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Rammstein(2019)

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ドイツにおけるNeue Deutsche Härte(New German Hardness)の中心的存在、Rammsteinの7th。作品に正式なタイトルはつけられていない。日本の発売元であるユニバーサル・ミュージック・ジャパンによると、11か国のアルバム・チャートで1位を獲得する等、世界的に好評を博している模様。

ツアーは行っていたようだしメンバーも散発的にソロ等で課外活動をしていたが、Rammsteinとしては「Liebe Ist Für Alle Da」(2009)以来、実に10年ぶりの作品である。しかし10年経ってもRammsteinはRammstein。“Radio”(訳詞を読むと、東ドイツで西ドイツのラジオ局が流している音楽を隠れて聴いている情景を描いているように思える。Rammsteinのメンバーは全員旧東独圏の出身)でKraftwerkを思わせるピコピコしたシンセ・サウンドやヴォコーダーが聴こえてきたりはするが、ムダのないタイトな演奏と濃厚すぎるバリトン・ヴォーカルで聴かせる直線的なノリのインダストリアル・メタルという基本的な方向性にはいささかの揺るぎもない。

1曲目のハードな“Deutschland”から軽快なノリの“Radio”、シャッフル調のリズムを従えて「セェーーーックス!」と叫ぶお下劣曲“Sex”、Till Lindemannの重々しい絶叫がこだまする“Puppe”を経てラストの重厚なスロー・ナンバー“Hallomann”までスキはない。たまたまなのか意図的なのか、全11曲で40分台後半という構成は直近3枚とほぼ同じ。若干、地味というかシンプルになっている印象はあるものの、スケールの大きい楽曲をコンパクトにまとめ、飽きずに聴かせる手腕はさすがとしか言いようがない。


Rammstein“Radio”

Black Earth@梅田Club Quattro(2019.05.28)

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GoGo Penguinを観に行って以来約7か月ぶりの梅田クアトロ。ジャズから一転、今回はデス・メタルである。Arch Enemyの初代ヴォーカリスト、Johan Liivaをフィーチュアした初期Arch Enemy(正確には3rd「Burning Bridges」の頃のメンバー)の同窓会プロジェクト、Black Earth来日公演に行ってきた。

「Burning Bridges」リリースが1999年でその20周年記念だそうである。20年前に発売されたアルバムのツアーにやってくる客層というのがイマイチ想像できなくて、私のような腹の底に澱(おり)が溜まった氷河期世代メタラーの同窓会になるのかと思っていた。私が陣取ったPA卓後ろ付近は確かに私とあまり変わらん世代の人間が多そうだったが、前方はなんかやる気満々な雰囲気。背中しか見えないんで年齢層はわからんけど。

果たして1曲目“The Immortal”から前方の客はエンジン全開、早々にモッシュが発生。クラウドサーフィングに興ずる者の姿も。今回がデス・メタルのライヴ初体験の私、両方とも見たのは初めて。クラウドサーフィングをする人、よく自分の下にいる人を無条件に信用できるなと思う(何かの間違いで頭から落ちてどえらいことになるリスクがあるのに)し下で支える側になるのも絶対イヤだが、前方まで運ばれてきた客がステージと客席の間で待ち構えているスタッフによって機械的にキャッチ&リリースされているサマは傍から見ている分には結構面白かった。

そういう渦の中にいるのは当然ながら若い客で、どこでこんな昔のバンドの情報をキャッチしてるんやろ…と思ったが、考えてみればメンバーの5分の3は現在もArch EnemyにいるのだからArch Enemyをフォローしていれば大丈夫なワケで、別にそんな不思議な事でもないか。

演奏の方はまあメンバーがそういうコトなのでさすがの安定感。オリジナルのスタジオ・テイクにはないグルーヴが生まれていて、聴いていてとても心地良かった。Daniel Erlandssonのドラムは最高だしSharlee D'Angeloのベースも迫力のある音でよく聞こえた(これが一番驚いた)。ソロを弾く時のフォルムがMichael SchenkerファンであることをアピールしまくっているMichael Amottと、短髪でこざっぱりとした出で立ちで速弾きを繰り出すChristopher Amottのコンビネーションもナイス。

Johan Liivaのヴォーカルは…、ライヴ・パフォーマンスに難があってArch Enemyを解雇された人なので過度な期待は抱いていなかったが、正直「まあ、こんなもんかな」という印象。もうちょっと厚みを感じさせる声だと良かったんだが、別に目くじら立てるほど酷い出来だったワケではないので、まあ、いいや。

ショウの前半は「Burning Bridges」アルバムの再現、ほんの少しのインターヴァルを挟んで後半~アンコールは1st「Black Earth」(1996)と2nd「Stigmata」(1998)の曲及び新曲1曲、プラスIron Maiden“Aces High”カヴァーという構成。個人的には「Stigmata」に収録されていた“Black Earth”を聴きたかったんだが、後半の導入部であのイントロのうめき声が聞こえてきた瞬間小さくガッツポーズしたのにそこから“Dark Insanity”に移行してしまい、文字通り「バンザ~イ、ナシよ」状態に。ショウのエンディングでもやはり例のうめき声が少し聞こえてきたが曲に移行することなくショウそのものが終わってしまった。しょんぼり。

しかしそれ以外は大満足のライヴであった。大いに楽しんだし、せっかくなので金を落としていくかということでTシャツを購入。

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自分に合うサイズがこれしかなくてロクにデザインも確かめずに買ってしまった。デス・メタルのバンドTなんてどこで着ればいいの…と思ったけどこれ案外ポップなデザインなんじゃないかという気がしている。

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背面にはツアー日程が。小樽とか熊本とか、随分意外な場所を回ったようですが、



ツアーの道中、アモット兄氏はレアなレコードを見つけてご満悦だった様子。聖飢魔IIのシングルとな!

