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Steve Perry「Traces」(2018)

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Journeyの元Vo、Steve Perryの24年ぶりとなる3rdソロ。

Journeyに参加した最後のアルバム「Trial By Fire」(1996)がリリースされた頃といえば、私が割とどっぷりと洋楽(主にハード・ロック/メタル方面)に浸かっていた時期だがJourneyにまでは手が回らず、ラジオとかで聴いた記憶もない。ご存知の通り、Perryはその後バンドを脱退して隠遁生活者に近い状態となってしまったため、今まで彼の歌をリアルタイムで聴いたことはなかった。後追いでなら聴いているけどそれもせいぜい“Don't Stop Believin'”“Separate Ways”程度。ただ現VoであるArnel Pinedaのシンデレラ・ストーリーは少しだけ追いかけていて、映画も観に行った。昨年Journeyがロックの殿堂入り際には姿を現してPinedaとハグをしていたこともPinedaのインスタグラムで把握しております。でもアルバムは持っていない。バンドの動向も一切チェックしていない。

ま、Journey界隈と私の距離感はそんな感じで、Perryについては「引きこもりになったレジェンド」というイメージしか持っていなかったのだが、TwitterのTL上にひょっこりと現れたのがまさかの新曲“No Erasin'”。



随分と声質が変わってしまっているがそれはまあ仕方ないとして、音楽への情熱を取り戻した喜びを足をクネクネさせて表現するPerryの姿と、自身の復活を暗示させる歌詞や力強い歌唱が素晴らしかったため、思わずアルバムを購入。

アルバム中、私が気に入った曲は“No Erasin'”“We're Still Here”“Sun Shines Gray”(何と共作者にJohn 5の名前が)といったロック調の曲だが、それらも含めてクラシカルというか、同時代性というものがほとんど感じられない作品である。ボーナス・トラックとはいえまさか2018年にレゲエのリズムをフィーチュアした新曲を聴くことになるとは夢にも思わなかった。国内盤ではライナー・ノーツに代わってプレス・リリースの翻訳がブックレットに添えられており「長い間、ろくに音楽を聴くこともできなかった」というPerryのコメントが載っているが、これ、誇張なしにマジで音楽を聴いていなかったんじゃないか。

いずれにせよ、歌詞の内容が非常にパーソナルなものなので、作品の音楽性がこのようなものになるのも必然だったのかも知れない。そもそも彼にエレクトロニカやヒップ・ホップに走られてもこちらとしては困惑するしかないワケで。Journeyとは異なる音楽性やハスキーになった声を受け入れられるかどうかがポイントになるかも知れないが、力作であることは間違いない。


Steve Perry“Sun Shines Gray”

GoGo Penguin@梅田Club Quattro(2018.10.05)

2月のブルーノート・ツアーを観に行くことができず歯噛みするしかなかったGoGo Penguin、10月に今度はクラブクアトロをツアーするということで行ってきました。

セットリストはこちら。

  1. Prayer
  2. Raven
  3. One Percent
  4. Bardo
  5. A Hundred Moons
  6. Window
  7. Ocean In A Drop
  8. Strid
  9. Murmuration
  10. Smarra
  11. Reactor
  12. Transient State
    Encore
  13. Fading : Feigning
  14. Hopopono

現時点での最新作「A Hundrum Star」からの曲がメインの全14曲90分。セットリスト、2回目のアンコールがなかったこと以外は渋谷と同一の模様。

“One Percent”(2014年リリースの2nd「V2.0」収録)が聴けたらいいなあ…と思っていたら3曲目でいきなり炸裂。豊富な練習量に裏打ちされた、彼らが標榜する人力エレクトロニカなるものの凄みがあの曲のエンディングに凝縮されているワケだが、実際に目の当たりにすると過去に映像で見たことがあっても「おおう」て声が出てしまうな。これと“Transient State”を演奏してくれたので個人的には満足。ドラムが「手数出してビシバシ叩いてナンボ」系の人なので、必然的にそういう系統の曲が印象に残ったが、ラストに演奏された“Hopopono”のような柔らかいイメージの曲も悪くなかった。

