非思量

Wakrat「Wakrat」(2016)

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Rage Against The Machineのベーシスト、Tim Commerfordがメンバーにその名を連ねるWakratのデビュー作。なおバンド名はドラマーであるMathias Wakratのファミリー・ネーム。ギタリストはLaurent Grangeon。

アルバム・カヴァーの裏面に「Punk rock lives!」と書かれていて、確かに全9曲28分弱で駆け抜ける刹那主義的な疾走感はパンク的だが、パンク的な荒々しさとメタル的なヘヴィネスを組み合わせた生々しさがどこか懐かしさを感じさせる、90年代の香りが鼻先をかすめるサウンドに仕上がっている。歌詞の内容はよくわからないが、ぼんやり聴いているだけでもビシバシ耳に入ってくる四文字言葉も、まあ、そういう感覚を増強するというか。

ブリブリ鳴り響くベース、ヘンな音を一杯出すギター、シャープなドラムは聴いていて心地良く、複雑なリズムの展開も随所で取り入れられており、さらに言えばメロディも意外に(?)キャッチー。Commerfordのザラザラしたヴォーカルも曲調にマッチしている。個人的な好みで言えば、最初にネットで耳にした“Sober Addiction”が突出しているが、他の曲も悪くない。RATMは20年ぐらい前にMTVで流れているのをよく見かけたがどうも馴染めず、楽器隊がChris Cornellと組んだAudioslaveも好きになれなかったが、これはなかなか。


Wakrat“Sober Addiction”


W.A.S.P.「Golgotha」(2015)

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アメリカのヘヴィ・メタル・バンド、W.A.S.P.の15枚目。「Babylon」(2009)があまりピンとこなくてその後全くチェックしていなかったんだが、その「Babylon」以降、6年間アルバムを出していなかった模様。

作風としては「Dominator」(2007)に近いか。「Babylon」に見られたロックンロール路線の曲はなく(今作はカヴァー曲もナシ)、全体的にシリアスな雰囲気。ただ、過去のシリアス路線作にあったような「世間にモノ申す」的ムードは希薄で、どちらかというと自己の内面に踏み込んだ、救済を求めるような歌詞が目立つ。30周年を迎え自らの来し方行く末に思いを馳せているような“Last Runaway”、相変わらず特異な声質ではあるものの昔と比べると随分カドが丸くなったBlackie Lawlessの声でこれを歌われると何とも感傷的な心持ちになる。この曲、好きだなあ。

何となく以前に聴いたことがあるようなメロディラインやフレーズがちょこちょこ出てくるのはご愛敬。その辺が「偉大なる二流」感を漂わせる所以だが、それを差し引いてなお、Blackie Lawlessが生み出すメロディは魅力的。前述の“Last Runaway”や、ラストに配されたタイトル・トラックを筆頭に、重厚な佳曲が揃った力作。ドラマティックなギターもアルバムの盛り上げに一役買っている。


W.A.S.P.“Golgotha”

Within Temptation「The Unforgiving」(2011)

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メタル界隈ではすっかりトップ・アクトとして定着した感のあるオランダ産6人組(クレジットはDrを除く5人になっているが、現在新ドラマーが加入した模様)の5th。

B!の女性Voをフィーチュアした特集だったと思うのだが、Sharon Den Adelを初めて見て「うわこの人、可愛い!」と衝撃を受けてからもう10年以上は経ってるんだなあ。彼女もすっかり風格のある表情を見せるようになった。実は同学年なので思わず遠い目をしてしまう。自分も同じようにトシを食ってるんだなあ、という意味で。別にそれが悪いってワケではないんだがね。

まあヨタ話はこれぐらいにして、前作「The Heart Of Everything」、私は全く入り込めなかった。その前の「The Silent Force」がこのバンドに接した初めての音源で、これを聴いた時は軽い衝撃すら受けたものだが、一方の「The Heart~」はゴージャスを極めたサウンドにメロディが埋没してしまい、「The Silent~」の成功に囚われて袋小路に迷い込んだような印象だけが残るアルバムだった。「ひょっとしてもうメロディのストックは尽きたのか?」と思ったので今回の新作はあまり食指が動かなかったのだが、ジャケットを見ると随分これまでと雰囲気を変えてきていたのでコレはひょっとするとひょっとするかも、と購入。

音楽的にはモデル・チェンジと言ってもいいほどに方向性を変えており、サウンドの分厚さはそのままにどことなく身軽さというか、風通しの良さが感じられるようになっている。前作にないスピード感を持つ"In The Middle Of Night""A Demon's Fate"は繊細なファルセットを封印し力強さを強調したヴォーカルと共に新鮮な風を吹き込んでいる。これらのハードな曲とミドル・テンポの"Shot In The Dark""Faster"といった王道路線の曲や16ビートを導入した"Sinéad"、荘厳な6拍子のバラード"Lost"といった様々なカラーの曲がアルバムに起伏を生み出し、聴き応えのあるものにしている。

