非思量

Ukandanz「Awo」(2016)

awo.jpg

ジャズやプログレのフィールドで活動していたフランス人ミュージシャン(G+Tenor Sax+Dr+Key)にエチオピア人歌手Asnake Guebreyesが加わって2010年に結成されたUkandanzの2nd。今作ではキーボード奏者が脱退し、代わってベーシストが加入して制作されている。

ラストに配された1曲を除き、1960~70年代に録音されたエチオピア楽曲のカヴァーだそうで、コブシのききまくった歌い回しはエチオピア音楽の個性のひとつらしいが、バックの演奏はと言えば、先鋭的なジャズ畑の人がロックを演奏した時の見本のような、装飾のない骨格むき出しなバッキバキのアンサンブル。

これとエスニックなグルーヴとの融合が驚きのシナジー効果を生み出しているのだが、新加入のBenoit Lecomteがこのゴツゴツしたサウンドの核になっており、随所でカクカクとキメまくりつつドラムが細かいフィルインを入れ、ラストは全員が一体となって疾走しだす“Tchuhetén Betsèmu”やつんのめるようなビートが気持ち良い“Endé Iyérusalem”のような、リズム隊がガッツリと前面に出てくる曲が聴いていて楽しい。

2013年に来日経験があるらしいが、ベーシスト加入後は来日していないようなので、再来日希望。この音はぜひライヴで体感したい。


Ukandanz“Tchuhetén Betsèmu”

Unheilig「Gipfelstürmer」(2014)

gipfelsturmer.jpg

Rammsteinを祖とするロック・ミュージックのサブジャンルの一つ、Neue Deutsche Härte(New German Hardness)の雄、Unheiligの9thにして恐らく最終作。最終作だと思うんだが、Google翻訳を通して読んだ公式サイトに載っていた声明ぐらい(リンク先はドイツ語原文)しかソースと呼べるものがないので、今一つ自信はない。シングル・カットされた曲のタイトルが“Zeit Zu Gehen”(Time To Go=旅立ちの時)とか、結構モロに終わりを感じさせるのだが。

80年代のメインストリームを思わせるクッキリ、スッキリしたポップな曲や絶妙なストリングスを配したバラード、ゴリッとしたギターのエッジが効いた曲、とまあ様々なスタイルの曲をDer Grafが朗々と歌い上げる。いずれの曲もメロディにフックがあり、ウェルメイドな大作映画のエンディング・テーマを延々聴かされているかのようなスケールの大きさを誇る。ちなみに歌詞は全編ドイツ語。

ゴシック・メタル~インダストリアル寄りの音を耳に心地よいポップ・ミュージックへ昇華させ、そこへドイツならではのコクというか、妙ちくりんな濃さがブレンドされて唯一無二の音に仕上がっている。そしてこの異様なまでの完成度の高さ。文句なしの2014年ベスト。最高。


Unheilig“Zeit Zu Gehen”

Unheilig「Alles Hat Seine Zeit」(2014)

alleshatseinezeit.jpg

2000年にドイツで結成され、7th「Große Freiheit」(2010)がドイツ本国で140万枚を売り上げたモンスター・バンド、Unheiligのベスト盤。

Vo+Key+Gにライヴのみ参加のドラマーを加えた4名がメンバーだが、実質Der Graf(Vo)のワンマン・バンドと捉えて良さそう。何せ「あのグラフ氏」と名乗る(Derは男性名詞の前につける冠詞。英語で言うところの「The」。本名はBernd Heinrich Graf)このVo氏しかPVに出てこないのだ。オマケのDVDに収録されたPVを見ていると、ライヴ収録の1曲を除き、ほぼ全てが何がしかのストーリー仕立てになっており、その合間でスキンヘッドにヘンなあご髭をたくわえた異様な風貌のGrafが現れ、柔らかな笑みを浮かべながら艶のあるバリトンを響かせる構成。ブックレットもGraf以外のメンバーは一切写っていない。

アルバムは新曲も込みの前半から、徐々に初期作の収録曲に遡っていく構成。最初に聴いた“Als wär's das erste Mal”にどハマりしてこればっかり聴いていたが、もう少し明るくてポップな雰囲気の曲もある。というか、全体的に意外と軽いというか、聴きやすい。U2のような伸びやかさとインダストリアル調サウンドを一体にして、ストリングスなんかも入れて思いっきり大衆化したような(肝心のヴォーカルは例のバリトンなのだが)。これが初期の楽曲を収録した後半に進んでいくにしたがって徐々にRammsteinっぽくなっていく。

サビメロのキャッチーさも評価すべきポイントだとは思うが、聴いているだけでDer Grafが片方の眉を上げながら歌う姿が脳裏に浮かんで離れなくなる、このいわく言いがたい存在感。是非味わっていただきたい。これが140万枚売れるドイツマジドイツ。


Unheilig“Als wär's das erste Mal”

Univers Zero「Clivages」(2010)

clivages.jpg

99年の再始動以来、3枚のスタジオ盤と2枚のライヴ盤(うち1枚は80年代のアーカイヴ盤)をリリースと、比較的順調に活動を続けているチェンバー・ロック界の暗黒魔人Univers Zeroの新作(スタジオ9th)。ドラマーにして首領のDaniel Denisを筆頭に、バスーン、オーボエ、クラリネット、鉄琴、ベース、ヴァイオリンといったアコースティック主体の様々な楽器を複数担当する総勢7名のメンバーにゲスト3名(ドラム、アコーディオン、チェロ)を加えた編成。ゲストでドラム(ラストの“Les Cercles d'Horus”にのみ参加)としてクレジットされているNicolas DenisというのはDanielの息子?