客の入りは8割ぐらいだっただろうか。徳島のレコード屋(今はもう閉店してしまったが)にCDが置いてあったぐらいなので、さぞや人気があってクアトロ程度のキャパならすぐ埋まってしまうにだろうと思い込んでいたが、意外と空いていた。私が会場に着いたのは開演20分前ぐらいだったと思うが、余裕で最後方のPA卓前のポジションを確保できた(私がいた列にはドリンクを置ける小さなテーブルもいくつか置かれていた)。客も若い人が多いと思っていたのだが年齢層は幅広く、こちらもやや予想外。もう孫がいてもおかしくなさそうな感じの人が曲に合わせてすごく楽しそうに体を揺らしているのが印象的だった。

ジャズとは何ぞやと問われたら実際のところよく分からないのだが、個人的には彼らからいかにもなジャズっぽい空気を感じることはあまりなくて、変拍子バリバリだしドラムも直線的というかノリそのものは結構ロック寄りなので、例えばプログレやオルタナ~ポスト・ロック系のロック好きな人が行っても何の問題もなく楽しめるのではないかという気がしている。次がいつになるのか知らんけど、安いチケット代で行けるうちに一度は観ておいて損はないのではないかと。

ROA「Ooparts」(2017)

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先日来日公演を終えたセルビア発ラップ・コアSenshiの招聘を企画したHi-PLYレコードのアーティストマネージャーがギタリストを務めているROAの1stフル。Senshiのサポート・アクトとして出演していた彼らの印象が予想外に良かったため、ライヴ会場で購入。

津軽三味線をフィーチュアしたロック・バンドということだけは把握していたのだが事前に音は聴いておらず。グロウルもしくはラップをフィーチュアしたラップ・メタル~ハードコア系の音だと早合点していてチェックする気もなかったのである。ところが実際に聴いてみると、ごくたまにグロウルも出てくるが、重心低めのハードな音に乗っかるメロディは意外なほどにキャッチー。日本でミクスチャーとかラウド・ロックとか呼ばれている系統の音楽になんか血生臭さのようなものを感じて敬遠してしまう私のようなおっさんにもとっつきやすいものである。

出発点は洋楽なのかも知れないが、J-POP的な馴染みやすいメロディが洗練された印象を与えており、三味線もその中でごくごく自然に躍動している。三味線奏者の存在が異彩を放ってはいるがキワモノ臭は皆無。ヴォーカルにもう少し力強さがあるとなお良いが、先日観たライヴではヴォーカルに対し特にネガティヴな印象はなかったので、次作では大丈夫だろう。思わぬ掘り出し物。


ROA“cause...”

Marillion@Club Citta'川崎(2018.09.15)



こちらが証拠写真。15日の終演後に親切な方がスタッフからもらったセットリストを会場前で掲げていました。

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オープナーが“Splintering Heart”だったのにはさすがに魂消た。しかもステージ上に誰もいないのに声が聞こえてくるから何事かと思ったらステージ右手側のドア付近でSteve Hogarthが歌っているという、予想外にも程があるだろうという展開。もうこの時点でこのライヴの成功は約束されたようなものだった。

「Weekend Live」と銘打ってはいるが「Marillion Weekend」ではなくあくまで「Weekend Live」。だから大阪のセットリストからガラッと変わる可能性はあまり高くないと思っていたが、大阪から差し替えられた曲がいちいち凄すぎる。大阪の時点でバンドがある意味日本のファンを信頼しているのは分かっていたが、「Marbles」(2004)先行予約限定2枚組にしか入っていない“Ocean Cloud”とか「いやさすがにそれは知らない人多いだろ」という大胆な選曲も(実際、ライヴ後におちあって飲みに行った現地の友人W氏は「あの曲知らない」と言っていた)。

観客席との掛け合い(という名の仕込み…ですよねアレ)からの“Beautiful”でひと際大きな歓声が上がっていたが、個人的には「どのアルバムに入っていた曲だったか忘れたわ。たくさんアルバム作ってるし」というMCから奏でられた“Real Tears For Sale”が一番の衝撃だった。レココレのインタビューを読むとSteve Rotheryは「Happiness Is The Road」(2008)をあまり気に入っていない様子だったので。

そしてラストは待望の“Garden Party”。昨年の来日決定時から待ち望んでいた曲を遂にここで聴くことができた。もしかしたら大阪でやるかと思い、移動中にカーステで3回リピートしていたのだがそれがここで活きた。勿論、全身全霊をこめて叫びましたよ。

“I'm fxxkin'!”