「全てはSharon様のために…!」と言わんばかりにSharonのVoを際立たせることに集中する男性インスト陣の存在感(及び頭髪)の薄さは相変わらずだが、これまでと較べると少しだけギター・ソロとかが耳に残るようになっている。ま、ソロっつーてもせいぜい10秒ほどですが。でもこのバンドに1分半のギターorキーボードの華麗なソロを期待している人は皆無だと思うのでこれでいい。

アルバムと同名のコミックを作成し、そのストーリーに沿った12曲でアルバムを構成しているそうだが、そういったギミックに興味がなくても楽しめるアルバムだ。アマゾンのレビューを見ると音楽性の変化に心中複雑なファンもいるようだが、Sharonの声が持つ説得力と臆面のないキャッチーさは私にはかなり魅力的。ポップなメタルを聴いている時の気持ち良さをストレートに味わえるアルバム。

W.A.S.P.「Dominator」

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Wingerに続いて80sヘア・メタル・バンドの登場です。

と言ってもW.A.S.P.はデビュー以来、短期の活動停止期間はあるがコンスタントにアルバムを出し続けている。全盛期はポップなノリだったが、徐々に重厚なブリティッシュ・ハード・ロックへ移行、その後、キャラクターのモチーフをパクったMarilyn Mansonを逆にパクり返したようなインダストリアル調の「K.F.D.(国内盤のタイトルは「Kill Fuck Die」)」を経て、アルバム毎に初期のパーティ路線と中期のシリアス路線を行ったり来たりしていたがこのあたりから楽曲の質が目に見えて落ちてきていたので、シリアス側に寄った2001年の「Unholy Terror」を最後に私は脱落。それからのことは知らん。

で、チラチラと良い評判を目にしたので久々に新作を手にしてみたらこれが想像以上の力作。英語力がないので歌詞の中身については何ともよう言わんが、「支配者」というタイトルやジャケットのデザイン、ブックレット巻末のBlackie Lawlessのライナーノーツ(斜め読みしただけですが)などから、近年のアメリカの情勢に対する怒りがテーマになっているのは明らか。よって当然、方向性も重厚でダークな方に傾いている。

キャッチーなメロディ+Blackieにしか出せない表情豊かで美しいダミ声+ロケンローなギター・ソロというW.A.S.P.の3大要素は今も昔も変わらないが、ここに来て全盛期の畳み掛けてくるような迫力が円熟味を伴って復活しているのが凄い。「なんかこのフレーズ、昔のアルバムで聴いたことないか?」というのが結構多いバンドではあるが、楽曲の出来がいいのであまり気にならない。“Chainsaw Charlie”“I Am One”を思い起こさせるBlackie節全開の“The Burning Man”や、静かな出だしから徐々に盛り上がるシリアスなミッド・テンポの“Heaven's Hung In Black”などは、W.A.S.P.の曲で久々にグッと来たぞ。

「The Headless Children」や不朽の大傑作「The Crimson Idol」を心から愛せるけど最近の作品はチェックしていなくてねえ…、というメタル退役軍人なアナタに是非オススメしたい一枚。もちろん、現役バリバリの皆様にも。

Winger「IV」

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80年代に隆盛を極めたヘア・メタル・バンドの一つ、Wingerがオリジナルの3人+新たに2人のメンバーを迎え、15年ぶりにリリースした4th。2006年の作品。実はアルバムを買ったの初めて。

ダークなリフを伴う“Right Up Ahead”を冒頭に持ってくることで「昔の名前で出ています」と認識されることを拒否、続く“Blue Suede Shoes(Dedicated To Our Troope)”も、サビこそ分厚いコーラスがあてがわれているものの「誰かのために命を捧げようとは思わないのか?」という重いメッセージを持つシリアスなナンバーである。多分、昔のファンはこの2曲で脱落決定。

ただ、中盤の“Your Great Escape”からは、80年代の空気を伝えるアップ・テンポのナンバーも散見されるようになり(但し、2006年仕様にアップデートされております)、ここまでガマンすれば古くからのファンも楽しめるのでは(別にガマンしなくてもいいけど)。Reb Beachは何の臆面もなく弾きまくってるし、“On A Day Like Today”は結構コテコテのバラードだ。

今風ダークネスを基調としながらも、かつての華やかさを感じさせたり、ミステリアスな色調にしてみたりで、Kip Wingerの力強いヴォーカル(メチャクチャ上手い)も相俟って「ダークな正統派アメリカン・ハード・ロック」を正統派ではない手法(例えば“Blue Suede Shoes”のAメロでギターがディシプリン期のKing Crimson風だったりとか)で体現した音、という印象。いやー面白いわコレ。「絶対、他のヤツらと同じようにはやらんからな」という凄腕ヴェテランの矜持が伺える1枚。

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