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sora tob sakana「alight ep」「New Stranger」(2018)

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照井順政(ハイスイノナサetc.)が手掛けるアイドル・グループ4人組の、ワーナーからリリースされたメジャー第1弾EPとシングルをまとめてご紹介。

昨年リリースされた「cocoon ep」においてバンドの尖りまくった生演奏がセールスポイントというか、マニア層を釣り上げる撒き餌になった感がある(少なくとも、私は釣られた)。5月にリリースされた「alight ep」では6曲中5曲が生演奏(プログラミング含む)。ブックレットには7月に開催されたワンマン・ワイヴの告知が挟まれているが、そこにも「出演 sora tob sakana band set」という記述が。

とはいえ、「cocoon ep」は“ribbon”のような5拍子が飛び出してくる演奏と超絶メロディが並立した曲があるから凄かったのであって。「alight ep」もベースがブイブイと唸っていたりはするものの、基本的には歌モノ路線というか、演奏よりもまずメロディに耳が行くつくり。“Lighthouse”をはじめ“鋭角な日常”等々佳曲揃いでこれはこれで大変よろしいのだが、メジャー第1弾ということもあってか、なんとなく手探り感というかオーソドックスな作風で様子を伺っているような雰囲気も。

曲はいいけどこのまま落ち着いちゃったらツマランなあ…と思っていたら7月にリリースされたのがシングル「New Stranger」。アニメとのタイアップだそうで、表題曲のヴァージョン違いが収録された通常盤と、表題曲を含む3曲入り+PVを収録したDVDがセットになったアーティスト盤の2種類がリリースされている。私が購入したのはアーティスト盤。1曲目“New Stranger”は冒頭のトリッキーなギターから疾走するナンバー。彼女ららしい曲だがサビでポリリズミックに響く3連フレーズの連打がインパクト大。それはまるで現代に甦った“夢想花”(by円広志)。

おおこれは面白いではないか…と思っていたら本シングルで唯一生演奏をフィーチュアした“silver”はギターのカッティングを前面に出したファンク色の濃いナンバー。およよ、と思っていたらラストの“発見”は古のジャーマン・プログレ臭すら漂わせる(て、あまりあの辺の界隈は詳しくないのですが)アヴァンギャルドなポスト・ロック調。

メロディに重きを置いたというか、分かりやすさに針を振った感のあるEPとマニアックな高濃度アレンジ指向のシングル。振れ幅の広さが恐ろしいことになっているが、後者だってメロディの質は高いというのがまた。2枚を通しで聴いてこそ見えてくるその真価。お見それしました。


sora tob sakana“Lighthouse”


sora tob sakana“発見”

Jimmy Chamberlin Complex「The Parable」(2017)

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Smashing Pumpkinsのドラマー、Jimmy Chamberlin率いるJimmy Chamberlin Complexの、「Life Begins Again」(2005)以来12年ぶりとなる2ndアルバム。

「Life Begins Again」は自身のドラムにベース+ギター+フェンダー・ローズを加えた4人編成のインストを基本に、Smashing Pumpkinsの盟友Billy CorganやThe Righteous BrothersのBill Medleyらを迎えて収録されたヴォーカル曲も4曲加えた力作で、叩きまくり弾きまくりなジャズ・ロック調の曲が目立つけどその枠には到底収まらない充実ぶりがとても印象的だった。傑作と呼んでも過言ではないと思う。

なので昨年2ndが出ていたことを知った時は狂喜乱舞、大慌てでCDを取り寄せ、期待に胸を膨らませながら聴いてみたワケだが…あれ?随分と雰囲気が違う。Chamberlin以外のメンバーが総取っ替えになっているのかと思いブックレットを確認したが、メンバーの交代は鍵盤奏者のみ。但しサックス/クラリネット奏者が新たに加わっており(ちなみに今作ではVo等のゲスト参加はなし)、その管楽器が演奏面で一番前に出てきていることもあり、前作と比較すると、随分と枯れた味わいのジャズへと変貌を遂げている。

その中で異彩を放っているのがサイケデリックな味わいを醸し出しているギター。落ち着いたトーンの作品の中でちょっとした違和感というか、アクセントになっている。Chamberlinはジャズからも影響を受けているドラマーだし、10年以上間隔が開けば作品の方向性が変わることも十分あり得る話ではある。個人的には1stをまずチェックしていただきたいというのが本音だが、これも渋い味わいの良い作品だと思う。


Jimmy Cahmberlin Complex“Horus And The Pharaoh”(Live)

Tremonti「A Dying Machine」(2018)

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てっきりMark Tremontiのガス抜きかと思っていたTremontiだが、2012年の1st「All I Was」からコンスタントに作品をリリースを続け、この「A Dying Machine」で早くも4枚目となる。2nd、3rdでベースを弾いていたWolfgang Van Halenは参加しておらず、セカンド・ギタリストのEric Friedmanが1st以来のベース兼任としてクレジットされている。ドラムはGarret Whitlockで、Markを含むこの3人のフォーメーションは1stから不変。ソロ・プロジェクトというより立派なバンドとして認識したほうがいいかな。

