Steven Wilson「To The Bone」(2017) 

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近年はKing Crimsonの旧譜をはじめとして様々なクラシックスのリミキサーとして名を馳せている感のあるSteven Wilsonの5thソロ。個人的には2009年の「Insurgentes」以降ご無沙汰していたが、ツイッターのTLでたまたま目にした“Permanating”が「根暗なクセに無茶してんなコイツ」と思わずにはいられないABBAばりのダンス・ポップで、これはチェックせねばなるまいと思い購入。

「To The Bone」発表にあたってPeter GabrielやKate Bush、Tears For Fearsといった人達の80年代の作品が言及されているが、それらの作品は芸術性と商業性を高い次元で両立させており、今作ではその高みを目指してみました、ということなのだろう。恐らく。

で、聴いてみると、結構いいセン行ってるのではないかと思った。過度に俗っぽくなっておらず、かと言って愛想が悪いワケでもない。凛とした気高さと親しみやすさが良い塩梅でバランスしている。4分間のポップ・ソング“Nowhere Now”がこの作品のそういった雰囲気を最もよく体現している。Peter Gabriel“Don't Give Up”を想起せずにはおれない女性Vo、Ninet Toyebとのデュエット曲“Pariah”、ドラマティックなサビからMark Felthamによるハーモニカ・ソロへの流れがダイナミックなバラード調の“Refuge”、後半のギター・ソロを支えるバックがいきなりフュージョンっぽくなってやけに印象に残る“Detonation”等々、曲調も実に多彩。

奇しくも「Insurgentes」レビューの末尾で「キャッチーなメロディのポップ・ソングも書ける人(略))なので、次(略)はそういうのも期待したいところではある。」と書いたのだが、ここでその期待が現実のものになった感。喜ばしい。来日を望む声もあるが、何せPorcupine Treeで2006年に2度来日していずれも集客面でヒドい目に遭っている(1回はあの伝説のウドー・フェス)から正直、期待薄。昨年インド~オージー~NZ~台湾というルートでアジア・ツアーを敢行したけど日本は華麗にスルーされてるし。

トラウマになってるんだろうな、多分。あの時は本当に気の毒だったと思うが、今ならクラブチッタ程度だったら余裕でしょ。そんなに怖がらなくてもいいと思うんですけどね。


Steven Wilson“Refuge”

2017/11/10 Fri. 19:45  edit

Category: CD/DVDレビュー:S

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Marillion@Club Citta'川崎(2017.10.20-21) 


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・「(足元のカンペを見て)オマタセ、シマシタ」(両日)
・“The Leavers”で楽章の合間に起こりかけた拍手を小さく手で制する(1日目)
・「(コップのジュースを一口飲んで)Apple juice...From Seven Eleven」(1日目)
・キーボードの椅子に背もたれを乗り越えて座ろうとして引っかかる(2日目)
・聴衆の指笛に対抗しようとして吹けず(2日目)

あと何かありましたっけSteve Hogarth(以下h)の萌えポイント。ちなみに20日に一緒に行った連れ(Marillionに関する知識ゼロ・♀)は予習がてら“Beautiful”のPV(痩せていてカッコイイh大フィーチュア)をYouTubeで見まくった結果、ナマhを見て「なんか太ってる…」とショックを受ける結果に。そのPV、20年以上前だから…。

まあそれはともかく、23年間待っていたとかそういう情緒的なものを省いてしまえば、「演奏は超安定してるからヴォーカルさえ大丈夫ならそんなに悲惨なことにはならないんじゃね?」程度の期待感だったのだが、そういう「演奏が超安定している」レヴェルの人達(しかもヴォーカル絶好調)をナマで目の当たりにするとどえらいことになる、ということを学んだ。てかhのパフォーマンスが予想以上に凄い。映像でも結構観ているハズなんだが「こんな凄い人だったの?」と。圧倒されっぱなし。ユーロ・ロック・プレスVol.74でインタビューに応じたhの「Marillionは驚くほど良いライヴ・バンドだと定評があるし、率直に言って、僕達はそれに値する」という言葉には一切の偽りも誇張もなかった。Marillionは驚くほど良いライヴ・バンドです。曲が終わるごとに起こる拍手がなかなか鳴りやまなかったのも無理はない。21日の朝は叩きすぎた手の平が痛いのなんの。

曲目もまるで私のためにセットリストを組んだかのような。20日は“El Dorado”で始まったので「F E A R」再現かと思わせておいて2曲目がまさかの“You're Gone”!ここから“The Leavers”~“Fantastic Place”の流れが一番ヤバかった。涙腺が決壊しそうで。あと“Afraid Of Sunlight”な。私、この曲が世界で一番好きで、この曲が収録された「Afraid Of Sunlight」(1994)は世界で一番好きなアルバム、更に付け加えると“Afraid Of Sunlight”“Beyond You”“King”のラスト3曲がその中でも狂おしいほどに好きなんだがまさか全部聴けるとは。“Afraid Of Sunlight”が終わった瞬間「オレ、今ここで死ぬことになったとしても笑顔で死ねるな」と、ちょっとだけ思った。