The National「I Am Easy To Find」(2019)

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2018年のグラミー賞を受賞したThe Nationalの8th。前作「Sleep Well Beast」(2017)から約1年8か月という、比較的短いインターヴァルでのリリース。

国内盤の帯に「キャリア史上、最も明るく、壮大で華やか」とあるが、勿論The Nationalがパーティ・ロックを演奏するはずもなく、彼らが醸し出す独特の冷めたムードは不変。しかしこの過剰なまでの情報量は一体何事か。これでもかとフィーチュアされるストリングス、ゲスト参加という枠を飛び越えてMatt Berninger(Vo)と同列の扱いで歌いまくる女性ヴォーカリスト陣、さらにトドメとばかりに押し込まれるクワイア。普通ならお腹一杯になってしまうが、楽曲のパーツとしては個々の音はあくまで控えめ、結果、色んな要素てんこ盛りでありながら最終的に聴き手にもたらされるのは「厳かな感動」という、驚異的としか言いようのない作品に仕上がっている。

彼らの出世作となった「Boxer」(2007)はゼロ年代を代表する大傑作だが、以降の彼らの作品はそれなりに良い出来ではあったもののあの濁りのない清冽さは失われていた。「Boxer」は創作面でピークを迎えていた若いバンドによる一生に1枚生み出せるかどうかの奇跡のようなもので、あれに並ぶ作品を生み出すことは不可能だと思っていた。しかし彼らは「ドーピングと呼んでも差し支えないレヴェルの物量作戦」でそれをやり遂げた。ただただ、凄い。“So Far So Fast”後半におけるインスト・パートの儚い美しさなんて、ため息モノですよ。

聴いているあいだ「Boxer」を恋しく感じなかった、初めてのThe Nationalの作品。


The National“Light Years”

Dewa Budjana「Mahandini」(2019)

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インドネシア人ギタリスト、Dewa Budjanaのソロ・アルバム。

キーボードにJordan Rudess、ドラムにMarco Minnemann、ベースにMohini Deyという超豪華ゲストの存在にまず驚かされるワケだがこのBudjana氏、1960年代生まれで国民的ロック・バンドGigiのギタリストというプロフィールから鑑みるに、日本で言うところの松本孝弘(B'z)みたいなポジションの方なんでしょうか。いや「これだけのメンツを揃えようと思ったらそれなりにお金かかるよね」と思ったので、つい。そういえばMohini Dey、2019年のB'zのツアーに参加する由。

それはそうと肝心の作品について。時に現れる華麗な転調もオシャレなフュージョン・サウンドが核ではあるのだが、John Fruscianteがヴォーカルで参加した“Crowded”のようにロック色が強い面もあり。しかし何より強烈なのがむせかえるようなエスノ色。同じくFruscianteが歌う“Zone”やDeyのコナコル(南インドのヴォイス・パーカッション)が炸裂する“Queen Kanya”も印象的だが“Hyang Giri”でフィーチュアされているインドネシアの女性ヴォーカリスト、Soimah Pancawatiの存在感が群を抜いて凄い。インスト・パートでBudjana、Rudess、Deyが華麗なソロ回しを聴かせているのだが歌が入ってきた瞬間に彼女の声が全て持って行ってしまう。世界には逸材が埋もれているのだなあ、とつくづく。なお日本盤ボーナス・トラックにはタイトル・トラックのアコースティック版を収録。チェロとエレクトリック・シタール、ヴィブラフォンをフィーチュアしたこちらのテイクもかなりのインパクト。

Budjanaの作品を聴くのはこれが初めてではなく2014年に発表された「Hasta Karma」を持っていて、コチラも割と好印象の作品であったのだがこの「Mahandini」は曲の良さもさることながら匂い立つようなエキゾチシズムと強烈なキャスティングで作品の次元が一段階上がっている。オススメですよ。


Dewa Dudjana“Hyang Giri”

Exit North「Book Of Romance And Dust」(2018)

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これまで数枚のソロ作品をリリースしている元JapanのSteve Jansen(Key,Dr etc.)と、Thomas Feiner(Vo,Tp etc.)、Charles Storm(Synthe,G,B etc.)、Ulf Jansson(Pf,Key)の4人からなるバンド、Exit Northの1st。

Jansenの1stソロ「Slope」(2007)にあった先鋭性は大幅に後退し、ゆったりと流れる穏やかなサウンドにゲストのストリングス及びバッキングVoが彩りを与えるスタイルに仕上がっており、たま~にトランペットやノイジーなギターが静かな水面に投げ込まれた小石のごとく小さな波を起こす瞬間はあるものの、サウンドはあくまで静謐かつ荘厳。1曲だけインストがあるが、基本的には重厚なFeinerのヴォーカルをじっくり聴かせるアルバムである。

Jansenのソロ諸作同様、アコースティックとエレクトロの配合具合が絶妙な、どことなくノスタルジアを感じさせるウォームかつアーティスティックな1枚。聴いているだけで悟りを開けそうな深遠な音。良い。


Exit North“Spider”