"からの流れを順当に引き継いでいる印象。

3.Got It Bad
ここで空気を変えて、やたらトガッた曲が登場する。シタール風の怪しげなサウンドとルーズなヴォーカル・ラインが絡む、メタル色皆無の妖しいグルーヴ曲その1。

4.Around The World
ストリングスを従えたミッド・テンポのバラード。出番は多くないがギターの音もハード・ロック色が濃く、あまり極端な作風を好まない層にも受け入れられそうな曲調。ライヴで映えそうな感じ。

5.Higher
ハードな曲調の中にファンク風味が見え隠れする、うねるリズム隊が曲を牽引する曲。サックス・ソロもフィーチャーされている。

6.Retail Therapy
「Hear In The Now Frontier」に収録されていてもおかしくない、いかにもグランジに感化されたメタル・バンドがやりそうなラフなタッチの曲。

7.At The Edge
"Retail Therapy"と同じ90年代の空気を感じさせる曲だが「『Hear In The Now Frontier』みたいなラフ&ルーズ路線じゃなくてコッチに行けば良かったのに」と思わないでもないダーク&ディープ、かつハードな曲。あ、それは「Promised Land」でやってたか。曲の後半、最後のサビ前に切れ込んでくるサックスがカッコいい。

8.Broken
ボーナス・トラック。映画のワンシーンを思わせる荘重なストリングとメランコリックなヴォーカルの小曲。続く"Hard Times"のイントロ的な感じもする。

9.Hard Times
ボーナス・トラック。Geoff Tateのソロ・アルバム「Geoff Tate」収録の"In Other Words"に通ずる、ムーディで叙情的なバラード。Chris DeGarmo脱退後のQueensrycheが曲単位で注目されることはほとんどないが、「Q2K」の”Liquid Sky"や「Tribe」の"Rhythm Of Hope"等のしっとりとした感触の曲はかなりいいモノが多い。この曲もその系譜に連なる曲だと思う。個人的にはこのアルバムのベスト曲。

10.Drive
ダークで抑制の効いた序盤からパッと視界が開けたようなサビまでの展開が結構ダイナミックなミッド・テンポの曲。

11.I Believe
ボーナス・トラック。メタル色皆無の妖しいグルーヴ曲その2。トライバルなリズムに乗るGeoff TateのVoが艶かしい。

12.Luvnu
ボーナス・トラック。「ラヴィン・ユー」と読ませる。ややルーズな感触も取り混ぜたハード・ロック。

13.Wot We Do
キワモノ・オブ・ジ・アルバムはこの曲!メタル色皆無の妖しいグルーヴ曲その3。既にレビューで触れたし動画も貼ったからそちらを参照していただければ。でりしゃ~す♪

14.I Take You
スローでやや重々しい、ある意味、現在のQueensrycheにおける正統派ナンバー。

15.The Lie
これまた「Q2K」以降のQueensrycheらしい曲。ツイン・ギターがフィーチュアされた数少ない曲の1つ。

16.Big Noize
波間を漂うような浮遊感と凝ったコーラス・ワークがサイケデリックな空気を作り出し、Geoffの高音がそれを切り裂く。ラストに相応しいスケールで、歌詞の世界観に合わせたようなどこか落ち着きの無い曲調も含め、プログレ色が一際濃い。

17.Around The World(Live)
国内盤ボーナス・トラック。オーケストラとの共演ライヴ。

これを読んだら「買ってみようかな」と思ってくれる人が出てきそうな気が…しません!参ったなあ。

ちなみに国内盤は海外盤のスペシャル・ヴァージョンに国内盤のみのボーナス・トラック1曲を加えた17曲入りになっており、購入するなら通常盤よりもコチラをお勧めする。正直曲数が多すぎると思うが、それでも流れとしては12曲入りの通常盤よりもコチラの方がいい。

ベースが結構目立っていて「Kings Of Leonみたいなのがやりたいのかな」と思わせるところもあったりで、いよいよChris DeGarmo在籍時とは別のバンドになってきた。思えば遠くへ来たもんだ。しかし、音楽的な野心を剥き出しにして一向に落ち着く気配がないところはいかにも「らしい」し、今回はその野心が結構高いレヴェルで実を結んでいると思うのだが、どうだろう。作曲、演奏の両面でリズム隊が結構目立っていて「Michael Wiltonは今回のアルバムの出来に納得しているのだろうか」と余計な心配をしたくなるアルバムではあるのだが。

Queensryche「Dedicated To Chaos」(2011)

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バンド結成30年目にしてYの上からウムラウトが消えたQueensrycheの12枚目のスタジオ・アルバム。正式メンバーはGeoff Tate(Vo)、Scott Rockenfield(Dr)、Eddie Jackson(B)、Michael Wilton(G)の4人で、ツアーにも参加したGeoffの娘婿であるParker Lundgren(G)はAdditional Guitarsとしてクレジットされている。

アルバム発売前に"Get Started"を聴いた時はあまり印象に残らなかったのだが、公式アカウントがYouTubeで公開していた"Wot We Do"にはさすがに度肝を抜かれた。



まるでR&Bとかヒップホップのような(て、門外漢だから書いていてあまり自信がないんだが…)謎めいたグルーヴ。Geoffは新作を「『Empire』の未来盤」と表現しており「言われてみればアダルトになった"Last Time In Paris"って感じはするかな…」と思えなくもないが、どちらかと言うと比較対象として浮かんでくるのは「Promised Land」「Hear In The Now Frontier」(以下HITNF)といった問題作群。比較対象と言ってもこの2作と「Dedicated To Chaos」が音楽的に似ているワケではない。共通項は聴き手にもたらされる「なんで『○○』の次にこれが出てくるの?」という感情で、『』の部分が前回は「Empire」で今回は「American Soldier」になる。

音楽的には拡散の極みといった趣きで、まがりなりにもハード・ロック風味を残した"Get Started"のような曲もあるが、伸びやかな"Around The World"のようなバラードもあれば"Higher"のようにファンキーなテイストの曲もあり、"Hard Times"のようにメロウな曲もあり、そして前述の"Wot We Do"のような曲もあり。多様な音楽性がヴェテラン・ミュージシャンというフィルターを通じて、変なプログレとしか形容のしようがない音になっている。Geoff Tateのソロ・アルバムで見られた多様性をさらに大胆な形で推し進めたアルバム、というのが最も適切な表現かも知れない。

私は前作の「American Soldier」が結構気に入っていて、Chris DeGarmoが抜けた後のQueensrycheの1つの到達点だと思っている。もう彼らもいいトシなので、ああいう作風で落ち着いてくれんかなあ、と思っていたがものの見事に裏切られた。まあ「American Soldier」云々を抜きにしてもとにかく奇妙なアルバムで、とてもではないが胸を張ってオススメはできない。

でも何故か自分の部屋で超ヘヴィ・ローテーション中。奇妙なアルバムではあるのだがGeoffのメロディが今回は結構堂に入っていて、特にプログレ色の強い"Hard Times""Big Noize"はクセになる味わい。"Wot We Do"もリズムの使い方が面白くて何となく嵌ってしまう。最早一部の物好きと盲目的なファンにしか受け入れられないのではないかという気がするが、私は好きなので別にいいや。しかし、さすがに今回は来日はないだろうな。

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