立ち見客まで出た21日はさすがに「F E A R」再現だろうと思ったらオープナーがこれまたまさかの“Gaza”。その後、中盤は20日に演奏した曲がしばらく続いてやや気持ちが萎えてきたところに必殺の“Easter”。湧き上がる大歓声。21日は友人知人(と言っても私は1人を除いて初対面だったのですが)5人で集まって軽く飲んでいるときに参加者の1人が「Easterの予習をした」と言っていたが、私も含めて同じことを考えていた人は多かったようで、自然と合唱モードに。「日本で何やるのかわかんないけどコレはやるんだろ?」という祈りに近い期待が報われた瞬間。

できることなら他の曲にもコメントしたいがキリがないので個別の曲についてはこれぐらいで。これは全く予想外だったのだが、2日続けて「過去23年で国内盤が出たアルバム&彼らの代表作として名高い「Marbles」(2004)収録曲」から満遍なく演奏(プラス“Easter”“Sugar Mice”)するセットリストを組んできた。ありがたやありがたやと思いつつどうせなら「F E A R」メインの通常のセットリストで聴いてみたかったという贅沢な不満も。

セットリストは次のとおり。

10/20
  1. El Dorado
  2. You're Gone
  3. The Leavers
  4. Fantastic Place
  5. Wave
  6. Mad
  7. Afraid of Sunlight
  8. Sugar Mice
  9. Sounds That Can't Be Made
  10. Power
  11. Man of a Thousand Faces
  12. King
  13. Neverland
    Encore:
  14. The Invisible Man

10/21
  1. Gaza
  2. You're Gone
  3. The Leavers
  4. Beyond You
  5. Sugar Mice
  6. Wave
  7. Mad
  8. Afraid of Sunlight
  9. Sounds That Can't Be Made
  10. Easter
  11. King
  12. This Strange Engine
    Encore:
  13. Three Minutes Boy
  14. Neverland


ライヴを観る前、周囲に冗談で「これを観たら『死ぬワケにはいかない理由が1つ減る』ぐらい、自分にとっては大ごとなんです」てなことを言っていたんだが、あながち冗談では済まないレヴェルで凄いものを観た気分。いや、死ぬワケにはいかない理由は他にもあるのでまだ死ねませんしできればあと何回か観たいです。2日通して観客は大半がハゲ散らかしたオッサンで男女比は目測で97:3ぐらい、休憩時間はおしっこが近い年寄り共がトイレに長大な行列を形成していていつ死んでもおかしくないような感じなので、できれば早めの再来日希望。つかどうにかして欧州並みに若いファン(女性含む)を開拓できませんかね。連れも「女性受けしそうな声だからもっと女性が多いのかと思ってた」て言ってましたけど。

なお、先日のライヴを観た方にはライヴ盤「A Sunday Night Above The Rain」がオススメ。今回のセットリストに含まれていた曲を比較的多くやっていて、オープナー“Gaza”の歌い出し、hの動きを見て「ああそういえばこんなだったわ!」てな感じで当日の追体験ができます。観てないけどこのレビューや参戦した人達がツイッター等で絶賛しまくっていたのを読んで興味を持った方も、是非。

2017/10/26 Thu. 01:35  edit

Category: ライヴレポ、雑記等

Thread: プログレッシヴロック - Janre: 音楽

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Chon「Homey」(2017) 

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米サンディエゴ産のツイン・ギター+ドラムスの3人組による2nd。9月に茶屋町タワレコで購入。国内盤はリリースされていないようだが、同時に購入したThe Nationalと同程度には沢山のCDが店内の目立つ位置でディスプレイされていた。はて、と思ったら10月に来日していた(10/3~8、大阪でも公演あり)んだな。

マス・ロック~プログレ・メタルを思わせるテクニカルなフレーズをクリーンなトーンのギターで鮮やかに弾き倒している。メタル系のガシガシした音ならこういうバキバキ&レロレロしたヤツも割とありがちだが、コチラの風合いとしてはあくまで爽やかというか、夏をイメージさせつつも過剰な暑苦しさや日本の夏のようなベタッとした感触は一切ない。過剰なテクニカルさが邪悪さや禍々しさではなくむしろメロウなムードの表現を目指しているという点ではYvette Youngとかと同じ方向を向いていると言える。こういう音が今の流行りなんでしょうか。

