非思量

GoGo Penguin「Man Made Object」(2016)

manmadeobject.jpg

英国産ピアノ・トリオ、GoGo Penguinの3rd。

水曜日のカンパネラがNHKに出てきた時も驚いたが、新聞でGoGo Penguinの記事を発見した時はもっと驚いた。そんなに日本で認知度が高い人達だったん?新譜が出ることもその記事で知ったのだが、Dream Theaterの新作を買いに地元のレコード屋に行ったらその「Man Made Object」が置いてあってさらにビックリ。来日公演があると聞いて三度ビックリ。4/2,3両日にブルーノート東京で行われる由。是が非でも観に行きたいところであるがその週末は既に仕事の予定が入っているのであります。嗚呼。

国内盤の帯に曰く、GoGo Penguinの音楽は「アコースティック・エレクトロニカ」と称されているそうで、なんかもうツッコミ待ちとしか思えないネーミングだが、彼ら自身も「僕たちはアコースティック楽器でエレクトロニック・ミュージックを再現している」と述べている(ライナーより)し、前作「V2.0」の“One Percent”で私が感じたことも、端的に表現すればまさにそういうことなのかな、と。はじめは単に「いかにも今風なジャズ・ロック」ぐらいの雑な捉え方だったが。

リズム隊はせわしなく自由自在に暴れまわり、メロディックなピアノもそれにつられて熱を帯び、やがて曲はクライマックスへと達する。華麗でありつつもテンションの高い音楽である。前作は後半でムーディな雰囲気の楽曲が増えてややダレるところがあったが、今回は緊張感が最後まで持続しており、構成上の弱点は見当たらない。多彩な表情を見せる各楽曲の出来も上々。極上の完成度を誇りつつ直線的な荒々しさも顔を覗かせる、創造性がピークへ向かう途上にある様をリアルタイムで捉えた一枚。オススメ。


GoGo Penguin“All Res”(Live)

The Gathering「Afterwords」(2013)

afterwords.jpg

ノルウェーの女性Vo、Silje Wergelandが加入してから3枚目となるオランダのThe Gathering新作。

今回はやや趣向を変えた作風で、前作「Disclosure」(2012)収録曲のアレンジ違いが1曲、リメイクが4曲、新曲3曲、Tony Mansfield“Areas”のカヴァーで全9曲、さらに新曲のうち唯一ヴォーカル入りの“Afterwords”は初代VoのBart Smitsが歌っているという、純然たる新作と言うよりは企画盤然とした佇まいを見せている。

…のだがこれがなかなかに気合が入った作りで、中期以降のサウンドの核となっているFrank Boeijen(Key)の趣味全開なのか、リメイク曲は原曲を大胆に解体、再構築されている。“I Can See Four Miles”のリメイク“Echoes Keep Growing”をCD購入前にYouTubeで聴いた時、それがリメイクだと気付かなかったぐらい。“Heroes For Ghosts”のリメイク“Bärenfels”に至ってはJacob Johannssenなる男性のスピーチをフィーチュアしていてほぼ別の曲といってもいい。

打ち込みのリズムやディープな表情を見せるサウンドスケープはダークウェーヴ的な神秘性を現出させていて、Bart Smits参加のタイトル・トラックはDead Can Danceみたい。Smits、The Gatheringの1stではデス声で歌っていたのにここではグロウルは封印、やたらと渋みのある声を聴かせている。“Gemini III”以外でのSiljeのヴォーカルが「楽曲の1パーツ」的扱いに留まっていることもあり、この曲がアルバムで最もインパクトがある。

Silje加入後の「The West Pole」(2009)及び「Disclosure」はいずれも充実した作品だったが、その2作のサウンドを深化させつつ異なる味わいを持たせており、バンドの作品という感じはあまりしないが、これはこれでかなり良い。


The Gathering“Echoes Keep Growing”

Geoff Tate「Kings & Thieves」(2012)

kingsandthieves.jpg

Queensryche(以下QR)を解雇(?)されたヴォーカリスト、Geoff Tateの2ndソロ。国内盤、出るんですかね?

Geoff Tateは相変わらず我が道を進んでいる。ミッド・テンポのオープナー“She Slipped Away”が彼にしてはキャッチーな雰囲気のハード・ロックだったので「ここにきてようやく心を入れ替えたか」と油断させておいて、その後は「Q2K」(1999)、「Tribe」(2003)、あるいは「Dedicated To Chaos」(2011)あたりに通ずるグランジくずれというか、とにかく大多数のQRファンが望んでいるであろう路線からは遠く離れた楽曲をずらずらと並べている。ラストの“Waiting”は辛うじて“I Will Remember”のような叙情性を微かに醸し出しているが、“I Will Remember”のハイ・ノートはここ(に限らずアルバム全編)では聴けないのでやはり多くのファンは落胆するだろう。

