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まず「荒涼たる新世界/Planet/The Hell」。4月にリリースされた4曲入り(新曲2曲+それらのインストヴァージョン)シングル。

正直大して期待していなかったのだが、タイトル・トラックが哀愁をたたえつつ疾走するクラシカルかつ勇壮ななヘヴィ・メタルで面食らったのである。デーモン閣下のヴォーカルはともかく、演奏もどこかこう、自分がイメージする今の聖飢魔IIの雰囲気と異なる。これでもかと繰り出されるツイン・リードの後のソロからはジェイル及びルークの顔が浮かんでくるけど。

「何だこれ?」

クレジットを見てすべて納得がいった。作詞作曲ダミアン浜田。ここでまさかの創始者(ちなみに現在は高校教師)降臨。だったらこうなるしかない。こういうもの以外になりようがない。なる筈がない。ミッド・テンポの“Planet / The Hell”も含め歌詞についても抜かりなく、タイアップしたアニメの世界観を映し出しつつ聖飢魔IIらしさを失わない巧みなもの。曲調の割に乾いたギターの音が少し気になった(特にタイトル・トラック)が、それ以外に欠点が見当たらない。恐れ入谷の鬼子母神。

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で、「呪いのシャ・ナ・ナ・ナ/Goblin's Scale」は「荒涼たる~」の2ヶ月後にリリースされたシングル。新曲2曲に“呪いのシャ・ナ・ナ・ナ”の英語版、それらのカラオケ・ヴァージョン含め全6曲収録となっている。

ルーク作曲のタイトル・トラックは映画の主題歌となっており、ほのかにコミカルさの漂うミッド・テンポのシャッフル・ナンバー。ダブルA面扱いの2曲目“Goblin's Scale”はジェイル作曲。アメリカンな埃っぽさをまき散らす疾走ナンバー。

粘り気のあるサウンドが現在の聖飢魔IIの等身大の姿を映し出しているが、個人的な好みからすると、ヒリヒリした空気の「荒涼たる~」の後にこれを聴かされるとちょっと…。ホントは6月に「呪いの~」が出た時に2枚まとめてレビューするつもりだったのをここまで引っ張ってしまったのは「呪いの~」の出来栄えががちょっと厳しいなあ、と思ったからでして。

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オマケ、というワケでもないが、やっとこさ閣下のソロ2作目を入手したので触れておこう。

この2月に再発されるにあたり、シングルのカップリングで収録されていた“Fight For Your Right”(Beastie Boysのカヴァー)を追加の上、曲順を大幅に変更した「D.C.18 Edition」へと装いを新たにしている。

制作陣に井上陽水、尾崎亜美、筒美京平、高見沢俊彦ら豪華メンツを揃えており、メロディは割とキャッチーで親しみやすいものになっている曲が多いように感じるがアレンジには全く統一感がない。これをヴォーカルの力量ひとつで「デーモンのアルバム」として成立させている。

“カツ丼”なんてしょうもないタイトルの曲とか、バブルの残り香が漂う悪乗りテイストが妙に鼻につくので長らく敬遠していたが、まあ、これはこれで面白いものだと思った。聖飢魔IIのメンバーで演奏されたメロウな雰囲気のミッド・ナンバー“Refrain Of Love”は大好き。
仕事が忙しくてあまり音楽を聴けておらず、音源こそポツポツと購入してはいるもののここで何か書きたくなるほどのネタには巡り合えず…。まあ暑い盛りの時期は大体毎年こうなんですけど。

というワケで2010年から2014年までの5年間に出た作品でインパクトがあったブツをすらずらっと並べてみる、いわば夏のネタ枯れ対策。リリース年毎に順不同で掲載。タイトルをクリックすると当時書いたレビューに飛びますよ。

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[2010年]

・Shining「Blackjazz」
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モロにハードコアでありながらプログレ者のハートもガッチリ掴んだよくわからない異形の何か。この後、ハードコアなメタルッぽい何かに作風が収束してしまったため、この作品の特異さがより光る。

・Brother Ape「A Rare Moment Of Insight」
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正統派プログレに軸足を置きつつ洗練された古臭さ皆無のサウンドを聴かせる凄くセンスの良いバンドだと思うのだがブレイクしなかったなあ。や、まだ活動中ですけど、多分このアルバムが品質面でのピークだろう。

