非思量

小暮伝衛門「好色萬声男」(1990)

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今回の再集結も好評のうちに終了したらしい(私は前回初めてライヴを観て気が済んだので今回はノーチェック)聖飢魔IIのヴォーカリスト、デーモン閣下が小暮伝衛門名義で発表した1stソロ。タイトルは「こうしょくよろずごえおとこ」と読む。これ、知る人ぞ知る傑作でいつか紹介したいと思っていたのだが、この2月に他のメンバーがやはり90年代前半にリリースしたソロ/ユニット作と一緒にリマスターの上再発されたことで、ようやく採り上げる機会を得た。

契約の都合上急遽リリースされたという事情もあってか、収録曲の半分はカヴァー(閣下が学生時代に参加していたスーパースランプの曲も含む)で、1か月ぐらいで製作された急ごしらえのアルバムなのだが、様々なアイディアがこれでもかとブチ込まれた、物凄いゴッタ煮ぶりにとにかく圧倒される。

逆相で録音された不可思議な感覚のサウンド+奇数拍子+ヴァイオリンのオープナー“桜の森(Space Trip Mix)”や、美空ひばりが死後に国民栄誉賞を受賞したことが着想の一つとなっている歌謡曲テイストのバラード“縁(えにし)”、環境問題にスポットを当てた歌詞がデーモン閣下らしいメッセージ性の強いハード・ロック“地上絵(「野性の王国」のテーマ)”といったオリジナル曲も素晴らしいのだが、Janis Joplinに李白の漢詩を乗せ、ゼノン石川と江川ほーじんのスラップが唸るファンクに仕立てた“Half Moon~月下独酌~”やThe Fifth Dimensionの曲が坪内逍遥の詩、閣下の多重Vo、女性コーラス、コンガ、笛等が入り乱れる超絶シンフォ・プログレに生まれ変わった“Aquarius~帰墟~”といったカヴァー曲群もまた圧巻の出来。21世紀に笑えないネタというかPC的に難ありな“さわりたひ”は、まあ、ご愛敬。尺八、琵琶といったのちの邦楽維新Collaborationに繋がる和楽器との関係もここから始まっている。

帯の煽り文句によるとゲスト参加は総勢100名にも及ぶそうで、聖飢魔IIで使えないネタを全部使いましたとでも言わんばかりの豪華絢爛さが眩しい、重厚な一枚。タイトルよろしく、閣下の歌声も、知らない人が聴いたらメインVoが複数いるのでは?と勘違いするほどの変幻自在ぶり。ショートコントまで収録されていて、とにかく、色んな意味において普通ではない。

Capriccio「Hyper Naturalism」(2015)

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大阪は堺にて結成された6人組による1st。

動画がアップされた“Missile”を聴いてなかなかはっちゃけた感じのバンドだなあと思ったが、まず19歳のうら若き女性Vo、Pekoの歌が良い。Slipknotの影響下にあると思しきエクストリームなサウンドや、Key兼任のうさぎさん(ウサギのアニマルヘッドをかぶっている)のスクリームもなかなかに強烈だが、彼女の声はその中でも際立った存在感を見せる。上手いと思う。

曲も良い。“Missile”はアッパーなテンションで押し切る曲だが、それ以外は哀感漂うメロディを持つ、シリアスめの曲が多い。レベッカ(祝・紅白出場)聴いてたおっちゃんが遠い目になるようなタイトルの“Lonely Butterfly”(勿論、同名異曲です)や、ミッド・テンポで情感的なサビメロを聴かせる“Zero Piece”等、クオリティは高い。

Slipknot+ガールズ・ポップとでも言えばいいのか、CDの帯に曰く「メルヘンチックデスポップ」だそうだが、何より「ポップ」であるのが魅力的。歌とメロディが良いからこそ、タイトかつヘヴィな音やスクリームといったそれ以外の要素も光る。良いよ。


Capriccio“Missile”

きゃりーぱみゅぱみゅ「なんだこれくしょん」(2013)

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今や時代の寵児、と呼んでいいのだろうか。NHKアナでさえその名前を読む際に苦労するきゃりーぱみゅぱみゅの2ndフル。

“ふりそでーしょん”のPVを観てシュールな歌詞やメロディに魅かれて通常盤を買ってみたが、外国人が喜びそうなエキゾチシズムを内包した“にんじゃりばんばん”、クレヨンしんちゃんのOP“キミに100パーセント”、歌詞が何も言っていないに等しい“インベーダーインベーダー”“み”等、意外性よりもJ-POPとしてひたすらラヴリーかつキャッチーであることに焦点を絞ったアルバムである。“ふりそでーしょん”も改めて聴いてみるとサビ以外は割と普通だった。

最初は“ファッションモンスター”の出来が突出していると思ったが、洋楽エレクトロニカ臭が濃いこの曲がむしろ浮いてるのかな、と。ただ、“ファッションモンスター”がアルバムのハイライトとして君臨していることは間違いない。Capsuleのセルフ(と言っていいのか?)・カヴァー“Super Scooter Happy”やラストの“おとななこども”も、他の曲とはやや異なるクールな色彩を帯びていて良いと思う。

きゃりーぱみゅぱみゅの声質も含めて、おもちゃ箱をひっくり返したようなアルバム。ちょっと途中で辛くなる時間帯があることもまた確かなのだが、聴いていて思わず踊りだしたくなるようなフワフワしたムードが結構楽しい。

余談。“ファッションモンスター”を聴いていて思ったこと。最初はその奇抜なファッションから篠原ともえの現代版かな、と思っていた(可愛いし)が、そこはかとなく漂う甘酸っぱいテイストから何となく連想したのがレベッカ。未成年から支持を受けるガールズ・ポップ/ロックて、時代やスタイルが変わっても歌詞から滲み出る世界観はそう大きく変わらないものだが、だからといってレベッカを思い出してしまうというのは…トシだな。


きゃりーぱみゅぱみゅ“ファッションモンスター”

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