私が行けなかった16日も含め、前回はほとんど演奏されなかったHogarth加入後の初期2枚「Seasons End」「Holidays In Eden」や21世紀に入ってからの「Anoraknophobia」「Happiness Is The Road」からの曲も演奏され、たまたまかも知れないが昨年と今年で20数年の空白を一気に埋めるような、曲目も演奏も強烈なライヴになった。Hogarth加入後のアルバムで「Marillion.com」「Somewher Else」は演奏されていないが、その辺も含め聴けなかった曲は次の来日のお楽しみということで。次、いつになるかまるで想像もつかんけど、Hogarthも最前列の観客とハイタッチするなど終始ご機嫌だったし、「もう次はない」なんてことはない、と思いたい。というか、Ian Mosleyがもう60代後半なんで、チャンスは非常に限られているんだよな実際。

無事帰国の途に就いたトレワヴァスさん「キミら素晴らしかったで。すぐまた会えるとええな」


なんなら来年また来てくれてもええんやで…。

9/13ZEPPなんば大阪のレポートも書いたのでよろしければご一読あれ。

Marillion@Zeppなんば大阪(2018.09.13)

英国から来日中のトレワヴァスさん「かに道楽、メッチャ旨かったで」



大阪に来たの、もしかして観光目的だったのでは…?Ian Mosley(Dr)が昨年来日した時にインタビューで「今回の滞在は短い」「初来日の時には京都にも行った。あれは素晴らしかった」とか言っていたし。

のっけからしょうもない軽口を叩いてみたが、前回の来日からわずか11か月という短いインターヴァルで、いくら大阪は20ン年ぶりだからってZeppなんばはいくらなんでもハコでかすぎだろと思っていたら案の定。客、500人いたかどうかも怪しい。招聘元は頭を抱えたかもしれない(つーても明らかに大阪ははじめから「オマケ」感満載でしたよね)が、オーディエンスの視点としては随分と贅沢な空間でバンドの音を楽しめることになった。

セットリストは次のとおり。
  1. El Dorado
  2. Power
  3. Quartz
  4. The Party
  5. Seasons End
  6. Living In F E A R
  7. Out Of This World
  8. The Leavers
  9. Wave
  10. Mad
  11. Afraid Of Sunlight
  12. The Great Escape
    Encore :
  13. Sugar Mice
  14. Easter
    Encore 2 :
  15. This Strange Engine


昨年のセットリストは前後のツアーから完全に独立した「皆さんの知ってそうな曲を並べましたけど、どうですかね…?」というような、こちらの様子を伺う感じのものだったが、今回は直近の欧州ツアーのセットリストに沿った普段着仕様。恐らく昨年来日時のオーディエンスの反応で「多分コイツら、普段どおりにやっても大丈夫だわ」という手応えがあったのだと思う。「Anoraknophobia」(2001)収録の“Quartz”なんかもフツーに演奏していたし。「Anoraknophobia」、どうもカタログの中で影が薄い気がするのだが私はこのアルバムが大好きなのでとても嬉しい。

意表を突かれたのは“Out Of This World”。ジェットエンジンを積んだボートで時速300マイルの記録を目指して事故死したDonald Campbellを題材にした曲だが、バックに流れていた映像はBBCがCampbellの速度記録挑戦を題材にして1988年に放映した「Across The Lake」を編集したもの、らしい。

これ、YouTubeで同じ番組を題材にして“Out Of This World”の動画をアップした人がいたのですぐに気付いた。11年前に本ブログで採り上げたことがあるのだが、その動画はまだ存在していた。再掲しておくので興味があればどうぞ。


なお、ライヴで流れた映像の編集はこの動画とは異なる。

一方で昨年も聴いた曲については「別の曲をやってほしかったなー」とか少し思ったり。23年お預けを食らっていたのにちょっといい思いをしたらこれだ。人間、贅沢を知ると堕落する。あ、でも“Afraid Of Sunlight”は昨年と同じぐらい感動した。昨年も書いたけどこの曲が世界で一番好きなんですよ。死ぬまでにあと200回はナマで聴きたいぞ。

アンコール演奏中に後ろを振り返ると、皆が幸せそうな顔をしていた。演奏は今回も盤石。これ以上何も言うことはない。至福の2時間15分であった。

9/15川崎クラブチッタのレポートも書いたのでよろしければご一読あれ。