・Mr. Big「What If...」
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これを聴いたときは「これからがMr. Bigの全盛期やで!」と思ったものだ。それだけにPat Torpeyの病気と、「...The Stories We Could Tell」(2014)のどうしようもない出来栄えが悲しい。

・Anna Pingina「Moy」
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ロシア産と聞いて身構える事なかれ。日本人にも馴染みやすそうなメロディ、キャッチーな楽曲、多様なサウンド。ポップス作品としてとても優れている。ところで、彼女のFacebookを見ると三鷹市在住とあるのだが、これマジ?

[2011年]

・Queensryche「Dedicated To Chaos」
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ほとんどの人からはその存在すら忘れられたアルバムかも知れないが、私はこの迷作が好きだ。当時、あまりに気に入ってしまったので全曲解説まで書いてしまった。

・Silnet Stream Of Godless Elegy「Navaz」
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チェコ産ドゥーム・フォーク・メタル。このテの音は泥臭くなり過ぎず、さりとて洗練され過ぎてもいないくらいが丁度良い。

・The Claudia Quintet+1「What Is The Beautiful?」
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抑制されていながら尖りまくった曲、演奏。

[2012年]

・Portico Quartet「Portico Quartet」
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闇から浮かび上がるようなハング・ドラムやエレクトリックが良い雰囲気を醸し出している。そのハング・ドラム奏者が脱退したのは痛い。

・Anathema「Weather Systems」
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現在の地位を確固たるものにした1枚。昨年の初来日公演でメンバーが煽るまでもなく自然発生的に客席側から起こった“Untouchable Part.1”のシンガロングの感動は今でも忘れがたい。

・Doimoi「Material Science」
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ドラマティックかつ剛健。“円群”は名曲。

・Diablo Swing Orchestra「Pandora's Piñata」
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奇天烈という言葉がこれほど似つかわしいバンドもそうはなかろう。でも曲はちゃんとしてます。

・Trioscapes「Separate Realities」
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超ヘヴィなジャズ・ロック。とにかく音が気持ち良い。

[2013年]

・水曜日のカンパネラ「羅生門」
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今ではすっかり有名人に。それはともかく初めて聴いたときのインパクトはかなりのものだった。

[2014年]

・Unheilig「Gipfelstürmer」
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おお、こんな面白い人達がいたのか、と気づいた途端の活動休止。

・GoGo Penguin「V2.0」
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ここに挙げた作品のうち、これだけレビューを書いてないけど、アコースティック・エレクトロニカという新しさを感じさせる音は結構ハマッた。

・ハチスノイト「Universal Quiet」
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1人の声からこれだけ様々な声が出るのかと。で、それだけで音楽を作れてしまうのかと。

++

インパクト重視で選んだが、今聴いても十分楽しめるクオリティを備えた作品を選んだつもりである。気が向いたらチェックしてみてくださいませ。
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TremontiはAlter Bride/Creedのギタリスト兼メイン・ソングライターのMark Tremontiによるソロ・プロジェクト。昨年2nd「Cauterize」を出したばかりなのに、早くも3rdをリリースしてきた。

Alter Bridgeの新作もレコーディングを終えているそうで、まあ大したハードワーカーっぷりだなあ、と思ったら、どうやら「Dust」の収録曲は前作「Cauterize」と同時期にレコーディングされたものらしい。前作から引き続きジャケットに地平線の向こうに白目の巨大なオッサンが描かれているのはそのせいか。まあそれはそれとして、1stから連綿と続く、Jeff Scott Soto系のキメの粗いヴォーカルとタイトにまとめた演奏が織りなすヘヴィ・メタル然としたサウンドには一点の曇りもない。

楽曲も然り。リズム面を工夫して慎重に前作収録曲とのキャラクター重複を避けようとしているのは分かるが、サウンドのコンセプトというか土台が一緒なので、正直、あまり変わり映えしない。ただし曲の出来栄えそのものは今回も上々。レンジが広いとは言えないヴォーカルながら次々とドラマティックなメロディを紡ぎだす手腕はさすが。

