resurrection.jpg

Geoff Tate率いるOperation: Mindcrimeの2nd。ライヴも行っているが、レコーディングでは複数のメンバーをやりくりしており、バンドというよりはGeoff Tateのソロ・プロジェクトと表現する方が適切かも知れない。

コンセプト・アルバムの曲間に挿入されていそうな小品を冒頭4曲にズラッと並べ、その後にバラード調含むソフトめなスロー~ミッド・テンポの曲が続き、後半にエピックな雰囲気を持つ曲がポンポンと現れる、なんだか不思議な構成のアルバムになっている。

構成こそ少し変わっているが、作品の出来は悪くない。楽曲のクオリティがこれまでと比較していきなり上がったワケではないが、キャラクターに合わない気の抜けたポスト・グランジまがいの曲や、R&B~ソウル方面に色目を使ったような曲が姿を消し、緊張感を殺がれる場面がなくなっているのが良い。

替わってTateのプログレ趣味が前面に出ている。作品のエピック面を象徴する“Invincible”や“A Smear Campaign”あたりに顕著だが、特に後者はTateの歌よりもアグレッシヴなギターをはじめとするインスト隊の演奏を聴かせる作りの、彼の曲にはかなり珍しいタイプのそれに仕上がっている。Tim “Ripper” Owens(ex Judas Priest)とBlaze Bayley(ex Iron Maiden)参加と聞いてズッこけるしかなかった“Taking On The World”も、荒々しい曲調が作品のアクセントとして良い働きをしているように思う。

全体的にはQueensrycheの「American Soldier」(2009)あたりが作風としては近いだろうか。相変わらずモッサリとしたプロダクションが残念だが、「俺の上にまたがる彼女はまるでエクササイズマシン!寝かせてくれない!誰か助けて!」なんてクソとしか形容しようのない歌詞の曲を歌っていた数年前のことを思うと、よくここまで持ち直したなあ、とは思う。YouTubeでライヴの動画を確認する限り、声の調子もどん底からは脱しているように聞こえる。


Operation: Mindcrime“Lest For Dead”
tenderextinction.jpg

元Japanのドラマー、Steve Jansenの「Slope」(2007)以来となる2ndソロ。

今回も大半の演奏をJansen自らが手掛け、曲によってゲストを招くスタイル。前作は制作に5年かけたというが、今作も完成までに約3年を費やしたのだそう。前作同様、ストイックな中に、暖かい空気の感じられるサウンド。アコースティックとエレクトリックの配合が絶妙で、優雅な音の流れに身を任せるのが実に心地よい。

強いて「Slope」と異なる面を挙げるなら、やや先鋭的な空気を纏っていたインストではなくヴォーカル入りの曲で始まっている(とはいえこちらも変拍子を使用しているが)ことで、だからというワケでもないだろうが、ヴォーカル入りの曲が結構印象に残る。「Slope」でも歌っていたThomas Feinerはオープナーの“Captured”でディープで渋みのある声を響かせ、初参加の女性Vo、Melentini(“Sadness”)、Nicola Hitchcock(“Faced With Nothing”)も良い仕事をしている。個人的には、シンプルなピアノを従えて繊細な歌声を響かせる後者がアルバム中最も印象に残った。Jansen自身も2曲でヴォーカルを披露。実兄のDavid Sylvianに似た声質の、ジェントルな声を聴かせている。

何となく、個人的にJapanのメンバーの作品は不見転で買っても大丈夫という、根拠のない信頼感を抱いているのだが、この作品も秋の夜長に飲む酒との相性が大変よろしい、アーティスティックな1枚に仕上がっていると思う。
shinsekai.jpg

まず「荒涼たる新世界/Planet/The Hell」。4月にリリースされた4曲入り(新曲2曲+それらのインストヴァージョン)シングル。

正直大して期待していなかったのだが、タイトル・トラックが哀愁をたたえつつ疾走するクラシカルかつ勇壮ななヘヴィ・メタルで面食らったのである。デーモン閣下のヴォーカルはともかく、演奏もどこかこう、自分がイメージする今の聖飢魔IIの雰囲気と異なる。これでもかと繰り出されるツイン・リードの後のソロからはジェイル及びルークの顔が浮かんでくるけど。

