Richard Barbieri「Planets + Persona」(2017) 

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元Japanで、拙ブログで採り上げる諸作品でもチョコチョコとその名が出てくるキーボーディスト、Richard Barbieriの「Stranger Inside」(2008)以来実に9年ぶりとなる3rdソロ。

2006年のPorcupine Tree来日公演(大阪南港にあったZepp Osakaで、客が250人ぐらいしかいなかった)で、会場全体を上から包み込むように降り注ぐ荘厳な彼のサウンドにノックアウトされたことが今でも懐かしく思い出される(ちなみに前座はRobert Frippのサウンドスケープによるソロ・パフォーマンスで、2割近くの客が寝ていた)が、このアルバムで主に聴こえてくるのはトランペットやアコースティック・ギター等のゲストをフィーチュアした、指でつついただけで壊れてしまいそうなほどの繊細なサウンドの連なり。

明確なメロディを奏でているワケではないしミニマルな印象を感じさせる瞬間すらあるのだが、パーカッションでメリハリをつけつつここぞという場面で霧があたりを包み込むかのように例のサウンドが立ち上り、結果、脳裏にムーディな情景が浮かんでくる作品に仕上がっている。キラキラと煌くサウンドが万華鏡のように現れては消える“New Found Land”が本作のハイライト。饒舌さはなく、内省的な音なのだが、聴いた後に不思議なインパクトが残る美しい作品。良い。


Richard Barbieri“Solar Sea”

2017/04/14 Fri. 22:29  edit

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Robert Fripp / Andrew Keeling / David Singleton「The Wine Of Silence」(2012) 

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King CrimsonのRobert Frippが過去に発表したサウンドスケープスの曲を採譜しリアレンジの上、Adrian Belewとも共演した経験のあるThe Metropole Orkestが演奏したものを録音、再構成したアルバム(よってFripp本人はこの作品では一切演奏していない。KeelingとSingleton両名も演奏はしておらず、それぞれアレンジャー/共作者、プロデューサー/共作者として名を連ねている)。

サウンドスケープをご存じない方のために一応説明しておくと、2台のディレイを用いてループ・サウンドを作り出し、そこへ更に自身の演奏を重ねていくという、言わば自分との共演をするためのシステムである。ヴィジュアルやその他の構成要素についてはコチラを参照されたい。

サウンドスケープのアルバムは、King Crimson等のロック・バンドでFrippが聴かせる凶暴さを伴うプレイとは全く異なり、ロング・ディレイを利用し、ギター・シンセを用いた眩いばかりの光を放つサウンドを幾重にも重ねた、抽象絵画的な音世界を描いている。下にはったYouTubeを聴いていただければわかるが、非常に、こう、催眠作用のある音でして。私は2006年にPorcupine Treeが来日した際の前座として帯同したFrippがサウンドスケープによるパフォーマンスを行ったのを生で見ているが、少なめに見積もっても客の2割はFrippのパフォーマンス中、ずっと舟を漕いでいたぞ。

サウンドスケープのアルバムを暗闇の中で流して睡魔の訪れに身を任せるのも良いが、音そのものはピンと張り詰めたような荘厳な空気を帯びている。The Metropole Orkestの総勢50名以上の演奏を録音した本作においてもその荘重さは引き継がれ、特にレクイエム詠唱や典礼用聖歌が新たに加えられた“Miserere Mei”“Requiescat”は、サウンドスケープ曲のオリジナルから大きく姿を変えた結果、元々持っていたクラシック~現代音楽的な色合いを更に増すことになっている。

重厚で、威厳のある作品だと思う。難解だし聴き通すには少しばかりの忍耐がいるかも知れないが、たまにはこういう音に耳を傾けてみるのも良いのでは。ラストの“Pie Jesu”を聴いていると心の底に溜まった澱(おり)が洗い流されていくよう。


参考:Robert Fripp"Midnight Blue"
アルバム「A Blessing Of Tears」(1995)より。「The Wine Of Silence」収録曲の1つとしてこの曲が選ばれている。

2012/07/04 Wed. 23:58  edit

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Rush「Clockwork Angels」(2012) 

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カナダの至宝、通算19枚目。米ビルボードで2位を記録、デビュー38年目にして「Counterparts」(1993)と並ぶ過去最高のチャート・アクションを記録している。

私がこのアルバムの収録曲で一番最初に耳にしたのは“Headlong Flight”だった(既にYouTubeに上がっていた“Caravan”“BU2B”は敢えて聴かないようにしていた。ちなみに“Headlong~”は誘惑に負けて公式PVをつい見てしまった)。高音域も積極的に活用したVoや「Snakes & Arrows」(2007)にはなかったつんのめるような疾走感がかつてないほどに70年代のRushを感じさせる曲で「こんなのばかりだったらイヤだなあ」と正直思ってしまった。いやこれはこれでいい曲だけど、70年代のRushてVoから何から全部がキンキンしててどっちかっつーと苦手なのよ。

実際にアルバム1枚を通して聴いてみると、枯淡の境地を感じさせた「Snakes & Arrows」と異なり、全体が溢れんばかりのエネルギーに満ちている印象。このエネルギーがエッジの立った70年代の彼らを想起させているのかもしれない。曲調そのものはここ20年ほどのRushのフォーマットの延長線上にあり、取っ付き易いキャッチーなメロディは「Roll The Bones」(1991)「Counterparts」、穏やかな光を放ちつつ時に見せる、手で捏ね繰り回したようなトリッキーな曲の展開は「Test For Echo」(1996)を思い起こさせる。この頃のRushが一番好きな私にとっては非常に好ましい作風。そしてこの時期の作品にやや欠けていた(時代のせいもあろう)パワフルな感覚が加わり、またバンドとして新たな扉を開いた感がある。