高音が出ないという事実は私にとって大した問題ではない。言いたいことは「一刻も早くKelly Gray(g)を切るべき」。コレに尽きる。録音とミキシングも担当しているこの人の才能のなさには常に愕然とさせられる。Tateがどれだけ歌に感情を込めようと、コイツのせいで出てくる音は灰色一色に塗り込められてしまう。演奏についても然り。一方「Dedicated To Chaos」も今作同様Grayが録音とミキシング担当だったが、コチラはメタルどころか「ロックであること」すらいくつかの曲では放棄してしまい、針の振り切れたアレンジを施すことによって随分と面白い仕上がりになっていた。

恐らく「Dedicated~」で頑張ったのはScott RockenfieldとEddie Jackson。しかし当たり前のことだが「Kings & Thieves」に2人の姿はない。残ったのはキャッチーなメロディが書けないヴォーカリストと無能なギタリスト。結果、フックに乏しい楽曲がだらだらと流れていく、何とも掴みどころのないアルバムになってしまった。まあ好意的な目で見れば「ある程度聴きこめばそれなりに味わい深さも感じられる作品」ではあるし、絶望的にダメとまでは言わない。でもだからこそ「ダメだ」と言わざるをえない。中途半端すぎる。QRから大きく距離を置いたモダン・プログレ然としたポップな装いの1stソロ「Geoff Tate」(2002)の方が遥かに良かったし、「Q2K」や「Tribe」もまだ「好きだ」と言える曲があるだけずっとマシだったぞ。

私自身は決してこのアルバムは嫌いではないんだが、それにしても…。海外のサイトでは「career suicide」とまで書かれてしまっているが、徐々に人も金も周りから消えて「素人に毛が生えたような楽器隊を従えてQRナンバーをセルフ・カヴァー」とか「伴奏がアコギだけ」とか、見るからに悲惨なアルバムを作っている未来がこの作品から透けて見えてしまう。それが悲しい。

「Geoff Tateのヴォーカルが聴ければ何でもいい」という方はどうぞ。


Geoff Tate“Dark Money”

The Gathering「Disclosure」(2012)

disclosure.jpg

オランダの元(?)ゴシック・メタル・バンドの10th。前作から加入したSilje Wergeland(Vo)も引き続き参加、メンバーの変更はない。

前作「The West Pole」(2009)から音楽性は表面的にはそう変わっておらず、夢と現を行き来しているような浮遊感や幻想感のあるサウンドの中を、Voがひらひらと舞うように歌っている。前作の“Treasure”“A Constant Run”のような鮮烈なメロディを持つ曲がないため、「Home」(2006)の内省的なムードが再び色濃くなっているようにも感じられる。

トリップ・ホップ~サイケデリック的音像の中に時折浮かび上がるグルーヴ感が目新しいが、どこか神秘性を感じさせるバンドの個性をAnnneke Van Giersbergenがいなくなっても保っているのは大したものだと思う。昨年PVが公開された“Heroes For Ghosts”が一番好きだが、トランペットが寂寥感を演出していて、割とストレートにロックしている曲が目立った前作と今作の違いをクッキリ浮かび上がらせている。なんとなくクセになる音。


The Gathering“Heroes For Ghosts”

Gotye「Making Mirrors」(2011)

makingmirrors.jpg

ベルギー生まれ、オーストラリア育ちのSSW、Gotye(ゴティエ)の3rd。昨年オーストラリアでリリース、今年に入って米英でリリースされるとシングル"Somebody That I Used To Know"が大ヒット、両国でチャート1位を獲得したモンスター・アルバム(本国オーストラリアや欧州各国でもチャート1位を獲得している)。たまたまMTVにチャンネルを合わせたらこれが流れていて、なんとなく惹かれるものがあって購入。

その声質はStingやPeter Gabrielと比較されることが多いそうだが、まさに"Somebody That I Used To Know"を聴いた時にPeter Gabrielが私の脳裏をよぎった。勿論声もそうなんだが、装飾を削ぎ落としたシンプルな音像が初期のソロ・アルバムに通ずる雰囲気を持っているように思えたのだ。こういう音が近年の流行なのか?私にはわからないが、Peter Gabriel「II」(1978)やRobert Fripp「Exposure」(1979)、あるいはAndy Summers & Robert Fripp「I Advance Masked」(1982)といった、派手さの少ない、内向きなサウンドとの類似性を強く感じる。

ヴィンテージ・レコードからサンプリングした音や古いオルガンを積極的に使用しているそうで、それがさらにレトロというか、今っぽくない雰囲気に繋がっているのかもしれない。それでいて古臭い懐古趣味とは一線を画した音。楽曲はよく言えば多様、悪く言えばとっ散らかっていて"Somebody That I Used To Know"で辛うじてアルバムが締まったものになっている印象もあるが、アルバム全体としても聴いていて「なんとなく惹かれる」不思議な魅力を持っている。

とは言えこれが欧米で大ヒットするとはねえ。サマソニに来るらしいがさて日本ではどうか。Adeleよりさらに日本ウケしなさそうな気がするんだが。


Gotye"Somebody That I Used To Know"
日本の公式PV。親切な訳詞つき。

Newest