新作含めこれまでの3枚全てが夏場のリリースとなっているがそれがまたイイ。この暑苦しさがハマるのよ。暑苦しいだけに40分+α程度のコンパクトなつくりにまとめているのも個人的には好感が持てる。


Tremonti“Dust”


近年は大学やら専門学校等での講演活動など、ライヴ、クリニック以外での活動も活発に行っているという今沢カゲロウ。例年、徳島では年に1回鳴門でライヴを行うのが常であったが、この4月より特任教授に任命された四国大学での特別講義に併せ、実に15年ぶり2度目となる徳島市内でのソロ・パフォーマンスを敢行。勿論行ってまいりました。彼のライヴを観るのはおととしの11月以来、約1年7か月ぶりである。

ちなみに15年前はハードコア系のイベントに招かれたそうで、その時はリハーサル後に他の出演者が主催者に向かって「なんであんな人がここにいるんですか!」と言ったとか。そりゃまあ、なあ。

12年、14年に鳴門で観た時にステージで鎮座ましましていたあれやこれや(ラップトップ+Novation Launchpad+Keith McMillen Instruments SoftStep)は姿を消し、機材は足元にルーパーのフットスイッチがあるだけのシンプル極まりないもの。ベースシンセもなし(そういえばベース本体は新調されていた)。そういうワケで、バンド・サウンドよりも情報量が多い過剰な音の絨毯爆撃が全て純粋な6弦フレットレス・ベースのサウンド(with今沢が各地で採取した虫の鳴き声)で観客に襲い掛かることに。

その演奏は「リハ見たけど凄すぎ。初めて見たけど…」とライヴ前に言っていた会場のマスターをはじめ、観客の心を鷲掴み。演奏同様トークのキレも冴えており、誰かが「トークだけのCDを出してほしい」と言っていたが、それじゃまるでさだまさしだ。しかし昆虫ネタはもはや癒しの域に達しているのかも知れない…いるのか?人間メトロノームのコーナーやベースニンジャ版スクール・オヴ・ロックといった定番ネタも披露し、最後は“The Chicken”のメロディに虫の名前を乗せて客に歌わせるという奇想天外なネタで幕。マスターがエラいウケていた。

初めての会場、告知期間も短くあまつさえ平日夜という悪条件が重なり集客は芳しくなかったものの、そういう時の演奏が案外印象に残ったりするものである。地上で最も苛烈な音楽のひとつを通して繰り広げられる幸せな空間がそこにありました。
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デンマーク出身の3人組、実に20年ぶりとなる3rd。4月のアルバム・リリース後に来日も果たしている。

彼らが活動していた90年代半ばには結構な人気を博していたバンドで、当時ラジオでも散々聴いていたハズなのだが、全く印象に残っていない。多分、好きじゃなかったと思う。ただ、近年再結成したというのは知っていて、たまたまYouTubeで観た“Made To Believe”がなかなか良いと思ったのである。いかにも90年代のロック・バンドが出しそうな音で、久しぶりにこの空気を味わってみたくなり、アルバムを購入。

アルバム全体も概ねそういった雰囲気でまとめられている。作品を形作っているのは、甘いメロディに舞い上がるでもなくヘヴィネスに溺れるでもなく、その中間のどこかに位置する乾いたサウンドとアーシーなメロディ。しんみりと始まって徐々に重々しい展開に移行するバラード調の“Say It To Me Anyway”がアルバムのラストに配置されている(その後、ライヴ音源が3曲、ボートラとして収録されているが)のもなんとなく90年代のアルバムっぽい。

8年前にAsia「Phoenix」(2008)のことを「'80年代の空気をそのまま真空パックしたよう」なんてやや茶化し気味に書いたが、もしかしたら、自分が昔を懐かしんで聴いている作品が8年前の私と同じぐらい、あるいはもっと下の世代に茶化されるフェーズに入った?うひゃあ。思えば遠くへ来たもんだ。まあ若い人たちがこの作品を聴いてどう感じるのかはわからないが、要所要所をユニゾンでキメまくる上質なハード・ロックに仕上がっているこの作品、私にとっては「ま、あの時の雰囲気が味わえれば」などというレヴェルの低い期待を吹き飛ばす出来栄えでした。


Dizzy Mizz Lizzy“Made To Believe”