「Snakes & Arrows」の時に「このままゆっくり老いていくのかな」と思ったがなんのなんの。このオッサンたち、まだまだやる気だ。若いバンドが裸足で逃げ出しそうなテンションの高さが素晴らしいタイトル・トラックが今年のNo.1チューン候補であります。Rush様の妙技を味わえ。


Rush“Headlong Flight”

2012/06/28 Thu. 22:45  edit

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Rokash「Запалі Агонь」(2011) 

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好事家の間で高い評価を得ているRational Diet(初期Art ZoydやUnivers Zeroの影が濃すぎて私はちょっと苦手なんだが)を輩出した東欧(元ソ連)ベラルーシから登場したニュー・アクト。2004年にベラルーシの首都ミンスクで結成された、作曲も手がける女性Voをリーダーとする6人組の1stアルバムとなる。

ブックレット等に記載されているバンド名以外の全てがキリル文字なので何がなにやらだが、恐らくメンバーはVo+G+B+Dr+Key+Fl。フルート奏者の存在というのが鍵で、ジャンルとしては「フォーク・ロック」ということでよかろう。勿論日本でかつて流行ったフォークとは全く異なるもので、所謂民謡、土着のトラッド・ミュージックをベースとしたロックである。

面白いのは、このテの音にしてはベースとドラムがやけに主張が強いこと。ギターも曲によっては結構ハード・ロック然としたサウンドを出していて、"У лясным гушчары"では「これでツーバスが炸裂したらスラッシュ・メタルみたいだな…」と思わずにいられない展開も。シンフォニックなシンセ・サウンドを響かせたかと思えばヴィンテージなオルガンやリリカルなピアノも聴かせるキーボードの活躍ぶりも見事。Voは伸びやかな美声。この人の声は好き。

まあそんな塩梅なので楽曲はややエキセントリックなところもあるが、それでもなお親しみやすさのほうが勝る。これは彼の地のトラッド由来の物悲しいメロディが日本の民謡、引いては歌謡曲に通ずるものを感じさせるからかも知れない(勿論、明るい曲もあります)。初めて聴く音なのにどこか懐かしい、聴けば聴くほど夢見心地な佳作。オススメ。ボーナス・トラックにはイングランド民謡"Gleensleeves"を収録。一応、出自というかスタート地点はロックではなくフォーク/トラッド側、ということなんだろうな。是非一度ナマで見てみたいバンドである。


Rokash"Восень"

2012/01/26 Thu. 22:57  edit

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Rush「Counterparts」(1993) 

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真打登場!その2。

Masqueradeのレビューで挙げた作品に次ぐ、いや、同等に私に深い影響を与えた作品。Dream Theater「Images & Words」国内盤ライナーノーツにRushの名を見つけ、同時期に出ていたこの作品を手にした人は決して少なくないと思う。そう多いとも思えないが。

RushがDream Theaterのルーツの1つであることは間違いないが、それは80年代初頭までの作品の話で、「Counterparts」はずっしりと重心の低いグランジを経由したサウンドの歌モノであり、むしろCreed等のアメリカン・モダン・ロックに通ずる系譜の作品だ。ヘンな曲もあるにはあるのでプログレ・ハードと形容することもまあムチャではないが、ドゥルルルルル!ズガガガガガガ!といったハイテク博覧会的なものを期待して聴かれるべき作品ではない。

「Snakes & Arrows」のレビューで私はRushの本質を「現実を直視し、受け入れた先にある楽観主義」と書いた。このアルバムでも、時に目を背けたくなるような厳しい現実を描きだしている(例えば"Nobody's Hero"の2番とか)。しかしその視線は決して下を向くことなく、時にユーモラスに、あるいは時に青臭く、愛を、希望を、歌い上げる。ジャンル云々などしゃらくさい。良いメロディ、良いサウンド、良い歌詞。これを3人の達人が良い演奏で聴かせる。このアルバムについて言えばこれで十分だ。

好きな曲は沢山あるが、ここ数日はアルバムの最後に収められた"Everyday Glory"の後半部分の歌詞が頭を離れない。離れなくて困るので、私の拙い訳詞とともに掲載してしまおうと思う。いいのかな。わからないけど、まあいいか。これが誰かにとっての、何かの足しになることを祈りながら。

In the city where nobody smiles
微笑が失われた街
And nobody dreams
夢も失われ
In the city where desperation
そんな街で人々は捨て鉢になる
Drives the bored to extremes
退屈から窮境に向かって

Just one spark of decency
たった一つの気高い光が
Against the starless night
星のない闇夜に輝けば
One glow of hope and dignity
希望と尊厳の光がたった一つあれば
A child can follow the light
子供はその光を辿って進むことが出来る

No matter what they say...
誰が何と言おうとも
No matter what they say...
周りが何と言おうとも

Everyday people
ありふれた人々
Everyday shame
日々、恥辱にまみれ
Everyday promise
毎日の約束は
Shot down in flames
反故にされる

Everyday sunrise
だが毎日陽は昇り
Another everyday story
新たな日々の物語が生まれる
Rise from the ashes
灰の中より蘇れ
A blaze of everyday glory
美しき日々の輝き

If the future's looking dark
もし未来は暗いというのなら
We're the ones who have to shine
我々こそが輝ける者となろう
If there's no one in control
コントロールできる者がいなければ
We're the ones who draw the lines
我々こそが道標となろう
Though we live in trying times-
我々は困難の時を迎えているが
We're the ones who have to try
だからこそやってみなければならない
Though we know that time has wings-
時は翼を持っているというが
We're the ones who have to fly
羽ばたかなければならないのは我々なのだ

Rush"Everyday Glory"

2011/03/14 Mon. 23:22  edit

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