非思量

Thinking Plague「Hoping Against Hope」(2017)

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女性Vo+G×2+B+Drにサックス/クラリネット/フルート奏者を加えた(その他ピアノやオーボエ等ゲストあり)キャリア35年を誇るアメリカ産6人組の5年ぶり7th。私が購入したのはCuneiformリリースの輸入盤だが、ディスクユニオンから国内盤も発売されている模様。

5th「A History Of Madness」(2003)で彼らの音楽に初めて接したときはこのテの音楽をあまり聴いたことがなかったので随分興奮したものだが、要はレコメン系とかRIOとか呼ばれるアヴァンギャルドなチェンバー・ロック。表情に乏しい女性Vo(前作からヴォーカルがDeborah PerryからElaine di Falcoに交代しているが、歌唱の方向性というかキャラクターは同一)、パキパキと屈折しまくるアンサンブル、アコースティックを多用した欝々としたサウンド。大雑把に纏めればそういう感じ。

親しみやすい、という言葉からはとても遠いところにある、テレビではまず流れないタイプの音楽。とりたててドラマティックなワケでもなく、わかりやすいクライマックスもない。深夜にテレビをつけてこんな音楽が流れてきたら、ちょっと怖い。誰もいない部屋でに壁に向かって独り言をつぶやいているかのような薄気味悪さが場を支配している。2本のアコギが紡ぎだす不協和音が印象的な演奏時間約10分のタイトル・トラックや、13分45秒の間ひたすら不穏で邪悪なアンサンブルを聴かせ続けるラストの“A Dirge For The Unwitting”といった、尺の長い曲が良かった。こういうメインストリームの香りが微塵もしない音楽を聴いていると「あーこれぞプログレだわー」という実感が湧いてくるな。


Thinking Plague“The Echoes Of Their Cries”

Marillion「A Sunday Night Above The Rain」(2017)

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昨年「Fuck Everyone And Run」をリリースしたMarillionのライヴ・アルバム。…と言っても新作に伴うツアーを収録したものではなく、2012年発表の佳作「Sounds That Can't Be Made」リリースの翌年にオランダで行われた「Marillion Weekend」(3日連続で行われる、ファン感謝デー的な企画ライヴ)の一夜を収録したもの。

Marillion、毎年のようにライヴ盤をこれでもかとリリースしてくるので、近年はいちいち追いかけるのが面倒臭くなって「Live From Cadogan Hall」(2010)以来、ライヴ盤はスルーしていたのだが、久々にライヴ音源を聴いて、しょっぱなの“Gaza”で彼らの力量に改めてハッとさせられた。CDで聴く分には17分を超える演奏時間にこちらの集中力を殺がれてしまうためあまり印象に残らない曲だったのだが、映像付きで聴くとその静と動を自在に行き来する彼らの持ち味が凝縮された曲なのだな、という印象が。こりゃ凄い。

選曲は「Sounds~」全曲に、尺の長い“This Strange Engine”“Neverland”等5曲を加えた全13曲135分。Steve Hogarthのヴォーカルだけはやや安定感を欠き、彼がMarillionに加入して間もない時期の曲(“Waiting To Happen”“The King Of Sunset Town”)で危うい部分もあるが、前述のように演奏力は確かで、バンドの実力を存分に味わえる仕上がり。Marillionはオランダでの人気が非常に高いそうで、ファンのポジティヴなリアクションや盛り上がりがライヴをさらに魅力的なものにしている。

ところで、この2月にMarillionの国内盤を手掛けているワードレコーズが「A Sunday~」及び「Marbles In The Park」「Live From Cadogan Hall」というライヴ盤3タイトル、さらに過去曲をアコースティック調にリアレンジした「Less Is More」(2009)の計4タイトルのライヴ盤を一気に(それもライヴ盤はブルーレイ+2CDだの2DVD+2CDだの様々なフォーマットで)発売してきた。