ベースもフィーチュアしたオーソドックスな4人編成の曲も結構オシャレな雰囲気を醸し出しているが、ゲストVoやエレクトロを大胆に導入した曲がそういうアルバムのイメージをより濃いものにしている。マス・ロック的なものとクラブ・ミュージックぽいものがごくごく自然に1枚のアルバムに収まっているハイブリッド感が面白い。サウンドから何からエッジ立ちまくりでありながら攻撃的でなく、むしろリラックスさせる音に仕上がっているのが何とも斬新。


Chon“No Signal”

2017/10/09 Mon. 22:58  edit

Category: CD/DVDレビュー:C

Thread: 洋楽CDレビュー - Janre: 音楽

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The National「Sleep Well Beast」(2017) 

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オハイオ出身、NYを拠点に活動するThe Natinoalの2013年以来4年ぶりのアルバムとなる7th。国内盤はライヴ音源を収録した2CDとなっている。

もうオッサンなので4年なんて割とあっという間だが、田舎のレコード屋が淘汰されるには十分な時間でもあり、前作「Trouble Will Find Me」(2013)を購入した駅前のレコード屋は今年の8月に店を畳んでしまった。地元のターミナル駅前からレコード屋が完全に姿を消した一方で、バイパス沿いやイオンにあるレコード屋ではThe Nationalなんて置いてくれやしない。この新作、私はDream Theaterを観に行ったついでに茶屋町のタワレコで買いました。その大阪のタワレコですら、品揃えのレヴェルは20年前の松山タワレコやヴァージン並みになってきているというね。

まあヨタ話はそれくらいにして。

元々、弦だの管だのといった外部のゲストを招いて「寂(さび)」を感じさせるサウンドを聴かせていたが、旺盛なメンバーの課外活動からのフィードバックなのかどうなのか、シンセやエレクトロニックといった生音以外の音も登場しており、コクがありながらもクドさを感じさせないそのキャラクターは維持しつつ、よりディープな方向性を志向しているように感じられる。前作が悪くない出来だったのであまり心配していなかったが、今回も良い感じに仕上がっていると思う。

“The System Only Dreams In Total Darkness”“Empire Lane”あたりを筆頭に、地味ながら味わい深い楽曲の数々が秋の夜長に染み渡る…のはいいんだが、見た目から何から、どこをどう切っても日本でウケそうな外連味というかキャッチーさに乏しいからか、海外との人気の格差が広がっているようで。しかしまあ、それを嘆いてもしょうがない。来日公演を見逃している身としてはソコソコ盛大に売れて欲しいという気持ちもあるんだが…。


The National“The System Only Dreams in Total Darkness”

2017/10/02 Mon. 22:45  edit

Category: CD/DVDレビュー:N

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ふくろうず「びゅーてぃふる」(2017) 

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2週間ほど前の話。クルマの運転中にラジオを流していたら、女性が舌っ足らずな口調でツアーの日程や自身のアルバムについてしゃべっている。何となく聞き流しているうちに彼女のバンドの曲が始まる。パッと見、ウィスパーヴォイス調と思わせておいて、結構しっかりした声で歌っている印象。曲も悪くない、というか、これ、結構好きかも知れんぞ。しゃべりを聞いている限りにおいてはとても興味を持てそうな感じではなかったのだが。

バンド名はわからないが曲名は辛うじて覚えていたので、帰宅してYouTubeで探してみる。「ビューティフル」で検索。見つからない。「Beautiful」でどうだ。これでもダメ。アップロード日を比較的最近にしてみても引っかかってこない。行き詰まってラジオ局のウェブサイトを開いたらオンエアした曲のリストを発見。「びゅーてぃふる」。平仮名かい!

で、購入したのが、そのラジオ番組でしゃべっていた内田万里(Vo,Key)に安西卓丸(B,Vo)、石井竜太(G)を加えた3人組、ふくろうずの8th。レコーディングには元メンバーの高城琢郎(Dr)も参加している。

どちらかというとギターが控えめかなあ、と思いながら聴いていた(普段私が聴いているヤツがうるさいだけなのかも知れない)けど、作詞作曲は全て内田が担当しており、バンド・サウンドよりも内田自身のカラーを強く打ち出した作風に仕上げている模様。アレンジにしても演奏にしても、あまり奇を衒った感じはないというか前面に出てくる場面はなく、シンプルに内田の歌を引き立てている。ストリングスをフィーチュアした“びゅーてぃふる”以外の収録曲も派手さこそないものの良質なメロディを聴かせている。個人的にはチャイナ・テイスト?の“スローモーション”や繊細な“ムーンライト”あたりが好き。

良い曲を書くバンドだと思った。バンドの公式サイトを見たら大阪でレコ発ライヴをやると書いてあって一瞬興味が沸いたが、13日にDream Theaterを見に行った直後の15日ではさすがに金銭と仕事のスケジュール的に無理でした。


ふくろうず“びゅーてぃふる”

2017/09/21 Thu. 21:32  edit

Category: CD/DVDレビュー:国内は

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