非思量

Anathema「The Optimist」(2017)

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一昨年、待望の初来日を果たしたAnathemaの3年ぶりとなる新作。

レコード屋で予約してあったCDを受け取り、そのままカーステレオに放り込んで聴いているうちに浮かんできた感想が「なんか『A Fine Day To Exit』(2001)みたいやな」というものだったのだが、後から国内盤の帯に目を通してみるとその「A Fine Day~」が言及されていて、更にライナーを読んでみると今作はズバリ「A Fine Day~」の続編だという記述が。あれま。

とはいえ、曲調が似ているとか、そういう話ではない。SE調の“32.63N 117.14W”から続いて流れる“Leaving It Behind”の硬質なサウンドが「We're Here Because We're Here」(2010)以降のドラマティック路線からの明確な路線変更を告げているが、「Aメロ→Bメロ→サビ」といった明快な構成を持たず、メインのメロディやフレーズを、少しずつアレンジに変化を加えながらひたすら繰り返すタイプの曲が大半を占めており、何かこう、聴いていてモヤッとしたものが終始つきまとう。そのモヤッとしたものが「A Fine Day~」を貫く虚無感に通じているような気がする。

“Endless Ways”や“Ghosts”のような美しいメロディを持つ曲もあるが、メロディそのものを聴き手の心に刻み込むような構成には全くなっておらず、「We're Here~」以降の、ドラマティックな楽曲がもたらすカタルシスを期待すれば盛大に肩透かしを食らうことになる。先行して公開された“Springfield”から、いやもっと言えば前作「Distant Satellites」(2014)の時点で路線変更自体は十分予想できたことではあったが、それでもこの新作は掴みどころがなくて、でももう一回聴けば何か掴めるのではないかと思って、結果、最近滅多にないぐらいのヘビロテ作になっている。なんだろうなこのしてやられた感。

しかし何回も聴いてやっと見えてきたこともあって、それが前出の“Endless Ways”“Ghosts”やトロンボーンとコントラバスをフィーチュアしてかつてなくムーディな味わいに仕上がっているジャズ調の“Close Your Eyes”で素敵な歌を披露しているLee Douglasの存在感。技巧でねじ伏せるタイプの歌い手ではないが、ソフトな中に力強さが秘められた声が個性的でとてもいい。初来日の際も大人気だった彼女、「A Fine Day~」の頃は正式メンバーですらなかったのだが、今ではすっかり主役級。


Anathema“Springfield”

Alter Bridge「The Last Hero」(2016)

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「Fortress」から3年ぶりとなる5th。

国内盤の帯に「これが真のアリーナ級ハード・ロックだ」とあり、ポスト・グランジ(この表現、Mark Tremontiは嫌っているようだが)寄りの重々しいサウンドを聴かせる彼らに似つかわしい言葉なのかな、と聴く前はやや不思議に思っていたのだが、“We are all too divided this time”なんて歌詞がこれ以上なくアメリカの現状を言い表したオープナー“Show Me A Leader”をはじめ、重々しさよりも勇ましさが先立ち、シンガロングを意識したようなアレンジを施された曲が目に付く。

ベタなキャッチーさを持つ“Poison In Your Veins”“My Champion”といったポップな曲で盛り上げつつ、後半にスケールの大きいドラマティックな“This Side Of Fate”や“Crows On A Wire”といった曲を据え重厚感も演出。最早隙はない。ガッツィーなサウンドやヴォーカルに変化はなし。高いレヴェルでの安定感が際立っている。

ある意味「ABIII」(2010)の作風に接近している感もあるが、作品を通しての起伏のつけ方は「Fortress」で何らかのコツを掴んだと見え、前作と違う作風を追及しつつクオリティは前作と比べても全く劣っていないのが凄い。ひたすらカッコいい。


Alter Bridge“Poison In Your Veins”

ActionAid「All I Want For Christmas Is A Goat」(2015)

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メリークリスマス!今回はクリスマスアルバムの紹介である。

私、仕事とかでつらいことがあったときは「人間みたいな声でなくヤギ」の動画を見て心を癒すことにしている。コイツラの鳴き声を聞いていると大概のことがどうでもよくなってくる。



オッサンが叫んでいるようにしか聞こえないヤギとか、志村けんみたいな声のヤギがいたりするワケだが、このヤギどもの鳴き声をサンプリングしてクリスマスソングに仕立ててしまったのが「All I Want For Christmas Is A Goat」(クリスマスにヤギが欲しい)である。まあ今書いたそのまんまの内容で、これ以上付け加えることはない。


“Silent Night”(きよしこの夜)