これらは輸入盤では以前から入手可能だった作品で、突然こんなことをして一体何をトチ狂ったのだろうかと思わずにはいられないが、売れる見込みはあるのだろうか。いや売れて欲しいしその果てに来日という話にでもなれば狂喜乱舞モノですが。CD2枚組というフォーマットもあるけど、ここは是非ブルーレイorDVDの映像付きフォーマットを。値段の高さが難だが、やはりライヴ作品は映像込みでないと、ね。


Marillion“Gaza”

水曜日のカンパネラ「Superman」(2017)

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曰く「メジャー1stフルアルバム」。10曲入り36分の本作と7曲入り32分の「UMA」(2016)を分けるものが何なのかは判らないが、まああまり面倒くさいことは言いますまい。今回も装丁は凝っていて、ジャケットはCDホルダーと一体化されており、広げるとそれ自体がコムアイのポスター、裏面が歌詞カード、というつくり。

「UMA」が外部のミュージシャンに作曲を委嘱したせいか、ポップさという意味においては若干薄味に感じられたのだが、すべての曲をケンモチヒデフミが手掛けた結果、ヘンな歌詞と端正なサウンド、コムアイのちょっと危なっかしい歌唱(いうても以前に比べればかなり上手くなった)が三位一体となって生み出すいつもの作風に。エキセントリックな方向に振った“チャップリン”“世阿弥”といった曲も入れつつ、全体的には先行シングル「Superkid」収録の“アラジン”“カメハメハ大王”が持っていた享楽的でダンサブルなテイストが貫かれている。

「ジパング」(2015)が持っていた濃厚さは後退しており、インパクトという面ではやや物足りなさがあるが洗練の度合いを増しており、「UMA」をすっ飛ばして「ジパング」の次と考えれば順当な出来かな。きたる武道館単独公演への露払いとして申し分ないのではないかと。


水曜日のカンパネラ“カメハメハ大王”

Bonobo「Migration」(2017)

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イギリス出身のエレクトロニカ系ミュージシャン/サウンド・プロデューサー、Simon GreenがBonobo名義でリリースした6th。彼の作品を聴くのは初めて。

各ピースが決められた場所にカッチリ配置された、完成されたパズルのような音とでも申しましょうか。プログラミングオンリーではなく、生楽器やフィールド録音をふんだんに用いてオーガニックな響きを強調しつつ、ロックやジャズ等のフィジカルな音楽が持つグルーヴとは縁遠い、逸脱とは対極にあるような端正な音楽。Wikipediaを見ると彼の属するジャンルは「Electronica, trip hop, acid jazz, chillwave, downtempo, soul」と多岐に渡っているが、ソッチ方面に疎い私が一言でまとめると「いい夢を見られそう」。心地良い白昼夢を思わせるダウナーな響きは、寒い冬よりも柔らかい陽光降り注ぐ春が似合う。

「移住」というタイトルと関係あるのかどうかは分からないが、モロッコの伝統音楽グワナを演奏するグループのVoを迎えたワールド・ミュージック的な“Bambro Koyo Ganda”、打ち込みのビートや広がりのあるエレクトロニクスのサウンドが冷たい感触をもたらす“Outlier”、ストリングスをフィーチュアした情緒あふれる“Second Sun”等、曲ごとに全く別の場所に立っているかのような、それぞれ異なる情景が描き出されている。こういう多様性というか、多彩さを持った作品は個人的には好み。出来も高水準。良い作品だと思う。彼は自身の曲を生バンドで演奏するライヴ活動も行っているそうで、ソチラも面白そう。


Bonobo“Break Apart”

John Wetton逝去。

AsiaのTwitter公式アカウントより。



Chris SquireにKeith Emerson、Greg Lakeが立て続けに亡くなった時は割と冷静だった(ただ、Emersonに関しては「何も自殺しなくても…」とは思った)が、今回はちょっと動揺している。King Crimson「Red」をそれこそ毎日のように聴いていた時期があるので。

第3期King Crimsonでの凶悪極まりないベース・サウンドは大好きだが、シンガーとしては、実はそれほど好きなタイプではなかった。それでもなお彼の記名性高すぎな声やメロディは私の耳にこびりついている。“Starless”は彼のヴォーカルなしではあり得なかった。


King Crimson“Starless”

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