非思量

Fear Factory「Genexus」(2015)

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インダストリアル・メタルのヴェテラン、Fear Factoryの9th(デモ音源集「Concrete」(2002)を含めると10th)。レコーディングはBurton C. Bell(Vo)とDino Cazares(G)、Mike Heller(Dr)の3人(ベースについてのクレジットはなし)で行われているが、“Soul Hacker”のドラムはDean Castronovoが叩いている。

前作「The Industrialist」(2012)の出来がイマイチだったのでもう見切りをつける気満々だったのだが、何気なく手にとった雑誌のCDレビュー欄を見て新作のリリースを知り、購入。ほぼ惰性で買ったようなモンだが、やはり好きなだけに気になってしまうんだよなあ。

だもんで全く期待していなかったんだが、豈図らんや、これが良かった。刻みに刻む弦楽器隊とドラムスがシンクロしまくる音楽性は基本的に不変だがマシーナリーな感触は後退、もう一つの顔であるメロディックな要素が結構前面に出ている。これまでもそういう曲はアルバムに1曲は含まれていたが、今作ではメロディに重きを置いた楽曲の比率がグッと高まっている印象。“Regenerate”などは随分とポップな曲調(無論、Voも演奏もいつものあの調子ではあるが)。極めつけはボーナス・トラックで収録されている“Enhanced Reality”。アンビエント寄りのインダストリアル・ロックといった風情で、メタルですらない。

随所で挿入されるSE/シンセ類や、ちょこっとだけ現れるピアノ等も効果的。暑苦しい夏にピッタリはまる音楽ではあることも確かだが、それを差し引いても予想外のヘヴィ・ローテーションになっている。良い。


Fear Factory“Dielectric”

Freak Kitchen「Cooking With Pagans」(2014)

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変態ギタリストとしてその名を知られるMattias IA Eklundh(G,Vo)率いるスウェーデンのトリオ、Freak Kitchenの8th。

ヘヴィでありながら低音を強調し過ぎない軽快なサウンドで響く、ちょいちょいと現れる複雑なリズムと明快なメロディがFreak Kitchenの音楽的コア。ピロピロ、ミュンミュン、ケコケコと変な音を一杯出すIAのギターは存在感ありすぎだが、あくまでも歌、そしてメロディが主役。

アルバムの白眉は2曲目の“Freak Of The Week”。Jonas Hellborgとの双頭プロジェクト、Art Metal(今年、2ndをリリース)経由で仕入れたと思しきエスニックなテイストを微かに漂わせつつ、嵐のような変拍子をカマしながらスムーズさを失わず、フックのある曲に仕上がっている。Freak Kitchenの美点を全部詰め込んだような曲で、脳内でサビの部分がヘビロテされるぐらいお気に入り。

ギターをレロレロさせながら疾走する“Ranks Of The Terrified”をはじめ、他の曲も印象に残るものが多く、曲作りの巧みさに思わず感心してしまう。ポップでありながらマニアックなつくりがかなりツボ。おすすめ。


Freak Kitchen“Freak Of The Week”

Felix Martin「The Scenic Album」(2013)

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ヴェネズエラ出身、バークリー音楽院で学んだ経験を持つギタリスト、Felix Martinの2nd。

ジャケ写を見ればお分かりのとおり、彼が使用している楽器は14弦ギターなる珍妙なもの(16弦ギターを使用することもあるらしい)。「弦がいっぱいあるから音もめいっぱい詰め込みましょうね!」とばかりに、両手タッピングを主軸にした高速レロレロ大会を繰り広げている。

ベースにチャップマン・スティックも弾けるNathan Navarroを配し、極めつけにMarco Minnemann(Dr)を投入、凄腕ゲストを招いてまさにやりたい放題といった趣で、メタルもしくはフュージョン的なサウンドを軸にジャズ、ラテン、ワールドといった様々な要素をぶち込んで目も眩まんばかりのエキセントリシティを追求している。

もうここまで来ると何がなんだかの世界だが、レロレロしまくりつつコード弾きを差し挟んできたり、ラスト前の“Eleven Drums”ではポップでメロウな瞬間を垣間見せたりで、Martin自身のショウケース的な印象を抱かせつつ、曲自体も結構良い。インパクトのある作品。


Felix Martin“High Spirit”
バークリー在学時の演奏。

Friend Roulette「I'm Sorry You Hit Your Head」(2013)

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ブルックリンを拠点にしているVo(♂),G,Synth+Vo(♀),Vl+Bass Clarinet,Ewi+Per×2という特異な編成の5人組による1st。インディー系にありがちなややモヤッとしたサウンドと60年代のサイケデリックを祖とするような浮遊感のあるメロディの組み合わせ。チェンバー・ポップとかアヴァン・ポップに分類される音だと思う。

このテの音にありがちなほんわかぱっぱした雰囲気が支配的ではあるが、メロディは案外コシがあるし、基本プリミティヴでありながら奇数拍子やエレクトロな16拍子も顔を出すリズム、バンジョーやピアノも現れる多彩なアレンジ等、単なる脳みそお花畑系なだけではない聴き応えのある瞬間も多々あり。

どちらかというとタイトでシリアスな音が好きなのでこういう系統はあまり好きではないのだが、ほのかにではあるがスリリングなところもあり、通り一遍でない部分が私の好みに合ったのかも知れない。1、2回聴いておしまいではない、リピートに耐えうる出来。前述のように結構ヘンテコな編成のグループなのだが、こういう連中にはたまに侮れないのがいるんだよな。


Friend Roulette“On Her Own Tonight”

Fleur「Probuzhdenie」(2012)

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ウクライナ産、女性Vo×2を擁するユニットの、多分7th。ロシア語(ウクライナ語かも)表記だとFlёur「Пробуждение」。

2人のVo、片割れは大人びた美声を持ち、もう一方はあどけなさが残っている。曲によって明確に2人を使い分けている(2人のハーモニーというのは、使われてはいるのだろうがあまり目立たない)が、それより何より徹底的に愁いを帯びた泣きメロに焦点を当てた(明るい曲が1曲もない)楽曲群が非常に優れている。捨て曲はないと言ってよい。かつて旧ソ連のポピュラー・ソング(所謂ロシア民謡)が日本に浸透していたこともあり、どうにも昔の日本歌謡曲との類似性を感じずにはいられない。同じようなことをRokashの時にも書いたが、ハードさの薄いFleurのほうがより強い近似性を感じる(かなりニッチな見方だがかすかなエロを感じさせるところとか、特に)。

歌を引き立てるバックの演奏も、ピアノや各種管弦楽器、あるいはシンセ等が派手さはないものの歌を効果的に引き立てている。クラシカルだったりフォークっぽかったりするが土台のリズム隊がこれまた派手ではないが意外と存在感があり、Voが揃って歌い上げるタイプなこともあってロック色も強い。いずれにせよ全編これ哀愁溢れるほの暗いメロディの詰め合わせ状態。なかなかに凄いです。

Flёur“Оборвалось”(試聴ページに飛びます。あどけなさ担当のELENAがVo。物憂げ担当のOLGAの曲共々、作品全編がこのレヴェルのメロディで埋め尽くされております)

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