「何だこれ?」

クレジットを見てすべて納得がいった。作詞作曲ダミアン浜田。ここでまさかの創始者(ちなみに現在は高校教師)降臨。だったらこうなるしかない。こういうもの以外になりようがない。なる筈がない。ミッド・テンポの“Planet / The Hell”も含め歌詞についても抜かりなく、タイアップしたアニメの世界観を映し出しつつ聖飢魔IIらしさを失わない巧みなもの。曲調の割に乾いたギターの音が少し気になった(特にタイトル・トラック)が、それ以外に欠点が見当たらない。恐れ入谷の鬼子母神。

shanana.jpg

で、「呪いのシャ・ナ・ナ・ナ/Goblin's Scale」は「荒涼たる~」の2ヶ月後にリリースされたシングル。新曲2曲に“呪いのシャ・ナ・ナ・ナ”の英語版、それらのカラオケ・ヴァージョン含め全6曲収録となっている。

ルーク作曲のタイトル・トラックは映画の主題歌となっており、ほのかにコミカルさの漂うミッド・テンポのシャッフル・ナンバー。ダブルA面扱いの2曲目“Goblin's Scale”はジェイル作曲。アメリカンな埃っぽさをまき散らす疾走ナンバー。

粘り気のあるサウンドが現在の聖飢魔IIの等身大の姿を映し出しているが、個人的な好みからすると、ヒリヒリした空気の「荒涼たる~」の後にこれを聴かされるとちょっと…。ホントは6月に「呪いの~」が出た時に2枚まとめてレビューするつもりだったのをここまで引っ張ってしまったのは「呪いの~」の出来栄えががちょっと厳しいなあ、と思ったからでして。

demonasbadman.jpg

オマケ、というワケでもないが、やっとこさ閣下のソロ2作目を入手したので触れておこう。

この2月に再発されるにあたり、シングルのカップリングで収録されていた“Fight For Your Right”(Beastie Boysのカヴァー)を追加の上、曲順を大幅に変更した「D.C.18 Edition」へと装いを新たにしている。

制作陣に井上陽水、尾崎亜美、筒美京平、高見沢俊彦ら豪華メンツを揃えており、メロディは割とキャッチーで親しみやすいものになっている曲が多いように感じるがアレンジには全く統一感がない。これをヴォーカルの力量ひとつで「デーモンのアルバム」として成立させている。

“カツ丼”なんてしょうもないタイトルの曲とか、バブルの残り香が漂う悪乗りテイストが妙に鼻につくので長らく敬遠していたが、まあ、これはこれで面白いものだと思った。聖飢魔IIのメンバーで演奏されたメロウな雰囲気のミッド・ナンバー“Refrain Of Love”は大好き。
仕事が忙しくてあまり音楽を聴けておらず、音源こそポツポツと購入してはいるもののここで何か書きたくなるほどのネタには巡り合えず…。まあ暑い盛りの時期は大体毎年こうなんですけど。

というワケで2010年から2014年までの5年間に出た作品でインパクトがあったブツをすらずらっと並べてみる、いわば夏のネタ枯れ対策。リリース年毎に順不同で掲載。タイトルをクリックすると当時書いたレビューに飛びますよ。

++

[2010年]

・Shining「Blackjazz」
blackjazz.jpg

モロにハードコアでありながらプログレ者のハートもガッチリ掴んだよくわからない異形の何か。この後、ハードコアなメタルッぽい何かに作風が収束してしまったため、この作品の特異さがより光る。

・Brother Ape「A Rare Moment Of Insight」
araremomentofinsight.jpg

正統派プログレに軸足を置きつつ洗練された古臭さ皆無のサウンドを聴かせる凄くセンスの良いバンドだと思うのだがブレイクしなかったなあ。や、まだ活動中ですけど、多分このアルバムが品質面でのピークだろう。

・Mr. Big「What If...」
whatif.jpg

これを聴いたときは「これからがMr. Bigの全盛期やで!」と思ったものだ。それだけにPat Torpeyの病気と、「...The Stories We Could Tell」(2014)のどうしようもない出来栄えが悲しい。

・Anna Pingina「Moy」
moy.jpg

ロシア産と聞いて身構える事なかれ。日本人にも馴染みやすそうなメロディ、キャッチーな楽曲、多様なサウンド。ポップス作品としてとても優れている。ところで、彼女のFacebookを見ると三鷹市在住とあるのだが、これマジ?