清らかな演奏と狂気じみたヤギの競演。このテのパロディは結構前から存在しているよう(「Goat Edition」で動画検索すると出てきます。Miley Cyrusのヤツはなかなかケッサク)だが、「All I Want For Christmas Is A Goat」は全編これヤギの鳴き声で作られており、どう考えても正気の沙汰ではない。しかし作ったのは自然災害や紛争等で貧困にあえぐ子供たちを救うためのれっきとしたチャリティ団体ActionAid。誰だよこの企画思いついたヤツ。最高じゃないか。

デジタルのみでの販売で、私はAmazonで購入したがiTunesでも購入できる模様。1曲目とラストは男性のしゃべり(スウェーデン語?)が入っているだけなので、曲単位で買ったほうがいいかも。全曲通して聴いても10分かそこらの短いアルバムだが、人助け兼年忘れのお笑いネタとして、あるいはつらいときの癒しとして、小遣いに多少なりとも余裕のある方はどうぞ。

Anathema「Distant Satellites」(2014)

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Anathemaのオリジナル10th。国内盤も発売されており、彼らの国内盤が出るのは6th「A Fine Day Exit」(2001)以来となる。

オーケストラと共演したライヴ盤「Universal」(2013)でキーボードを弾いていたDaniel Cardosoが正式メンバーとしてクレジットされている。ドラマーとしてクレジットされているので誤植かと思いきや彼はマルチ・インストゥルメンタリストだそうで、気になって調べていて分かったことだがAnneke Van Giersbergen「Everything Is Changing」(2012)でもプロデュース/ミックス/作曲/ギター/ベース/キーボードで全面参加していたのだった。この人の名前は覚えておいて損はないかも知れん。

前作「Weather Systems」(2012)の冒頭2曲“Untouchable Part 1”~“Untouchable Part 2”が強烈過ぎたため、同じような流れの“The Lost Song Part 1”~“The Lost Song Part 2”がやや弱く感じられ(あくまで相対論での話。後者におけるLee Douglasの歌唱はとても良い)不安がよぎったが、その後の、冒頭のアコギが珍しくトラッド風味?な雰囲気を醸し出す“Dusk(Dark Is Descending)”や彼らならではの泣きのメロディが炸裂する“Ariel”、ゴシック・メタル調の“Anathema”などは流石のクオリティ。

K-Scopeに籍を置いてからの、ストリングスをフィーチュアしたドラマティックかつセンチメンタルな音楽性を維持しているが、さすがにその路線を3作続けるのは拙いと見たか、鋭角的なサウンドの“You're Not Alone”を収録したり、打ち込みのリズムを基調とした“Distant Satellites”“Take Shelter”をラスト2曲に配してくるなど、マンネリ回避の策もしっかり採られている。

彼らの濃厚な持ち味を楽しむためには「Weather Systems」、或いは昔の曲をセミ・アコースティックのアレンジで再録音した「Hindsight」(2008)をまず聴いて欲しい、というのが本音だが、聴き易さという点では上回っている気もするので、初めてAnathemaの音源に触れようかという人には格好の入り口となろう。何はともあれ、祝・国内盤発売!である。さて来日はあるか。


Anathema“The Lost Song Part 3”

Animals As Leaders「The Joy Of Motion」(2014)

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ワシントンD.C.出身のトリオ編成バンドによる3rd。

このバンドの特徴はギター×2+ドラムスという変則的な編成であること。こういう編成を見ると個人的にはどうしてもCanvas Soralisを思い出さずにはいられないが、Animals As Leadersが更にヘンなのは、使用しているギターが8弦だということ。これでベースの音域もカヴァーしているそう。

前回紹介したA Sense Of Gravityを「1,2回聞き流してピンと来ずそのままになっていたが、ふとしたきっかけで聴き返してみる」きっかけとなったのが実はこのアルバムで、例えばこのテの、現代に繋がる技術至上主義ミュージシャンの始祖的存在の1つであるDream Theaterのように「色々やってるけど軸足はあくまでメタル」というのとはまた異なる「オレたちメタルだけどフュージョンをそのままフュージョンっぽくやってもいいだろ?」という節操のなさというか柔軟さが彼らの音楽に共通していて、それが何となく興味深く感じられたからである。

インストだからということもあるだろうが、Animals As LeadersはA Sense Of Gravityよりもさらに自由奔放にメタルの枠を飛びこえている。というか、正直、あまりメタルを聴いている感じがせず、ジャズ・ロック(曲によってはかなり重めだが)を聴いている気分になる。ザクザク刻むリフをフィーチュアしつつCanvas Soralisのようなトチ狂ったリズムと曲展開で聴き手を幻惑してくれるが、サウンドが割とクリーン志向なせいか。エレクトロニクスの導入にも躊躇はなく、このあたりも現代的。

個人的に気になるのはベースの不在。緊張とリラックスの対比が鮮やかな良い作品だと思うが、ジャズ・ロック色が強いパートではやや物足りなさを感じせる部分もあった。


Animals As Leaders“Air Chrysalis”

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