一聴して感じるのはサウンドの持つ生々しいエネルギー。Michel Berckmans(Basoon,English Horn,Oboe,Melodica)の自宅でレコーディングされたことでコスト面の制約が減ったことが大きいのかも知れない。その点では再結成後の作品とは明らかに一線を画していて、特に人間臭さというか体温が感じられなかった(私はそこが好きだったんだが)「The Hard Quest」や、ミュージック・コンクレートの領域にまで踏み込み、抽象的な印象を強めた「Implosion」とはまるで異なるライヴ感溢れる音が全編を支配している。

楽曲も充実。突進してくるのではなく真上にピョコピョコ飛び上がるような独特なリズミカルさの“Les Kobolds”に始まり、2nd「Heresie」の「暗黒」という言葉を体現した音世界を現代に蘇らせた“Warrior”、満月に照らされた青白い闇を思わせる、じわじわと来るイントロから一転、爆裂ジャズ・ロックが唸りを上げる“Straight Edge”、「The Hard Quest」のラスト曲のうら寂しさに通じる“Retour De Foire”などなど、聴きどころは多い。再始動後のテイストを引き継ぐDenisの曲と5th「Heatwave」までの空気を漂わせる出戻り組(Andy KirkとMichel Berckman)の曲、Univers Zeroの持ち味を尊重しつつ新しいテイストを持ち込んだ若い(?)Kurt Budeの曲が上手く共存している。

鉛色の空の下でモノクロのピエロがダンスを舞っている様な、どことなくユーモラスな響きを持った曲ですら狂気じみた何かが漏れ出してくるバンドの個性は健在。多分、変拍子と不協和音の効果なのだと思うが、どこを切っても薄気味悪い(褒め言葉です)。「Ceux Du Dehors」「Uzed」が好きだったけど再結成後の作品はちょっと…という人にもオススメできる。皆で国内盤を買って来日公演を実現させよう!

Univers Zero「The Hard Quest」(1999)

thehardquest.jpg 

※「1997年~2006年の10枚+1」第11回→他のレビューはこちら

'78年にデビューし、RIO(Rock In Opposition)なる反商業主義的な音楽を志向するムーヴメントの中で活動、'87年に一度解散したベルギー産バンドの再結成第一弾(6th)。なお、バンド名は「ユニヴェル・ゼロ」と読む。

主にアコースティック楽器(ベースはエレクトリック)を用い、室内楽の精緻なアンサンブルとロックが持つダイナミクスの融合を目指したチェンバー・ロックと呼ばれるジャンルの嚆矢の1つで、部分的にはMagmaに通じるところもあるかも知れない。ドラマーがイニシアチヴを握っている点も共通している。ただ、祝祭的かつ宗教的な高揚感を漂わせ、ある種冗談の通じなさそうな暑苦しさを持つMagmaに対し、Univers Zeroの方は内向的で陰鬱、厳格でありながらどこか屈折したユーモラスさを(微かではあるが)漂わせている。

前述の定義に従えば、最もチェンバー・「ロック」している3rd「Ceux De Dehours」('81)及び4th「Uzed」('84)が一番「らしさ」を感じさせるのだが、「The Hard Quest」においてそのようなハードな側面を見せるのはラスト前の10曲目に収録された“Xenantaya”ぐらいで、そのほかの曲は、一歩一歩足元を確かめながら歩むような感じでガッチリと構築された、無機質かつ前衛的なアンサンブルを聴かせる。

アコースティック楽器の透明感のある音色はなぜか殺風景な世界を現出せしめ、高音域を駆使するベースは聴き手に不安や混沌をもたらす。爽快感は皆無で、聴いていて鬱になるタイプではないが、平和の中に潜む静かな狂気を感じさせる音楽である。

正味な話、再結成後の作品は芳しい評価を得ているとは言い難い気がする(というか、そもそもあまり言及されていない)のだが、ひたすら不吉なイメージを刻み込むことに全力を注いでいるアングラ色タップリな1st、2nd(これはこれで捨てがたい)や、音楽的には飛躍的な技術的向上を見せつつそのユーモア感覚(あと音質)ゆえに(あくまでも曲によっては、だが)少々「軽さ」を感じさせる部分がないでもない3rd~5th(一般的に評価が高いのはここかも)よりも、歪んだ陰鬱さがより明快に表現されたこの作品が個人的には最も好みである。この時期の彼らのフォロワーというのは恐らく存在しないので、なかなか他では聴けない音だと思うよ。


Univers Zero“Civic Circus”

Newest