[2011年]

・Queensryche「Dedicated To Chaos」
dedicaterdtochaos.jpg

ほとんどの人からはその存在すら忘れられたアルバムかも知れないが、私はこの迷作が好きだ。当時、あまりに気に入ってしまったので全曲解説まで書いてしまった。

・Silnet Stream Of Godless Elegy「Navaz」
navaz.jpg

チェコ産ドゥーム・フォーク・メタル。このテの音は泥臭くなり過ぎず、さりとて洗練され過ぎてもいないくらいが丁度良い。

・The Claudia Quintet+1「What Is The Beautiful?」
whatisthebeautiful.jpg

抑制されていながら尖りまくった曲、演奏。

[2012年]

・Portico Quartet「Portico Quartet」
porticoquartet.jpg

闇から浮かび上がるようなハング・ドラムやエレクトリックが良い雰囲気を醸し出している。そのハング・ドラム奏者が脱退したのは痛い。

・Anathema「Weather Systems」
weathersystems.jpg

現在の地位を確固たるものにした1枚。昨年の初来日公演でメンバーが煽るまでもなく自然発生的に客席側から起こった“Untouchable Part.1”のシンガロングの感動は今でも忘れがたい。

・Doimoi「Material Science」
materialsscience.jpg

ドラマティックかつ剛健。“円群”は名曲。

・Diablo Swing Orchestra「Pandora's Piñata」
pandoraspinata.jpg

奇天烈という言葉がこれほど似つかわしいバンドもそうはなかろう。でも曲はちゃんとしてます。

・Trioscapes「Separate Realities」
seraraterealities.jpg

超ヘヴィなジャズ・ロック。とにかく音が気持ち良い。

[2013年]

・水曜日のカンパネラ「羅生門」
rashomon.jpg

今ではすっかり有名人に。それはともかく初めて聴いたときのインパクトはかなりのものだった。

[2014年]

・Unheilig「Gipfelstürmer」
gipfelsturmer.jpg

おお、こんな面白い人達がいたのか、と気づいた途端の活動休止。

・GoGo Penguin「V2.0」
v2.jpg

ここに挙げた作品のうち、これだけレビューを書いてないけど、アコースティック・エレクトロニカという新しさを感じさせる音は結構ハマッた。

・ハチスノイト「Universal Quiet」
universalquiet.jpg

1人の声からこれだけ様々な声が出るのかと。で、それだけで音楽を作れてしまうのかと。

++

インパクト重視で選んだが、今聴いても十分楽しめるクオリティを備えた作品を選んだつもりである。気が向いたらチェックしてみてくださいませ。
dust.jpg

TremontiはAlter Bride/Creedのギタリスト兼メイン・ソングライターのMark Tremontiによるソロ・プロジェクト。昨年2nd「Cauterize」を出したばかりなのに、早くも3rdをリリースしてきた。

Alter Bridgeの新作もレコーディングを終えているそうで、まあ大したハードワーカーっぷりだなあ、と思ったら、どうやら「Dust」の収録曲は前作「Cauterize」と同時期にレコーディングされたものらしい。前作から引き続きジャケットに地平線の向こうに白目の巨大なオッサンが描かれているのはそのせいか。まあそれはそれとして、1stから連綿と続く、Jeff Scott Soto系のキメの粗いヴォーカルとタイトにまとめた演奏が織りなすヘヴィ・メタル然としたサウンドには一点の曇りもない。

楽曲も然り。リズム面を工夫して慎重に前作収録曲とのキャラクター重複を避けようとしているのは分かるが、サウンドのコンセプトというか土台が一緒なので、正直、あまり変わり映えしない。ただし曲の出来栄えそのものは今回も上々。レンジが広いとは言えないヴォーカルながら次々とドラマティックなメロディを紡ぎだす手腕はさすが。

新作含めこれまでの3枚全てが夏場のリリースとなっているがそれがまたイイ。この暑苦しさがハマるのよ。暑苦しいだけに40分+α程度のコンパクトなつくりにまとめているのも個人的には好感が持てる。


Tremonti“Dust”