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GoGo Penguin「GGP/RMX」(2021)

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英国産ピアノ・トリオが昨年リリースした「GoGo Penguin」のリミックス・アルバム。リミックス・アルバムの構想自体は以前から抱いていたようだが、セルフ・タイトルを冠した佳作を得て、満を持しての発表といったところか。

リミキサーの中で目を引いたのは2名。まずは “F Maj Pixie”をリミックスしたSquarepusher。原曲は流麗なピアノのフレーズが印象的だが、そのピアノのフレーズをベースにしたと思しきフレーズを生ベースで叩き込み弾きまくり、その後しばしの静寂を経て再びベースが斬り込んできて、そこから徐々に過剰で複雑なリズムを織り込んだSquarepusherの世界に染め上げて幕。アルバムを通しても1、2を争うインパクトを残す出来映え。

お次は“Don't Go”を手掛けたPortico Quartet。元々は3分半程度の静謐な曲がミニマル要素を包含したPortico Quartetらしさを随所に湛えたディープなサウンドへ変貌を遂げていてこれまた興味深い仕上がり。その他の人のことはCornelius(小山田圭吾)ぐらいしか知らない(他に日本からはヨシ・ホリカワが参加)が、アイルランド生まれのプロデューサー/マルチ奏者(ライナーより)であるShunyaが手掛けた“To The Nth”あたりも良かった。

アコースティック・エレクトロニカを標榜する人たちがリミックスによって普通のエレクトロニカになるのってどうなの?というツッコミを入れたくなるのもまた確かではあるんだが、出来がいいのだから細かいことはどうでもいい。優れた楽曲にリミキサー陣が新たな息吹を吹き込んだ珠玉の62分。これはいいぞ。

Godspeed You! Black Emperor「G_d's Pee At State's End!」(2021)

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日本の暴走族のドキュメンタリー映画がバンド名の由来となっているカナダのポスト・ロック・バンド、Godspeed You! Black Emperorの7th。

2nd「Lift Yr. Skinny Fists Like Antennas To Heaven!」(2000)は単一フレーズの繰り返しやサウンド・コラージュ、ナレーションや童謡といったバラバラのパーツが現れては消えていく、寒々しく荒涼とした、それでいて少しつつけばあっという間に崩れ落ちてしまいそうな繊細な作りのアルバムで「これを作ったヤツ、絶対早死にする」と思わせるに十分な、20世紀の終わりを飾るにふさわしい衝撃作だった。

なので「Yanqui U.X.O.」(2002)以来、実に19年ぶりに彼らの作品に接して最初に出てきた率直な感想は「生きてたんだ…」である。いや「Yanqui U.X.O.」の後しばらく活動を休止して2010年頃から活動を再開しているのは知っていたから「生きてたんだ…」はさすがに大袈裟だが、アンチ商業主義を貫き、取材や写真を使ったプロモーションを拒絶するという、いつの間にか怪しげな政治活動にはまって行方不明orドラッグにおぼれて死亡というルートを驀進してもおかしくないようなスタンスだったので、こうやって2021年を迎えても彼らがちゃんと生きていて音楽をやっていることに少し安堵したというか。少し調べたらちょいちょい日本に来てるし昨年も来日の予定があったらしく(コロナ禍でキャンセル)、結構元気にやっていたようで。

作品の中身に話を移すと、基本的な手法自体は「Lift Yr. Skinny Fists Like Antennas To Heaven!」から大きく変わっていないが、ひたすら枯れ草が舞う荒野のような荒んだ風景が脳裏に浮かんできた当時の作風と異なり、意外にも?ポジティヴなムードが漂う。勿論、陽気なサウンドを奏でているワケではないが、年齢を重ねてミュージシャンとして成熟したのか、長い曲でもよく整理されたサウンドと高い構成力で飽きずに聴き通すことができる。引き換えに失ったのは禍々しく繊細な衝動性だが、トシを取るというのは、まあ、そういうことだしな。

20分前後の大作と6分前後の小品が交互に並ぶ全4曲というコンパクトな構成も含め、個人的にはこの音楽的熟成はポジティヴに評価したい。政治的なメッセージを内包したバンドだが何せインストだし彼らの声明を日本語で目にする機会もないので、私のようなプログレッシャーはサイケ寄りのプログレと捉えて音そのものをシンプルに楽しめばいいと思う。


Godspeed You! Black Emperor「G_d's Pee At State's End!」(Full Album)

Sweet Oblivion「Relentless」(2021)

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「Geoff Tateにプログレ・メタルを歌わせる」プロジェクトであるSweet Oblivion。1枚コッキリで幕かと思いきや1stの評判が良かったのか、約2年ぶりに2ndアルバムがリリースされた。但しGeoffを除く制作陣は総とっかえとなっており、プロデューサーがDGMのSimone MularoniからSecret SphereのAldo Lonobileにチェンジしているのみならず、バック・バンドやソングライターも前作との重複はない(ちなみに、一部の楽曲ではGeoffが詞を提供している)。

というワケで作風も少し変わっており、前作同様、Queensrÿche(Queensryche)風味を隠し味というか香りづけ程度にまぶしつつもプログレ・ハード色が強かった前作と比較してメロディック・ハード・ロックとしての色合いを強く感じる。イタリア語で歌われる“Aria”のような変化球を交えつつ、ダークな“Once Again One Sin”、前作のプログレ・ハード調を引き継ぐ“Strong Pressure”、勇壮なアップ・テンポの“Fly Angel Fly”等、ドラマティックな楽曲を矢継ぎ早に繰り出してくる。(「今のGeoffにしては」という但し書きはつくが)かなり気合の入ったハイトーンを聴かせる場面もあるし、Geoff、ひょっとして吹っ切れた?