今回もそうだが過去3作も夏にリリースされていて、いずれも暑い盛りによく似合う、ハイスパートで駆け抜けるメタル・アルバムだった。この新作もまあその辺の基本路線に大きな変更はないんだが、40分台で暑苦しくコンパクトにまとめていたこれまでと異なり、ややメロウな感覚を強調した“The First The Last”やポジティヴなラヴ・ソング(?)の“Take You With Me”等、「やりたいことをやっている」感そのままにこれまでは比較的控えめだったテイストを強調した曲を投入、トータル61分の力作に仕上げている。ラストに配された抽象的なインスト“Found”は今までになかった雰囲気の曲。

さすがに4枚目ともなるとネタ切れを起こすというか、こっちも「あーはいはい今回もこんな感じね」で聞き流す感じになってしまうのではないかと危惧していたが全くそんなことはなかったし、Creedから数えてキャリア20年を超えているからヴェテランと呼んでもまあ差し支えないのにフレッシュさを失っていないのが凄い。割とエピック指向なAlter Bridgeとキチンとキャラクターを分けているのがミソ。Tremontiのヴォーカルも更に良くなってきているような。


Tremonti“Take You With Me”

Sonar with David Torn「Vortex」(2018)

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Sonarはツイン・ギターを擁するスイス出身の4人編成バンドで、ポリリズムとミニマリズムを基軸とした重厚なロック・サウンドを指向している特異なグループである。これまで3枚のアルバムを出しているほか、ドイツのタッチ・ギター奏者、Markus Reuterのアルバム(2017年の「Falling For Ascension」)にも参加したことがある。

そのSonarの4枚目となる新作はギタリストのDavid Tornとの連名での発表。Tornは演奏(クレジット上は「Electric Guitar, Live-Looping & Manipulation」)のみならずプロデュースとミックスも担当しているのだが、この両者の相性が非常に良い。重金属の如き重量感を醸し出すリズム隊とディシプリンなギター(リーダー格のStephan Thelenはギター・クラフトで学んだ経験アリ)が描き出すモノクロの絵に、Tornが時にヒステリックなギター等々、様々なサウンドで色付けしているような感覚。唸りを上げるTornのギターに合わせてドラムが熱を帯びるのと対照的に、Sonarのギターが表情を変えず淡々とポリリズミックなフレーズを弾き続けるところなど、聴いていて思わず引き込まれるものがある。

個人的にはTornについてはあまり詳しくなくて、Bill Bruford、Tony Levin、Chris Bottiと組んだBruford Levin Upper Extremitiesのライヴ盤「Blue Nights」(1999)を昔聴いたぐらい。当時はなんとなく「尖ったサウンドを出す人だなあ」と思った程度なのだが、ここでは実に良い仕事をしている。スタイル的にはTornが主でSonarが従という感じではあるのだが、アルバムでは両者の演奏が互いを引き立てており、先にチラッと触れた「Falling For Ascension」でもそうだったのだが、ストイックなサウンドに彩を添える上物がいるとSonarの音楽は俄然魅力を増す、そんな印象を更に強くした。


Sonar with David Torn“Waves and Particles”

Nik Bärtsch's Ronin「Awase」(2018)

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ベースレスのMobile名義では2年前に「Continuum」を出しているが、Ronin名義では「Live」以来6年ぶり、スタジオ作としては2010年の「Llyrìa」以来、実に8年ぶりとなる新作(6th)である。ベーシストがBjörn MeyerからThomy Jordiに代わってから初めてのスタジオ作となる。また、「Stoa」(2006)から加入したパーカッショニストのAndi Pupatoが脱退して4人組になっている。

Pupatoの不在については特に気にならなかったが問題はベース。「Live」のレビューでも書いたが、このバンドをナマで2回観た際に感じたのはベースの際立った存在感。軟体動物のようにうねりまくり、座って聴いているのに思わず腰が動きそうになるパンチの効いたグルーヴは強烈で、Bärtschが提唱する「Ritual Groove Music」又は「禅ファンク」を体現しているのはこのベースなのだと唸らされたものである。

後任であるJordiの演奏は「Live」に1曲だけ収録されていた“Modul 55”が初お披露目だったが、そちらはあまりグルーヴを強調しない静謐な雰囲気の曲だったので、実力の程があまりわからなかった。で、今作を聴いてもやっぱりよくわからない。わからないというか、「Llyrìa」同様、ベース・サウンドが(曲によって例外もあるが)それほど目立たずバンドに溶け込んでいるので凄味がコチラには伝わりにくい雰囲気。まあ、Meyerにしたってライヴで聴いて初めて「こいつすげー!」と気付いたワケで、生で観ないとベーシストの真価はわからんよなあ、という話ではあるのだが。

とはいえ、聴いていてなかなか心地よいものがあるのは確か。フレーズの執拗な反復をメインとしつつ構成がやたら複雑で覚えるのが大変そうな曲の基本スタイルはそのままに、Jordiのベースも所々で効果的なフレーズを聴かせている。良作。久々にライヴを観たいなあ。


Nik Bärtsch's Ronin“Modul 58”(Live)