実際の話、Geoffが未だに「ファンが求めているような曲を書けない(or書かない)けどロクな作品が出ないまま埋もれていくのは惜しい」存在であることは間違いなく、このプロジェクトを企画したFrontiers Recordsの人は偉い。この界隈でそれなりに達者な奏者でバンドを組んでライヴをやって、このプロジェクトの曲の合間合間にQueensrÿcheの曲を演奏したりしたら結構盛り上がると思うんだが、さすがに難しいか。まあそういう期待をしたくなる程度には充実した作品に仕上がっていると思う。


Sweet Oblivion“Another Chance”

Anneke Van Giersbergen「The Darkest Skies Are The Brightest」(2021)

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元The GatheringのAnneke Van Giersbergenの、ソロ名義としては「Drive」(2013)以来となる3rd。

「Drive」以降の2010年代後半はアイスランドのフォーク・グループÁrstíðir(Arstidir)とのコラボやArjen Anthony Lucassenと組んだThe Gentle Storm、AnathemaのDanny Cavanaghとのライヴでの共演、あるいは自身がリーダーのプログレ・メタル・バンドVuur等々活発に活動していたが、正直、この時期にリリースした作品はあまり印象に残っていない。

なので新作のリリースを知った時もあまり心は踊らなかったのだが、これが良い意味で期待を裏切る仕上がり。過去ソロ作のようなハード・ポップ風味は封印、アコースティック主体で時にストリングスもフィーチュアした、ほのかにトラッド色を感じさせるサウンドとたおやかなメロディが高いレヴェルで融合した佳作である。先行して公開された“My Promise”はAnnekeの繊細な歌唱とストリングスが醸し出す微かな緊張感が素晴らしい、充実したアルバムを象徴する曲となっている。

シンガーとしては既に完成の域に達している人なので新鮮味というのはないのだが、大体どんなサウンドにも自身のヴォーカル・スタイルをフィットさせてしまうAnnekeの器用さ(器用貧乏ではない)に改めて感じ入ってしまった。ちなみにAnneke、2019年にVuurで初来日を果たしているのだが私は見逃してしまった。女性がVoを取るバンドのフェスだったと記憶しているが、そもそも直前まで来日することを知らなかった。まあその時私はインフルエンザにかかっていたのでどのみち観られる状況ではなかったのだが。

というワケで再来日を熱烈希望。国内盤すら出ていない(Vuurは国内盤が出たのですよ)し状況が状況なのでハードルは途轍もなく高いが、コロナ禍が落ち着いた暁には是非ライヴで観てみたいお方である。


Anneke Van Giersbergen“My Promise”

Todd La Torre「Rejoice In The Suffering」(2021)

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Queensrÿche(Queensryche、以下QR)のシンガー、Todd La Torreの1stソロ・アルバム。Toddはドラムも兼任(QRの現時点での最新作「The Verdict」(2019)のドラムも彼が叩いている)し、ギター、ベース、キーボードはCraig Blackwellがプレイしている。私はCDを発売元のRatPak Recordsから直接購入したが、ブックレットの巻末には歌詞の日本語訳がついているという、何故か日本語話者へのホスピタリティが高い仕様になっている。国内盤発売の予定でもあるのだろうか。

Todd加入後のQR、初期を彷彿させるクラシカルなメタル・ナンバーをアルバムのアタマに持ってきて「『Operation : Mindcrime』までの雰囲気を大事にしてますよ」というポーズをとりつつGeoff Tate在籍時にはなかった剛健なヘヴィネスをしれっと混ぜ込んできているが、このToddのソロ・アルバムもプロデューサーに「Condition Hüman(Human)」(2015)、「The Verdict」を手掛けたZeussを迎え、サウンド面も含めTodd加入後のQRの路線に寄せた内容になっている。

スロー・テンポの“Crossroads To Insanity”や正統派寄りの“Vexed”あたりの曲はQRのアルバムに収録されていてもおかしくないぐらいだが、ハイトーンになるとRob HalfordっぽくなるToddのキャラを全開にした“Vanguards Of The Dawn Wall”のようなスピード・メタルを配しているあたりがいかにもソロ・アルバムといったところ。ボーナス・トラック扱いのラスト・ナンバー“One By One”なんて部分的には後期Strapping Young Ladみたい。

「Condition Hüman」のレビューで「もっとヘヴィでもいい」と書いたが、 ここではQR名義の作品では取り入れづらいであろう要素も取り込んで、QRよりもアグレッシヴなアルバムに仕上げてある。悪くないのではないかな。


Todd La Torre“Vanguards Of The Dawn Wall”